高市氏はリズ・トラスにならない
立憲の新代表に野田氏がなったようです。
ま、それ自体はどうでもいいですが、野田氏の首相在任時の事跡は、尖閣国有化という拙劣な外交政策と消費増税三党合意です。
当時野党に転落していた自民は谷垣氏が総裁をしていましたが、増税などで妙に波長が合ってしまったようです。
仮に今回も増税路線の石破氏などが総裁になってしまうと妙に親和して、第2の三党合意をしてしまうかもしれません。
さて、高市氏が総理総裁になったらエライことになるぞ、という噂が流れています。
一部の保守を自称する評論家も拡散に努めているようです。
なんでもインフレ容認で強インフレになり、英国のリズ・トラス女性首相のようになるぞ、外交路線でもサナエは対中強硬路線を突っ走って公明離反・連立崩壊、そしてとどのつまり短期政権、自民下野だそうです。
公明との太いパイプを持っている菅氏が推すのは小泉ジュニアだけだ、それぇジュニアに入れろ、というわけです。ちゃんちゃん。
あのね、期待にお応えできないですまんこってすが、たぶんそうならないから。
そもそも短期で辞任したトラスの英国経済と日本経済では根本的に条件が違いますから安易な比較はやめるようにお願いします。
たぶん高市氏のこういう発言が、財務省フレンドにはカチンっときたのでしょうね。
「[東京 14日 ロイター] - 高市早苗経済安全保障担当相は14日、日本記者クラブ主催の自民総裁候補討論会で、「金融緩和は我慢して続けるべき、低金利を続けるべき」と主張し、日銀による追加利上げをけん制した。
足元の物価上昇はエネルギーや食料価格によるコストプッシュ型であり、「生産性、給料、購買力も上がる好循環を作りたい」と語った。
加藤勝信元官房長官も金融政策の正常化について「金利は動くものだが、足元の経済を見て慎重にやりたい」と述べた。
財政問題については、高市氏が「資産と債務を合わせてネットで見るとG7(主要7カ国)の中で2番目の健全性」との持論を展開する一方、河野太郎デジタル担当相は「遅かれ早かれ金利が徐々に上がっていく中で、利払いが増えていく」とした上で、財政収支の議論をすべきと訴えた」
(ロイター9月14日)
高市氏「低金利続けるべき」、追加利上げをけん制=自民総裁選討論会 | ロイター (reuters.com)
財務省がメディアに流させている財務状況は悲惨の一語に尽きます。
もう財務赤字は「史上最悪」で、明日はない、日本は破綻国家なのだ、ということのようです。
「国債や借入金などをあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、ことし3月末の時点で1297兆円余りと過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっています。
財務省によりますと、国債と借入金、それに政府短期証券をあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”はことし3月末の時点で1297兆1615億円と8年連続で過去最大を更新しました。
去年3月末と比べた1年間の増加額は26兆6625億円となり、財政状況は一段と厳しくなっています」
(NHK2024年5月10日)
“国の借金” 1297兆円余 8年連続で過去最大を更新 財政厳しく | NHK | 財務省
こういう財務ハルマゲドン論はかならずこの「国の借金」なるものを国民の数で割って「国民一人当たり1000万の借金」なんていうトンデモの方角に誘導される仕組みになっていました。
「財務省は9日、国債や一時的な資金を調達するための借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」が、6月末時点で1311兆421億円になったと発表した。3月末に比べ13兆8805億円増え、初めて1300兆円を突破した。
国民1人あたりで単純計算すると約1085万円の借金を背負っていることになる」
(読売2024年8月9日)
国の借金1311兆421億円、国民1人あたり1085万円…初めて1300兆円を突破 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
財務省がレクチャーする時に必ず使うのがこの財務省提供の「GDPに対する国の借金比率 」の図表です。
これをみると確かに特出して日本が239%で財務赤字になっているように見えます。まるで破綻国家一歩手前みたいです。
では素朴な疑問ですが、なぜ有事には日本円や日本国債が買われるのでしょか。
おかしいではありませんか、そんな危ない破綻国家の通貨や債権を買ったらいつ紙切れになるかわからないものを。
しかしそれは国際トレーダーたちと、有事となると必ず円を買います。
それは日本の財務状況が安定していて、債権も全部円建てだからです。
国民が勝手に通貨を刷ったら偽札づくりですから、手が後ろに回ります。
国家と民間企業や個人と異なり、国家には「通貨発行権」と「国債発行権」があります。
ここが国と個人の決定的な違いです。
しかも日本の場合、1000兆円を超えるといわれる国債は、すべて円建て国債です。
しかも買っているのは、多くが国内基幹投資家で、現在は資金がダブついており、彼らが国債を売って資金調達する必然はありません。
国内投資家が国債を引き受けてくれないこと、海外投資家も国債を引き受けてくないこと、かつ中央銀行すら国債を引き受けてくれないことの三つの条件が揃わねばなりません。
ところが、このひとつとして合致する兆候はありません。
だから、日本国債は10年もので0.860%という世界一の超低金利で国債発行できたのです。
現在募集中の個人向け国債・新窓販国債 : 財務省 (mof.go.jp)
このように財務省のもうひとつのトリックは、バランスシート(損益対照表)の「負債の部」しか見せないことです。
一般的に法人の財務はバランスシートで見ますが、財務省はバランスシート上の右側の数字の負債しか見せません。
バランスシートとは貸借対照表のことで、貸借対照表の右側には、企業がどのように資金を調達しているのか、左側には調達した資金をどのように事業に活かしているのかがわかるようになっていて、貸借対照表の右側と左側の合計は、必ず一致します。
このことから、貸借対照表は「バランスシート(B/S)」とも呼ばれています。
これの右側の負債の部だけを国民に見せているのが、財務省です。
東大法学部卒しか入れない財務省官僚の皆さんはバランスシートをご存じないらしい。
(※ということはなくて、今は海外の大学なとで学んでいる人も多いようです)
貸借対照表(バランスシート)とは?損益計算書との違いや読み方|OBC360°|【勘定奉行のOBC】
負債があれば資産もあるのは当然で、バランスシートの左側に目を移すと次のようになります。
スウェーデン王立工科大学経済学准教授のステファン・フォルスターはこう述べています。
「公的資産がその国のGDPのなかで占める割合を分析すると、日本は信頼できる統計のある国々の中で、世界第2位に位置している。その額は、問題視されている公的債務を上回り、GDPの2倍以上となっている。GDPの2倍以上の公的資産を持つ国は、日本のほかにノルウェー、ラトビア、チェコの3カ国しかない(IMFの2013年データより筆者ら推計)」
日本は世界第2位の「政府の隠れ資産」大国だ 活用次第で「債務削減+経済成長」が可能に | 国内経済 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
GDPに対する国の資産比率を見ると日本が221%、フランス100%、米国99%、カナダ99%、ドイツ79%、イタリア79%、英国47%である。そして負債と資産の両方を考慮した「純負債」でみると日本のGDPに対する純負債比率は18%に過ぎません。
最悪はイタリアの78%で平均値は22%ですから、日本の純負債はG7平均よりも低いことがわかります。
だから有事の円買いという財務ハルマゲドン信者には信じがたい現象が起きてしまうわけです。
そして財務省がこんなバルマゲドン説を流布する理由は、財政支出を増やしたくないからです。
だから「英国のトラスのようになるぞ」と腰巾着の連中に言わしているわけです。
これも果たしてそうでしょうか。ここでも国家と一般家庭の会計を混同したように、英国と日本の経済状況を安易に比較してしまっています。
確かに、英国ではトラス新政権が誕生するや大規模な財政出動方針を打ち出したことをきっかけにして、金利上昇・国債価格下落・通貨安、株安のトリプル安という英国売りが進行しました。
その責任をとってトラスは自認に追い込まれています。
ほーら見ろ、高市も第2のトラスになるぞというのが財務省フレンドの見方です。
うんにゃ、そうはならないでしょう。
ここでも日本経済と英国経済を安易に横並びにして比較するという作為的ミスをしています。
英国のインフレ状況と日本の状況には天と地の差があることを伏せて比較しているのです。
英国のトラスが44日間で失脚したのは、英国が強インフレにかかっているにもかかわらず大型減税をしたからだと言われています。
44日で辞任「英国・トラス首相」が起こした大混乱 次期首相候補に挙がっている意外な人物 | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
第一生命経済研究所経済調査部の長濱利廣氏はこう述べています。
「主要先進国のCPIインフレ率を比較すると、欧米ではインフレ率が既に+8~+10%台に到達している。このため、現在の欧米のように、需給ひっ迫によりインフレ率が目標の+2%を大きく超えてしまっている国は、財政出動が限界にきているといえよう。
しかし、日本の場合はインフレ率がそこまで上がっていない。コストプッシュ型のインフレにより一時的にインフレ目標+2%を超えているが、輸入物価の上昇に伴うインフレであるため持続性は低いといえよう。
このように、英米と日本のインフレ率に格差が生じる一因として、英米では需要超過の経済になっているのに対し、日本は依然として需要不足の経済状況になっていることがある。 このため、財政の予算制約を考える上では、表面上のインフレ率に加えて、GDPギャップの動向も重要になってくる」
(長濱利廣 『英国と大きく異なる日本の財政状況』)
英国と大きく異なる日本の財政状況 ~英国の財政リスクはG7ワースト2に対して日本はベスト2~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)
では、世界経済のインフレ状況を見てみましょう。日本のインフレがいかにたいしたことはないかお分かりいただけるでしょう。
ドジャードックとポテトで3千円近い米国と、30年間のデフレから脱却しつつあるわが国を較べてはならないのです。
そしてGDPギャップはこのような状況です。
GDPギャップとは別名需給ギャップのことで、国の経済全体の総需要と供給力の乖離を指します。
プラスの場合(総供給より総需要が多い場合)は、インフレギャップと呼び、好況や景気が過熱しており、物価が上昇する要因となります。
逆にマイナスの場合(総需要より総供給が多い場合)は、デフレギャップと呼び、景気の停滞や不況となっており、物価が下落する要因となります。
このGDPギャップでは、米英は需要過多、日本は大幅な需要不足でした。
「国際比較可能なIMFのGDPギャップで比較すると、米国では2021年時点、英国でも2022年時点で需要超過になっており、需要超過によりインフレ率が加速している一方、日本では2022年時点でも大幅な需要不足が続いている」
(長濱前掲)
したがって、米英ではこれ以上の財務出動による供給プッシュは不要であるのに対して、日本はまだまだ財政拡大していかねばならないのです。
「そして、足元で内閣府が公表するGDPギャップは▲3%程度であり、金額にすると約▲15兆円となる。このため、内閣府のGDPギャップをプラスにもっていくには、+15兆円規模の需要拡大が必要になる。しかし、インフレ率を+2%程度に安定させるには、そこからさらに金額にして+15兆円程度の需要超過が必要となるため、合計で+30兆円の需要拡大余地があることになる」
(長濱前掲)
このように見てくると、高市氏の言う「資産と債務を合わせてネットで見るとG7(主要7カ国)の中で2番目の健全性」という説はまったく正解であるのがわかるでしょう。
というわけで、高市氏はリズ、トラスにはなりようがありません。
« 中国、日本産海産物輸入再開? | トップページ | ロシア軍用機領空侵犯 »
この国をZの呪縛から、早く解き放って欲しいものです。
投稿: 一宮崎人 | 2024年9月25日 (水) 12時22分
財務省によると今年の3月末時点の国債が1085兆円
このうち日銀53.2%、銀行と証券11.7%、生保と損保18.3%、公的年金5%、年金基金2.9%、海外6.5%、家計1.3%…
家計というのは個人投資家のようです。
国と関連団体を合わせたバランスシートでみると、日銀の国債持分を相殺しただけで国債による借金は半分以下になります。
日銀に払った国債の金利、全てではありませんが最終的には国庫へ入りますしね。
こういうのを財務省は国民に黙っていて、借金が膨らみ大変だ、増税しなければ国は破綻すると騙してるんだそうです。
野党や左側もこれに踊らされる。
高橋洋一さんに言わせると、この辺のカラクリを知らない不勉強な議員は、財務省のレクチャーを鵜呑みにして増税路線へ。
石破、小泉、河野なんかはこの類いで、財務省の扱い易い議員。勉強している高市はやり難い議員。
財政出動していけば経済にいい影響を与える、緊縮は現状より悪くなると思われます。
高橋洋一チャンネルの見過ぎかな、笑
高市さんは高橋さんにレクチャー受けてるそうです。
記事のとおり心配無用ですよ。
投稿: 多摩っこ | 2024年9月25日 (水) 15時22分
野田代表が財務省寄りで増税派、もし増税派の石破総理が誕生したら消費税15%確定、またそれ以上になるとの見立てでした。
解散総選挙が終わるまでは口に出さないけど、やるでしょうとのこと。
投稿: 多摩っこ | 2024年9月25日 (水) 15時28分
高市さんはリズ・トラスとは違い、MMTなど全く信じていません。
トラスのように実験的な経済政策を取るつもりもないし、「歳入増は経済繁栄による」との保守的メソッドを堅守するでしょう。
23年度の税収は堅調で、そのために余剰予算15兆円が生まれました。
だから防衛増税をするべきでないし、向後も増税する必要のないように経済を引っ張っていく自信がある、と言っています。茂木さんの主張も同様です。「国債は悪」として、出かかった芽を増税でわざわざ摘もうとするだろう石破とは天と地ほどの違いがあります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年9月25日 (水) 22時34分
罪務省がビビッているのは、ここへ来て金利の制御が出来なくなりつつあるからだと思いますわ。日銀が日本国債の全発行分の約半分を持っているのは、金利が上がりそうになると日本国債を買って日本国債の下落(金利が上がると既発債はそれより低い金利なので割り引かれる)を防いできたから。それはまた、日銀そのものを債務超過から救っているんですわ。
さらにそれは同時に金融緩和(円紙幣の輪転機ぐるぐる)になっているのですが、本来なら通貨が爆増したら酷いインフレになるのにそうならないのは日本の資金需要が極端に低い(成長エンジンが壊れてる)ので、通貨量が増えても流通しない(ブタ積みになっていて、これを円キャリなどに悪さされる)からですわ。で、海外にも商売の手を伸ばすメガバンは日本国債を売り逃げできた(日本国債を所有して得る金利より外国企業に貸した金利の方がより儲かる)ようですが、地銀は地方には有望な貸出し先が少ないので、日本国債を大量に抱かえたまま動けない(プロのカネ貸しのくせに国債の金利で食ってる)。
今まで事なきを得ていたのは、日本国内の預金量>発行済日本国債量だったので、国内でカネの貸し借りが済んでいたから。罪務省がその気になれば、戦後直後のように預金封鎖を行い新円に移行(その時には旧200円≒新1円だそうで、一気に20000%のインフレ)すれば、アッと驚く為五郎で、すぐに日本の借金はチャラにできるんですわ(そのかわり全日本人の預金はスッカラカン)。
しかし少子高齢化で、日本国内の若い世代は減るし、さらに増えた老人層にカネを吸い取られて、もう預金は減る一方ですわ。すぐに、日本国内の預金量<発行済日本国債量となり、どうするのやら??? もちろん日銀が超法規的に無担保で無限に日本円を刷るという方法もありますが、これはハイパーインフレ確実ですわ。
もう外国人に日本国債を買ってもらうしかありませんが、彼らはシビアなので「金利を上げんかい!お前んとこの国債は格付けが下なんだよ、ナメとんのか」と言ってくるので、もう金利をドンドン上げていくしかないんですわ。日本国内では無敵の罪務省ですが、外国人には手も足も出ません。これは罪務省にとって非常に困るんですわ。最終的には罪務省は、国家予算を組めなくなりIMFの傘下に下って、彼らのパワハラまがいの指導のもとに仕事をするハメになるんですわ。そら、罪務省は必死になりますわ。
でも最近、あのギリシャは借金を順調に前倒ししてまで減らしています。観光業も絶好調のようですわ。考えてみれば、大してカネ持ってない日本人にとっては、スーパー台風の通過のようなもんで、少しガマンしてりゃ又晴天を拝めますわ。そして、アベノミクスを引き継ぐ高市新首相になったスグには、英トラスの時のように通貨安・債権安・株安のトリプル安になるとは思えません(アベノミクスのままならダブル安)。トリプル安は、ゲルの時がアブナイと思いますわ。
投稿: アホンダラ1号 | 2024年9月26日 (木) 00時07分
政府の事実上の子会社である日銀のバランスシートを連結すれば、日本国の財政事情に問題がないことは明らか。敢えて言うならば、資産利益率が低いということくらい。これは、天下り先への出資金が多いから。なお、財務省は、日銀への政府出資割合が7割であることと、支配力がない(これはウソ)ことを理由にバランスシート連結はしていないと説明、このことを隠すのに必死。財務省・日銀で一番問題なのは、日銀当座勘定で0.1%の利息をつける口座があり、ずっと200兆円もの残高があること。財務省・日銀・金融機関がやたら強調するマイナス金利口座の残高はほぼゼロで、この0.1%口座分で年間2000億円の税金が金融機関にプレゼントされている。これが天下り原資であり、裏金などよりよっぽど問題なのだが、誰も問題にしない。高橋洋一氏の講演会で、このことを質したら、「自分も問題だと認識している」とのことで、二週間後の関西地区ローカル放送番組で、その点を指摘してくれましたが、その場にいた人々は、いまいちピンと来ていない様子でした。財政危機詐欺同様に、大問題だと思うのですが。
投稿: ぼびー | 2024年9月26日 (木) 01時24分
拝読しましたが、日本政府が国際的に見て債務とともに多額の資産を保有していることは公知の事実といってよいでしょう。付言すると、政府と日銀のバランスシートを連結会計のように統合すれば負債は相殺されるというのはそれ自体正しいというのは財務省の公式見解にも近いエコノミストの多くも認めるところと思われます(ただし、政府債務を通貨発行によって目減りさせていくとして、政府・中央銀行が物価を適時に統制することができるか、という点には争いがあります)。加えて、発行済国債の約半分を日銀が抱えていて市場での金利調整が半ば停止状態にある日本では、国債が市場で活発に流通している英国で見られらような財政不安による国債金利の急騰(リズ・トラス政権退陣の引き金)は想定し難いというのも至当と思われます。
ただ、問題は、バランスシートの借方に計上されている資産が負債を償却する際に換金できるかどうかであって、国有地・国策に関わる企業の政府保有株式・防衛設備等の資産を換金できるか、という点です(これは民間でも同じです。企業が銀行借入れを返すのに自社ビルや工場の不動産・機械設備をすぐに売却できるかという場面を想定すれば容易に分かるでしょう。)。この点について貴見でも高市候補の発言でも一切触れられていないのは残念に思います。
また、高市候補が成長分野に投資して経済成長を目指すというのは抽象論としては異論が出ないところと思いますが、政府がどのようにして成長分野を的確に見極め、適正な額の投資を行うことができるか、という点がより根本的な問題として残されていると思われます。安倍政権8年弱・菅政権1年・岸田政権3年をかけて数多くの有能な政治家や政府中枢に集められたブレーンが尽力してなお0%台で推移し続けている日本の潜在成長率を引き上げるだけの成長戦略の具体的な内容を示すことが重要ではないでしょうか。
なお、財務省の幹部職員は前財務次官がそうであるように経済学部出身者や理学部・工学部出身者等も多数在籍していますし、東大法学部でも会計学・経済学は教えています。財務省財政研究所等の研修でも同様です。さらにいえば、小林候補がそうであるように、財務省のいわゆるキャリア官僚は海外の海外留学で政治学・経済学・財政学を修めるのが通例ですので、東大法学部出身者であっても最終学歴は東大法学部ではなく海外の大学院であることが多いです。この点は明らかに事実誤認ですので訂正されるとよいでしょう。
投稿: 吉田 | 2024年9月26日 (木) 13時50分