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2024年9月17日 (火)

石破氏の空理空論

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安全保障・外交、そしてエネルギー問題は国の根幹ですから、徹底したリアリズムで語らねばなりません。
夫婦別姓やライドシェアとは次元が違うのです。
したがって、まともな候補なのかどうかのいいリトマス試験紙になります。

その候補が国民の安全と真剣に向き合っているか、ただのカッコつけなのかわかってしまうからです。

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朝日新聞デジタル (asahi.com)

たとえば、安全保障のプロを自認する石破元防衛大臣は、安保関連の著作までお持ちなくせに、こんなことを言っていました。

「石破氏は安全保障分野で持論を展開し、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設や、米軍が日本で活動する際のルールを定めた日米地位協定の改定を目指す考えを示した」
朝日9月10日)
石破氏、安保で持論展開 アジア版NATO、日米地位協定改定検討 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

正直言って、石破氏が「アジア版NATO」と吹き上げた時には、ほぉと思いました。
たしかにそんなもんがあったら、日本はアジアのウクライナにならずに済むからです。
そのことは石破氏も重々承知で、ウクライナを引き合いに出しています。

「石破氏は会見の冒頭、今回出馬を決めた理由として、安全保障環境の変化を挙げた。ロシアによるウクライナ侵攻について「ウクライナはNATOに入っていない。それが(ロシアの)プーチン大統領の決断を促したことは想像に難くない」と説明し、「アジア版NATO」など、アジアにおける集団安全保障体制を構築する必要性を強調した」
(朝日前掲)

ただし、ここで石破氏があえて口にしないのは、日本には「アジア版NATO」という集団安全保障体制はなくとも、日米同盟という集団的自衛権が存在するということです。
石破さんって顔に似合わずファンタジーの人なのですね。

いいですか、なぜASEANがEUのような政治経済共同体に発展せず、NATOのような集団安全保障体制にならないのでしょうか。
理由は簡単。国の経済の発展もバラバラ、民主主義の成熟度もバラバラ、宗教もバラバラ、全部バラバラだからです。

かつて日本で議論された集団的自衛権(right to collective defense )と、NATOのような集団的安全保障体制(collective security)は違う概念です。 
どちらも同じ「集団的」(collective )という名がかぶっていますが、「自衛権」のほうは権利で、「体制」のほうはそれを維持していくシステムのことです。 

NATOの肝は第5条にあります。 

●NATO条約第5条
NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する。

「NATO締結国に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なす」、スゴイこと言っているのに気がつきましたか。
たとえばフランスは、フィンランドが侵略を受けたら自国に対する武力攻撃とみなし共に戦うということです。
ですから、 この第5条は、別名「自動介入条項」と呼ばれています。
安保法制の時に、日本のサヨクの皆さんは、なにを勘違いしたのか個別的自衛権こそが平和の証拠と叫んでいましたが、国際的には個別的自衛権だけで語るほうが危ない考えかたなのです。
だって、周辺国と図らずに一国の独断で戦争が出来てしまいますから。

それに対してNATO第5条は、個別的自衛権をあらかじめ捨てて、交戦権を「集団」に預けているのです。
つまり安全保障を個別国家の枠内から「集団」、この場合はNATOに委譲してしまったのです。

さて、これが今のアジアに可能でしょうか。
まったくムリです。
東南アジアだけに限っても、タイがカンボジアのために派兵できますか、インドネシアがベトナムのために戦いますか、まずできないでしょう。
東アジアに至っては、韓国が日本を守るはずがありませんし、日本が北から侵攻されたからといって救援に駆けつけたなら、逆に南北打ち揃って護国反日戦争をされてしまいます。

今、フィリピンがサビナ礁を侵略されようとしていましたが、補給が続かずに撤収しました。
フィリピンの窮状に手を差し伸べているのは、日米くらいなものです。

どの東南アジア諸国も見て見ぬふり、これが現実のASEANです。

アジア太平洋地域で唯一集団安全保障体制の萌芽なのはFOIP(自由で開かれたアジア・太平洋)くらいなもので、それすらアジア・太平洋版NATOからはほど遠い段階です。
これは脅威の対象がはっきりと見えているからで、それはいうまでもなく中国と北朝鮮、そしてロシアです。
今のASEAN諸国に中国を視野に入れた安全保障体制に入れといっても、すべての国が尻込みするでしょうし、域内にはカンボジア、ラオス、ミャンマーのような中国経済圏に組み込まれ、軍事支援さえ受けている国も多いのです。
つまりはっきり言って現時点でアジア版NATOなど机上の空論にすぎません。

そもそもうちの国の集団的自衛権の一部容認では、集団安保体制に加入するのは無理なことくらい、石破さんはご存じでしょう。
かつて安保法制の時に、安倍氏からなんどとなく防衛大臣を頼むといわれて、逃げ続けてきたので忘れましたかね。
「アジア版NATO」をブチ上げたなら、そのへんの法制整備も折り込み済みなのでしょう、きっと、たぶん、ゼッタイ。
でなければ、ただの選挙選のためのリップサービスです。

また日米地位協定にも石破氏は言及して改定を唱えています。
石破氏が言うのは日米地位協定改定と米国内に自衛隊基地をつくるというプランです。

日米同盟を対等に近づけるために日米地位協定の改定検討も表明。1960年の日米安全保障条約の改定と同時に結ばれたまま変わっておらず、「不平等」との指摘がある。石破氏は、米国内に自衛隊の訓練用基地を設ける案を披露し、その際に結ぶ協定と同水準であるべきだと主張。「地位協定の改定を目指すからには、それが同盟関係の強化につながり、地域の安全保障環境を向上させるものでないとダメだ」と語った」
(朝日前掲)

地位協定上の問題は第1次裁判権が日本にないということです。

日米地位協定第17条5(c)
 日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。

NATO諸国も似たようなものを持っていると外務省は言い訳していますがそんなことは理由になりません。
私が言うことは大変に簡単なことです。米兵を通常の内国人や外国人が犯罪を犯した場合と同様に逮捕し、取り調べ、起訴し、裁判にかける司法権をわが国が持てと言っているだけです。

ところが、石破氏はこれを米国内にも自衛隊基地を作ることで双務的な協定にするという言い方をしています。
米国は自国領内に外国軍隊に基地を提供したことはありません。
それを押して基地を作らせろということは、日本は世界戦略のすべてに関わる、南米、ヨーロッパまで含めて責任を持ってそれをやり切るということなのでしょうか。
これまた空理空論です。そんなことはまるっきり不可能で、むしろ米国はそんなことを日本が言い出したらドン引きすることでしょう。

FOIPが現実の集団安保体制として機能する前段まできている時期に、いやアジア版NATOだと言い出すのですからタチが悪い。
こんな無意味な風呂敷を拡げておきながら、既に実体化している日本発の世界戦略のFOIPについてはなにも言わないのですからなんともかとも。

この人の悪癖は、改憲論議もそうでしたが、むやみとハードルを高くして、な、できないだろう諦めろ的なグズグズに持ち込むことです。
たとえば、自民党内で改憲議論が煮詰まってくれば、突如9条2項の削除という超原則論を言い出します。
安倍氏が改憲ならぬ加憲で集約し現実に近づこうとしている時になって、こういう水を差すことを言う、これがゲル氏の流儀です。
今回も一緒で、作法が悪すぎます。

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コメント

 ゲルは著書「異論正論」の中でアジア版NATOについて、「最終的に中国も加盟させる」と書いています。どんなけお花畑なんだ、と言いたいですが、出来もしない事を言い、いたずらに攪拌して日米関係を壊すのが目的かよ!と疑いたくもなります。
なお、ポンぺオさんも国務長官時代、アジア版NATOを提唱した事がありました。あの時はクアッドをさらに拡大し、全アジア的に中国包囲網を敷くべき、との理由からでした。ゲルのアジア版NATOと目的自体が180度違います。ベテランだか何だか知らないが、この人は本当に要注意です。

石破氏、沖縄での候補者演説会で地位協定を見直しするとおっしゃられてましたが、これをするには警察や検察のシステム(取り調べの可視化等)からガッツリ変えていく必要があるのですがそれわかったうえで口にしてるんでしょうか?

つっこんだらお得意の「それができるかどうか皆さんと議論していきましょう」とはぐらかすのでしょうけど。

最後は色々と議論が必要ですと締めて、ご自身の具体的な策や案はナイチンゲールです

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