素晴らしき「エコ五輪」
パリ五輪は絶賛悪評の中、後半を迎えています。
こんなにもフランス人に大会運営の運営能力欠如しているとは思わなかった、という人も多いんじゃないでしょうか。
ドラッグクイーンとLGBTQに「最後の晩餐」のパロディーをやらせて、フランスカソリック教会から批判を受け、謝罪に追い込まれた組織委員会はこう述べています。
「記者会見で報道担当者は「宗教団体に対する軽蔑を示す意図はなかった」「誰かを不快にさせたとしたら、すまなく思う」と述べた。そのうえで、式典の演出について「寛容な共同体を称えようとした。世論調査でも示されているように、その目的は達成されたと思う」と述べた」
(産経7月29日)
五輪開会式「最後の晩餐」連想の演出、教会批判で組織委謝罪 仏世論85%は「式典成功」 - 産経ニュース (sankei.com) 。
なにをおっしゃる兎さん、ああいう見せ物は「誰かを不快にする」ためにやったんでしょうが、意図的に。
太ったオープンレスビアンをキリストに見立て、局部を露出した使徒に囲ませ、全裸に近い紫色の怪人(バッカスだって?)に歌を歌わせたのが好意的に言って風刺、はっきり言って宗教冒涜になることを百も承知、二百も合点で登場させたんじゃありませんか。
かつてシャルリ・エブドという風刺雑誌がイスラム教原理主義者に襲撃された時、当時も大統領だったマクロンは平然とこう言ってのけました。
スゴイね、この信念でパリ五輪開会式やったんだろうね。
「フランスのマクロン大統領は1日、2日付の風刺週刊紙シャルリー・エブドが、かつてイスラム教徒の反発を招き2015年の同紙本社襲撃テロのきっかけとなったイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を再掲載したことをめぐり「フランスには冒涜する自由がある」と表明した。
訪問先のレバノン・ベイルートで記者会見したマクロン氏は「報道の自由があり、大統領は編集の決定に判断を下さない」とした上で、会員制交流サイト(SNS)を例に挙げ「表現の自由には憎悪を唱えないようにする義務もあるが、風刺は憎悪ではない」と述べた」
(産経2020年9月2日)
「フランスには冒涜する自由がある」マクロン大統領、ムハンマド風刺画再掲載で - 産経ニュース (sankei.com)
このマクロンの考え方こそ典型的なラシイテです。
この開会式以外にも、食事を選べない選手村のアスリート向けの食事が野菜と豆だけの肉なしビーガン食だったりして、選手たちの怒りを買ったようです。
クーリエ
「選手村の大食堂内やその周辺で提供されているものとしては、アーティチョークとトリュフのツイストクロワッサン、レンズ豆のカレー、牛肉抜きのブルゴーニュ風煮込みなどがある。だが、もっと肉を欲しがる選手もいるのだ 」
(クーリエ7月20日)
パリ五輪の選手村で「環境に優しい」食事に選手らからクレーム | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)
温室効果ガスの削減のために地場野菜だけに限定したために、たとえばホットドックのソーセージは、ジャガイモとそら豆で作っているものが使われているのだとか。(喰いたくない)
赤ワインの牛肉煮込みも肉なしで全部野菜で出来た精進フランス料理だとか。
かくて日替わり料理の3分の1はビーガン食だそうです。
有閑マダムやファッションモデル相手にしているのか、つうの。
2024パリ五輪:観客も味わえる!地元食材と植物性食品で彩る選手村食事を公開! (ann-design-poi.com)
「カーボンフットプリントを最低限に抑える」のはけっこうですが、相手は戦いの真っ最中のアスリート戦士です。
地球上でもっともタンパク質を必要とする人種です。
動物性タンパクは、筋肉量の維持や増加に重要で、アスリートのパフォーマンス向上やリカバリーに必須です。
スポーツにおける植物性タンパク質の可能性 動物性タンパク質との違いは? ナラティブレビュー | スポーツ栄養Web【一般社団法人日本スポーツ栄養協会(SNDJ)公式情報サイト】 (sndj-web.jp)
五輪運営はアスリートファーストが揺るがない絶対原則。自分の脱炭素イデオロギーを押しつけなさんな。
また選手村の部屋は空調がありません。この真夏に30度越えをしているのによーやるよと思いますが、理由はこうです。これも理由はエコです。
「主催者が100%再生可能エネルギーで運営するとうたう大会と同様に、選手村のためのあらゆるものは持続可能性を考慮して建設された。 (略)グレノン氏によると、建設された建物には木材とリサイクル素材が使用され、大会プロジェクトの温室効果ガスの排出量(カーボンフットプリント)を1平方メートルあたり30%削減する工程が採用された。これはフランスの環境規制で求められている削減量を上回る」
(CNN6月29日)
エアコンなし? でも史上最高にエコな五輪、パリ選手村を見学 - CNN.co.jp
あげく選手たちは争ってオプションの移動式クーラーを買い求めたそうです。
フランス選手の部屋だけはあらかじめ空調つきだったというオチがありますが、ホントかしらね。
このパリ五輪は、なにもかも頭デッカチの脳内産物です。
気の毒なのは、観念過多のイデオローギーの使徒らの祝宴の犠牲になった気の毒な存在がアスリートたちでした。
アスリートたちは、理想という実験の祭壇に捧げられた供物ではないのです。
4年に一回の大会に照準を合わせて厳しいトレーニングに励み、体調を調整し、コンセントレーションを最高値に高めあげているアスリートです。
それが「エコ五輪」の実験動物にされてはあまりに気の毒です。
物事はバランスです。
脱炭素が理想かどうかは別にして、理想と現実の均衡がなければ、五輪というアスリートの大会は観念の博覧会となってしまいます。
かといって理想を持たない者だけが仕切る五輪は、現実的対応に追い回されるだけであり進歩がなく退屈です。
ただし理想を達成するためには、慎重すぎるほど慎重であることです。
人間という生き物は、理想という二字に根源的な喜びを感じるようにできている存在だからです。
根源的喜びであるが故に、これを押しつけようとすると蹴躓きます。
今回の「エコ五輪」は、この理想と現実のバランスを著しく欠いていました。
もっと何回も、いや何十回も国内大会で試行錯誤してから、初めて五輪という大舞台にかけるべきでした。
『フランス革命の省察』のエドモンド・バークがいみじくも言うように、「自分だけが正しい社会の変革の方法論を知っている」という迷妄への甘い陶酔が、アスリート第1で運営されるべき五輪をLGBQとエコスノッブの博覧会に変えたのです。
女子ボクシング問題については長くなりましたので、明日にしました。
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選手村がメシマズって、美食の都も酷いホスピタリティしやがりますね。
世界有数の暑いインドでさえ選手が暑すぎるというので、昨日ようやく有志からエアコンが届いたとか。
アスリート相手に「肉が無い」とは。。
ビーガンの押し付けは断固お断りでしょうに。そりゃあ「肉食わせろ!」となりますわな。
近年のオリンピックではスポンサーで選手村定番のマクドナルドはどうなってるんでしょうね?
東京だったら夜に「ちょっとコンビニ行ってくる」で済む話かもしれませんけど。フランスではそんな文化は無いですからね。
投稿: 山形 | 2024年8月 5日 (月) 06時00分
個人的にはどんな反発を喰らおうがやりたいのであればやればいいし、それに対して「俺がやりたいからやったんだ!だからどうした」くらいの態度で受け止める度量を見せてこそ表現者として全うするものだと思っているのですが。
散々やらかしておいて「あれはちがうんですよぉ〜勘違いしたお前が悪い」とか「批判に傷ついたので訴えます」等々の「俺は悪くない」スタンスを見せられる方がよっぽどお見苦しいですね。
批判されるのが嫌ならアングラカルチャーなんかに身を置くなよと言いたい、本当にカッコ悪い。
投稿: しゅりんちゅ | 2024年8月 5日 (月) 11時16分