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2024年7月25日 (木)

トランプ、「私なら24時間以内に戦争を終わらせる」だってさ

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ご承知のように、トランプはウクライナ支援に消極的、いや明確に反対のようです。困った奴です。
先日の大統領候補討論会でも、トランプは「ウクライナは勝っていない」といっています。

「討論会での焦点の1つは、ウクライナ戦争に対する姿勢だった。トランプ氏は、こう語った。
〈ウクライナは戦争に勝っていない。彼らは兵士を失っている。大変な数の人々だ。彼らは兵士を失い、1000年の歴史をもつ金のドームがある豪華な都市を失った。すべてはバイデンの馬鹿げた決定のせいだ。もしも私が大統領だったら、ロシアは攻撃しなかっただろう〉
〈彼ら(ロシア)はオバマやバイデンから多くの土地を奪った。トランプからは何も奪っていない。何もだ。プーチンは(私だったら)そんなことをしない。私とはゲームをするつもりはないのだ〉」
ウクライナの勝利を願う人々の気持ちを逆撫でする「トランプの戦争終結プラン」が、ここにきて「現実味」を帯びている理由(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

なんのことはない、自分という抑止力があればプーチンはウクライナ侵略をしなかったといいたいようです。
ただし「勝っていない」というのは、半分はそのとおりです。
プーチンは、オバマの時代にクリミア侵攻をし、バイデン政権の時にウクライナ侵略をしたのは事実です。

クリミア併合時に、米欧の対応は不十分、かつ、遅れていました。
まだ平和共存の甘い夢から醒めていなかったのです。

ではトランプだったらどうでしょうか。いっそう悪くなったかもしれません。
というのは、いま思えばこの2014年のクリミア侵攻時に、ためらわずにロシアに対抗可能な兵器の供与をしておけば、ウクライナの抑止につながったことでしょう。

しかしオバマは口だけの制裁に止まり、結局本格的援助は今回のウクライナ全面侵略の後となりました。
つまりクリミアは、ヒトラーのズーデーテン地方併合であり、チェンバレンはオバマだったのです。
そしてトランプだったらどうでしょうか。
プーチンに融和的なことは民主党以上でしたから、いっそう悪くなったかもしれません。

このオバマのロシアへの融和政策は、同時期の中国による南シナ海の軍事拠点づくりを誘発し、さらには2021年8月にアフガニスタンからの駐留米軍撤退の無様な失敗につながっていきます。
これを見て、プーチンがウクライナ侵攻を決意したのは間違いありません。
オバマの副大統領だった老いぼれのバイデンにはなにもできまいという読みがプーチンにあったのでしょう。
完全に足元を見られたのです。

しかしバイデンの名誉のために言っておくと、勃発時に「戦争をさせたいのか」と早々と不干渉を宣言するという大ポカを犯した以外、たぶん平時の米国において最大限の支援をしたのは確かで、ウクライナ支援に向けての西側諸国の結束は9・11米中枢同時テロ直後と同じくらい強まりました。これは得点です。
しかしその一方、長距離射程の兵器を出し惜しみ、対レーダーミサイルを発射可能なF16も今になって実現するという限界がありました。
結果、ウクライナはもっと早期に侵略を撃退できる可能性があったにもかかわらず、ズブズブの持久戦という体力勝負の戦いに持ち込まれてしまいました。
こうなってしまってはすんなりと勝てる道理がありません。
それを見てトランプは憎々しくこう言います。
「私が大統領なら、24時間以内に終わらせる。勝ち負けではなく、どう決着をつけるかという問題だ。人が殺されるのを止めるのだ」と主張し、ウクライナへの支持を明言しなかった」
(毎日「私なら24時間以内に戦争終わらせる」 ウクライナ巡りトランプ氏 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
なにがオレなら24時間以内にだ。なにを言ってるんだ、ナルシストめ。
こういうことを言うトランプはドンバスの戦場に蹴り入れたくなります。

つまりもう勝ち負けではなく、どう収めるかだとトランプは言いたいようです。

「トランプ前米大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は21日までに、トランプ氏が大統領に返り咲けばロシアとウクライナの間で和平を実現すると主張していることに関し「ロシアに譲歩する以外、戦争を交渉で終わらせる案を持っていない」と批判した。ウクライナにとっては「暗黒の時となる」と指摘した。米CNNのインタビューに答えた。
トランプ氏はウクライナ支援に消極的な姿勢を示す。ボルトン氏は米国の支援について「良心や慈善によるものではない。理不尽な侵略に対抗して防衛することは、米国の安全保障上の利益になる」と主張した」
(共同2024年7月22日)
和平案「ロシアに譲歩のみ」 元側近がトランプ氏批判 | 共同通信 (nordot.app) 

さすが、正論を言いすぎてトランプから解任されたボルトンらしく、直球150キロです。 
こういうボルトンや、ジェームス・マティス、マイク・ポンペオなどが居てトランプの外交は成り立っていたのです。(ちなみにこの3人も微妙に考え方が違いますが)
しかしトランプは、個人の交渉力に過度な重きを置いて、ディールに酔ってしまう悪癖のためになんども失敗の淵までいくところでした。

典型的なのは、トランプが大成功と思っている北朝鮮との首脳会談です。
それまで北朝鮮が恐れられていたのは、棒を呑んだように妥協を拒み続け、うちの国を追い込めば核兵器もろとも世界を吹き飛ばしてやるぜ、後始末に困るのはあんたらのほうでしょうが、というガキのような瀬戸際戦略をとったからです。
これが弱者の恫喝というやつですが、これが常識人の外交官ばかりが揃った国際社会では効いたのです。

かくして六カ国協議などで、北への食料援助にとどまらず、北の核と交換に新しい原発を作るの作らないのというバカ丸出しの融和策に走ったあげく、その間にほんものの核兵器体系を完成寸前にする時間を与えてしまったのです。

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こういうマッドマンセオリをとられると、トランプはきっと内心笑っていたと思います。
正恩の瀬戸際戦略なんて北朝鮮流のマッドマンセオリだから、なんだオレの得意技と一緒じゃないか、ならばオレのほうが上手だってね。
それが判れば後は早い。要はメリハリです。硬軟取り混ぜて、交渉テーブルに追い込めば勝ちなのです。
まずはこぶしを振り上げて交渉に乗らねぇならブン殴るぞと脅し、反発すれば一転しておだてるだけおだてて、いい気分になってもらって適当な妥協線を探ろう、としました。

感染症対策の戦略にハンマー&ダンスという手法がありますが、トランプのやり方も似たようなもので、初めは完全非核化という高めの球を直球で投げ込んできます。
そして朝鮮半島海域に空母を3隻もならべて威圧する。
トランプはさまざまな情報から、北の核は完成していないことを知っていました。
自由主義国家ではメディアにすぐバレてしまうような核実験も、長距離核にしても、国営プロパガンダ放送しかない国ならいくらでも偽造が可能だからです。
ですからこのような独裁国家においては、独裁者が核を持っていると宣言すれば持っていることになってしまう不思議な兵器なのです。
この貴景勝のような体形の独裁者坊やは、出来たか出来ないか誰にもわからない核を作ったと宣言することで、それをいかに米国に高く売りつけることができるか、腐心していたわけです。
そこで、「高価・迅速出張買い取りします」と言って、片手にこん棒、片手にケーキをもって出てきたのがトランプでした。
買い取り担当者はボルトンとポンペオです。
ボルトンにはこん棒を持たせ、ポンペオにはケーキを持たせました。

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ボルトンがつきつけたのが、CVID 「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(ああ長い)で、これは満額要求です。
ここで重要なのは非核化そのものではなく、「検証可能」という部分です。
これは北朝鮮内部に米国や国際社会の調査団が自由に踏み込めて、自由に査察できる権利という意味です。

ポンペオはいやいやをするガキの口を、「ほ~ら、痛くないでしょう。先生に虫歯チェックさせてね」とあやしながら開けさせて、虫歯ならぬ核の実態を調査しようとしたのです。 
ここで僕、イヤダもんと口を開かない悪い子だと、怖いボルトンおじさんが、優しそうなポンペオさんの後ろからヤットコを持って登場するということになります。おお、コワ。

これがトランプの成功体験です。 
結局、ハノイ会談の時も安易な妥協をしそうになってボルトンに制止されたように、周りのスタッフにボルトン役、ポンペオ役がいてこそなんとかなったのが、トランプのディールでした。
もうトランプ御大は忘れているようですが、彼ら「チームトランプ」が居てトランプ手品ができたのです。
似たようなディールを、またプーチン相手にできると思ってウヌボレています。

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BBC

トランプ氏は「(ロシアもウクライナも)両国とも弱みと強みがある。終わらせるには(米国の)大統領の力が必要だ」と強調した。プーチン露大統領については「大きな過ちを犯したが、頭が良く、ずる賢い人物だ」と評価。「(彼は)戦争犯罪人か」との質問には「戦争犯罪人だと言えば、問題解決のためのディール(取引)がずっと難しくなる。後で議論されるべきだ」とかわした」
(毎日前掲)

トランプとプーチンは元来仲が良かったのです。
首脳級の政治家にも相性があります。
プーチンは力の信奉者で「ずる賢い」人物ですから、オバマのような青瓢箪を頭から馬鹿にしています。
ですから、いい意味でも悪い意味でもオバマの対局にいるトランプとは相性がよく、互いに認めあっているところがありました。

「トランプ氏は以前からプーチン大統領に会いたがっていた。2017年1月に就任して以来、トランプ氏はフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領から北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長まで、多くの独裁的な国家元首を称賛してきた。
大統領選では、トランプ氏はプーチン氏が「ロシアを見事にコントロールしている」と述べ、同氏と仲良くなれると発言していた。今年6月に歴史的な首脳会談を果たした金委員長についても同様のコメントを残している」
(BBC2018年7月18日)
トランプ氏とプーチン氏の関係 理解に必要な情報一覧 - BBCニュース

そして結局証拠不十分となりましたが、大統領選へのロシアの介入もあったようだとBBCは匂わせています。
ロシアが得意の偽旗作戦を米国内で展開した可能性は捨てきれません。
その反面トランプは、プーチンに抵抗する人権活動家については極めて冷やかです。
アレクセイ・ナワリヌイが死亡したときはこう言っています。

「11月の米大統領選で共和党候補となる公算の大きいトランプ前大統領は19日、ロシア反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の死亡によって「米国で何が起きているかについて認識を深めている」とコメントした。
トランプ氏によるナワリヌイ氏の死亡に関する発言は初めて。ただ、バイデン米大統領や他の欧州諸国首脳らとは異なり、プーチン大統領を非難する内容ではない」
(ロイター2024年2月20日)
トランプ氏、プーチン氏非難せず 反政府活動家死亡で | ロイター (reuters.com)

つまりなんのことはない、一貫しているトランプのプーチンに対する姿勢は融和です。
これではかつてのオバマとは別の意味で戦う前から負けています。
こんな弱腰でトランプ好みの派手なディールなどしたらどうなるか、目も当てられません。

 

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コメント

 ウクライナ問題に関しては、ボルトンが正しい。
ほとんどのシンクタンクや大学などの研究機関も、引き続き米国のウクライナへの支援が米国・西側社会のために必須としています。
ポンペオやマルコ・ルビオ、ボリス・ジョンソンらは、「(ゼレンスキーが提示された不如意な停戦条件案を蹴っても)トランプがウクライナ支援を打ち切るとは信じていない」としています。上・下院の4分の3の議員たちも同様、援助継続派です。

「ウクライナは勝っていない」とする現状認識も上等とは言えません。
西側の支援が続けば、先に息切れするのはロシアの方。
選挙中の事でもあり、トランプは何を考えているかわからない男です。
また、あまり報道されませんが、政権末期とされる岸田政権はどさくさに紛れて巨額の追加支援を決めました。岸田首相の数少ないファインプレーの一つです。

余談ですが、ハリスの支持率がトランプを上回ったという報道は、大した意味はありません。当落の帰趨を決めるのはスイングステート州です。この6州のうち、5州でトランプが勝っています。
ヒラリーとの一騎打ちでも、トランプが世論調査で上回る場面はなかったと記憶しています。

選挙予想の件は山路さんに全く同感。
我が国のメディアでは田原総一朗とか、百戦錬磨のジャーナリストですらアメリカの大統領選挙のシステムを理解していないという残念さ。

ウクライナ情勢もそうですね。ボルトンは今やトランプ批判だし、ポンペオは日鉄のアドバイザーに就任してUSスチール買収の要になってます。かつての「USファースト!」の時のチームは瓦解しました。バノンも逮捕されたし。

でも、やはりトランプが勝つのだろうと。


本当に残念な事ですけど、我が国の政権は9月の自民党総裁選で岸田が消えるか、それにしてもロクな後継者がいないという砂漠状態。
安倍さんが生きていたら、間違いなく3度目の政権を率いてトランプと渡り合って行けたでしょうに。。。

どちらの候補が大統領になろうが日本にとっては厄介な人物であり、世界情勢においても混乱は不可避なのは間違いはないので変に片方を聖人化して「〇〇に勝ってもらわないと」ではなく「〇〇が勝ったら日本政府はどうしなければいけないのか?」という方向性で議論が高まる流れが生まれて欲しいものだと願っています。

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