植田ショック襲来
ああ、とうとうやっちまった、これが植田日銀が利上げをしたときの私の感想です。
こんな感慨に襲われたのは私だけではなかったはずです。
いや、円安諸悪の根源と叫んでいたメディアは、ご希望どおり、株安円高となったので赤飯を炊いたのではないでしょうか。
「日銀は31日の金融政策決定会合で、賃金と物価がそろって上がる好循環の実現が確認できたとして、政策金利である短期金利を0~0・1%から0・25%程度に引き上げることを決めた。マイナス金利政策解除後も月6兆円程度で続けてきた国債買い入れは、令和8年1~3月期に3兆円程度まで購入額を減らす具体的な金融引き締め策も同時に決めた。
政策金利の引き上げは今年3月のマイナス金利解除に続く措置。0・25%の政策金利はリーマン・ショック直後の平成20年12月の0・3%前後以来、約15年7カ月ぶりの水準となる」
(産経7月31日)
日銀、追加利上げを決定 政策金利は0・25%程度に 国債買い入れ減額も - 産経ニュース (sankei.com)
すぐに記事にしようかとも思いましたが、「植田ショック」とまで言われた大暴落の後、どのていどの反発がくるのかを見てからということで今日となった次第です。
【解説】株価「反発」…過去最大の上げ幅記録 乱高下…生活や賃上げムードに影響は?|日テレNEWS NNN (ntv.co.jp)
東京市場は5日に4451円28銭のナイアガラ暴落をした後、翌日6日には2600円上げて、終値は前日比3217円04銭高の3万4675円46銭でした。
「6日午前の東京株式市場で、日経平均株価は反発して取引が始まった。始値は前日終値比618円91銭高の3万2077円33銭だった。上げ幅は一時、2600円を超え、3万4000円台を回復する場面もあった。
一方、5日の日経平均は大幅続落し、前週末終値比の下げ幅は4451円28銭となり、1987年の米国株式相場の大暴落「ブラックマンデー」翌日に記録した3836円を超え、史上最大だった」
(産経8月6日)
東証、反発して始まる 上げ幅は一時2600円超 3万4000円台に回復も - 産経ニュース (sankei.com)
実はこの「植田ショック」の少し前の7月11日の日経平均は、史上最高値である42224円をつけていました。
それが一気に8月2日には35909円ですから、半月余りの間に15%の暴落となったわけです。
背景として3つの要因が指摘されています。
ひとつめは、世界経済の牽引役である米国経済の雇用統計が悪化し、いよいよ景気減速が始まり、米経済ハードランディングが取り沙汰されたことです。
「7月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月から11.4万人の増加と、事前予想の17.5万人の増加を下回った。また6月雇用者増加数は前月比20.6万人増から19.9慢人増へと下方修正された。
失業率は4.3%と前月から0.2%ポイント上昇した。4か月連続の上昇だ。さらに、時間当たり賃金は前月比+0.2%と前月の同+0.3%及び事前予想の同+0.3%を下回った。前年同月比では+3.6%と前月の+3.8%を下回り、3年ぶりの低水準となった。
このように今回の雇用統計は、雇用者増加数、失業率、賃金の3つの側面で労働需給の緩和、景気減速を示唆するものであった」
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
ふたつめは、米経済はバイデンが立候補辞退したことにより、「仮トラ」を想定した米株式市場のシフトチェンジが始まったことです。
ハイテク株市場であるNASDAQ(ナスダック)が10%下落し、トランプが公言しているエネルギー株に資金が集まり、米国市場は不安定化していました。
このような中でヘッジファンドは、円キャリートレードの巻き戻しをすることを迫られました。
円キャリートレードとは、相対的に金利が低い円建てで資金を借り入れ、その資金を金利が高い外貨に転換して運用する取引のことです。
いままでは金利が低い日本円を買って資金を調達し、外貨に転用していましたが、この形が崩れて、ヘッジファンドは大慌てドルを売り、円を買いました。
これが今回の株価の暴落と円高のもっとも大きな原因です。
だいぶこの衝撃波は小さくなってきてはいますが、まだキャリートレードは6割が済んだくらいだろうと金融筋は見ているようです。
「円は依然として最も過小評価されている通貨の一つであるため、最近のキャリートレード巻き戻しはまだ続く余地があると、JPモルガン・チェースが指摘した。
グローバル為替戦略共同責任者のアリンダム・サンディリア氏はブルームバーグテレビジョンの番組で「全く終わっていない」と語った。「キャリートレードの巻き戻しは、少なくとも投機的投資家コミュニティーの中では、50-60%が完了した段階」だとの見方を示した」
(ブルームバーク8月6日)
キャリートレード巻き戻しはまだ半ば、せいぜい60%-JPモルガン - Bloomberg
かくしていままで堅調だった金融・為替市場は一気に株安・円高に転じました。
「米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、ヘッジファンドなどレバレッジを活用する投資家は23日までの2週間で、円のネットショートを5万6639枚減らした。2011年前半以来の大きな減少だ。
まだショートは残っているものの、今年2月以降で最も弱気でないポジションだ。金利が最終的に円に有利に傾くという期待から、センチメントが大きく変化した。円の上昇はまた、キャリートレードの大規模な巻き戻しとも重なった」
(ブルームバーク7月29日)
ヘッジファンドの円ショート急減、キャリー取引巻き戻しと重なる - Bloomberg
「植田不況」の始まりか? 繰り返される日銀の失敗…植田総裁の「仰天発言」の中身とは(FRIDAY) - Yahoo!ニュース
そして第3に、わが国の日銀中枢に禍神がいたことです。
暑さで脳ミソが焼けてしまったためか、このような米経済が景気後退局面に入った時を狙いすましたように、植田日銀が利上げをしてしまいました。唖然とするような大失敗です。
たしかに世界的株の暴落でしたが、日本だけ突出して下げています。
下左図の赤線が日本ですが、下げ幅が世界一です。
「円安悪玉論」が株価を殺す | 武者リサーチ (musha.co.jp)
どうしてこのようなことに我が国だけ見舞われているのかについてはいったんアップしたのですが、ながいので、明日に切り離しました。
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私はカタギだった期間が十分に長くない(っても反社なんかじゃない)んで、多くない年金を補完すべく、資金を株式にも入れているためにヒドイ目に合いましたわ。自国の中央銀行に、それも岸田首相の「新しい資本主義」下で新NISAによる貯蓄から投資への呼びかけの中、なんでカタギの私がこんな酷い往復ビンタを受けているのか、もうワケわかりませんわ。
自由資本主義は"自己責任"なんで、岸田首相を信じた私が一番悪いんですけど、許せないのは深夜の"官製リーク"ですわ。植田総裁の「利上げすんぞ、必要ならガンガン行くよ」発表直前の深夜に、すでに日経など報道機関には「今まで利上げしないしない言ってたけど、今度はね、ホントに上げんだよ」とリークされていたようなんですわ。それと共に、深夜にかなり円高がすすみました。朝起きて為替にビックリした人も多いと思いますわ。そして何故か、この日の株価は上がります、株シロートの私には???です。
実際、今までも「観測気球だぁ」なんてノリでリークは常態化していたんですが、こんな重大な決定事項までモレモレで、それも直前まで"利上げ"のそぶりを見せなかったのは、まるでマーケット参加者を驚かせることが目的だったかのようですわ。ガイジン投資家・投機家にとって、リークの後での"利上げ"発表では、まだ先手を打てるのかもう後手に回るしかないのか、大混乱だったと思います。
財務省・日銀には本当のところ、「円キャリしてフリーハンドで大儲けしているガイジン投機家どもを、イタイ目に合わせてやる」というエリート官僚にありがちな尊大さがあったのだと思います。しかし今回は効きすぎたようで、海外の大口投機家までいっぺんにロスカットに追い込まれるハメになって、売りが売りを呼び、大暴落になってしまい、健全なマーケットまで破壊してしまいました。海外からの"官製リーク"批判も出てくると思いますわ。
米国FOMCなんて、決定事項発表前(たしか二週間)には関係者の発言は禁止されます。日本だと"官製リーク"やり放題、岸田首相の「新しい資本主義」なんて、こんなものか?今回も、インサイダー取引の調査なんてしないでしょう。もう日本株なんて、こりごりですわ。
投稿: アホンダラ1号 | 2024年8月 8日 (木) 23時29分
悪い円安、いつまで金融緩和を続けるんだ、早く利上げしろなどとマスコミに叩かれてましたので、動いたんでしょうね。
本当に悪い円安だったのか?です。
政府は国民に投資しましょうなんて宣伝してましたが、これは無いぜー。
株価暴落をみて、今度は利上げしたのが悪い、日銀は何してくれてんだという論調にチェンジしちゃうマスコミ。
利上げなんかしなくてもトランプ大統領が誕生したら円高株安になったような気がします。
輸出国日本、円安で輸入品が高くなれば国産品を使う、海外から国内に工場を戻す、輸出企業は賃上げや株主配当増額、訪日客増、良いことが多いと思います。
無知な私が驚いたのは、外貨準備金の多さ。
日本だけは他の先進国より1兆ドル以上多くの準備金を待ってます。たぶん異常値ですよ。
円安の今、その分を売って為替差益を国民に還元してくれれば物価高騰の助けになるんだが…。
財務省の天下りの材料なので、もっともらしい理由をつけて使わせない外貨準備金らしいです。
投稿: 多摩っこ | 2024年8月 9日 (金) 00時01分
アホンダラ1号さんの気持ちは良く分かります。
オレも安全サイドに振った投資信託の一部を新NISAに切り替えた口です。
多摩っこさんが言う日本のドルの外貨準備高は昔から突出しています。反米の連中(右翼も左翼も)が「いざとなったら全部売り払ってしまえ!アメリカはデフォルトするぞ!」なんてことを30年前から言ってます。
まあそのへんはアメリカからの圧力でドルを持たされているという感じでしょう。実際にアジア通貨危機の時には日本はドルをたくさん持ってるから無風で済んだわけだし。悪いことばかりではありません。
日銀は米ドルというか米国債も大量保有してますけど、2番目は今や中国。
アメリカは日本には何も言いませんが、中国には露骨に警戒感を表してますね。
投稿: 山形 | 2024年8月 9日 (金) 06時56分