カマラという悪手
バイデンがカマラを指名した理由は、シンプルに選挙資金です。
すべての候補者選出作業が終了した後の撤退ですから、新たな候補が出るとしても選挙資金を一から再構築せねばなりません。
それをしなくて済むのがカマラです。
バイデンは150億円の選挙資金を口座に持っていますが、それは副大統領候補と連名の口座だからです。
したがってバイデン本人が辞退したいま、カマラ以外これを自由にできるものはいません。
「AP通信の報道によると、バイデンの選挙資金を本人以外に利用できるのはハリスだけだ。これは、バイデンの選挙資金口座が大統領候補と副大統領候補の連名で連邦選挙委員会に登録されているためである。献金は両候補へ行われた形になっており、ハリスはこの資金を自分の大統領選出馬に活用できる。21日に「Harris for President」へと名称変更された口座には、6月1日時点で9600万ドル(約150億円)の資金が集まっていた」
(フォーブス7月22日)
バイデンが大統領選から撤退、ハリス副大統領を後継に支持 今後の展望は | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
カマラはヒンドゥ語で「蓮」(名前まであの人に似てる)のことで、つけたのはインド系の母親でした。
父親がアフリカ系にすぎませんから、バイデンが辞退演説で「アフリカ系女性を選んだ」と言ったのは半分だけホントにすぎません。
インド系女性なら特に珍しくもなく、共和党にもニッキー・ヘイリーがいますし、副大統領候補のベンスの妻もそうです。
「ガラスの天井」挑戦へ ハリス氏、実績に不安 副大統領候補に白人男性の観測・米大統領選(時事通信) - Yahoo!ニュース
「ガラスの天井」なんて台詞はヒラリーのパクリでしょう。ヒラリーはカマラの10倍以上実務能力がありましたが、それでもトランプには勝てなかったのですからね。
バイデンが彼女を副大統領に指名したのは、その能力を買ったというより「黒人女性」だったからです。
「1991年のアニタ・ヒル事件以降、民主党内で「女性の敵」と誤解され、その払拭を悲願とするバイデンは、初の女性大統領誕生の立役者になることを希望している」
(渡辺将人バイデン政権を悩ますハリス副大統領という難題 | SPFアメリカ現状モニター | 日米関係インサイト)
このアニタ・ヒル事件は、セクシャルハラスメント被害公的に訴えた女性に対して上院司法委員会委員長だったバイデンが否定的態度をとったことによります。
これはバイデンは気の毒な面もあるのですが、これで女性運動家たちから蛇蝎のように嫌われ、以後「女性の敵」扱いを受けます。
そういうことがあったためにバイデンは大統領になる前から女性を最高裁判事にすると言明し、副大統領にカマラを抜擢したのです。
副大統領となったカマラは、とかくバイデンの足をひっぱることばかり起こします。
検事なんて稼業をやっていたせいか、そもそも政治家としての基本能力のコミュニケーション能力が欠落しています。
副大統領以前には「アイオワの十字架」事件を引き起こしています。
2019年、当時上院議員だったハリスは大統領候補指名キャンペーンの真っ最中でした。
女性黒人候補として推す多くのボランティアで、選挙事務所は異様なほどの熱気だったようです。
「ところがハリスは2019年12月に唐突にキャンペーンから撤退する。しかも、内部でスタッフに説明が行き渡らないうちにプレスに告知した。党員集会を目前に準備に奔走していたアイオワの現場も報道で知った。茫然自失の中、怒号が飛び交い、ボランティア学生は泣き崩れた。何しろ理由が分からない。初戦地であるアイオワの有給スタッフにすら、本部や議員本人から説明がない有様だった。(略)
当時の戸惑いと怒りを支持者は決して忘れない。棚からぼた餅で副大統領候補に選ばれたとき、熱心な初期支持者ほど本選キャンペーン参加に背を向けることで抗議を示す人がいたのは、この記憶があったからだ。」
(渡辺前掲)
突然の選挙戦からの撤退。しかも自分を支えてくれた人々にいっさいの説明なし。
このようなコミュニケーション能力を頭から欠いた体質と、自分の選挙運動チームもまとめられないマネージメント能力のなさは副大統領以前からそうなのです。
そもそもカマラは、政治家をやってはいけないタイプの人で、この体質は副大統領になった後もそのまま温存され、むしろ権力が付与されたぶんだけ肥大化しました。
「政策的失態というよりはマネージメント能力への疑問である。コミュニケーション戦略の破綻によるメディア対策不足でリークが頻出するところは、1993年のクリントン政権1期目の混乱にも似ている。複数の米メディアが副大統領室の混乱を6月以降相次いで報じている。(略)
ポリティコ紙は、元側近や現側近などホワイトハウス内のハリスの元・現部下にまたがる22名のディープな筋からの証言を報じた。副大統領室の士気は低空飛行で早々に幹部スタッフの辞職が続出しているという」
(渡辺前掲)
Harris Speaks Out On Why She Hasn’t Traveled To Southern Border (youtube.com)
NBCナイトニュースのアンカーであるレスター・ホルトが移民問題にからめて、なぜカマラが国境を視察しないのかと尋ねたところプッツン。答えた台詞が「私は欧州にも行ってない」ですから、話になりません。
この批判めいたことをいわれると見境なくキレやすい体質も、日本のアノ人に似ています。
これを切り取られてユーチューブで拡散され大恥をかきますが、当人は蛙の面になんとやらです。
あげく左右両陣営からの十字砲火。
カマラの評判はバイデン以下です。
バイデンは人の良さと上品に見えるのが救いでしたが、カマラときたひにゃ政治家として未熟なうえに、なんの実績もなく、しかも喧嘩早く、徒に摩擦を引き起こすのが趣味ですから、民主党主流派、つまりバイデンのような中道左派からは総スッカンです。
カラード層からもヒスパニック系はカマラ嫌いも多く、今回はトランプにヒスパニック票が流れ込むかもしれません。
結局、カマラを熱烈支持するのは、反イスラエルで突っ走る極左とBLMの黒人層、そして環境原理主義者だけです。
つまりカマラの政治的支持層は極左なのです。
ほんとうのところ、バイデンがカマラを指名したのは、自分に忠誠を尽くして来てくれたことへの評価でもなければ、ましてや政治的理念でもなく、ただ選挙資金がらみにすぎませんでした。
他の候補だと一から選挙資金を構築せねばなりませんが副大統領ならそのままバイデンの資金をあてにできますからね。
というわけで、米国の地雷オンナが民主党候補で決まりそうです。
民主党最悪の悪手です。
いや、選挙資金も急速に集まってきているから勝てるぞ、という人もいるようですが、今の米国が抱える数多くの問題になにひとつ処方箋を持たないのですから、やはり貧すれば鈍するでしょうか。
この民主党のていたらくを見ていると、いよいよ「確トラ」になりそうですが、日本政府はなにひとつ対応を準備できていないようなのです。
もう安倍さんに頼れないのですよ。
« バイデン涙の撤退 | トップページ | トランプ、「私なら24時間以内に戦争を終わらせる」だってさ »




ただ支持率ではハリスとトランプは拮抗しているのでまだ確定とは言えないと思います。
既に有権者の多くが投票先を決めているようですし。
そして、民主党やリベラル層は反トランプで団結していて根強いから今回も接戦になるでしょう。
ハリスは嫌だがバンスも含めて親ロシアで議会襲撃を扇動したトランプやその陣営も同じくらい嫌。
ヘイリーさんが代表だったら良かったのに。
投稿: 中華三振 | 2024年7月24日 (水) 10時13分
謎の討論会前倒しから全て民主党内部でオペレートされていた案件だと思う。「カマラは嫌だ。だが共和党はもっと嫌だ」という事で結局纏まるのではないですかね?我が国の左翼が反自民の一点で纏まれると同じで。
ちょっとやそっとの差は「カマラジャンプ」でまたしても挽回するだろうし、もう思っているほど接戦化していないかもしれない。
投稿: 守口 | 2024年7月24日 (水) 11時04分
カマラ氏が副大統領に実務力がある中道派を指名して第一次トランプ政権のような組閣を示唆させたらトランプ氏に勝てる可能性は無くはありませんが…
それが出来る器量があればもう少し実績あげられてますよねぇ…とは思いますw
投稿: しゅりんちゅ | 2024年7月24日 (水) 12時14分
カマラ・ハリスの支持率は今が天井でしょうね。あるいは副大統領にオバマ夫人でもつけりゃ、その時は別ですが。
この人は敵もスキャンダルも多すぎる。バイデンとハリスは互いに軽蔑し合っていて、バイデンから移民問題担当を押し付けられたのが不服で、ほぼボイコットしていたようなもの。
トランプ陣営も作戦を練り直さなければいけなくなりましたが、カマラが相手なら責め手は無限にありそうです。
それにしても予備選を経ずに、かつ老耄だから外されるはずのバイデンが執務を続けたままとは、民主党がいかにいい加減でアンフェアで反規律的であるか、米国民はちゃんと見た方がいいと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年7月24日 (水) 21時41分