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2024年10月

2024年10月31日 (木)

「ハリスの旋風」は吹きやんだ

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11月5日に、長かった大統領選の戦いがようやく終わり、決着の日を迎えます。ふー、長かった。
いままでハリス優位を伝えていたメディアの風向きに変化が生まれています。
ハリス推しだったロイターもこのように報じ始めています。

「[ワシントン 29日 ロイター] - ロイター/イプソスが29日発表した米大統領選に関する世論調査で、民主党候補ハリス副大統領の支持率が44%、共和党候補トランプ前大統領が43%となった。大統領選が1週間後に迫る中、ハリス氏のリードはわずか1%ポイントに縮小した。
調査は27日までの3日間、登録有権者975人を含む全米の成人1150人を対象に実施された。
ハリス氏は7月の出馬以降、ロイター/イプソスが実施した支持率調査全てでトランプ氏をリードしてきたものの、9月下旬以降はその差は着実に縮まっている。
経済、失業、雇用について、いずれの候補者の対策が優れているかという質問に対しては、トランプ氏が47%、ハリス氏が37%で、トランプ氏がリードを維持している。
移民問題への対処についても、トランプ氏への支持が48%と、ハリス氏の33%を上回った。
政治的過激主義や民主主義に対する脅威への対応では、ハリス氏への支持が40%、トランプ氏が38%。ただ、ハリス氏のリードは前回調査の7%ポイントから縮まっている」
(ロイター10月30日)
ハリス氏、支持率リードわずか1ポイント 大統領選まで1週間=調査 | ロイター
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ロイター

これはトランプが勝ちつつあるのではなく、ハリスの失速が原因だと考えたほうがいいかもしれません。
失速の原因は、カマラが極左に傾いた人物であることが、国民の目にも明らかになってしまったからです。

ひとつには、今のガザ・レバノン戦争に対する両候補の対応です。
共和党にはなんの影響もなく、トランプは福音派というキリスト教原理主義に近い宗派ですから、聖書でパレスチナ地はユダヤ民族のものであるということから、親イスラエル派です。
トランプの娘婿のクシュナーはユダヤ人で、娘もユダヤ教に改宗しています。
トランプ自身は改宗していませんが、立場としては近いとは言えます。
したがって、親イスラエル・反イランというスタンスが明確です。

一方、民主党は対照的に動揺しました。
平時にあってはユダヤ人の多くが民主党支持層だったために親イスラエルでしたが、今回のガザ戦争で大きくねじれました。
左翼層がイスラエルを糾弾し、反イスラエル闘争を激化させたために民主党が分裂しました。
今年4月、全国の大学に拡大した親パレスチナ闘争は、アラブ風シュマグで覆面して大学のホールを占拠し、警官隊と衝突を繰り返す暴動にまでにエスカレートしました。
全土の大学に飛び火した親パレスチナデモは、まるでハマスが米国でデモをしているような有り様を呈しました。

「パレスチナを解放せよ」、「反イスラエル闘争を世界へ」
学生らが連呼し、パレスチナの旗を振る。首には「ケフィエ」と呼ばれる網目模様のスカーフ。団結の象徴だ。おびただしい数の警官。上空を舞うヘリ。4月下旬、米ニューヨーク市のコロンビア大前は緊張した空気に包まれた」
(日経5月9日)
米大学デモの危うい正義 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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1968年民主党大会の亡霊なのか…米国の学生「抗議運動」 宮家邦彦 宮家邦彦のWorld Watch - 産経ニュース (sankei.com)

これはたまたま起きたのではなく、BLMやアンティファがそうであったように周到に左翼組織が準備し組織したものでした。

大学キャンパスでの最近の親パレスチナ抗議行動の波は突然やってきて、全国の人々に衝撃を与えた。しかし、いくつかのデモの根底にある政治的戦術は、長年の活動家や左翼グループによる何ヶ月にもわたる訓練、計画、奨励の結果でした」
Students Trained for Pro-Palestinian Protests With Veteran Activists for Months - WSJ

BLMやアンティファについて、米国に亡命している民主活動家の中国人ジャーナリスト何清漣はこう語っています。

「私は最近、自分の原稿の中に、この運動(BLM運動)と中国文革にはよく似たDNAがあると書いた。なにかって?みなさんご存じのように中国の文革の核心はマルクス主義であり、マルクス主義の核心理論は暴力革命。
既存の国家メカニズムを破壊し、新たな国家メカニズムを打ち立てること。これはなぜ民主党が首長の各州で警察機構がマヒしているかの理由でもあろう。
文革期の公安、検察、裁判所で同様の打ちこわしがあったことと同じだ。このようにして初めて、法執行機関の介入なしに、すべての“四旧”を好きなようにできるのだ」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ) NO.103  2020年6月28日)

BLMは米国版文革運動であり、アンティファは紅衛兵でしたが、これに立ち向かって秩序を回復させようとしたのがトランプであり、煽ったのが民主党系知事たちでした。
米国の紅衛兵・アンティファ: 農と島のありんくりん
アンティファの三つの歴史的刻印とは: 農と島のありんくりん

そしてこの親パレスチナ運動の激化は、同時に進行していた大統領選に大きな影響を与えました。
特にこの親ハマス組織が夏の民主党大会を標的にしたために、民主党はより親パレスチナ・反イスラエル的な候補に差し替えることを余儀なく去れました。
それがバイデン降ろしであり、党内極左派に属するカマラ・ハリスの登場です。

ハリスは、この親パレスチナだけてはなく、BLMやLGBTQ、急進的グリーン政策といった立場で、大統領にしてよいようなタイプではないと党の中道派にすら思われていた人物でした。
しかし、トランプとの直接討論の失敗からバイデン降ろしが始まってしまい、オバマに推されて急遽すげかえられたピンチヒッターが副大統領のハリスであったことは民主党の不幸でした。

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民主党の集会にオバマ元大統領…ハリス副大統領の支持訴え トランプ氏、自分を起訴した検察官「2秒でクビに」(2024年10月25日掲載)|日テレNEWS NNN

中道保守派のバイデンから極左のハリスへのシフトチェンジは、バイデン政権時に大きく開いた国内の分裂の傷口をさらに左から拡げる選択でした。
これは民主党支持団体に大きな影響を与えました。
汗水垂らして家族のために働いている労働者階級の反発です。
彼らが多く住む、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ミシガンなどのスイングステート(激戦州)では、トラック労働組合、鉄鋼労働者組合、消防士組合などがハリスを推薦しない方向に舵を切りました。

「[ワシントン 3日 ロイター] - 国際消防士協会(IAFF)は3日、11月に迫る米大統領選で、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領いずれも支持しないと発表した。
IAFFは消防士や救急緊急要員約30万人を代表する労働組合。
ハリス陣営は、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ミシガンといった重要な激戦州で労働者層票を取り込むため、労組にアピールしていただけにIAFFの決定は打撃となりそうだ」
(ロイター10月4日)
消防士労組、米大統領選でいずれの候補も支持せず ハリス陣営に打撃か(ロイター) - goo ニュース

全米トラック運転手組合(チムスターズ)という今までは民主党の票田だった大労組も、どちらも支持しないという方針転換を図りました。
つまりブルカラー層はハリスを嫌ったのです。

全米50州はすでにどちらの側につくのかが明確になっていて、動くことはないとされていました。
たとえばカリフォルニアが共和党になることも、テキサスが民主党になることも考えられないのです。
激戦州は50州のうちわずか7州ですが、全体の結果に影響を及ぼします。
ですから、全体の得票数で負けても、この激戦州で勝てば大統領になれてしまいます。

7州とは、ペンシルベニア州、中西部ミシガン州、ラストベルト(錆びた工業地帯)をがあるウィスコンシン州の3州と、西部アリゾナ州、ネバダ州、南部ジョージア州、ノースカロライナ州のサンベルト(温暖な地帯)の4州です。
そのなかでも特に競合が激しいのは、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州です。

「16年の大統領選でトランプ氏はこれら3州全てを僅差で制し、民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官に大方の予想に反して勝利した。
バイデン大統領は20年の前回大統領選ではこれら3州で勝ち、歴史的には共和党の牙城だったジョージア、アリゾナ両州でも予想を覆す勝利を収めて大統領に就任した。
(ロイター10月18日)
情報BOX:米大統領選、なぜ一部の激戦州が結果を左右するのか | ロイター 

だからトランプは、ラストベルト出身のベンスを副大統領候補に指名したのです。
一方、ハリスは副大統領としての実績がまったくありません。
外交も苦手、国境問題も無関心、経済には無知。
特長はといえば、黒人で女性なことくらいでしたから、副大統領に誰を据えるかに注目が集まっていました。
実はすでに副題党候補として有力だったのはペンシルバニア州知事のジョン・シャビロでした。
シャビロはユダヤ人の中道保守派で、左派のハリスとのバランスを考えたのでしょう。
しかしシャビロは、親パレスチナ派の憎悪を買ってしまい、代わりに指名されたのがミネソタ州知事のティム・ワルツでした。
ワルツは中国旅行をする会社を経営しており、自身30回も訪中しているというパンダ・ハガーで、知事当時も親BLMの対応をして、暴動を拡げています。
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米副大統領候補 テレビ討論会で舌戦 経済政策など互いに批判(2024年10月2日掲載)|日テレNEWS NNN
このような結果、メディアが煽った「ハリスの旋風」は止まりました。

[ワシントン 23日 ロイター] - 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が23日に公表した大統領選の世論調査によると、共和党候補トランプ前大統領の支持率が47%と、民主党候補ハリス副大統領の45%を上回っている。
調査は10月19─22日に1500人の登録有権者を対象に実施された。誤差はプラスマイナス2.5%ポイント」
(ロイター10月24日)
トランプ氏支持率47%、ハリス氏45%=WSJ調査 | ロイター
激戦区でもミシガン州では支持を失ったと伝えられています。
「11月5日の投票日を目前に控えたいま、7つの激戦州の支持率でハリスは共和党候補のドナルド・トランプ前大統領に対して保ってきたリードを失った。
とりわけハリスが死守しようとしている激戦州は、かつては民主党の牙城であったことから「青い壁」と呼ばれるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州だ。(略)
3州のなかで選挙人の数が最も多い(19人)ペンシルベニア州に関心が集まりがちだが、動向が注目されるのが、アラブ系市民を多く抱え、選挙人15人が割り振られているミシガン州だ。
アラブ系米国人研究所によると、ミシガン州にはアラブ系が40万人近くいる。彼らの多くは2020年大統領選ではバイデンに投票し、その勝利に大きく貢献したが、ハリスはいま、彼らの票を失いつつある」
(クーリエ10月29ニチ)
カマラ・ハリスの失速─「あの激戦州」が彼女の命取りになるかもしれない(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース
このように、あくまで僅差ですが、トランプが押しているという情勢のようです。
私は必ずしもトランプ押しではないのですが、仮にトランプになったら、ゲル首相や岩屋外相がどんな顔で会談するのか見るのだけは楽しみですね。

2024年10月30日 (水)

常識人としての玉木代表

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石破氏の立て籠もり籠城戦は続いております。
メディアは大喜びでこんな世論調査の数字をだしています。
かつて国民的人気者だと褒めそやされたのが、まるで大昔のことのようです。

「共同通信社は28、29両日、衆院選の結果を受けて全国緊急電話世論調査を実施した。石破内閣の支持率は32.1%で、内閣発足に伴う10月1、2両日調査の50.7%から18.6ポイント下落した。不支持率は52.2%。(略)
望ましい政権の枠組みは「政界再編による新たな枠組み」が31.5%と最多で「立憲民主党を中心とした多くの野党による政権」は24.6%。「自公に日本維新の会などを加えた政権」が19.3%で続き、自公の少数与党政権は18.1%で最少となった。石破茂首相が辞任すべきだとの回答は28.6%にとどまり、辞任は不要が65.7%に上った」
(共同10月29日)
石破内閣の支持率、32%に下落 自公政権の継続望まず、53%(共同通信) - Yahoo!ニュース

長引けば長引くほど、「立憲を中心とする野党連合政権」を支持する割合が増えていきます。
いいんでしょうか、自民党の皆様。

さて、国民民主党の玉木代表の良さは常識人だということです。
常識を心得た人間らしく、いくら国民民主が大飛躍をしても淡々としておいでです。
これがいきなり舞い上がってしまうようなキャラだと、興ざめします。

しかし、そうは思わないのがメディアで、テレビ局はこんなバカなことを玉木氏に尋ねて軽くいなされています。
たとえば日テレはこんなこといきなり玉木氏に聞いてしまっています。
【国民民主党・玉木代表に聞く】「連立を組む気はない」今後の政局のキーパーソン

「鈴江キャスター
「それだけ期待が集まっている中で、ここからどうするのかについて伺います。15年ぶりに与党が過半数割れした状況です。国民民主党としてどう動きますか?」

一種の誘導質問ですよね、これは。
「期待が集まっています」と持ち上げてみせて、それを与党過半数割れで受け止めて、なにを聞き出そうとしたいのでしょうか。
もちろん「野党連合政権」につくか、それとも与党の一角に加わるのかの2択で誘導しようとしています。
ここで玉木氏の脳味噌が小泉ジュニア並だと「ボクってセクシー」とトンチンカンな答えをするか、ゲル氏なら「国民にお考え願いたい」とあらぬことを口走ったりします。
これではダメです。聞いていることをはぐらかさずに、真正面から「あなた考え違いしていますよ」と言わねばなりません。

20241029-144900

日テレ

「国民民主党・玉木代表
「さきほど申し上げた通り、我々12日間政策を訴えて、特に『手取りを増やす』ということを訴えて頂いた議席である以上、政策実現にこだわりたい。だから連立がどうかという話はあるが、我々そういうことにくみする気はない。ただ選挙で約束した政策を実現できるのであれば、政策ごとに『実現してくれるんだったら、協力してくれるんだったら、協力するよ』ということはやっていきたい。あくまで政策本位で1つ1つ判断をしていきたい」

うまい。しっかりと「連立に与する気はない」と切り捨てて、返す刀で「政策ごとに実現のために部分協力しますよ」といなす。
こういう言う方をすれば、角が立ちません。きっと地頭がいいんでしょうね。
かつての小澤氏のように、テメーはバカかと上目戦でにらみ返すのではなく、おだやかに聞く者をそらしません。
フツーこういうふうに真正面から丁寧に答えられると、多少は目が覚めて、政策内容に話をもっていくのかと思いきや、このテレビキャスターは任務に忠実。
あくまでもディレクターから玉木がどっちにつくか聞いて来い、と命じられているとみえて、しつこく話題を「連立」方向に誘います。

「鈴江キャスター
「与党とどういうところで一致点を見いだせるかというのは、既に話はあるのでしょうか?」
国民民主党・玉木代表
「私はしているわけでないんですが、そういうアプローチは幹部にもあるのだと思います。ただ、具体的な話はまだ聞いておりませんけれども、いずれにしても、我々譲らない政策というのがありますし、特に手取りを増やす経済政策、基礎控除を上げましょうとか、あるいは、従来からずっと言ってきて主張を続けている『ガソリンの暫定税率を廃止して、レギュラーガソリン25円10銭さげましょう』とか。こういうことは、従来からずっと言ってきているのでぜひ実現したいし、実現してくれるんだったら、いろんな協力の可能性は広がってくるなと考えています」

よしんば「与党から話があって」も、言えるわきゃないでしょうに。
水面下の交渉をペラペラしゃべったら、二度と政界では生きていけませんよ。
そもそもこのキャスターは、国民民主がいわゆるトリガー条項を発動を巡って、岸田政権に協力したことをお忘れなようです。
考え方は一緒です。政策ごとに提携していく、閣内協力はしない、ということです。
国民民主はこの既定路線を進んでいるだけのことで、こういう答えが返ってくるのは見通せたはずです。

ちなみに、石破政権はこの国民民主の提案に対して、ろくすっぽ揉まずに一蹴してしまいました。
バカですね。閣内協力をするはずがなければ、せめて政策協定の可能性だけでも持っておけばいいのに。

「衆院選で過半数割れした自民、公明両党が協力を模索する国民民主党が主張する「トリガー条項」の凍結解除について、武藤容治経済産業相は29日の記者会見で否定的な見方を示した。トリガー条項はガソリン税を一部軽減する措置で、武藤氏は「(凍結解除で)ガソリンスタンドや石油元売り会社で大きな資金負担が生じることに関し解決策を見いだすに至っていない」と述べた」
(産経10月29日)
武藤容治経産相、国民民主の主張を一蹴 「トリガー条項」凍結解除などに否定的見方 - 産経ニュース

おいおい、平大臣が答えるべきことじゃないだろう。
ことは単にガソリン補助のあり方だけではなく、国民民主にどちらを向かせるのかという大局に立った判断であって、本来首相が丁寧に受け止めるべきことです。
岸田さんは含みをもたせたまま何もやらなかったので、御破算になりましたけどね。
それすらできない政治オンチのゲル内閣。
こういうことからも、この内閣は統制が効いていないなぁ、と思います。

さてこの女性キャスターはジレてきたようで、じゃあ野党連合はどうなのさ、と切り込んできました。

「鈴江キャスター
「一方で野党系は過半数を超えています。野党でまとまれば政権を取れる議席ですが、そこの可能性は探らない?」
国民民主党・玉木代表
「いまの野党全部まとめて政権取ってもらいたいと思います? 私が一番心配しているのは外交・安全保障なんですよ。今こういうふうに与党も野党も単独で過半数取る状況じゃない。極めて不安定。
来月にはアメリカの大統領選挙がある。日米の安全保障を担当する責任者が代わったり、あるいはカウンターパートが変質する可能性があって、そういう中において、仮に安全保障で一致できないような、そもそも閣内で揉めるような形だと、南西諸島方面に対してすぐに領空侵犯、領海侵犯、またいわゆる有事が起きる可能性もあるので。外交安全保障とか原発を含めてエネルギー政策とか、国家の基本政策について一致できない人が集まってやっても、これは国のためにならないので」

「野党がまとまれば政権がとれる」、絶句するくらいにバカな質問です。
あんたは小学生か。足し算しかできないのか。
それで「野党連合政権」作ってどーなる。結末は見えています。

かつての民主党政権時に玉木氏がどういうポジションだったのか、ちっとは勉強してしゃべって欲しいものです。
玉木氏は民主党政調会長の前原氏の下の政調会長補佐として、党内が左派と保守で完全に分裂して、なにも決まらないことを身をもって知っていたはずです。
口先だけのキレイゴトの民主党政権のダメさや、小沢氏のようなダークサイドをいちばん知っているのは、こういう政策担当者たちだったのかもしれません。

民主党が解体した後に玉木氏は小沢と野合するなどといった褒められない迷走をしますが、たぶんこの経験からも「安全保障で一致できないようなことだと内閣で揉めてしまい、外患に対処できない弱い政府になってしまう」という総括をしたのだと思います。
そういう彼をつかまえて「数を合わせりゃ野党で政権がとれますよ」はないもんです。

安全保障と外交、エネルギー政策、そして経済政策は国の基幹です。
基幹政策が一致しない「連合」はありえないのです。
しょせん寄り合い状態の「野党連合政府」はこの根幹が大きく違っているためにグチャグチャ。
こんなものを新たに作っても、かつての民主党政権の二番煎じなだけなのです。

ところでこのインタビューの最後のほうで玉木氏はこう言っています。
しつこくばかなことを聞くキャスターに対して

「鈴江キャスター
「与党入りはない、というお話ですが、与党が今訴えている政策をのむかわりに、もう少し踏み込んだ連携を提案されたらどうしますか?」
国民民主党・玉木代表
「我々ポストはいらない。閣僚とかそういうのは全然いらなくて、国民のための政策が欲しい。今回、野党が躍進し与党が議席を減らした。政治報道なのでどうしてもそうなるが、どっちが増えようが減ろうが、国民生活関係なくて、困っていますよ、本当に。物価が上がる、でもなかなか賃金や年金は増えないと」

久しぶりに失望しかかっていた政治家から、「ポストはいらない。国民のための政策が欲しい」という殺し文句を聞きました。
惚れ惚れするいい台詞です。
猟官と金権に根腐れしてしまった自民党よ、たまにはこういう元気のいいことを言ってみろ。

一番聞かせたいのは石破首相です。
猟官の極を遂げて、結果どうなりましたか。
あなたはかつて「自分のやりたい政策」を持っているかに見えましたが、それは幻想でした。
あなたが猟官の果てに登り詰めると、すべてを食言し、今まであなたが作ってきた「自民党良心派」という虚構を全否定してしまいました。
今回の選挙は「裏金議員」によって負けたのではなく、あなた自身の食言によって一敗地に塗れたのです。
「食言」、すなわち一度口から出した言葉をまた口に入れてしまうことをした自分を恨みなさい。

私は国民民主といくつかの政策で異なる考えをもっています。
しかしひとつだけ言えることは、この党は語るに足る政党だということです。

 

2024年10月29日 (火)

石破首相は生き延びられるか?

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私はいうまでもなく石破氏が嫌いですが、感情を排除してフラットに考えていきます。
実は戦後処理ほど難しいものはないのです。
解散を打つのは簡単、選挙だと叫ぶのは気分がいいし高揚します。
しかし負け方を考えておかないと、今のように突破するでも辞任するでもないような状況になっちゃうんです。
いかにもゲル氏らしい煮え切らなさで、森山幹事長すら続投させる気らしいので、さすがに呆れられています。
ただし、日経平均がプラスになったように、とっくに辞任を取り込んで進行しているようです。

ことのほか石破氏のような、いままで自民党が苦しんでいるとご隠居もどきの説教を垂れていたご仁だとなおさらでしょう。
石破氏が首相なんぞにならなかったら、いまごろ「国民の審判が降りたわけですから、粛々とその声に従うのが憲政の常道です」なんて言っていたでしょうね。
実際に麻生政権が大敗した時、「大敗したら辞任する。それが最高権力者の責任の取り方だ」なんて言っています。ヒトに厳しく、自分に優しい人ですね。

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自民党“大敗” 現役閣僚・大物議員も相次ぎ落選 石破首相「厳しい審判」も…続投の意向(日テレNEWS NNN) - Yahoo!ニュース

今後について消去法で考えてみましょう。
逆説的に考えてみます。なぜ石破氏は辞任しなくていいのでしょうか。
その理由は、自民党が比較第1党だからで、野田立憲は単独で政権交代をすることが不可能です。

もちろん「理論上は」立憲を中心とする野党連合政権もないわけではありません。

その条件は、立憲が、維新、国民民主、れいわ、社民と連立できたらというのが唯一の条件です。
この5政党で合わせて議席は224議席となり、今の自公連立の215議席を上回ります。
これに共産党5議席が閣外協力し、無所属を5人ほど連れてくればなんとかなります。

ただしあくまでもこれは「理論上は」です。
だって、玉木さんの党は「対決より解決を」というきわめて常識的な野党のスタイルが好感されて、保守層まで取り込んで今回大躍進できたのです。
政策的にデフレを公約とした野田立憲と水と油です。
政策を全部ゴミ箱に入れて、旧民主党という元の鞘に収まってしまっては、なんのために苦労したこの5年間だったかということになります。

維新は初めから右翼政党と立憲から思われていますから、声すら掛からないでしょう。
というわけで、議席数グラフを見ると野党と与党がキッチリ色分けされていますが、野党が一枚岩だと思うと大きな間違いなのです。

では、石破政権がこのまま存続を許されるかといえば、相当にきついはずです。
素直に考えて、やらないと言っていた選挙をいきなり超憲法的にやったあげく、閣僚2名が討ち取られるような大敗北ですから、小泉ジュニアの小物の辞任程度でおさまるはずがありません。

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自民党・小泉進次郎選対委員長が引責辞任 石破総理の責任を問う声も 自・公“過半数割れ”の衆院選から一夜 | TBS NEWS DIG (1ページ)

選対委員長は、非公認処分、重複立候補を認めない、そして2000万支部支給問題まで数々の失敗の直接の責任を問われて当然な立場です。
そして選対委員長の失敗は現場責任者である幹事長の失敗でもあるのです。
石破氏は記者会見で、「身内の論理、党内の理屈と国民から思われていることを今後は一切排除し、厳しい党内改革を進める」なんて言っていますが、どの口で言っているのでしょうか。

では、森山氏までの辞任は当然として、その上の総理まで波及するかといえば、もう少し複雑です。
ある意味、やや皮肉な見方をすれば、よくここで敗北が止まったという見方もないわけではないからです。
170議席などにまで大敗した場合、ほんとうに立憲+社民・れいわで政権交代ができてしまったからです。
「裏金議員」にすべての責任を押しつけてしまい、我ながらよくここで踏ん張ったということを石破首相が言い張ればどうなるか、ということです。(言えるなら言ってみろ、というかんじですが)

そしてここで首相を降ろすと党内の分裂があからさまになります。
分裂したら最後、野党に下ったらさらに細分化されて力を失います。
「自民党」というひと塊になっているから意味があるので、それがバラバラになれば単なる徒党です。
かつて1993年6月、宮澤内閣に不信任を叩きつけて自民党を集団離党し、羽田氏や小澤氏が新生党を作りましたが、その分裂時に石破氏も行動を共にしています。
しかし新党ブームが去ればなにも残りませんでした。
石破氏も予定調和よろしく復党して何食わぬ顔をしています。
集団離党された自民党にはいまでもこれがトラウマとなっていて、分裂を嫌い、党内野党を追い詰めすぎないという智恵が生まれました。
その暗黙のルールを破ったのが岸田氏です。

とはいえ、石破氏を頂いたまま、公明や国民民主と従来通りの連立を要請できるかといえば、やはりむりでしょう。
森山氏は今、渉外担当なので、辞めさせられないという話も伝わっていますが、筋違いでしょう。
敗軍の現場指揮官が渉外やってどうするってもんです。
党内はともかく、党外周辺が許しません。

公明党には自民の不人気のそば杖を食ったという怒りの感情があり、なったばかりの石井代表が辞任するのに、張本人がぬけぬけと延命するのでは納まりません。
閣外協力を申し出ねばならない国民民主や維新にしても然りで、まず石破氏辞任表明がなければなにも始まらないでしょう。

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〈激戦東京24区〉高市&安倍昭恵に安倍元首相の遺影まで登場! “裏金非公認”萩生田光一「陣営が凍りついた」選挙情勢 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け

また今回の選挙は、複雑に自民党内に亀裂を入れてしまいました。
党執行部からすれば荻生田氏や世耕氏が国会に還ってきたのは計算外だったはずです。
彼らはメディアと野党に追い立てられて地獄行きだと見ていたはずですから。
萩生田、西村、世耕、松野の「安倍5人衆」は高木を除いてしぶとく当選し、次世代である岸信千代、吉田真次も生き残りました。

彼らが勝利したのは、地方県連と安倍昭枝氏や高市氏ら「女の力」があったからです。

そして皮肉にも、いまや石破政権は彼ら「安倍派4人衆」を公認しないかぎり数合わせもできないわけです。
もし「安倍派4人衆」が自民に戻らないといえば、困るのは自民執行部のほうなのです。
石破首相を残したままだと、彼ら非公認を支えて当選させた地方県連が納得しませんからね。

そしてもうひとつ。今回のことで忘れられがちなのは、参院の存在です。
実は参院は、安倍派と麻生派が過半数を押さえています。
衆院の議席が激減した今、参議院の重みは非常に大きなものとなっています。
しかも来年7月には参院選があります。
その参院の協力なくしては、新幹事長すら決まらないのです。

今回、ドラスティックに自民党内力関係が変化しました。
党内野党に追い込まれた麻生、茂木氏の怒りのマグマは凄まじいと言われています。
そして彼らは、石破氏を首相に押し込んだ菅、岸田の両氏を事実上の引退に追い込むはずです。
岸田氏は高市氏を潰し、安倍派を完全解体するのが目的で今回の解散を石破氏に勧めたのですから同罪です。
また菅氏は晩節を汚しました。しゃべることも歩くことも不自由で、脳梗塞という噂もあるくらいで、かつての「鉄の官房長官」の面影はありません。
それをキングメーカーづらをしたことの報いが今になって響いています。
ここを機会に引退を考えられたらいかがでしょうか。

では、その後はどうなるのかといえば、見てきたようにどう考えても石破続投の目はありません。
当人がその気でも周囲がそれを許さないのは消去法で見たとおりです。
誰が次を担うのかとなると、9人の総裁候補で石破氏を担がなかった者で、なおかつ菅、岸田派ではない者しかいないことになります。
高市氏、小林ホーク、そして茂木氏の3人です。
彼らがこの火中の栗を拾うかどうかはわかりません。
私なら拾わないな。こんな短期とわかっている政権を拾ってもナニもできないし、心労多くして実り少なしです。

いずれにしても今週中に決めなければなりません。

 

2024年10月28日 (月)

予想どおり、石破自民の惨敗

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衆院選の結果がでました。ほぼ予想どおりです。
午前4時現在の確定議席数です。自民公明で215議席です。

 

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衆議院選挙2024 - Yahoo!ニュース

「自民は公示前の256議席から大きく議席を減らした。自公の与党過半数割れは、政権交代を許した平成21年衆院選以来。不記載前議員ら12人を非公認とし、公認した34人も比例代表との重複立候補を認めない対応を取ったが、逆風は収まらなかった。非公認候補が代表を務める党支部に対して公認候補の支部と同額の2千万円の活動費を支給していたことも影響した」
(産経10月28日)
自公大敗、過半数割れ 政局流動化は必至 立民、国民民主伸長、不記載事件響く 衆院選 - 産経ニュース

今の時点で自民は単独で191議席という惨憺たる負けっぷりです。
公明も惨敗して24議席です。
ほぼ最悪シナリオどおりとなりました。

 

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【衆議院選挙2024 終盤情勢】自公過半数巡る攻防、接戦区増え半数 - 日本経済新聞

自公単独過半数で233議席ですから、どうしても18議席が不足しています。
これではいかなる法案も通らないことになります。
ちなみに安定多数が244、絶対安定多数が261議席ですから、はるかに足りません。
したがって、自民はひとつひとつの法案にイエスかノーかを国民民主と維新にはからねばならなくなります。

国民民主の28議席が加わればなんとか息がつけますが、玉木氏は賢明なのでこんな泥船には乗らないでしょう。
維新は、公明と大バトルを大阪でしたばかりなので、維新を呼べば公明が抜けます。

一方、立憲は、自民の崩壊を吸収して議席数を大きく伸ばして146議席としました。
別に政策がよかったのではなく、石破自民が勝手に自己崩壊しただけです。
彼らも単独では政権を取れませんが、国民民主と維新が野田首班を頂く可能性はほぼゼロです。
つまり与党野党どちらも決定的な多数を押さえられない奇妙な均衡ということになります。
仮に立憲が政権交代を考えたとしても、立憲148、共産8、れいわ9、社民1で、計166議席ですから過半数にははるかに届きません。
したがって政局のキャスティングボートは国民民主と維新が握ることになるでしょう。

「過半数が立憲民主党は公示前の98議席から躍進。国民民主党は公示前から議席を3倍以上に増やし、れいわ新選組は議席を2倍に伸ばした。日本維新の会は公示前勢力の維持が微妙な情勢だ」
(産経前掲)

もうひとつ凋落が激しかったのは公明党で、公示前32議席を下回り、石井啓一代表は落選した。
大阪はすべて維新が押さえました。

「日本維新の会は衆院選で、大阪府内の全19選挙区に擁立した公認候補の全員が当選確実になった。
府外の各地で苦戦を強いられる展開だったが、強固な地盤を築く本拠地では初の「完全制覇」になる見通しだ。
維新は2021年の前回選、府内で擁立した15選挙区で全勝。今回は15選挙区に加え、長らく協調関係にあった公明党の前職らがいる4選挙区にも対抗馬の候補者を擁立。府内全19選挙区の独占を狙った」
(毎日10月28日)
維新が本拠地・大阪で初の「完全制覇」 全19選挙区で当選確実 | 毎日新聞

公明は代表を交代するしかないでしょうから、自民の崩壊に巻き込まれたという恨み言を言っているようです。
一方、石破首相は辞めないと言っているようです。
石破さん、疲労困憊して眼の焦点があっていません。まさに敗軍の将です。

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自公大敗、過半数割れ 政局流動化は必至 立民、国民民主伸長、不記載事件響く 衆院選 - 産経ニュース

「衆議院議員選挙の投票が終わり、自民・公明の与党の議席が過半数を割る見通しとなる中、石破総理は民放の番組に出演し、“職責を全うする”として辞任しない考えを示しました。
その上で、「これから先、我々が掲げた政策を実現することに向けて努力は最大限していかなければならない」と強調しました」
【速報】石破総理が辞任を否定“政策実現に向け最大限努力” 衆院選で自公過半数割れの見通し 【衆議院選挙 2024】(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

案外これだけキレイさっぱり負けると、こんな泥船を欲しがる奇特な政治家は少ないでしょう。
「我々の掲げた政策を完遂する」のはけっこうですが、自公で279議席もあった安定多数が吹き飛び、玉木氏と馬場氏の顔色を伺って政局を運営するのですが、ゲルさん、背中からキレイゴトばかり言っていたあなたにできるかな。

そのうえ、党内はあなたの敵ばかりです。
殺したはずだった荻生田氏と世耕氏は自力で蘇ってきてしまいました。
どうしましょう。選挙総括が待っています。

 

 

2024年10月27日 (日)

日曜写真館 風だちて花悩ましき牡丹かな

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ふさ~と朝影ふくむぼたんかな 寥松

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三日月にいそげぼたんの花のつや 良品

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ぼうたんの夢の途中に雨降りぬ   麻里伊

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紅どしと公家も花屋もぼたんかな 卯七

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かさかけて水にうつるや白ぼたん 桜井梅室 

 

 

2024年10月26日 (土)

公明党も大苦戦

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選挙について、私が書いてもセンないのですが、書き漏らしたことを追加しておきます。
ほんとうに国内政治は書きたくないのですが、仕方がありません。

公明党の帰趨についてです。
山口氏から石井氏に代表が交代したその第1回の選挙です。
公明党は代表の重複立候補を認めていませんから、小選挙区で落ちると議員資格を失い、自動的に代表の座も失職します。
その石井氏が当落の境で苦戦しています。

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公明党新代表に石井氏 28日の党大会で正式承認へ

地元埼玉新聞から

「埼玉新聞社は24日、衆院選の埼玉県内16小選挙区の終盤情勢を分析した。
■埼玉14区の立候補者
 加来武宜 43☆維 新
 石井啓一 66 公 前(10)
 関根和也 44 無 新
 鈴木義弘 61☆国 前(3)
 高橋易資 68 諸 新
 苗村京子 65 共 新

公明代表石井と国民鈴木の大接戦が続く。それぞれ無党派層への浸透を図る。石井は自民支持層をまとめ切れていない。共産苗村、維新加来が追い上げる。
石井は党の顔で全国を回る必要に迫られるが、公示から23日までの9日間のうち6日間を選挙区内で活動する。「厳しい情勢で混戦から抜け出せない。もう一段の支援を」と必死の訴えが続く。
接戦を繰り広げる国民鈴木は選挙区内を小まめに回る。中小企業支援や物価高対策に向けた賃上げ策を示し「一致団結、今以上に力を貸してほしい」と幅広い支持を呼びかける」
(埼玉新聞10月25日)
【衆院選 終盤情勢】埼玉14区 党代表の公明石井と保守系の国民鈴木が大接戦(埼玉新聞) - Yahoo!ニュース

自民党が候補を立てなかったために、国民民主との戦いに絞られています。
元々石井氏がいわゆる他地域から来た落下傘候補であって名前が浸透していないうえに、代表として全国の支援に飛び回らねばならないので顔も売れていない、つまり支持母体の創価学会がむき出しとなった戦いを強いられているようです。

では、もうひとつの公明党の拠点である大阪はどうでしょうか。
ここは同じく大阪を発祥の地である維新が、最大のホームグランドとしている地域です。
公明党も関西圏は常勝の地でした。
大阪は創価学会において「大阪の戦い」といわれるほど、この地に根を張ったことの意味が大きい土地なのです。
第5回「大阪の戦い〈上〉 - 毎日が、始めの一歩!

今まで維新は大阪都構想実現のための妥協戦術として、大阪3、5、6、16区に候補を立てずにいたほどですが、今回は手加減なしでの全面対決となります。

「有馬氏の分析では「維新のワンサイド」の勢いだという。伸び悩みも懸念される維新だが、大阪では17区の馬場伸幸代表(59)、12区の藤田文武幹事長(43)が優勢で、19選挙区で「完勝」もあり得るという。
有馬氏は「馬場、藤田両氏は黙っていても勝つという情勢だ。大阪万博の問題や不祥事があり、地方選も落とすなど、支配力が薄れた感のあった維新だが、やはり〝地元〟の強みがある。全国区での浸透に苦戦し、支持者に『応援疲れ』もうかがえるだけに正念場だ」と指摘する」
(夕刊フジ10月17日)
大阪・東京、49全選挙区「当落予測リスト」 大阪小選挙区で〝全面激突〟維新が公明に完勝か 東京24区、萩生田氏が苦戦予想覆す地力(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース

維新は全国で苦戦しているだけに、そのぶんホームグランドで確実に議席を勝ち取りたいと考えていているようです。
一方、公明党はここでも大苦戦しています。

「公明党は大阪16区に山本香苗氏(53)を参院からくら替えで投入するなど大阪に注力するが、総じて苦戦が予想されるという。
有馬氏は「支持母体の創価学会の組織力に陰りが指摘される。カリスマ性があり、強い指導力で知られた山口那津男氏が代表から退き、石井啓一新体制の真価が問われる。大阪の選挙区を落とすと、現有の32議席から相当減らす。兵庫の選挙区も落とせば、相当な打撃だ。大阪選挙区では、自民も苦しい戦いを強いられてきたが今回も厳しい情勢に変わりはなく、自公与党には厳しい結果が予測される」との見方を示した」
(夕刊フジ前掲)

大阪で敗北すると公明党は、選挙予想で一気に現有32議席から7議席減らして25議席程度にまで落ちます。

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【2024年秋・衆院選】自公228議席、過半数割れで大政局へ 立民は「敵失」追い風に144 国民が倍増以上の19、日本保守党3議席か 政党別獲得議席予測(1/5ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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公明が党大会、新体制発足 石井啓一代表、西田実仁幹事長:山陽新聞デジタル|さんデジ

こうなると、公明党執行部の退陣は免れないでしょう。
これは自民党執行部にも大きな影響を与えることになります。

なぜなら、自民の稚拙な選挙戦略、総理の朝令暮改、そして今回の2000万支給と切れ目のない不祥事続きの石破自民の不人気の影響を、連立与党として側杖を食ったともいえるからです。
とうぜん、公明からは敗戦責任の追及が自民党執行部に投げつけられるでしょう。
与党過半数割れをすれば幹事長の辞任が必須ですから、与党2党の党首と幹事長のダブル辞任となります。
自民は新しい幹事長を最大の敗戦責任者である石破氏が選んでよいのか、という責任論に発展していくのは止められません。

負け方のていどにもよりますが、なんとか自公で過半数を維持できればなにも起きません。
過半数割れが少々ならば、無所属や非公認をかき集めてなんとか凌ぐでしょう。
この程度で済めば震度3くらいなものですから、万々歳です。

問題は、仮に200議席を切った震度6の場合です。
今の首相では国民や維新はもとより、そして公明までもが連立に参加するとは思えません。
かといって、いまのような中国との緊張、ロシア、北朝鮮の圧力がある中で日本だけが政治空白を作るわけにもいかないでしょう。

偶然ですが、日本の総選挙と米国大統領選がシンクロしてしまいました。
米国政治がどうころぶかまったく不透明な時期に、日本も積乱雲に突っ込んでしまったというわけです。
ハリスなら(すかんオバさんですが)とりあえずいまのままでいいですが、勝率5割5分でトランプ有利という情報すらあがって来ています。
アジア-太平洋の安定の基軸である日米が揃って大政局ではシャレになりません。

さて、どうしますか。
来年の参院選までという区切りをつけて、一種の「救国政府」でも作りますか。
なんならゲル氏を首班に頂いたままで、君臨すれど統治せずに祭り上げ、財務相に玉木氏を充てるというウルトラCもあります。
もちろん国民民主や維新の言うことは丸飲みして予算案を通す、来年の参院選までとして、衆参同時選挙で信を問う。
そうとう無理なのは百も承知です。

後は27日の天気が雨になってくれるのが、石破自民の最後の頼みの綱です。

 

 

 

2024年10月25日 (金)

政党助成金、非公認候補にも渡る

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今日は別なことを書くつもりでしたが、また選挙ネタです。
残念ですが、これで終わりというスクープが飛び出しました。またまたオーンゴウル。自殺点計上です。
しかも赤旗のスクープです。今日の朝刊はこれでイッパイになるはずです。

「本紙(赤旗)は、非公認候補が代表を務める自民党支部の会計責任者の証言を報道。この会計責任者は、「党本部から党勢拡大のための活動費」として公示直後に政党助成金2000万円の振り込みがあったと証言しました。政党助成金は税金が原資です。
森山幹事長は23日にコメントを発表し、「党勢拡大のための活動費として支給したものです」と認めました。
自民党は公認候補の支部に、公認料500万円と活動費1500万円の計2000万円を10日付で振り込むと通知。森山氏は「候補者に支給したものではありません」としていますが、実際には非公認の支部にも公認支部と同額の2000万円を振り込んでいます。
本紙の調べでは非公認となった11人のうち、上杉謙太郎(福島3区)、中根一幸(埼玉6区)、三ツ林裕巳(埼玉13区)、平沢勝栄(東京17区)、小田原潔(東京21区)、萩生田光一(東京24区)、細田健一(新潟2区)、高木毅(福井2区)の8氏が自民党の支部長のままでした」
(しんぶん赤旗10月24日)
非公認に2000万円 自民・森山幹事長認める/裏金議員を“裏公認”/本紙特報に衝撃広がる

証拠の助成金を支部に出したという文書写真つきです。

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赤旗

投票日のわずか2日前ですから、もはやいかなる言い訳も効きません。
印象報道としてはこれほど強烈なものはかんがえられないほどで、自民党中枢は頭を抱え込んでいるはずです。
石破首相の弁解の弁。

「石破茂首相(自民党総裁)は24日、広島市で街頭演説し、派閥裏金事件を受けて衆院選で非公認となった候補側に自民党本部が2000万円の活動費を支出したことについて、「政党支部に出しているのであって、非公認候補に出しているのではない」「報道に誠に憤りを覚える」などと述べた」
(スポニチアネックス10月24日)
「報道に憤り」石破首相の発言がトレンド入り、裏金議員側に2000万円 ネットは「怒りたいのは我々」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

森山氏も同じように「政党支部に出した党勢拡大のためのもので、非公認候補への助成ではない」と言っていますが、たぶん誰もまともに聞いてはくれないでしょう。
そもそも、今回の非公認とするという党執行部の対応自体が誤っているところに、実は資金を提供していたんだ、でへへというお粗末極まるものです。
ならば初めから非公認なんぞせねばよかったので、初めは処分は終わっていると言っていたはずです。これが正解にして正道。
それを世間の声に屈した形で非公認、重複立候補を認めないと言う死刑判決の重罪に変更し、そしてまた今回それもひっくり返る、という右往左往ぶりです。もうなにを信じてよいものやら。

なんでもこれを強く主張したのは小泉ジュニアだったそうで、森山氏はモゴモゴ言っているうちに押し切られたのだとか。
あたりまえですが、非公認とするなら徹頭徹尾貫徹すべきだし、処分はすでに終わっているという初めの姿勢が正しいと信じるならば、いかなる批判にも耐えるべきでした。
この決断できない煮え切らなさ、世間の声に対する過度なおもねり、まさに岸田政治そのものです。

これで200議席を切ることは決定的になりました。
あとは「新たな連立の枠組み」をどう作るかで、たぶん水面下で協議が進行しているはずです。
国民民主、維新はできるだけ高く売るつもりでしょうし、ぜひ高く売って下さい。
この両党の政策は丸飲み、閣僚もひとりではもはや済まないのではないでしょうか。

そしてなによりこの大敗北を招いた石破内閣の責任と処分。
石破氏が「ルールを守る」なら惨敗責任をとって辞任以外ありえません。
常にグラグラしていて、朝令暮改、薄志弱行。
他人を背中から撃てても、自分ではなにひとつ作り出せない三流の評論家。
私がかねがね言っていたとおりでしたでしょう。

森山氏も切腹、小泉氏は逆さはりつけ、二度と総裁選に出なさんな。
というのは、両党が、首班に玉木氏、あるいは馬場氏を要求した場合、自民が拒むのは難しいでしょうからね。
とはいえ、馬場さんの所は議席を減らしそうですから、玉木さんしかいませんかね。
玉木氏なら石破氏よりよほどましでしょう。
いずれにしても、選挙終了後30日以内に首班指名ですから、急がねばなりません。

それにしても自民党議員の皆さん、石破茂という世にも稀なる大凶の札を引いてしまいましたね。
なんの同情も湧きません。自分らの愚かさを恨んで下さい。
しかしこれで自民の疫病神にご退場いただけるし、仮に彼の在任中に台湾有事でも起きていたら目も当てられなかったので、これもよかったのか、と思いましょう。

まぁいまさらですが、高市さんに入れておけば、こんなことにはならなかったものを。
高市さんの出番はまだまだ先です。
こんな不安定な政局で、この人を消耗させるのはもったいない。じっくり長期政権を作って下さい。
その間に苦手な泥臭い人脈を作ることです。

 

 

2024年10月24日 (木)

石破自民、自業自得でどつぼ

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やることなすことダメな時があるとは思います。
今の自民党がそうで、完全にどつぼにはまってしまいました。

解散を就任と同時にやらかしたことは、とりあえず置きます。
たぶん、野党共闘ができないことを頼みにしたのでしょうが、それにしても国民の印象は最悪でした。
自民は解散を焦ることはありませんでした。
今の立憲には共産党と組む度胸はありませんから、放っておいても個々バラバラに戦うしかなかったのです。

結果として立憲は、全選挙区に共産党候補を立てられ、しかも国民民主や維新、れいわと被って苦戦しています。
自民の自爆で議席数は伸びるでしょうが、破壊力はありません。

対照的なのが国民民主です。大躍進が噂されていますが、その理由は玉木氏が「新しい野党」のスタイルを作ったことにあります。
今回の立憲のポスターが典型ですが、なにかといえば「政権交代」では新味はありません。
2009年の時は民主党の支持率が自民を大きく上回っていました。
政党支持率の推移を見てみましょう。

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図録▽時事トピックス:政党支持率の推移

上のグラフの一番左隅が、現実に政権交代が起きた時の支持率です。
スゴイですね、自民が14.1%に対して、民主がその3倍の42%です。獲得議席数も取りも取ったり308議席。
こんな台風級の追い風がなければ、政権交代なんてできないのです。

いまでも思い出しますが、当時は村の集荷場でも例の「政権交代」とデカデカと書いた鳩山ポスターが貼られていました。
金星人に睨まれているような恐ろしいポスターです。コワイよー、と子供が引きつけを起こしそう。

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民主党アーカイブ

結果、我が選挙区では大物政治家が落選し、代わって当選したのが国政の経験なんかまるでない村の村長が民主党候補になって当選。
そのときのポスターは「一度やらせっぺよ」でしたね。(力なく笑う)
さすがに村の衆もこの破壊力にたまげましたけどね、後からこの人政務官におなりになりました。
なんというか、よく言ってあげれば手作り感溢れる政権でした。全員ど素人ですから。
素人に「一度やらせた」民主党政権時代について、ゲル氏は「悪夢のような」と形容していますが、まさにそのとおりでしたな。

では、ひるがえって、今の各党の支持率はどうでしょうか。

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政党支持率 自民党は下落し20%台に 立憲民主党と日本維新の会も伸びず NHK世論調査 | NHK | 選挙

風が吹いていますか?まったくのベタ凪です。
自民もどんどん支持率を落していますが、それでも28.6%あるのに対して、立憲は6.8%と4分の1しかありません。
これで野田氏が叫ぶような「政権交代がいちばんの政治改革」になるわきゃありません。
倒閣、倒閣、反自民を言ってりゃ野党をやっていられる時代は終わったのです。
どうやって景気を良くするのか、どうやったら中国の軍事的脅威に立ち向かえるのか、エネルギー政策はどうするのかという諸課題にリアルに答えないと野党すらできないのです。

国民民主はその点、(いろいろ不満はありますが)、現実とかみ合う政策を提示できています。
榛葉幹事長のウケが若い世代に良いことは、カビが生えた野田氏とは一線を画すると感じるからでしょう。
アホウなメディアは、森山氏が連立の組み換えを示唆したことに反応して連立入りの可能性を問うているようですが、相手にしないのもけっこう。
そりゃそうでしょうとも選挙戦の真っ最中に自分を安売りしてどうします。
言い出した森山氏が愚かなのです。

「国民民主党の玉木雄一郎代表は22日、衆院選後に自民、公明両党の連立政権に加わる可能性を東京都内で記者団に問われ、「ありません」と言明した。「『政治とカネ』の問題はとても賛同することができない。間違っているところはしっかりと物を言い続けていきたい」と強調した。 一方、玉木氏は「政策本位でやっていく。いい政策には協力する」とも語り、政策ごとに政権に協力する「パーシャル(部分)連合」の可能性は否定しなかった」
(時事10月22日)
自公連立入り「ありません」 部分連合は否定せず―玉木国民代表【24衆院選】:時事ドットコム

かくして自民の情勢は日に日に悪くなり、選挙の序盤ではほどほどに優勢だった選挙区も日を追うごとに競り負ける選挙区が出てきたようです。本質的には、石破政権が自民岩盤層の保守層を裏切ったことでごそっと離れてしまいました。
いざ自民の危機という時に支えてくれるはずの保守層は、ゲルの顔なんぞ金輪際見たくもないという空気が支配的です。

そもそも「政治とカネ」という選挙テーマをなぜか自民自ら押し立ててしまった結果、無党派層を離反させ、安倍派すり潰しを狙って公認権を乱用し、重複立候補のリストから大量の議員を外してしまいました。
そしてその代わりに、重複立候補を外された議員の代わりに、党の事務の女性を比例名簿に載せたそうです。
もう怒る気にもなりません。有権者をバカにするのもいい加減にしなさい。

これは小泉ジュニアの提言だそうで、心から大バカ野郎だと思います。
その結果、比例での激しい落ち込み現象が起きています。

今になってはすべて後の祭りです。
いまごろになって、いまでも国民的人気があると錯覚しているジュニアは、高市氏を追いかける形で非公認候補の応援に行っているようですが、そんな偽善はお止めなさい。
むしろ大敗の責任を取らされてツメ腹を切った時の自分の政治生命を心配するべきです。

今や石破首相自身が、総選挙後の30日以内に特別国会でほんとうに首班氏名を受けられるのかさえ怪しくなってきました。
石破首相と森山幹事長が揃って泡沫派閥、ジュニアに至っては無派閥(菅グループ)、これでまともな党内調整ができるはずがありません。
安倍派をここまで追い込まなければ、なんとかこの最大派閥を懐柔して、ということもなくはないでしょうが、いまや彼らは復讐の鬼になっていますからね。
何人彼らが生き残るかわかりませんが、いずれにしても選挙結果もさることながら惨憺たる党内情勢です。

 

 

2024年10月23日 (水)

北朝鮮の丁半バクチ

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北朝鮮は大バクチを打ちました。
バクチである以上、勝つか負けるかしかありません。
勝ったら核大国、負けたら亡国です。

ご存じのように、正恩はなんと信じがたいことにロシアと軍事同盟(正式にはまだですが)を締結し、早々と兵士を1万5千人送り込んだのです。
いままでこれについて、ロシアは従来この情報を「神話」と一蹴していました。
また物的証拠がなかったのですが、ウクライナが北兵士の靴のサイズを調べるロシアの調査票と装備を配布する映像を公開しました。


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NHK

「北朝鮮の兵士がロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに投入されるという見方が出る中、ウクライナ当局は、ロシア軍が北朝鮮の兵士に軍服のサイズなどを尋ねるために用意した調査票だとする文書を公開しました。
ロシアと軍事的な協力を深める北朝鮮をめぐっては、韓国の情報機関が、北朝鮮の特殊部隊のおよそ1500人が今月、ロシア極東に移送されたと明らかにするなど、ウクライナとの戦闘のために兵士を投入するという見方が出ています。
ウクライナ文化情報省の戦略コミュニケーション・情報安全保障センターは20日、SNSでロシア軍が北朝鮮の兵士のために用意した調査票だとする文書を公開しました。
文書にはロシア語と朝鮮語で軍服などのサイズを記すよう書かれているとしていますが、いつ利用されたのかや文書をどのように入手したかなどは明らかにしていません。
これに先立ち、北朝鮮の兵士がロシア国内で装備品などを受け取る様子だとする動画も公開しています」
(NHK10月21日)
ロシア軍 北朝鮮兵士に軍服など用意か ウクライナ当局が公開 | NHK | ウクライナ情勢

そして北朝鮮と見られる兵士が集合して装備を受領している風景も公開されました。

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NHK

韓国国家情報院は、北朝鮮がロシアに派兵する部隊は第11軍団で、通称「暴風軍団」になるものと見ているようです。
この暴風軍団の兵員数は1500人で、すでにロシア太平洋艦隊の揚陸艦4隻で第1次移送は終了していると見ています。

「国情院はこの日、記者団に配布した報道資料で「北の軍の動向を密着監視する間、北が8日から13日にかけてロシア海軍輸送艦で特殊部隊をロシア地域に輸送するのを捕捉し、北の軍の参戦開始を確認した」と明らかにした。
続いて「ロシア太平洋艦隊所属の揚陸艦4隻および護衛艦3隻がこの期間、北の清津(チョンジン)・咸興(ハムフン)・舞水端(ムスダン)近隣地域から特殊部隊員1500人をロシアのウラジオストクに1次移送するのを完了し、近いうちに2次輸送作戦が行われる予定」と伝えた。
対北朝鮮情報筋は「北の軍は『暴風軍団』と呼ばれる最精鋭特殊作戦部隊である第11軍団所属4個旅団(1万人規模)の兵力を派兵すると予想される」と述べた。平安南道徳川市(トクチョンシ)に駐留中の暴風軍団は配下に計10個旅団(狙撃旅団3個、軽歩兵旅団4個、航空陸戦旅団3個で構成)を置いていて、首都圏および後方浸透任務などを遂行する特殊戦部隊だ。国情院によると、ロシア海軍艦隊(輸送支援)の北朝鮮海域進入は1990年以降初めて。またロシア空軍所属のAN-124など大型輸送機もウラジオストクと平壌(ピョンヤン)を随時行き来しているという」
(中央日報10月19日)
北朝鮮地上軍、初の大規模海外派兵…「特殊部隊先発隊1500人のロシア派遣完了」(1)(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース

国情院によれば、ロシアに派兵された北兵士は極東地域のウラジオストク・ウスリースク・ハバロフスク・ブラゴヴェシチェンスク などの複数の部隊に分散配置されたようで、直ちに適応訓練を終了し戦線に投入されるとみられています。
彼ら北の兵士は、「北の軍にはロシアの軍服とロシア製武器が支給され、北朝鮮人と似た容貌のシベリアのヤクーチア・ブラチア地域住民の偽造身分証の発給を受けた」とし「戦場投入の事実を隠すためにロシア軍に偽装したとみられる」そうです。

とうぜん韓国は激オコです。
直ちにジノビエフ駐韓ロシア大使を呼んで抗議しました。

「【ソウル時事】韓国外務省の金※(※火ヘンに共)均第1次官は21日、ジノビエフ駐韓ロシア大使を同省に呼び出し、ウクライナ侵攻に参加するためロシアに送られたとされる北朝鮮の兵士を直ちに撤収させ、軍事協力を中断するよう求めた。韓国外務省が発表した」
(時事10月21日)
ロシアに北朝鮮兵の撤収要求 韓国外務省、大使呼び出し:時事ドットコム

ロシアが、はい、申し訳ない、直ちに北の部隊には撤退してもらいます、な~んて殊勝なことを言うタマなもんですか。馬耳東風、蛙のツラになんとやらです。

ただし「国際法の枠内で」と言っているところから、北部隊の投入先は彼らが「ロシア領内」だと認識している、ウクライナ4州か、クルスク地域なのかもしれません。
いずれにしても韓国はこれで対抗上、NATOと接近して牽制するしかないわけで、いままでシラっとして手を出さずにポーランドへの輸出で濡れ手に粟の火事場泥棒を決め込んでいました。

「2022年7月、ウクライナと国境を接するポーランドが韓国から戦車や自走砲などを調達すると発表しました。驚いたのは契約額です。韓国メディアによると、総額は日本円にして1兆円超。戦車980両、自走砲648門、戦闘機48機を購入するというものでした」
(NHK2022年12月6日)
ロシアのウクライナ侵攻で韓国の兵器輸出が拡大、なぜ? | NHK

これからはウクライナ支援に真面目に乗り出さないわけにはいかなくなるはずです。

ところでこの「特殊部隊」なるものですが、世界一の規模を誇っていますが、しかしちょっと考えてみてください。
韓国の国防白書によれば、北の特殊部隊の兵力は約20万人。うち8万はDMZ付近に配備されています。

この南北境界線付近に貼りついている主力が、今ロシアに派兵されたとみられる第11軍団、自称「暴風軍団」です。

2017年4月の軍事パレードでは、第11軍団と陸海空の狙撃部隊などを統合した「特殊作戦軍」として公開されました。
下写真は北朝鮮自慢の「米国式装備」の部隊で特殊部隊だと言われている一枚です。
意地悪く観察した専門家によれば、ヘルメットはアラミドファイバーの安物、夜間暗視装置は支持架が粗末でぐらついており接眼レンズの消耗が激しい粗悪品だそうです。

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北の特殊戦部隊 パラグライダー使った韓米連合司令部奇襲訓練 | 聯合ニュース

ところで、20万ですと?いくらなんでも多すぎはしませんか?
特殊部隊はスパイスのようなもので、いわば隠し味。
世界でもっとも多くの優秀な特殊部隊を持つのは米国ですら、特殊作戦軍は7万(うち2万は事務屋)です。

にもかかわらず、北朝鮮軍は20万というのは、いくらなんでも多すぎます。
このように書くとグリーンベレーやシールズが20万もいるのかと勘違いしますが、そう錯覚させるために「特殊部隊」とか「暴風軍団」などというおどろおどろした名称で呼ばしているだけで、内実はただの軽歩兵です。
一般的に師団は、基幹となる連隊に、砲兵、機甲、工兵、輸送、補給、通信、対空大隊などがワンセットされています。
しかし暴風軍団には、このような西側の重厚な支援大隊は与えられていないように見えます。
極端に言えば、小銃一丁を持たされて敵陣に殺到する、
いわば人海戦術のための軍隊です。

元来言われてきたのは、戦争初期に潜入トンネルを利用したり、潜水艦、ホバークラフト、高速上陸艇、AN2航空機、ヘリコプターなどの浸透手段を使って後方地域に浸透し、インフラや軍事施設、要人暗殺をしたり、在韓米国人を人質とすることです。
ちょうどハマスの10・7テロのようなことを北は考えているようで、おそらくソウル全体を人質にして、米国と交渉することも構想しているはずです。
しかし、今、北が南の侵攻自体を狙っているかのかどうかはたいへんに疑問ですが。
南北境界線の主力を引っこ抜いて、損耗率の高いウクライナとの戦争に投げ捨てたんですからね。

まぁいずれにしても、満足な重火力をもたない軽歩兵ですから、ひたすら精強さを誇示するには、こんなトンマな演武を見せねなりません。
腹の上でブロックを割っても、その部隊が強い証明にはなりませんのにね。(笑)

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朝鮮中央通信

いくら数がいても、こんな貧相な装備では米軍にはかないません。
彼らも正面切って米韓軍と戦えないから、このような空身の兵隊に「特殊部隊」という看板を持たせて大量に配備しているだけのことで、軍事的にはほぼ無意味です。
言い換えれば、「特殊部隊」を作りすぎて余ってしまったので、プーチンに恩を着せてロシアに派兵したのでしょう。
朝日はウクライナ戦争のゲームチンジャーになると大げさに書き立てていますが、たかだか1万5千人の軽歩兵にナニができるのでしょうか。
通常の1万5千といえば大型師団級ですから、戦車や大砲なども一定数付随しますが、この「暴風軍団」に限っていえば、ただの歩兵だけの派遣なのです。

いや待てよ、できることがあります。それは金稼ぎです。
ロシアは、今絶対的兵員不足です。プーチンは大都市があるヨーロッパ部分からの徴兵は、政権支持に直結するのでしたくありません。
そのため辺境の極東からだけ徴兵していましたが、その多くを無惨な死に追いやったために徴募しても集まらず、いたしかたなく囚人にまで手をつける有り様でした。

ロシアは自国兵士に支度金として入隊時に1万から2万ドルを支給し、さらに月給として約2000ドル程度を払っていますから、北の兵士にも同等額を支払うでしょう。

おー、夢のようなをキャッシュだぞと兵隊がよろこんだのも束の間、たぶん大部分お国に召し上げられるはずです。
正恩からすれば、もうやる気のない「南朝鮮人民の解放」なんぞで、無駄飯を食わしておくよりよほど気が利いた外貨稼ぎです。、

またキャッシュだけではなく、遅れきった北朝鮮陸軍が現代戦を学べるいい機会です。
北の軍のエライさんの脳味噌は朝鮮戦争で止まっていますから、ドローンが飛びまくり、西側の最新鋭戦車と戦えるや対戦車ロケット兵器を身をもって知ることのできる貴重な機会になるはずです。
実際、北はすでに輸出済みの短距離弾道ミサイル(SRBM)「KN23」の性能があまりに粗悪なのでロシアから改善を求められているようですが、品質改善にもなるでしょう。(←そうとうに情けない)
そしてなにより、この派兵で恩を着せて、核兵器技術を移転させようという腹づもりなのでしょう。

ただし、これで金家の先祖伝来のコウモリ外交は以後できなくなります。
北朝鮮にとってかつての冷戦時代がベストでした。
資本主義の魔の手から社会主義陣営を守る防波堤ということで、東側諸国からまんべんなく支援を得られてヌクヌクと暮らせ、軍事的緊張感も適度にあって楽しく軍事優先政治をやっていられましたからね。
この国の地勢学的スタンスを武器にして、中国につくとみせてはソ連に媚を売りというまねを平気でしてきたのですが、これでロシアベッタリの国ということになってしまいました。
泉下の初代、2代目に怒られますよ。

 

 

2024年10月22日 (火)

わが国、3度目のテロを許す

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またまた政治テロが起きました。
今度狙われたのは政党本部と、首相官邸です。しかも選挙中です。
選挙中に「オレが出られないから」という幼児のようなことを喚いて火炎瓶を投げ、ガソリンを大量に積んだ車を首相官邸に突入させました。

「東京都千代田区永田町の首相官邸や自民党本部に火炎瓶や発煙筒のようなものが投げられた事件で、警視庁に逮捕された埼玉県川口市の職業不詳、臼田敦伸容疑者(49)は、交流サイト(SNS)上で、選挙の供託金廃止を訴えていたことが19日、分かった。
臼田容疑者のものとみられるアカウントは、SNS上で「なにが首相公選制だよ。その前に制限選挙をどうにかしろ。選挙供託金制度を廃止しろ」「300万円供託しなければ立候補できない選挙なんて何回やったって意味がない」などと投稿していた。
(産経10月19日)
首相官邸に突っ込もうとした男 SNSで供託金廃止訴え 過去には原発再稼働反対運動にも参加 - 産経ニュース

このテロリストは、自民党本部に火炎瓶を5本投げ込み自動車で逃走。
数百メートル離れた首相官邸の防止柵に突っ込み、自動車から降りて薬液を散布したり発煙筒を警察官に投げつけ、公務執行妨害の現行犯で逮捕されました。
こんな重大テロをしてもただの公務執行妨害です。
もちろん後から罪状は沢山つくんでしょうが、のどかな国です。

わが首相の弁。
まず、襲撃の当日の発言。

「19日午前、鹿児島県薩摩川内市での街頭演説の冒頭、「私どもは、民主主義がこういう暴力に屈することがあっては絶対にならないと思っている。選挙の期間中にこのようなことが発生をした。この選挙、そして民主主義が暴力によって破壊されることがない、そして何よりも国民、市民の安全が、安心がきちんと守られるように、今後とも万全を尽くす」
(朝日10月19日)
石破首相「暴力に屈してはならない」 火炎瓶事件うけ街頭演説で訴え [自民]:朝日新聞デジタル

「暴力に屈してはならない」という発言は、野党の野田氏が言うならいいでしょう。野田氏にはなんの権限もありませんから。
しかし、国家権力の頂点にいる人物が「暴力に屈しない」はないもんです。
いままで斜に構えていたからこういう言い方になります。これではまるでただの被害者の台詞です。
首相がやるべきは暴力に「屈しない」ではなく、「根絶する」ことを誓うことです。

このどこか傍観者の態度は改まるどころか、次はこうです。

「石破首相は冒頭、前日の事件に触れた上で「最近、警備がものすごくきつくなってしまった。世の中大変物騒になった。こんなに離れた場所からしゃべるのは好きではなく、皆さま方の中に入って、手を握ってお願いをしたい」と語った」
(紀伊民報10月21日)
「世の中大変物騒に」 厳しい警備態勢の中、石破首相 和歌山県海南市で演説(紀伊民報) - Yahoo!ニュース

「世の中たいへんに物騒がせになった」はないでしょう。「物騒がせ」という認識のようです。まるでひとごと。
この人の最大の欠陥である「他人ごと」と「斜に見る」癖は、自分の党本部と官邸が襲撃されても治りません。
ため息しか出ません。

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産経

車には20個ものガソリンが積んであったそうですから、わずかの火で着火します。
ガソリンはただ燃えるのではなく、爆発物同様の効果があります。
その場合、周囲十数メートルに及ぶ火球が発生し、警備の警官多数を巻き込んで殉職者を出した可能性があります。
いわゆる自爆テロです。

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最も大きく爆発する燃料はどれ?| ナショジオ

これがホワイトハウスに自動車で突入を企てたのなら、問答無用でその場で射殺されたでしょうが、わが国は世界有数のテロリストに優しい国でしたから身柄拘束ていどで済みました。

 日本に欠けているのは、現代が「テロと戦争の時代」だという厳しい認識です。
だからテロリストに対して世界一大甘な国となってしまっています。
いやむしろ、メディアに至っては、テロリストらが自分らと親和性のある主張を持つせいなのか、彼らを「抵抗者」として讃美する始末です。
メディアはこのようなことを教えてしまったのです。
「大丈夫だよ、手製銃器で首相を殺しても義士として仰がれるし、死刑になることはない。手製爆弾を投げつけてもたいしたことはない。目的が正しければナニをしても許されるんだ」、と。

かくして手製銃器や爆弾を持った素人テロリストが首相を暗殺し、ガソリンを大量に積載した車両で首相官邸を襲うようなテロ事案が続々と生まれるということになります。
そしてやがて彼らは本物の銃器と爆弾、ロケット砲で武装することになるでしょう。
そんなものは海の外には溢れているのですから。

また海外テロリストが日本を標的にしないと思い込んでいることも解せません。
もしこれがハマスていどのレベルのテロリストが実行した場合、官邸正門を警備していた警官隊は一瞬で全滅、そのまま官邸本館にまで突入されて占拠されるか、爆破されていたかもしれません。

首相が居た場合、身柄を取られて人質ということもありえました。
SPという身辺警護陣もいますが、安倍氏暗殺を許したことを見るかぎりまったく木偶の坊です。

その場合、今やっている選挙はここで中断。
日本は民主主義がテロに屈したくにとして世界に認識されるはずです。
いずれにしても、SATを自民党本部や官邸の門の付近に常駐させたほうがいい時期になったようです。

日本もローンオフェンダー対策を全国で統一した司令塔を作るようです。

「警察庁は今年4月、全国の警備、公安部門に司令塔を置き、兆候情報を一元化する態勢を構築。警視庁公安部は来春、これまで2つの課に分かれていた、情報集約と、爆発物の材料となる市販品の購入者への身分確認など対策を専従で担当する課を新設する方針だ。
警察当局は現場の警察官が把握した情報の吸い上げとともに、サイバーパトロールや人工知能(AI)を使ったSNSなどの文脈解析も取り入れ、兆候の察知に努めている」
(産経10月19ニチ)
選挙期間中の「テロ」再び 兆候つかみにくい「ローンオフェンダー」、態勢強化の途上(産経新聞) - Yahoo!ニュース

しかし、このようなタイプのテロリストは党派には加わらず日常的には「市民」の顔をして暮らしていますから、この網にひっかからないでしょう。
そしてこのような男を「やむにやまれぬ抵抗者」として褒めそやすメディアがある限り、増えることはあっても減ることはありません。
この男についてはいくつかの情報がありますが、あえて一切記さないことにします。
テロリストにとっての報酬は、動機の拡散ですから。

 

 

2024年10月21日 (月)

いきなり最終回か、石破内閣青木率5割切る

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石破氏と野田氏の顔を、SNSでもテレビでもイヤでも見せられます。あー、あの暑苦しい顔なんぞ見とうない。
時事が最新の内閣と政党支持率を出しました。なかなかのものです。

「時事通信が11~14日に実施した10月の世論調査で、石破内閣の発足後初の支持率は28.0%だった。発足時としては、2000年以降の歴代内閣で最低を更新。岸田内閣で最後となった9月調査の18.7%は上回ったが、政権維持の「危険水域」とされる2割台にとどまる厳しいスタートとなった。
 発足時の比較で、直近の岸田内閣40.3%、菅内閣51.2%、第2次安倍内閣54.0%を、いずれも下回った。00年以降の最低はこれまで、森内閣の33.3%だった」
(時事10月17日)
石破内閣支持28%、発足時最低=比例投票先、自民26%・立民10%―時事世論調査 | 時事通信ニュース8(

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時事

ちなみに時事の世論調査は対面式で、他社の設置電話に対するアンケートと違って数字が厳しく出るという特徴があるぶんだけリアルな数字だと言われています。

では、この内閣支持率28%に同じく時事の調べた政党支持率を足して青木率を見てみましょう。
自民の政党支持率は18.9%というすさまじい数字のようです。

「政党支持率は自民が2.2ポイント減の18.9%、立民が0.6ポイント増の4.6%。以下、公明は4.0%、維新は2.2%、共産党とれいわ新選組は1.5%、国民民主党は1.2%、参政党は0.4%、社民党は0.3%。「支持政党なし」は62.2%だった」
(時事前掲)

すると青木率は46.9%となります。ドヒャー!
青木率とは内閣支持率と政党支持率を足した和のことで、これが50%を切ると政権が倒れるという数字じゃないですか。
ご祝儀相場もあろうことか、いきなり最終回という数字が出ちゃいましたね。
そして読売の選挙結果の予想です。

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読売

「自民が小選挙区選に擁立した266人のうち、優位な戦いを進める候補は100人前後だ。120人近くが接戦を演じ、40人超は劣勢の戦いを強いられている。比例選での獲得議席は、前回の2021年衆院選の72議席を下回りそうだ。公示前の247議席を割り込む可能性があり、単独過半数の維持が焦点となる。
政治資金収支報告書に不記載などがあった自民前議員ら44人は、約半数が小選挙区選で後れを取っている」
(読売10月16日)
衆議院選挙:与党が過半数の見通し、自民苦戦・立民は議席増の勢い・維新は不振…読売序盤情勢調査 : 読売新聞

もうひとつ朝日の世論調査も出ています。

「27日投開票の衆院選(定数465)について、朝日新聞社は19、20日、全国約36万人の有権者を対象に電話とインターネットによる調査を実施し、全国の取材網の情報も加えて、選挙戦の情勢を探った。現時点では、(1)自民党、公明党の与党は過半数(233議席)を維持できるか微妙な情勢で、自民は公示前の247議席から50議席程度減る見通し(2)立憲民主党は公示前の98議席から大幅増(3)国民民主党、れいわ新選組に勢い――などの情勢となっている」
(朝日10月20日)
自公過半数、微妙な情勢 自民は単独過半数割れの公算 朝日情勢調査(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

ほぼ同じで自公の過半数割れと出ています。
おかしいなぁ。石破氏は、メディアが大好きな「首相にしたい人第1位」だったんじゃなかったんですかね。
それがホントになるやいなやドスンっと落す。残酷だなぁ。

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岸田総理の交代を望む声が7割に「次の総理」は誰?ランキングは大混戦 | TBS NEWS DIG 

上の調査なんぞ、TBSがした8月11日のものですが、どのジャンルでも第1位の超人気者で、「理想の首相」だったはずです。
それがたった2カ月でボロボロ。いきなり政権末期。

こんな調査自体がナンセンスだったのか、ゲル氏の化けの皮が一気に剥がれたせいなのかどちらなのでしょうね。
たぶんどちらもでしょう。

メディアは、首相は人気で選ぶなんていうワイドショー的風潮を作っておいて、彼の政策もろくに調べもせず、ただひたすら反アベのヒーローというだけでゲル氏を囃し立てていただけです。
それが、どういう時の流れか高市にだけは政権を渡したくないという岸田氏の意向と合致してしまい、はしなくも本当に首相になってしまったという悲喜劇です。
今、選挙を打てば野党は準備不足で楽勝というだけの理由で就任と同時に解散という奇手に出たら、国民から総スッカンです。
解散権の濫用もいいところで、しかも就任前の平議員の時に表明したら憲法違反を言われてもしかたがありません。

しかも政策は前例踏襲ですから、これでは叩かれるためだけに、首相になったようなものです。
仮にこの選挙を乗り切ったとしても、予算を通したら参院選前にお役御免でしょう。

早くも、この早期解散を進言した森山幹事長は、過半数割れを予想して連立の枠組み拡大を言い出しています。

自民党森山裕幹事長は20日のNHKの討論番組で、衆院選(27日投開票)後に連立政権の枠組みを拡大する可能性に言及した。「(自民、公明両党で)過半数割れをしようとしまいと、同じ政策をもって国の発展を図ろうという政党と協議は前向きにしていくべきだ」と述べた。協議の対象について「どの党を念頭に置いている(という)わけではない」と語った」
(時事10月20日)
連立枠組み拡大に言及=自民・森山幹事長【24衆院選】|ニフティニュース

国民にでも秋波を送るつもりでしょうが、公明がなんというか。
玉木氏ならこんな先が見えている泥船に乗るのは断るでしょう。

幼稚なテロが起きましたが、これについては明日にします。

 

2024年10月20日 (日)

日曜写真館  この村の深息に似て蕎麦の花

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花蕎麦のひかり縹渺天に抜け 大野林火

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道草の 先陣は蝶 蕎麦の花 伊丹三樹彦

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蕎麦咲くや鼻をまづさす風白し 石川桂郎

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空からは蕎麦白雲や渡鳥 野坡

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風かるき一と日のをはる蕎麦の花 鷲谷七菜子

 

 

2024年10月19日 (土)

ネタニヤフ、復讐は終わりました

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ハマスのガザの最高指導者で、10月7日のテロを企画し実行したヤヒヤ・シンワルがガザで発見され、殺害されました。
かつてイスラエルで収監されて、捕虜交換で出てきた経験があるために、イスラエルはシンワルのDNA情報を保有しており、本人のものと確認したようです。

【イスラエル軍によると、ガザ南部ラファで16日、ハマス幹部が使っているとみられる建物を同軍が襲撃し、戦闘員3人を殺害した。そのうちの1人がシンワル氏だったという。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「私たちは今日、約束した通りに借りを返した」、「これはガザにおける戦争の終わりではないが、終わりの始まりとなる」と述べた。
イスラエル軍はこれまで、シンワル氏が護身のためイスラエル人の人質を連れて移動しているとしていたが、建物に人質がいた痕跡はなかったという。
ハマスはシンワル氏の殺害についてまだコメントを出していない。後任についても不明。
ハマスをめぐっては、政治部門のトップだったイスマイル・ハニヤ氏が7月、イランの首都テヘランでイスラエル軍の空爆によって殺害された。それを受け、シンワル氏がハマス全体の最高指導者に指名され、ハニヤ氏の役割も引き継いでいた」
(BBC 10月18日)
ハマス最高指導者シンワル氏を殺害、イスラエルが発表 - BBCニュース

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ヤヒヤ・シンワル
読売

シンワルは、ハニヤが殺されたあとの、政治局トップに選出されていました。
これでハマスは、最高指導者イスルイル、・ハニヤ、前線部隊であるカッサム旅団ナンバー1のムハンマド・ディフ、同ナンバー2のマルワン・イーサ、そして海外でのテロ指導者だったファタハ・シャリフに継いで、新たに指導者に据えたシンワルまで殺されたことになります。
日本人にはまねできないなんとも徹底した報復で、イスラエルはこういった暗殺はただの復讐ではなく抑止だと心得ています。

昨年10月のイスラエル民間人テロを首謀したハマスの重要幹部は、この1年で次々と命を落としたことになります。
今回のシンワルは、これらの中でも最も過激な一派で、一切の妥協を排して戦うことを宣言していました。
いまやレバノンにまで飛び火しているガザ戦争の発端を作ったのはこの男です。
この男が討ち取られたことで和平は近づくでしょうか。
残念ながら、ネタニヤフを辞めさせない限りそれは厳しいと思います。

日本には、イスラエルをヒトラードイツに例え、レバノン侵攻をズデーテン地方への進軍に例えている反ユダヤ主義者たちがいます。
彼らはイスラエルを「殺人嗜好国家」とまで言い、イスラエルは人殺しがしたくて戦争をしているヒトラーのような狂人なのだ、といいたいようです。
憎悪表現そのもので、こんなことを欧米で言ったら反ユダヤ主義と言われます。

冗談ではない。イスラエルはやりたくてこんな戦争をしているわけではありません。
あくまでもハマスやヒズボラが先にテロを仕掛けて、それに対しての反撃の形をとっています。
ネタニヤフは愚かな政治家ですが、ヒトラーのように世界征服なんぞみじんも考えていません。

そんなことをする意味もないし、米国に頼って兵器供与をしてもらっているようなイスラエルに可能なはずがありません。
たとえば、今、イスラエルがイラン決定的報復に踏み切れない理由はなんだと思われるでしょうか。
イスラエルにとって脅威度が最も高いのは、いうまでもなくイラン核施設です。
ぜったい核兵器を完成させない、これがイスラエルノ強い意志です。
チャチなロケット弾を飛ばすしかできないヒズボラと違って、本家のイランは着々と核武装を進めています。
しかし核濃縮施設などは、深さ80から100mにあります。

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ナンタツ核濃縮施設
ARAB NEWS 

「プラネットラボ社が4月に撮影し、AP通信が分析した衛星写真からは、イランがナタンツの南側フェンスのすぐ向こうにある「Kūh-e Kolang Gaz Lā」または「つるはしの山」と呼ばれる場所の地下を掘っていることが明らかになった。
ジェームズ・マーティン不拡散研究センターが分析した別の画像によると、山腹に4つの入り口があり、2つは東に、残り2つは西に掘られている。それぞれの入り口は幅6メートル、高さ8メートルである。
作業の規模は、西側に2つ、東側に1つある大きな土塁から測ることができる。
同センターの専門家はAP通信に対し、廃物の山の大きさと他の衛星データから、イランは80メートルから100メートルの深さに施設を建設している可能性が高いと述べた。AP通信のみが入手した同センターの分析は、衛星画像に基づいてトンネルシステムの深さを推定した最初のものである」
核合意復活の交渉は停滞、西側諸国に抗う地下深くのイラン核施設|ARAB NEWS 

地下80~100mという深い場所の施設を破壊するにはMOP爆弾GBU-57という大型地中貫通爆弾を使用せねばなりません。
重量は実に約2tで、イスラエルが保有する戦闘機ではこれを運搬する能力はありません。
唯一西側でそれが可能なのは、グアムにいる米軍のB1ないしはB2だけです。
映画『トップガン』でF/A18がやっていましたが、あくまでもあれは映画ですからね。
大型貫通爆弾 - Wikipedia

このようにイスラエルの軍事能力は限定的であり、最大の脅威であるイランの核すら取り除けないのです。
それをナチスドイツに例えるなど失笑します。

では、なぜこのような周辺地域、国家と戦争になるのでしょうか。
ガザにしかり、ヨルダン河西岸にしかり、レバノン南部にしかり、イスラエル軍が撤収したとたん、テロリストは目覚めてまた再び攻撃を仕掛けて来るのが通例だからです。

では、永久に軍を駐留させておくのかということになります。
事実、それに近い考え方をするのがネタニヤフとユダヤ教右派です。
彼らは大イスラエル主義、ないしはネオシオニズムの思想を持っています。
これはこのようなイデオロギーです。

「アラブ人のイスラエルに対する悪感情が反ユダヤ主義に起因している以上、彼らと平和裏に共存しうると考えるのは幻想に過ぎないと批判している。また、イスラエル国内のアラブ人は第五列にあると考え、平和を実現する唯一の方法は「抑止と報復」にあるとしている」
ネオ・シオニズム - Wikipedia 

正直言ってげんなりします。ユダヤ教の内部に眠っている選民思想を具現化したものです。
彼らが考える、このガザ戦争の解決は、ガザと西岸の完全支配、これらの地域からのイスラム教徒の完全排除です
そして自治政府を完全に拒否し、イスラエルの準州とすることです。
これで解決するとほんとうにネタニヤフらが思っているなら、狂気です。

対話のできない相手はいます。平和の意味すら共有できない人たちも存在します。
ハマスやヒズボラ、その黒幕のイランとイスラエルは永遠に対話が不可能でしょう。
それは一面事実ですが、彼らはもまたイデオロギーである以上、地上から消滅することはないのです。
だからどこかで折り合いを付けねばなりません。
ネタニヤフ、今、あなたは「復讐は終わった」と語りました。ならば直ちに停戦に応じなさい。
もう10月7日の復讐は終わったのです。

 

2024年10月18日 (金)

石破自民、延命するかも

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ふー、民主主義というのはむずかしいですね。
入れる党がない、いったいどこに入れたららいいんだ、という声も聞こえますが、かといって棄権なんぞしたくない。
さてさて困りましたね。

選挙状況は、予想どおりです。

「NNNは、読売新聞と衆議院選挙の世論調査を行い、独自の取材も加えて序盤の情勢を分析しました。
その結果、自民・公明の与党で過半数の勢いであるものの自民党は議席を減らし単独で過半数を維持するかは微妙な情勢で、多くの選挙区で与野党が競り合っています。
衆議院選挙は小選挙区289、比例代表176の465議席をめぐって争われます。
NNNが、読売新聞と15日から16日にかけて世論調査を行い独自の情勢取材も加えて分析したところ、自民党と公明党は石破首相が勝敗ラインとしている「与党で過半数233議席」を上回る勢いとなっています。しかし、自民党は公示前の247議席から議席を減らす見通しです」
(NNN10月16日)
衆院選 自民・公明で過半数の勢い(2024年10月16日掲載)|日テレNEWS NNN (ntv.co.jp)

他にもでていますが、似たりよったりで、自民は単独で過半数の233議席を維持できるかできないかの瀬戸際。
公明も公示前の32議席を維持できず、数議席、減らす可能性があります。
合わせればなんとか政権維持できるかどうか、という情勢のようです。

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XユーザーのKazuto Suzukiさん

一方、問題は野党ですが、立憲は公示前の98議席から上積みし130議席を超える勢いだそうです。
ただし、野田代表が目指す政権交代の実現にははるかに及ばないようです。
他の野党はどうかといえば

「日本維新の会は公示前の44議席から30議席台になる見通しで苦しい戦いとなっています。
共産党は公示前の10議席を上回る情勢です。

また、国民民主党は公示前の7議席から議席を上積みする勢いです。
れいわ新選組は公示前の3議席から大きく増やす情勢です。
社民党は公示前の1議席を確保できそうな見通しです。
参政党は1議席を獲得する勢いです。
こうした中、政治団体の日本保守党は選挙区でも比例代表でも議席を獲得する勢いで政党要件を満たす5議席を獲得する可能性があります」
(NNN前掲)

維新の減速、国民の微増、れいわ増加、共産現状維持、参政は1議席、そして保守党はやや驚いたことには5議席を獲得して政党要件をみたしてしまいそうです。
国民が伸びるとすればたいへんによいことで、このような野党があることで日本の政治は救われます。
保守党が政党要件を満たせば、支持するかどうかは別にして面白い展開となります。
というわけで、メディアの「金権裏金」というめった打ちにかかわらず、なんとか石破自民は沈没だけは免れたという情勢です。

石破氏が、殿、ご落城でございます、お腹をお召し下さいませ、介錯は不肖森山が、という最悪は回避したということのようです。
なぜでしょうか。野党の敵失のためです。

野田さんが公示一発目に吠えたのが、なんとまぁ増税やるぞ!です。

「立憲民主党の野田佳彦代表は14日のTBS番組で金融所得課税の強化に言及した。「もうちょっとマーケットが落ち着いたような段階で20%から25%ぐらいを含めて税率を高めることはありえる」と発言した」
(日経10月15日)
立憲民主党・野田代表、金融所得課税「25%に上げもありえる」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

増税を公約にして勝った選挙はないと言いますが、思えば野田氏って増税フェチだったんですよね。
野田氏といえば三代に渡って日本を支配した民主党政権のクローザーでした。

初代があの金星人、2代目がクレージーなまでにイラチの人(今回ひっそり引退しました)ですから会話成り立ちません。
正直、アソコまでイッてしまうと、宇宙翻訳機が必要でした。
そして野田氏に替わってホっとしたことを覚えています。あー普通の日本語が通じる人が来た、とね。

しかしやはりそこは民主党。結局、彼がやったのは復興税に加え、当時は5%だった消費税の合計税率(消費税+地方消費税)を8%、10%と段階的に引き上げる法案を突っ込んだことです。
増税法を作られために、後任の安倍氏はなんとか引き延ばすのに惨憺たる苦労をすることになります。

ですから、有権者の皆さん、「政権交代が一番の政治改革」なんて囃されてその気になって、立憲政権になれば増税されない、なんて思ったら大間違い。
政権とったら、増税しますよ、そう野田代表は言ってしまったのです。気は確かでしょうか。

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「自民政治に決別を」 立憲民主党の野田佳彦代表 - 産経ニュース (sankei.com)

そして「物価上昇ゼロ」、つまりインフレ率ゼロということは、政府金利を上げて無理やり景気を冷凍することです。
今の日本が加熱状態にあって少し冷やしたほうがいいと思えるような局面なら、それもいいでしょう。
今の米FRBがやっていることですね。
しかし日本はいまだコロナ禍の経済停滞から抜け出しきっていません。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、「グラフで見る景気予報 (2024年4月)」で景況判断についてこのように述べています。

「物価高による内需の低迷を背景に景気は足踏みしており、すでに後退局面入りしている可能性がある。
内需においては、雇用が緩やかに改善し、賃金が増加する中で、物価高による実質賃金の低迷の影響に加え、コロナ禍明け後のサービス需要の回復も一巡しており、個人消費は弱含んでいる。これに対して企業部門では、コスト高によって業績改善テンポが鈍りつつある中、景況感は非製造業で改善しているが、製造業では自動車生産減少の影響で悪化している」
グラフで見る景気予報 (2024年4月) | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

つまり、GDP比率54.2 %と半分強を占める個人消費は、内需の低迷を背景にして伸びていません。
景気は弱含みで足踏みしており、すでに後退局面入りしている可能性があります。
確かに賃上げがなされましたが、物価高による実質賃金の低迷で可処分所得が伸びていないために、コロナ禍明け後のサービス需要の回復も一巡して終わってしまいました。

また企業部門でも、人件費などのコスト高によって業績改善テンポが鈍りつつあります。
それは景気がよくて賃上げしたのではなく、上げないと人材が来なくなる恐怖から防衛的に賃上げした中小企業が6割を占めているからです。

「賃上げ実施予定企業(「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」もしくは、「業績の改善がみられないが賃上げを実施(予定を含む)」と回答した企業)を100とした場合の「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合をみると、「前向きな賃上げ」が40.9%なのに対し、「防衛的な賃上げ」は1月調査(60.3%)より1.2ポイント減少したものの59.1%と、6割近くにのぼった」
中小企業の7割超で賃上げを実施・予定、正社員で4%以上の賃上げを行う企業は3割台に(2024春闘における賃上げの状況:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年7月号)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

このような景気が弱含みの状況で増税し、金利を上げて景気をさらに冷やし、さらに最低賃金を1500円になどという立憲の公約を実行したら、今の弱含みから本格的不況に突入することでしょう。

こういうことを選挙戦第一声で野田氏は叫んだのですから、勝つ気があるのか首を傾げたくなります。
相対的に石破自民党のほうがはるかにマシということになります。
石破氏の最大の応援団は野田氏だったというお粗末でした。

おまけに立憲は野党共闘がまったくダメ。国民やましてや維新は立憲との候補者調整を拒否しました。
いままでの左傾化路線を嫌ったのです。

皮肉なことに、枝野氏やレンホー氏が主張してきたとおり、立憲が勝てる条件は共産党と手を組むことしかないのです。
直近の2021年10月の衆院選のデータから見ると、立憲候補が当選した57の選挙区のうち実に54選挙区で、共産党は候補者を立てていませんでした。
つまり、共産党と候補者調整をせねば、立憲が勝てないというのは客観的にはそのとおりなのです。
しかし共産と組むとおんぶお化けで、共産党という巨大シロアリに喰い荒らされ、国民や維新は共闘を拒否することが見えていました。
共産党と手を組めば、連合が黙ってはいない、こちらを選べばアチラが立たずというわけです。さて困った。

一方共産党は、立憲との野党共闘の秋波を送り続けましたが、とうとうブチきれて今回は最大限立候補者を出すという方針に転換しました。
つまり各選挙区に1名候補を出すということです。

「共産党の田村委員長は、党の中央委員会総会であいさつし、次の衆議院選挙に向けたほかの野党との共闘について「立憲民主党によって基盤が損なわれている」と指摘した上で、小選挙区に最大限の候補者を擁立する方針を示しました」
(NHK9月30日)
共産 田村委員長 衆院選の小選挙区 最大限の候補者擁立の方針 | NHK | 衆議院選挙

というわけで、立憲の「勝つ気はあるのか」という自爆的選挙方針によって、自民はかろうじて過半数割れをしないで済むかもしれません。

 

2024年10月16日 (水)

北朝鮮、ロシアに兵士の飢餓輸出

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この所、正恩のニュースがやたら多いので憂鬱です。
ムン時代の名残の南北道路をわざわざ爆破してみたりするパーフォーマンスをしています。
さぞムン閣下はお嘆きになられるでしょう。
韓国野党はユン大統領に、お前が北を煽ったからこうなったんだと突き上げているようです。
「(韓国)合同参謀本部(合参)はこの日、「北朝鮮軍は本日正午ごろ、南北連結道路の京義線・東海線の軍事境界線(MDL)以北の一部区間を爆破した」と発表した。北朝鮮は軍事境界線の10メートル先から京義線は70メートル、東海線はそれよりやや短い区間に数十の穴を掘り、各穴にTNT数十キロを設置して爆破した。合参によると、爆破には2本の道路にそれぞれショベルカー2台、ダンプカー4~5台が動員された」
(ハンギョレ10月16日)
北朝鮮、「南北和解の象徴」2本の道路を爆破(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース
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この爆破された道路は、南北の見せかけの蜜月時代に作られたシンボルで、2004年に操業開始した「開城工業団地」(ケソン)に繋がる道でした。
構想されたのはキムデジュン(金大中)とキムジョンイル(金正日)の時代です。
しかし、2013年の北の核実験によって事実上廃棄されました。
韓国が技術と資本を出し、北朝鮮が土地と労働力を提供して、大規模な工業生産を成功させ、しかも南北融和という一粒で3度オイシイという腹づもりでした。
だいたいこういうムシがいいプランは破綻します。
全員が自分の利害だけしか考えない寄り合い所帯ですし、そもそもひとり独裁の国相手ですから、気分が変わればお終いです。

2004年に進出した韓国の厨房器具メーカーが最初の鍋を出荷した際には、両国の官民要人が記念式典に揃って出席して賑々しく行われました。
以後、一時期は最盛期で衣料メーカーなど韓国企業約120社が進出し、約5万人の北朝鮮の労働者がこの工業団地で働いていたこともあります。
北にとっては貴重な外貨獲得の窓口であり、韓国企業には低賃金労働者というメリットがありました。
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しかし一皮むけば、北は非常な低賃金で使われていることに気がつき、韓国は支払ったカネで核ミサイルを作られていることを知ることになります。
今回のロシアへの派兵も似たようなものです。
今、あの男が元気なのは、北朝鮮がかつてない「好況」に恵まれているからです。
それはいまや頭をペコペコしてモノを請わねばならなかった中国とは違い、な、なんと上目線で「同盟関係」を謳える国が現れたからです。
それがプーチン・ロシアです。
ウクライナ紙の「キーウ・インディペンデント」の記事からです。
「北朝鮮はウクライナに対する戦争努力を強化するためにロシアに1万人の兵士を派遣したと、この問題に詳しい西側の外交官が10月15日にキエフ・インディペンデント紙に語った。
モスクワと平壌の間の軍事的関係の深化に対する懸念は、今週劇的にエスカレートした。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10月13日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を支援する計画には、今秋の「北朝鮮の戦争への実際の関与」が含まれると述べた。
西側の外交官は、キエフ・インディペンデント紙に、彼らがどのような兵士なのか、あるいは彼らの役割が何であったのかは不明だと語った。キエフ・インディペンデント紙はウクライナ外務省に連絡を取ったが、記事掲載時点では回答は得られていない。ウクライナの軍事情報機関(HUR)はコメントを拒否した。
ロシアと北朝鮮が軍事関係を深める中、西側の外交官や専門家は、ウクライナでコストのかかる戦争を続けるために、モスクワが資源の必要性が高まっていることを示していると強調している。
2019年から2022年までモスクワに駐在した英国の国防担当官、ジョン・フォアマンCBE氏は、キエフ・インディペンデント紙に対し、「これは、ロシアとその軍が過去2.5年間で北朝鮮に支援を懇願し、借り入れ、購入しなければならなくなったことを明確に示している」と語った。
今年初め、両国はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の平壌訪問中に相互防衛協定に署名した。
同盟の一環として、北朝鮮軍は翌月、工兵部隊がドネツク州の地上でロシア軍に加わると発表した」
北朝鮮はロシアに10,000人の兵士を送った、と西側の情報源は言う (kyivindependent.com) 

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パレード用軍隊です。

gendai.media

また別の情報では3千人派兵したという情報も存在します。

「英BBCロシア語版などは15日、複数のウクライナ情報機関関係者の話として、最大3000人の北朝鮮兵の部隊がロシア極東ブリヤート共和国ウランウデ付近の露軍基地で、訓練を受けていると報じた」
(読売10月17日)
ロシアへ派遣された北朝鮮兵、ウクライナが侵入のクルスク州に展開か…「18人逃亡」報道も : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

ただし、これに関する映像や文書の証拠は見つかっていません。
しかし、非常に信憑性があるニュースで、これが真実ならば北は砲弾やミサイルなどの武器だけではなく、兵員も数千から1万人規模で派兵していることになります。

いままで北が一定数の軍事要員をロシアに送っているとは言われていましたが、それは輸出したミサイルの軍事コンサルタントであって、現実に前線に出てドンパチやる兵員とは思われていませんでした。

送り込まれた北の兵士は、いったんブリヤートの基地に送られ、そこの身分証がロシアから与えられているとの情報もあります。
ブリヤートはもっとも召集をかけられた少数民族地域で、多くの戦死者を出しています。
ブリヤート人はアジア系ですから、偽装するにはうってつけです。
ロシアは少数民族の兵士たちを、ほとんど訓練もないまま戦場に送っていましたので、北の兵士もこのような使われ方をするであろうことは想像がつきます。

北とロシアは今年10月14日に朝露相互防衛条約を締結しています。

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ロイター

「モスクワ 15日 ロイター] - ロシア大統領府のペスコフ報道官は15日、6月に北朝鮮と締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」について、あらゆる分野での戦略的協力を定めていると指摘。ただ、条約に盛り込まれた相互防衛条項を実際にどのように運用するかについては言及を避けた。
同条約はプーチン氏が6月に北朝鮮の平壌を訪れ、金正恩朝鮮労働党総書記と首脳会談を行った際に署名。相互防衛条項についてはどちらかの国が侵攻された場合、防衛支援を提供すると説明していた。
ペスコフ氏はこれに基づき朝鮮半島での紛争でロシアが北朝鮮を支援する、あるいはロシアが西側諸国と衝突した場合に北朝鮮がロシア側につく可能性があるという意味か問われ、条約の文言は「極めて明確」で説明の必要はないと応じた。
同条約は「安全保障を含む全ての分野での真に戦略的で密接な協力を意味する」と語った。
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は今週、北朝鮮がロシア軍に人員を派遣していると非難した」
(ロイター10月14日)
ロ朝相互防衛条項は「明確な内容」とロ大統領府、運用には言及せず | ロイター (reuters.com)

 現在、北朝鮮はロシアに膨大な軍事支援を送っているのは知られた事実でした。
その供給量はなんと砲弾を100万発。
大砲こそ生命、戦場の女神とあがめるロシア軍の実に2カ月分だそうです。

というか、100万発でもたった2カ月分でしかないというべきでしょうか。
いくらあっても足りませんから、ロシアはあればあっただけ買うはずです。
正恩はここにビジネスチャンスを見つけたのでしょう。

「米紙ワシントンポストは4日、今年のウクライナ戦争の膠着状況を振り返る深層企画記事で、韓国製の155ミリ砲弾がウクライナに間接支援された過程を紹介した。その量は最大で33万発に上る。一方、北朝鮮はロシアに100万発の砲弾を提供したとされる。ウクライナ戦争はなお長期化の様相を見せている。今後も朝鮮半島からの直接間接の弾薬供給が続く可能性は高い」
(デイリーNK2022年12月6日)
ウクライナに30万発の韓国製砲弾、ロシアには北朝鮮から100万発…米紙など報道 #専門家のまとめ(高英起) - エキスパート - Yahoo!ニュース 

しかしそれにしても、いままで盟友のベラルーシでさえ派兵を渋っていたのに、砲弾のみならずいきなり大規模な派兵をしたとは。
これで北はロシアとガッチリ組んで、地獄の底までおつきあいするということになります。
兵隊を輸出商品とした飢餓輸出です。
飢餓輸出というのはいままで歴史的に幾度も記録されています。飢餓輸出とはこのような意味です。

「国際収支の赤字を是正し、必需物資の輸入に必要な外貨を獲得するために、国民生活を犠牲にして輸出を強行することをいう。 外貨の蓄積が不十分だと、生産活動に必要な原材料など一国の経済に不可欠な物資を輸入することができず、十分な経済成長も望めない」
飢餓輸出(キガユシュツ)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp) 

ウクライナも1932年から1933年にかけてソ連によって穀物が強制徴発されたために、ホロモドールと呼ばれる人為的な大飢饉が起きました。
今回は穀物をもらう代わりに兵隊を送っているわけです。
その見返りで穀物や燃料も入ってくるのですから、正恩は機嫌がいいはずです。
これで正恩は生命をとうとう売り始めたということになりますが、いささかも良心は痛まないのでしょう。


中国、またもや台湾包囲の大規模軍事演習

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中国が、またもや台湾を包囲するような軍事演習を行いました。

【北京、台北時事】中国軍で対台湾作戦を担う東部戦区は14日、台湾を取り囲む形で大規模な統合演習を行った。同様の軍事演習は今年5月以来で、東部戦区は「『台湾独立』の分裂勢力がたくらむ独立行動への強力な警告だ」と主張。台湾の頼清徳総統が、10日の演説で改めて中国による統一に反対したことをけん制する狙いがあり、台湾側は強く反発した。
東部戦区は14日早朝に演習開始を発表。同日夜に終了したと明らかにした。演習名は「連合利剣―2024B」で、台湾海峡と台湾本島の北部、南部、東部の周辺で実施。陸、海、空、ロケット各軍が参加し「統合的な実戦能力を検証した」という。北部と南部では重要港湾を封鎖する訓練も行った。中国海警局も14日、台湾本島を取り囲む形で巡視活動に当たった」
(時事10月14日)
中国軍、台湾囲み大規模演習 頼政権けん制、今年2回目―空母も参加、港湾封鎖訓練:時事ドットコム (jiji.com)

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中国軍東部戦区

メディアは「どうして今」などと寝ぼけたことを言っていますが、どうしてもなにも独裁者が台湾をいたぶりたくなったからで、今もなにも、いつでもなのです。

「14日午前5時、中国の解放軍東部戦区は台湾周辺で軍事演習「聯合利剣―2024B」を展開していると宣言しました。目的は「台湾独立の分離主義勢力を強く抑止する」ため。台湾国防省はこれを強く非難しました。
東部戦区報道官によると、東部戦区は14日早朝、陸海空軍、ロケット部隊などを組織し、台湾海峡、台湾の北部、南部、東部の各方面において軍事演習を開始し、同方面軍の共同作戦における実戦能力をテストしたそうです」
(福島香織10月14日中国趣聞NO1073)

福島氏によれば、今年5月下旬に行われた台湾包囲型の「聯合利剣-2024A」軍事演習と比べると若干の違いがあります。
ちなみに「利剣」とは「降魔利剑降魔(ごうま)の利剣」という使われ方をして、魔を切る鋭利な刀のことです。(台湾は魔か)

それはさておき、台湾に付属する島々に対して、前回5月のものは、金門島と澎湖西側も演習範囲に含まれていましたが、今回は含まれていません。
また、5月の「利剣2024A」は台湾本島周辺に大きな演習ブロックを5つ、離島4ツ設定したのに対して、今回の「2024B」の演習は台湾本島周辺の演習ブロックが6つに増え、離島が3つに減りました。
全体的に見ても、演習面積がかなり縮小されています。
これがより実戦的になったのか、それとも単なる政治ショーだから伸縮自在なのかよくわかりません。

ただし自慢の空母遼寧は与那国沖に出しています。
どうも後継艦になにかトラブルが起きているようで、いつまでも練習空母のはずの遼寧がひとり寂しく砲艦外交に従事しています
台湾東方に空母を出すのは、もちろん政治的に日本を脅迫するというのもありますが、実際に台湾侵攻となったら裏門に当たる東海岸を制圧せねばならないからです。
その場合、わが国の与那国、波照間、宮古は戦闘範囲に入ります。

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防衛省

よくこういう軍事威嚇をすると、台湾如きが生意気にも中国様のお気に触ることを言ったからこんな大演習をされるのだ、としたり顔で言う者がでますが、ナニをどう言おうと習近平の神経に触るのです。
第一、こんな大演習は数カ月前から準備するものですから、いちいち頼氏がなにを言った、言わないということに反応したわけではなく、台湾の双十節にぶつけただけです。


今回は、それを心得ている頼清徳総統の双十節演説はなかなか気が利いていました。

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台湾の頼総統、「併合に抵抗する」と演説 「建国記念日」式典で - BBCニュース

「113回目を迎える双十節(建国記念日)の演説で、「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」という総統就任演説でも訴えた新二国論を繰り返し、中国による強制的な併呑を断固拒否する構えを見せました。その5日前の双十節を祝う晩会では、75歳の中華人民共和国が113歳の中華民国人民の祖国になりえない、と訴え、一部台湾芸能人が中華人民共和国を祖国と呼んでいたことをうけて、台湾人が中国国慶節(建国記念日)を祝うときは、祖国という言葉を使わないように、と釘をさしました」
(福島前掲)

双十節晩餐会での頼氏の発言では、台湾の芸能人が大陸を「祖国」と呼んだことに対して「75歳の中華人民共和国が113歳の中華民国人民の祖国になりえない」と逆説的皮肉で答えています。
思わず座布団1枚と掛け声をかけたくなりますが、まったくそのとおりで、頼氏はいまさら独立など片腹痛い、台湾は中華民国としてあんたらの中華人民共和国より38年も前に「独立」しているのだよ、と言ってのけたのです。
中華民国は国共内戦に破れたとはいえ、、中共以前の「中国」代表として常任理事国の座を占めており、建国100年を越える独立国だ、という認識です。
だから頼氏は、「いまさら独立をする必要などない。なぜなら既に独立しているからだ」という眼からウロコの考え方を打ち立てました。
これは台湾内の独立論者たちが、専制政治を敷いた国民党を憎むあまり中華民国という存在まで否定していたからです。
一方、国民党系は馬英雄九に典型なように「ひとつの中国」論を墨守し、いまや中共の良き同伴者にまでなってしまいました。

実はコレは中国のウィークポイントなのです。
中国が言いふらしている物語としては、中国共産党は逃亡した国府軍を尻目に日本の侵略を打ち砕き、全国統一を統一をなし遂げたのでアッタというものです。
したがって清朝の正統なる後継国家はわれらであるぞよ、というのが彼らのストーリーです。

「中華ソビエト共和国としてはじまった中華人民共和国は、中華民国統治下の中国で1921年7月に結党された中国共産党がソビエト連邦の支援を受けながら、国共合作・日中戦争・国共内戦を経て中華民国政府を台湾へ放逐 し、1949年10月1日に毛沢東中国共産党主席が北京市天安門広場で建国宣言を行ったことで成立した」
中華人民共和国 - Wikipedia

こういう書き方をすると1921年に起点があるようにみえますが、それは単にコミンテルン中国支部というミニ集団が上海の片隅で密かに作られたということにすぎません。
当人たちも「中国」を支配するコトになるとは夢にも思わなかったし、実際にも連戦連敗、国府軍に追われて、長征という大逃亡で逃げ回って、日中戦争期には延安から出てきませんでした。

1949年に建国したのは確かですが、中国は国際的には承認されていない国家にすぎませんでした。
国際社会は中華人民共和国を国として認めていなかったのです。
国として成立するには「領土領海」「国民」「主権」などがありますが、実はもうひとつ、それが国際社会の承認でした。
この最後の要素が欠落していたために、当時の中国はみなし国家でしかありませんでした。

というのは、その頃の中国は、はた目にも気の毒なほどのズタボロ国家で、建国の父のはずの毛沢東のご乱心で狂気の大躍進をして大失敗、そしてその後には文革というさらなる狂気で大混乱の上塗りをして。
大躍進で3千万が餓死、文革で6千万が虐殺されました。(異説があります)
もちろんこれは推定数で、実際に何千万死んだのかわかりません。
経済は疲弊のどん底、国民生活は崩壊、教育も解体、軍隊はズック靴、そのうえ外を見ればソ連軍と対立して小規模戦争まで起きて国境は極度の緊張といった惨憺たる状況でした。

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たぶんあのまま突っ走れば、中国はここで自壊したかもしれません。
これに救いの手を差し伸べたトンチンカンな国があったのです。他ならぬ田中角栄の日本でした。
田中は自民党内の岸氏などの台湾派の反対を押し切って、米国の頭越しに1972年9月に日中国交正常化、そして78年には日中平和友好条約締結と突っ走り、中国の経済建設を全面バックアップしました。

米国の頭越しというのは、71年にキッシンジャーが密かに訪中して道筋を探っていたからです。
米国は泥沼化したベトナム戦争の早期終結のために、中国を味方につけたかったのです。
しかし米国も日本と同じで、ここで中国と正式国交をすれば台湾を切り捨てることになるという反対の声は大きかったのです。
中国側の要求は米台間の国交断絶、米台条約の廃棄、在台米軍の撤退で、いずれも米議会内に根を張る台湾支持派は大反対していました。
そりゃそうでしょう。自由主義国家である中華民国を切り捨て、共産党国家と結ぼうというのですから。

この米国内の反対を押し切ったのが、田中角栄の頭越し日中国交回復でした。
そして72年にニクソン訪中、これで台湾の国連からの追放が決まってしまいました。
逆にいえば、中華民国が国連から脱退する72年までは国際的に承認された「中国」の正統な後継国家は中華民国であったわけです。

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台湾追放のアルバニア案が可決されて下品な馬鹿笑いをする中国代表団

このように中国だけの物語を聞いていると、49年の中華人民共和国の建国=中華民国の滅亡して統一と聞こえるのですが、これはウソです。
中華民国はその名称も国家たる三要素も共に備えて、いまだ実在し続けているのです。
ないのはかつての中共と一緒で、国際社会の承認だけです。
だからナニをいまさら「独立」なんかする必要があるのか、従属もしない、正常な二国間関係を結べばいいのだ、これが頼氏の主張です。

なにかといえば、すぐに「独立したら殺すぞ」と凄む習近平に対して実に大人の対応です。
すぐに「台湾は中国の神聖な領土」と言いたがる中国に対しては、頼氏は、「中国の意図は領土の回復ではない」と軽く突き放しています。

「頼氏は先月にも、台湾に対する領有権は領土保全に基づく主張だという中国の理論にも疑問を呈した。もしそれが事実なら、中国政府はかつて中華帝国に属していたその他の、いわゆる歴史的な土地の回復も推進しているはずだと、頼氏は指摘した。
在任100日のインタビューで頼総統は、「中国が台湾を併合したいなら、それは領土保全のためではない」と語った。
「本当に領土保全のためなら、なぜ中国はロシアを取り戻さないのか?」
頼氏はこの時、中国の清王朝がロシアに満州の広大な領土を割譲した1858年のアイグン条約に言及した。この割譲は、中国が「屈辱の世紀」と呼ぶ、弱体化した清王朝を欧米列強や日本が搾取していた時代に起こった」
(BBC10月10日) 
台湾の頼総統、「併合に抵抗する」と演説 「建国記念日」式典で - BBCニュース


中国が愛琿条約でロシアに旧満州の領土を割譲したにもかかわらず、ロシアに返せとは言わないし、ましてや軍事演習で威嚇するなどはしないのに、なぜ台湾という小さな島にこだわるのでしょうか。
それは政治的には台湾が中国大陸のすぐ隣で、香港なき後、いまや唯一自由の灯台の光を灯しているからです。
習近平の国は建国からいちどとして普通選挙をした経験がない非文明国であることに対して、台湾は独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ民主国家なのです。
だから、頼氏率いる「台湾」いう一癖も二癖もある存在がいると、習近平は自分を批判されているような気分になるようです。

 

2024年10月15日 (火)

イスラエルUNIFIL隊員を負傷させる

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イスラエルが国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を負傷させました。
国際世論は激怒しています。

「[ベイルート/エルサレム/カイロ 11日 ロイター] - 国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は11日、レバノン南部にある監視塔付近で2回の爆発が発生し、隊員2人が負傷したと発表した。
UNIFILは声明で、これは「深刻な」事態だとし、国連職員と施設の安全は保障されなければならないと改めて強調した。
イスラエル軍はその後声明を発表し、イスラエル軍の砲撃でUNIFILの隊員2人が負傷したと認めつつも、発砲前に隊員らに対し安全な場所にとどまるよう指示したと釈明した。
イスラエル軍のハレビ参謀総長は軍が公開した動画で「敵に対する作戦を継続しており、(避難しているイスラエル北部の)住民の安全な帰還を確保するまで作戦を止めることはない」と述べた。
イスラエル軍はまた、10日に砲撃を加えたUNIFILの別の陣地の境界線も突破したという」
(ロイター10月12日)
レバノン国連部隊2人負傷、イスラエル軍は避難指示したと釈明 | ロイター (reuters.com)

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ロイター

初めにこのニュースを聞いた時、イスラエルがまたまた過剰な戦闘行為をしたと思いました。
黒井文太郎氏は「イスラエル軍が行なっているガザの民間人殺戮という戦争犯罪を正当化する話では全然ない 」と断った上で、こう述べています。

「他国であるレバノンやイランでの暗殺作戦を実行するイスラエル側については、ネタニヤフ本人の政治的思惑を指摘する声もある。イスラエル国内ではかねてネタニヤフに対する批判は強く、ガザ情勢の長期化でますます国内政治状況的には追い詰められている。そのため、彼は自らの政治的延命のために対外的緊張を拡大したがっているとの見方が、イスラエル国内の言論界でも見られる。
 ネタニヤフ本人がそう言ったわけではないので、あくまでひとつの仮説だが、仮にそうであっても、ネタニヤフはヒズボラが何もしていないのに攻撃を命じているわけではない。イスラエルとヒズボラの戦闘は、常にヒズボラが先に手を出し、イスラエル側を挑発することから発生している。ヒズボラが何もしなければ、両者に戦闘は起こらない。2023年10月以降の戦闘も、ガザでの攻防の直後にヒズボラがイスラエル北部に越境攻撃をかけたことで始まっている」
(黒井文太郎8月2日)
イスラエルを挑発するヒズボラ特殊部隊「ラドワン部隊」の黒幕はイラン:黒井文太郎 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

イスラエルからの発砲は2回、うち一回は戦車砲によるものでUNIFILの司令部監視塔が破壊され、その時に負傷者を出しています。
ガザのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は「ほぼほぼハマス」で、国連としての中立性が大きく損なわれている団体です。
だから死傷してもいいとはいいませんが、レバノンで死んだハマス指導者のファトフ・シャリーフはUNRWA学校の校長でしたし、教師20人は戦闘員だったという笑えない話も伝わってきているような、戦争の一方の当事者です。

しかし一方、イスラエル・レバノン国境で兵力引き離しをしているUNIFILは、いままで中立性を保ってきたと考えられてきました。
概要によれば、要員派遣国は2023年9月の時点で、インドネシア、イタリア、インド、ガーナ、ネパール、韓国など計47か国で、日本は含まれていません。

では、なんのためにこの国境地帯に派遣されているのでしょうか。
UNIFILは1978年に、レバノンに駐留する国連の治安監視団として設立されました。
設立のきっかけは、ここでもパレスチナ側のテロ攻撃が発端です。

(1)1978年3月、何者かによる部隊がイスラエルを襲撃し、多数の死傷者が出たことについて、パレ
スチナ解放機構(PLO)が犯行声明を出したことを受け、イスラエルは報復としてレバノンに侵攻、
ティール市とその周辺を除くレバノンの南部の全域を占領。
(2)同月、レバノン政府はイスラエルの侵攻に対する強い抗議書を安保理に提出し、パレスチナの奇
襲部隊の関与を否定した。安保理はこれを受けて決議第425号及び決議第426号を採択し、イス
ラエルに対して軍事活動を早急に停止し、すべてのレバノンの領域から軍を撤退することを求め
た。また併せて国連レバノン暫定隊(UNIFIL)の設立を決定した。
(国連レバノン暫定隊(United Nations Interim Force in Lebanon (UNIFIL)概要)
0000060693.pdf (mofa.go.jp)

つまりUNIFILを作らねばならない原因となったのは、「何者かによるイスラエル襲撃で多数の死傷者が出た」ことにあります。
概要ではボカしていますが、「何者か」とはもちろんヒズボラのことです。

その後1982年と2006年の2回のレバノン戦争の後、国連安保理での決議1701が可決され、イスラエルとの国境(ブルーライン)から、リタニ川までの約30キロの間が非武装地域とされました。

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欧米各国、イスラエルに国連平和維持軍への攻撃停止を要求 レバノンで - BBCニュース

この地域に、「UNIFILとレバノン軍以外、いかなる武装勢力も存在しない」ことを監視する役割を担っていたのがUNIFILです。
この「レバノン軍」というのが問題です。
そもそもレバノンは、まとまった統一国家とは到底いえない国です。
朝日新聞風にいえば「価値多元化社会」の極であり、イスラム教だけでスンニ派、シーア派、キリスト教も負けじとマロン派、ギリシャ正教などがあり、実に18の宗教・宗派が同居しています。

彼らは融合することなく、自らのテリトリーを主張してひしめき合い、独自に民兵組織まで持っているために「モザイク国家」とも呼ばれます。
ちなみに日産の大泥棒であるカルロス・ゴーンが逃げ込んだのも、このレバノンの首都でした。
こういうことが可能な社会なのです。

とりあえず「国もどき」はあります。
政府も議会もありますが、なんと大統領はマロン派にすれば首相はスンニ派、議会議長はシーア派から選出すると決まっていてバランスを取っているというのですからなんともかとも。

議会もあることはあります。
ヒズボラは、2022年の議会選挙で128議席の内過半数に近い62議席を押さえて第1党です。
どうしてテロリスト団体が支配政党になれるのかといえば、理由はハマスと一緒です。
正規軍をはるかに陵駕するような強力な軍事力を持ち、資金豊富で、したがって支配地域が下図のようにもっとも広大だからです。

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NHK

ヒズボラはこの力にモノを言わせて、首都ベイルートの南半分を支配し、国の南部と東部で政府などの支配を受けない「ヒズボラ国家」を作っています。
このヒズボラ支配地域では、レバノン政府など名前だけで、軍も形骸化するか、事実上ヒズボラに従属しています。
支配地域では、レバノン政府などまったくお飾りで、ヒズボラが法を作り、独自の軍隊を持ち、警察権を握り、病院や学校まで経営しています。
ガザのハマスとまったく同じ構図です。

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fsight.jp

このヒズボラを作り、育成し、武器と資金をあたえたのは、イランの対外工作班のコッズ部隊なことは言うまでもありません。

今回も前述したように、ヒズボラの越境攻撃がありました。
あまり日本では報じられていませんが、ヒズボラは8月10日もイスラエル北部のアッコやナハリヤ方面へ50発以上のロケット弾が発射しています。
イスラエル軍はこのロケット弾攻撃に対処するために出動し、UNIFIL基地近くで戦闘になり、UNIFILの監視塔に戦車砲があたってしまったようです。
ですから、イスラエル側はUNIFILはヒズボラとの戦闘に巻き込まれたのであって、意図的な攻撃ではないとしています。

これに対して国連ラクロワ事務次長は反論しています。

「国連の平和維持活動を担当するジャン=ピエール・ラクロワ事務次長はBBC番組「ニューズアワー」に対して、レバノン南部に展開する国連に対する攻撃の一部は、直接的なものだったと思わせる根拠があると話した。
「たとえば、監視塔が砲撃されたケースがあるほか、監視カメラが破壊された事案もある。明らかにこれはかなり、直接攻撃のように見えた」と、事務次長は話した。
レバノンのナジブ・ミカティ首相は、UNIFILに対するIDFによる11日の攻撃は、「国際社会に対する犯罪だ」と強く非難した」
(BBC前掲)

またイスラエルのダノン国連代表は、国連決議に従っていないのはヒズボラであって、イスラエルはその履行にむけた戦いをしているのだと反論しました。
つまり、国連決議1701に基づいて、ヒズボラをリタニ川以北まで押し戻すという、本来はUNIFILがするべきことをイスラエル軍が今しているというロジックです。
また、イスラエルは、南レバノンに地上軍を派遣する際、この地域では巻き添えになる可能性があるとして、UNIFILに一時撤退を求めていましたが、UNIFIL側がこれを拒否していたと言っています。

たしかにイスラエル側の主張にも一理あります。
なぜかくも頻繁にヒズボラがレバノン南部からイスラエルに向けて、かくも大量にロケット弾を撃ち込むとが可能なのでしょうか。
おかしくはありませんか、ヒズボラが撃っているのはUNIFILが引き離しをしている非武装地帯なのですよ。

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イランの支援受けるヒズボラ、レバノン領内からイスラエル攻撃…ロケット弾一度に40発も : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「ところが、ヒズボラは、この国連決議を全く履行せず、2006年以降、この地域に膨大な数のミサイル発射施設、イスラエルに続く地下トンネルシステム、膨大な数の拠点と武器庫を壮大に完成した。目的は、イスラエルに攻め込んで、これを亡き者にすることである。
今現在、イスラエルが必死に摘発しているのは、これらの危険なヒズボラの拠点なのである」
ヒズボラと激戦:UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)隊員負傷で国際社会からイスラエル非難殺到 2024.10.11 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

このイスラエルの言い分を検証できる立場にありませんが、では、UNIFILは2006年以降、実に20年近く、いったい何を監視していたのでしょうか。
推測ですが、このヒズボラに浸透された「レバノン軍」となぁなぁの関係が出来上がっていて、好きにさせていたのかもしれません。
いずれにしても、これほど膨大なヒズボラのトンネル網や大規模な弾薬庫、武器庫の存在をなぜUNIFILが見逃していたのか、この疑問に国連側も答えねばなりません。

 

2024年10月14日 (月)

琉球新報というゾンビ企業を助ける政府融資

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おもわず笑ってしまうようなことが発覚しました。
琉球新報が、政府系融資機関から8億5千3百万の無利子融資をもらっていることが発覚しました。

「沖縄県の日刊紙「琉球新報社」の印刷設備の更新費用として、県が約8億5000万円を無利子で融資する補正予算案を巡り、保守系県議から「県からの融資は、偏りのある報道につながらないか」(自民党県連幹部)と懸念する声が出ている。
県によると、地域振興に資する民間投資を支援する「ふるさと融資」制度を活用し、同社の新聞輪転機など印刷設備更新費の一部を無利子で長期貸し付ける。総事業費26億8200万円のうち、8億5300万円について地域総合整備財団(通称・ふるさと財団)を通じて融資する。制度の償還期間は20年以内だ」
(産経10月7日)
沖縄県が琉球新報社に無利子で8億5000万円融資 県議「偏りのある報道」懸念 - 産経ニュース (sankei.com)

これは「ふるさと融資」からの融資で、償還は無利子で20年以上という長期貸し付けで、地方自治体の依頼受けて融資しています。
無利子融資で20年ですから、もらったようなものです。

「地域振興に資する民間投資を支援する「ふるさと融資」制度を活用し、同社の新聞輪転機など印刷設備更新費の一部を無利子で長期貸し付ける。総事業費26億8200万円のうち、8億5300万円について地域総合整備財団(通称・ふるさと財団)を通じて融資する。制度の償還期間は20年以内だ」
(産経10月7日)
沖縄県が琉球新報社に無利子で8億5000万円融資 県議「偏りのある報道」懸念 - 産経ニュース (sankei.com)

融資を受けて琉新が購入したのは、新聞社としての心臓部に当たる輪転機です。
もうすでに稼働しています。

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新輪転機始動 カラー豊富に 琉球新報社 - 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

「早速刷られた特別紙面が、集まった関係者らに配られた。これまで最大16ページだったカラー印刷が、24ページまで拡大し、機能が1・5倍となる。二つの媒体を同時に印刷でき、1時間に16万部の印刷速度を備える。
輪転機は新聞発行にとって、休刊日を除けば止まることが許されない心臓部分だ。輪転機の更新は25年ぶりとなる。普久原社長は「紙の新聞が主力商品であることに変わりはない。県民の皆さまに良い紙面を届けていきたい」と話した」
(琉球新報8月1日)
琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

25年ぶりに輪転機を更新したのはめでたいことですが、この会社の経営陣は輪転機のような「心臓部」の法定償却年数15年を越えてナニをしていたのでしょうか。
実は「株式会社琉球新報」は惨憺たる経営状況です。まさにこの4年間、赤字へと直滑降です。

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HUB沖縄

「株式会社琉球新報」の経営状況です。

「6月24日の株主総会で琉球新報社(玻名城泰山社長)の決算が報告された。それによると、2021年3月期の売上高66億300万円に対し、経常損益が4億5100万円の赤字となった。20年3月期の経常損益も3億2200万円の赤字であり、二期連続での大幅赤字である。
ここ4年間の経常損益を見ると、18年3月期には4億5200万円の黒字を確保していたが、19年3月期には黒字が6700万円まで減り、20年3月期に3億2200万円の赤字、そして21年3月期に4億5100万円の赤字と、経営状態は悪化の一途を辿っている。
この状況のなか、琉球新報社は昨年、役員報酬や管理職手当の削減に踏み切ったばかりか、社員のボーナスも夏に3割、冬には5割もカットし、聖域なき経費削減を掲げて残業代や旅費、交通費、そして交際費に至るまで大幅に圧縮。さらに早期希望退職まで募り、6人がこれに応じたという。この早期希望退職に応じた社員を含め、昨年度は16人が退職した」
琉球新報社、二期連続の大幅赤字 タイムス社と明暗分かれる - 沖縄HUB(つながる沖縄ニュースネット) (hubokinawa.jp)

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会社案内

琉新は株式会社ですが、未上場なので詳しいことはわかりませんが、2019年3月期には赤字転落し、人件費を大幅カットしてコスト削減し、早期退職まで募っているようです。
仮に粗利益率を楽観的に見て25%だったとすれば(たぶん甘すぎますが)売上総利益は15億円、ここから255人の従業員への給与などを引くと2億残るか残らないかです。

そこからさらに諸経費が差し引かれれば最終利益段階でたぶん残るとしても数千万円、それも各種返済に充てられて赤字でしょう。

このような経営状況の琉新は、本来はゾンビ企業に分類され整理されるべきです。
ゾンビ企業とは、ほんとうは倒産しているべきなのに、政府融資だけで生きている顔をする企業のことです。

「業績不振によって経営が破綻し、利益が債務の利払いを下回っている状態が続いているにもかかわらず、金融機関や政府機関などの支援に頼ることで存続している企業のこと。 ゾンビ企業の増加は市場機能の健全性を損ない、経済の成長を阻害する可能性があるともいわれている」
ゾンビ企業|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)

こんなゾンビ企業の琉新に、事業総額8億5000万も融資するのは、政府金融としての融資の健全性が疑われます。
焼けついて不良債権化するに決まっているではありませんか。
本来ならば融資を断り、いさぎよく社業を縮小整理して、最低限の電子版発行の方向へ指導すべきだったのです。

別に琉新に限らず、米国でも電子版のみの新聞は多くありますし、わが国でも大手紙が今後電子版のみとなるのは必定だと見られています。
タブロイド紙は、既に夕刊フジと日刊ゲンダイが電子版も残さずに消滅すると噂されています。
全国紙の激減ぶりに歯止めはかからず、これで推移すれば15年後には消滅する勢いです。
つまりこの「ふるさと融資」の償還が始まる前に、新聞自体がなくなっているかもしれないということになります。

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亀松太郎

「日本新聞協会がこのほど公表した最新データで、一般紙の総発行部数が3000万部を大きく割り込み、2800万部台まで落ち込んだことが明らかになった。この5年間で失われた部数は1000万部。平均すると、毎年200万部ずつ減っている計算だ。もし今後もこのペースが続けば、15年後に紙の新聞は日本から消えてしまう勢いだ。
日本新聞協会は2022年12月後半、同年10月時点の新聞の発行部数を公表した。それによると、スポーツ紙を除く一般紙の総発行部数は、前年に比べて約196万部(6.4%)減少の2869万4915部だった。10年前の2012年は約4372万部だったが、年々減少が続き、当時の3分の2以下の規模まで落ち込んだ」
1年で200万部減「新聞離れ」は止まらず 「一般紙」は15年後に消える勢い(亀松太郎) - エキスパート - Yahoo!ニュース

宅配の固定読者を持ちなん百万部売り上げて世論をリードした時代はとうに過ぎ、いまやすべてでSNSに負けています。
今残っているのは紙から離れられない高齢者層が支持しているからで、この層とともに消える運命です。
にもかかわらず、業態自体が滅亡産業にもかかわらず、100万規模しかない県に大型地方紙が2つもあることのほうが異常なのです。
しかも双方とも、これ以上ヒダリはないというサヨク紙で、沖縄の言論空間を支配してきました。

ゾンビ企業を生かしたのが「ふるさと融資」制度です。
「ふるさと融資」制度とはこのようなものです。

「ふるさと融資制度は、地域振興に資する民間投資を支援するために都道府県又は市町村が長期の無利子資金を融資する制度で、ふるさと財団は地方公共団体の依頼を受け事業の総合的な調査・検討や貸付実行から最終償還に至るまでの事務を行っています
ふるさと融資を行う場合、地方公共団体は資金調達のために地方債を発行し、その利子負担分の一部(75%)が地方交付税措置されます。
ふるさと融資の申込先は、事業地の都道府県又は市町村となります」
ふるさと融資とは【制度融資、無利子・無利息融資】 - ふるさと財団 (furusato-zaidan.or.jp)

正式名称「地域総合整備財団ふるさと財団」はもちろん天下り団体で、末宗徹郎理事長は総務官僚出身です。

「末宗徹郎  旧自治省(現在の総務省)出身。総務省財政局財政課長、内閣府地方創生推進室次長、復興庁事務次官などを経て、2022年から地域総整備財団理事長を務める」
「地方自治のいま」(7) 末宗徹郎・地域総合整備財団理事長 | 日本記者クラブ JapanNationalPressClub (JNPC)

この団体自体が総務省閥が天下りのために作った団体で、石破氏が「地方創生」の号令をかけたので、今頃張り切ってカネをばらまいているはずです。
「地方創生」、「地方興し」といえば聞こえはいいですが、要は地方へのカネのバラ撒き以外の意味はありませんから不思議でもなんでもありません。

むしろ問題は「ふるさと融資」は「地方公共団体の依頼を受け」ねばならないところです。
つまりデニー県政からお墨付きをもらわねばカネが借りられないということです。
琉新はデニー県政の宣伝紙です。デニー氏をオール沖縄と持ち上げて政権に送り込み、その言い分を忠実に伝えて、県の広報紙では言えない政府批判を繰り返し、県政批判派を封じこめるための宣伝紙です。

失礼ですが、これが「社会の公器」でしょうか。よくイソコ女史などは、新聞の社会的任務は「「社会の木鐸(ぼくたく)」「権力の監視者」と自己陶酔的に言っています。
では経営の根幹を権力に握られておきながら同じことをいえるのかどうか、そういうのをサヨクの人たちは権力と癒着する「御用新聞」と呼んだのではなかったでしょうか。
いずれにしても、デニー県政とメディアが持ちつ持たれつで政府の融資利権を食いついているのがわかりました。

「ふるさと融資」はゾンビ企業に巨額融資をすることが仕事だとは思えません。
こんな経営再建も難しい企業に融資するくらいなら、もっと資金がショートしている地場産業がいくらでもありそうなものです。


 

2024年10月13日 (日)

日曜写真館 初秋やふちどり雲の出るもやう

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ひえびえと闇のさだまる初秋かな 飯田蛇笏

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初秋と思ふはるかだとも思ふ 野見山朱鳥

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ひとの声うしほに浸り秋はじめ 飯田龍太

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初秋や一雲運ぶ風の空 石塚友二

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飛ぶもののみな新秋のひかり負ふ 石塚友二

 

 

2024年10月12日 (土)

石破さん大丈夫、苦悩はそんなに長引かないよ

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被団協がノーベル平和賞を受賞しました。おめでとうございます。
ノーベル平和賞委員会は、いままでにもICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン )なんて団体にも賞をやったところですからね。
この団体は、なぜか核武装なんかまったく話題になっていない日本に押しかけて、核兵器禁止条約に署名しないのはけしからんと大騒ぎを演じました。
突撃するなら北京かモスクワに行きなさいといつも思うんですが、よほど叩きやすい国とみくびられているようで、必ずウチの国が的になります。ほんと迷惑。
その時に日本側の受皿になっていたのが、旧社会党系の被団協です。
石破首相も祝辞を述べたそうですが、ニュークリアシェアリングを唱え「持ち込ます」というのが持論だったはずですから、また豹変と言われますよ。

ところで石破氏が外遊をしています。
李強に会ってもらってよかったですね。

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李強総理、日本の石破茂首相と会談 (news.cn)

中国はさすが大国、メンツを立ててくれたというのに、ASEANときたひにはハナから話にならないとばかりに、こうです。
ASEAN)事務総長でカンボジア出身のカオ・キムホン氏の弁。

「なぜ、アジアにNATOのようなものが必要なのですか? 私たちにはすでにASEAN関連の様々な既存の枠組みがあり、それを優先させるべきです。さらに新たな枠組みをつくることは、地域の国々から支持を得られないでしょう」
(朝日10月10日)
アジア版NATO「支持得られないだろう」 ASEAN事務総長会見:朝日新聞デジタル (asahi.com)

向こうさんの立場では当然すぎるほど当然です。
今月中に選挙があり、そこで負けるかもしれない超々短命首相がナニ言ってもまともに聞いてくれるわけがありません。
安倍氏の外交がすごかったのは、当人の能力もさることながら、長期政権、選挙にはめちゃ強いことが内外に知れ渡っていたからです。
だから諸外国は「聞く耳」を持ってのであって、フロックで首相になったようなゲル氏の言うことをまともに聞く国など今はないでしょう。

ところで、今回の選挙への興味は、「どれだけ自民党が負けるのか」に絞られています。
実際、これほどまでにどーでもいいと思える選挙はなかったような気がします。
石破氏は、総裁選でなんと仰せでしたでしょうか。
「国民が判断する材料を提供するのは政府、新しい総理の責任だ」「(与野党の)本当のやりとりは予算委員会だ」「(解散を)自民党の都合だけで勝手に決めてはいけない」、イマニしておもえばよくもまぁ口からでまかせを。

まぁかつては、解散を内閣がすべきではない、天皇の名で党利党略で解散するなどもってのほかだ、とえらくカッコイイことを言っていた御方です。
その時は、解散するのは不信任を出された時のみだとまで言い切って、首相の解散権そのものを否定してえらく歯切れがよかったのですが、今回の解散の弁では、党の都合でしたとまで言ってしまいました。
かくも短い期間に、いままで培ってきたリベラルメディア信頼を壊した政治家はいなかったでしょう。
そしてメディアと野党は口を揃えて「イシバさんは変わってしまった」と言い、保守サイドの人たちは「この裏切り者め」と唾を吐いたわけです。

かくして右からも左からも等しく嫌悪されるという、まことに珍しい首相になってしまいました。
しかし幸いにも、石破氏の苦悩もそう長くは続かないようです。
早ければこの選挙の選挙戦後、長く見ても来年度予算を通してオシマイです。

各方面の選挙予想がチラホラ出始めました。
産経系のZAKZAKでは、選挙プランナーの松田馨氏が予想を出しています。

20241011-022642

ZAKZAK

その結果は、さほどの驚きはありませんが、単独過半数割れ、ゲル内閣大打撃と出ました。

「石破首相は9日、自民党選挙対策本部会議に出席し、衆院選を前にこう語ったが、自民党の情勢は厳しそうだ。松田氏は、投票率を前回2021年衆院選の55・93%を下回り、51~52%程度と想定して分析した。
自民党は、現有256議席から30議席減、「小選挙区165、比例61の226議席」という予測だ。衆院定数(465議席)の単独過半数(233議席)を割り込み、今後の展開次第でさらに減らすという」
(ZAKZAK10月9日)
石破首相が「戦後最短の就任8日後」に解散強行 自公過半数割れも 2024年秋衆院選・政党別議席予測、松田馨氏が分析(1/3ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

松田氏の予想では30議席減、単独過半数割れだそうです。
立憲は微増です。

もうひとつ選挙予想は、ニュースポストセブンで政治ジャーナリストの野上忠興氏が出しているもので、こちらはもっとドラスティックな惨敗です。

「野上氏の協力で全選挙区の情勢を緊急調査し、当落を予測した。結論は、野党の候補者調整ができない場合でも、自民党は「53議席減」の202議席。公明党も25議席へと減らし、自公合わせて「227議席」で過半数割れという衝撃的なものだった。
総理が交代しても、有権者の裏金問題や旧統一教会問題への批判は消えていません。自民党の裏金議員たちは小選挙区で厳しい審判を受けることになる。自民党支持層が自民離れを起こしているため、自公両党ともに比例代表でも票を大きく減らすことが予想されます」(野上氏)
さらに野党の選挙協力がなされ、自民党への対立候補が一本化されれば野党が逆転勝利可能な選挙区が53あり、自民大惨敗となる」
(ニュースポストセブン10月9日)
【10.27総選挙289全選挙区緊急予測】自民党が「53議席減」、自公でも過半数割れの衝撃シミュレーション結果 新閣僚3人も落選危機(NEWSポストセブン) - Yahoo!ニュース

野上氏は53議席減で227議席、公明も減らすために自公で合わせても過半数割れです。
こういう選挙関係者というのはだれでもお得意先があるので、バイアスがかかることを瀬ン低に見なければなりません。
おそらく来週にかけて新たな世論調査の支持率や各紙の選挙予想も出るはずですから、それを見て改めて考えたいのですが、いい目は出そうに内ですね。

とまれ、石破内閣が選挙後に安穏と勝利をかみしめる余裕がないことは確かなようです。
だって、いかに負けるのを少なくするのかだけがテーマの選挙ですから。
激減の場合はハッキリしています。石破降ろし爆発です。
これだけ恨みつらみと憎悪を振りまく公認をしたら、敗軍の将に容赦はありません。
いままでゲル氏の得意とした、後ろから弾丸をビュンビュン撃って来るのです。

本来、こういう時は幹事長の手腕の見せ所ですが、森山氏といえばたった8人の泡沫派閥の主で党内を取りまとめる能力は皆無です。
石破氏が安倍派一掃などといいだしたら、まぁまぁ殿、ここは党内融和を大事にしていただかないとと言うべき立場なのに、率先して党を分裂させたのですから重罪です。
いままで選挙を質にとられて言いたいことも言えず頭を抑えられてきた議員は、再選したらメにものを見せてくれると誓っていますからどうなりますことやら。

だから言ったでしょう(言わなかったかな)、高市さんや小林さん、そして安倍派も取り込んだ人事にしないとエライことになるって。
そもそも石破氏が年中「元自民党幹事長」の肩書でメディアに出られたのは、任命権者が安倍さんだったからです。
二階氏を幹事長にしたのもおなじく安倍氏。
総理に自信があれば、幹事長ポストには意見が対立する人を持ってきてバランスをとるほうが党は安定するのです。
官房長官に菅氏を据えたのだって、この両人かならずしも政治的意見が一緒ではなかったからです。
菅さんは安倍氏と一心同体だと思っていましたが、今回の総裁選でよくわかりましたでしょう。

つまり安倍政権が長期政権であったのは、石破、菅、二階、岸田など政治的には対立する勢力を政権内部に取り込んだことで党内融和が図れたからです。

それを党内融和もあろうことか、二重処分を課し、議員にとって死活問題の公認までしない、重複立候補は許さないとなるともうアウチです。
された方は二度と金輪際石破氏を許そうとは思わないはずです。
負ければ、この憎悪がまともに来ます。

ところで、ひとつ面白いのは、今回毀誉褒貶が激しい保守党が初めて本格的に登場して、国民の審判を受けることです。
前掲の松田氏はこう述べています。

「ベストセラー作家の百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が立ち上げた政治団体「日本保守党」は今回、河村たかし名古屋市長を小選挙区の愛知1区に擁立する。百田氏と有本氏も比例で出馬する。
「小選挙区1、比例1で2議席」獲得の可能性があるという。
松田氏は「衆院東京15区補選などで、一定の票を獲得してきた。ユーチューブなどインターネットメディアを中心に関心が高く、保守系の票をさらに取り込めるかがカギだろう」と指摘する」
(ZAKZAK前掲)

なるほどね。百田さんと河村さんか。
それなりに応援している部分もないわけではないのですが、この党で心配なのは実務体制が欠落しているようにみえることです。
東京5区での飯山氏への支援、特に選対すらなかったと聞いています。
また小説家が作った党のために、志はひと一倍あると思いますが、政策立案能力があるのかといわれれば、はなはだ怪しいと思います。
特に経済政策プロパーが不在なのは致命的です。

もう少し立党まで力をつけて財政・金融のわかる経済専門家を集めていただきたかったと思います。
外交・安全保障を推進するプロパーも欲しい。島田氏だけでは不安です。

言い出したらキリがないし、初めからすべてを望むつもりはありませんので、長い眼で見させていただきます。
今回のあまりに早い総選挙は彼らには気の毒でした。
といっても百田氏は高市氏にならなくてよかったと堂々と言っています。
そりゃ高市自民だったら保守党なんかいりませんもんね。しかし了見が狭いな。
というわけで、保守党に関しては判断保留です。



2024年10月11日 (金)

中東戦争になるでしょうか

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イスラエルがイランに対する報復攻撃の目標を決めたそうです。
おそらくは核関連施設か石油施設でしょう。
米国との調整中のようですが、今週中に実施されるかもしれません。
これによって中東戦争が起きる、世界大戦が始まるぅと騒ぐ者がいますが、ありえません。
イランを過大評価しすぎています。

今のイランにはそんな大事にする力はありません。
イランは、前回の180発の弾道ミサイル攻撃で備蓄している多くを使ってしまったと思われます。
もちろん残ってはいるでしょうが、短期間に補充するのは困難です。
ですから、いま攻撃を受けても前のような大規模なミサイル攻撃で反撃するのは難しいでしょう。

また、中東テロ工作のためのコッズ部隊指揮官級は全員討ち取られています。
これ以上戦闘を激化させると、イスラエルがお宝の完成寸前といわれる原子力施設を狙ってくるのはわかりきっていますから、ここでエスカレーション競争から降りたいはずです。

中東諸国にとって、ペルシャ人の国イランは異物である上に、永年に渡って王政を打倒しようと画策してきた不倶戴天の敵です。
ペルシャ人の国に「アラブの大義」を説教されるのは片腹痛いうえに、コッズ部隊を使ってテロ組織を養成していることに腹をたてています。
ですから、イランに乗って対イスラエル戦争に参加することはあり得ませんし、現にイランのミサイルの迎撃には米軍のみならず、ヨルダン、サウジまで協力しています。

今までコッズ部隊が育成してきた眷属を使って報復をしようにも、ハマスは戦闘力を事実上喪失しており、頼みのヒズボラは指導者以下司令部が壊滅、前線部隊もイスラエルの1万5千もの侵攻部隊に制圧されて、再度のロケット弾攻撃などとうてい不可能ですから、イエメンのフーシー派に船舶テロを働かせるしか残っていません。
フーシー派は弾道ミサイルはほぼ保有しておらず、しょぼいロケット弾攻撃をする力しか持っていません。
得意の海賊攻撃も、すでに米英がフーシー派の拠点を爆撃しているように、紅海でこれ以上悪質な船舶攻撃を仕掛けると海賊対処とおなじような国際的な枠組みで反撃されるでしょう。

こうやって消去法で見ると、残るは自爆作戦でしょうか。
黒井文太郎氏によれば、「ハマスのハレド・メシャルが大きく出てきた」そうです。

この人物はハマスのカッサム旅団の自爆テロ路線を進めてきた当時の政治局長だったそうで、そちらの方にシフトするかもしれません。
Xユーザーの黒井文太郎さん

焦点は、むしろイスラエルの側にあって、これ以上レバノンにどこまで介入するのか、ガザからいつ兵を引くのか、あるいは常駐させる気なのか、泥沼化しつつある戦線をどのように整理するか、に移っていると思われます。

さて、イスラエルの凄まじいとしかいいようがない対ヒズボラ攻撃が続いています。

「[エルサレム 8日 ロイター] - イスラエルのネタニヤフ首相は8日、イスラエル軍が空爆により親イラン武装組織ヒズボラの後継候補の2人を殺害したと発表した。後継者候補の名前には言及しなかった。
ネタニヤフ首相はビデオメッセージで「われわれはヒズボラの能力を低下させた。(先月殺害されたヒズボラ最高指導者)ナスララ師と後継者、そして後継者の後継者を含む数千人のテロリストを排除した」とし、「ヒズボラはここ長年見られなかったほど弱体化している」と言明した。
ガラント国防相もこれに先立ち、ヒズボラの次期指導者と目されていたサフィエディン師が排除されたようだと述べた。
ガラント氏はイスラエル軍北部司令部の将校らに対し「ヒズボラは指導者のいない組織だ。ナスララ師は排除され、その後任もおそらく排除された。決定を下す者も、行動する者もいない」と語った。それ以上の詳細は明らかにしなかった」
(ロイター10月9日)
ヒズボラ指導者の後継候補2人を排除=イスラエル首相 | ロイター (reuters.com)

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ロイター

またヒズボラ幹部で先だって死亡した指導者ナスララの後継者と目されていたハシェム・サフィディンも死亡した可能性が高いと言われています。

(CNN) イスラエル当局者はCNNに対し、レバノンの首都ベイルートで現地時間3日深夜から4日未明にかけて実施した攻撃について、イスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部ハシェム・サフィディン氏を狙ったものだと明らかにした。
サフィディン氏はヒズボラの最高指導者だった故ナスララ師の後継候補の一人として取り沙汰されている。ナスララ師はイスラエルによる先週の攻撃で死亡した。
今回の攻撃でサフィディン氏が死亡したかどうかは不明」
(CNN10月4日)
イスラエルのベイルート攻撃、ヒズボラ指導者の後継候補が狙いか 当局者 - CNN.co.jp

イスラエルはヒズボラの指導部を根絶やしにする気のようです。
サフィディンは、故ナスララ党首のいとこであり、娘は、イランの暗殺されたソレイマニに嫁いでいたという、ヒズボラ最高指導者の後継者と見られていた人物です。
このように、イランコッズ部隊とレバノンのヒズボラは閨閥でもつながっています。

ヒズボラだけではなく、同時期にイランのコッズ部隊司令官のイスマイル・ガーニも死亡したという情報もありますが、イランは生存していると発表しています。

「ロイター通信は6日、イラン革命防衛隊の精鋭、コッズ部隊のガアニ司令官が訪問先のレバノンの首都ベイルート南部で3~4日にあったイスラエル軍の空爆後に行方が分からなくなっていると報じた。
ガアニ氏は2020年1月にイラクの首都バグダッドで米軍に殺害されたソレイマニ司令官の後任。対外工作を取り仕切る重要人物がイスラエル軍の空爆で死亡していれば、イランが報復する可能性もある 」
(産経10月7日)
イランのガアニ司令官、レバノンで行方不明か 空爆で死亡なら報復可能性も ロイター報道 - 産経ニュース (sankei.com)

ガアニはコッズ部隊(イラン対外工作部隊)の最強硬派で、米国に暗殺されたソレイマニの後任でした。
イスマル・ガアニは、壊滅的打撃を受けているハマスとヒズボラの建て直しのためにレバノンにいたと言われていました。
この人物がいなくなると、イランの対外工作は困難になってきます。
死亡説を否定するイランの発表です。

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ガアニ司令官
ロイター

[ドバイ 7日 ロイター] - レバノンで消息不明になっていると報じられているイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガアニ司令官について、同部隊の副司令官は7日、司令官の「健康状態は良好で、活動を継続している」と語った。イラン国営メディアが報じた。
イラン学生通信は、ガアニ司令官が7日にテヘランで開催されたイベント向けにメッセージを送ったとし、同氏が「別の重要な会議に参加しているため」出席できなかったと報じた。
イラン治安筋はロイターに対し、レバノンを訪問していたガアニ司令官がイスラエルによる先週のベイルート空爆以降、消息を絶っていると明らかにした」
(ロイター10月8日)
イラン有力司令官は「元気」と軍幹部、レバノンで消息不明と報道 | ロイター (reuters.com)

ヒズボラは戦闘力の大部分を失い、指導部も壊滅しました。
残った唯一の副党首ナイム・カセムは停戦を呼びかけています。

「指導者たちが皆暗殺された今、ヒズボラを代表して声明を出しているのが、副党首であったナイム・カセムである。
カセムは、8日、国民にむけて30分のテレビ演説を行った。
その中で、カセムは、ナビフ・ベリ議会議長が、“停戦”という概念の元で、ベリ議長の活動を支持すると述べた。
回りくどいが、“停戦”を支持するかのような言い方である。
またヒズボラはこれまで、イスラエルとの停戦は、イスラエルがガザへの攻撃を停止することが条件だと言っていたのだが、それを言わずに、停戦を示唆していたということである」
(オリーブ山通信10月9日)
ヒズボラ弱体化進む:ネタニヤフ首相がレバノン市民へヒズボラ打倒呼びかけ 2024.10.9 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

これに対してイスラエルが応じるかどうかは未定です。

一方、米国はいつもどおりの中間的スタンスで、イスラエルを支援しつつ自制を求めていますが、ここに来てハリス陣営に揺らぎが出始めています。
ハリスはバイデンに輪をかけてあいまいです。
ハリスの中東政策はバイデンよりもパレスチナ寄りだと目されています。

「イスラエルの安全保障に対するアメリカの関与は揺るがないと強調しているほか、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平の実現を目指すとしています。
ただ、アメリカのメディアは、バイデン大統領よりもイスラエル軍の攻撃に批判的な見方を持っていると伝えています。
ハリス氏は、早い段階からガザ地区への人道支援を重視すべきだという姿勢を示し、8月の民主党の全国党大会では「この10か月の間にガザで起きたことは壊滅的なことだ」と述べ、即時停戦を訴えました」
(NHK9月12日)
中東情勢の政策比較 ハリス副大統領、トランプ前大統領、当選したらどうなる?|アメリカ大統領選挙2024|NHK

ハリスにはトランプのようなハッキリしたキャンペーンがありません。
あえていえば女性初の大統領、黒人大統領というくらいが売り物で、メディアの大応援団をいなければトランペンプには張り合えないのです。
しかしこれではスイングステートき白人労働者層には訴える力が弱すぎます。
トランプは、激戦州の貧しい白人労働者(プワーホワイト)をターゲットにした自動車産業や鉄鋼生産の保護政策を打ち出し、不法移民が職を奪い、治安を悪化させているという彼らの不安に応えています。
そのためにハリスは、このスイングステート(激戦区)の中心的勢力である全米トラック労組や鉄鋼労組から愛想をつかされ、このままでは激戦区を落すかもしれません。

またハリスの政治的基盤は党内極左層であり、民主党主流の中間派と大きな隔たりがあります。
ハリスが中間派のバイデンと同じようにイスラエルを断固支持する姿勢を見せた場合、極左派はパレスチナ支持を叫んで離反するでしょう。
しかも極左の受皿の「緑の党」が誕生し、スタインを大統領候補に押し立てています。
そうなると歯切れがいい緑の党が、ハリス票を食う可能性すら出てきました。
もちろんこんな党派ほ泡沫ですが、1ポイントを争う激戦区では大きな意味を持ちかねません。

バイデンも先が1カ月しかないレームダックもいいところの存在でなにもできません。
ネタニヤフはその足元を見透かして、とことんやる気のようです。

 

 

2024年10月10日 (木)

出ました!立憲の低体温経済政策

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立憲が新しい選挙公約を出しました。これがスゴイ。
これが実現した暁には石破ショックなんぞ軽い軽い。
ゲルより悪いノダ。

「立憲民主党は7日、次期衆院選の公約を発表した。自民党派閥の裏金事件を踏まえ、政治の信頼回復を最優先課題と位置付け、企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止など、政治資金規正法の再改正を打ち出した。
公約は「政権交代こそ、最大の政治改革」と題し、政治改革など7本柱で構成。国会議員の世襲を制限するため、親族間で政治資金の引き継ぎを禁じる措置などを提起した。
過去の国政選挙で主張した消費税減税は盛り込まず、給付と減税を組み合わせる「給付付き税額控除」導入を明記。日銀の物価安定目標を現在の「2%」から「0%超」に変更するなど金融政策の転換を強調した」
(時事10月7日)
立民、企業献金・政活費を禁止 物価目標「0%超」―衆院選公約:時事ドットコム (jiji.com) 

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時事

うっひゃー、わかって言っているのかな、「物価目標0%」って、今の物価上昇率が2%ですからゼロにするためには金利をさらに上げねばなりません。
金利を植田日銀がわずか0.25%上げただけで株価は暴落して植田ショックとまで騒がれたんですが、これでも足りないもっと上げてしまえ、というわけです。モンスター級タカ派です。
植田日銀ですら今年の初めにはこう言っていました。

「植田総裁は、物価の先行きについて、「来年度にかけて2%上回る水準で推移したあと、2025年度はプラス幅が縮小すると予想している。前回の展望レポートからの比較で見ると、来年度の見通しは下振れているが、これは、このところの原油価格下落の影響が主因だ」と述べました。
その上で、「この間、消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、2%の物価安定の目標に向けて、徐々に高まっていくと見ている。先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっていると考えている」と述べました」
(NHK1月23日)
【詳細】日銀 植田総裁会見 “2%の物価安定目標 少しずつ確度高まる” | NHK | 日本銀行(日銀) 

いいですか、植田総裁は「2%の物価安定目標に近づいている」という見込みを述べ、これがこの春闘で物価上昇に賃金がやっと追いつくのではないか、と楽観していました。
しかしまだ経済は充分に温まっていません。
コロナの低体温と凍傷からやや持ち直したものの、コロナ以降徐々に回復した個人消費の伸びはいまだ鈍化したままです。

その指標となるのが個人消費対GDP比の数字です。
個人消費は2024-06年に54.2 %を占めていますが、これが日本のGDPの背骨です。
しかしこれが回復しつつあるとはいえ、コロナ前に戻っていません。
2023年7~9月期の実質可処分所得は前期比-0.5%と4四半期連続で減少しており、これがデフレ脱却の足を引っ張っています。
こんな状況で利上げして、カネを借りにくくしたら企業はどうなるのでしょうか。

わかりきっています。設備投資を抑え、賃上げを我慢するのです。

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今月のグラフ(2024年2月)個人消費の今後のリスク要因 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

「2023年に入って家計の名目可処分所得の増加ペースが鈍化する中、物価上昇が続いており、2023年7~9月期の実質可処分所得は前期比-0.5%と4四半期連続で減少した。こうした所得環境の下、コロナ禍で落ち込んだ後、緩やかながらも回復傾向で推移してきた実質個人消費は、このところ伸び悩んでいる」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

こういうしこった時期に「物価目標0%」だ、なんてよく言えますね。
たぶん立憲の人らは、「物価目標ゼロ」といえば、庶民がああ、そうかスーパーの値上がりが止まるんだな、と喜ぶとでも思っているのでしょう。
ワイドショー民はこれに引っかかるかも知れませんが、今の諸物価の値上がりは政府が「物価上昇目標ゼロ」と宣言すればなんとかなるものではないのです。

確かに今の物価上昇率は、2022年10月に前年の同じ月と比べて3.6%上昇しました。
その原因は複雑です。昨今のさまざまな内外の要因が絡み合わさっています。
まず原材料の物価高騰があります。
たとえば新型コロナによる人手不足、サプライチェーンの混乱、そして外的要因としてはウクライナ戦争による穀物や資源価格の高騰、日米金利差による急激な円安の進行などです。
これらが複雑に絡まり合って企業の生産コスト増加に拍車をかけ、いわゆるコストプッシュインフレが起きています。
そして企業が今まででと違って、企業努力では耐えきれずに価格に転化し始めた時期に当たっています。

政府ができることは、景気を温めてデフレから抜け出し、民間のカネが足らない部分は国が財政出動をして埋めてやり、様々な税や社会保障の負担を減らして実質可処分所得を引き上げてあげることです。
そして景気に水を差す増税や日銀利上げは景気が加熱するまで凍結します。
しかし立憲は逆方向に行こうとしているようです。

立憲は本能的にデフレ社会が好きなようです。
リベラル左翼は好景気の中では存在感がなくなるために、いつも社会が暗く、格差が開き庶民が悲鳴を上げているほうが自分らの主張が受け入れられると思っているようです。
だって、「世直し」できますもんね。
だから朝日に集うベラル文化人の人たちって、昔から成長は人類の敵だ、資本主義は人類の敵だ、社会主義が理想なんだぁ、くらいに言っています。

立憲の直接の先祖である民主党は、政権を取った時のキャッチフレーズが「コンクリートから人へ」でした。う~んなかなカッコいいぞ。
そして事業仕分けをしてビシビシ財政投資を削りまくったのですよね。
その仕分けのボスが枝野氏であり、巫女役がレンホーさんでした。
彼らはまことに財務省の良き子でした。

その結果どうなったのでしょうか。具体的に見ておきましょう。
民主党が政権を取っていた時代、2009年から2012年の株価を見ておきましょう。
バブル崩壊後の最安値7054円という阿鼻叫喚の値をつけています。
この時期、経済が体温を失って失血状態になっているということを現しています。

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【図解】日経平均株価の長期推移(THE PAGE) - Yahoo!ファイナンス

次にインフレ率推移を見てみましょう。
同じく2009年から2012年の期間に注目してください。

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日本のインフレ率の推移 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

自民から民主党に政権交代した瞬間、今まで3%くらいいだったインフレ率が一気にマイナスに振れ、2013年に自民に戻った瞬間に上っているのがわかります。
この時期、中国の回し者とすら言われる白川日銀総裁の金利政策の失敗も重なって、日本のデフレを長引かせドロ泥沼化させたのです。

野田氏はまたここに戻したいようです。

そんなことをしたら景気は腰折れし、失業率は確実に増えます。
これも完全失業率の推移で抑えておきましょう。
民主党政権下2009年から12年をご注目ください。悲惨なもんですよ。
民主党が政権を取った瞬間、完全失業率は5%の大台を越え、2013年に自民がアベノミクスを経済に取り入れとたん、ストンと落ちています。
アベノミクスの最大の果実は、景気不要による失業者低下なのです。

20241009-052337

11月の全国の完全失業率2.9% 4か月ぶり2%台に|NHK

よくアベノミクスは富者のみ富んで貧者は飢えたということを言う者がいますが、そうではありません。
企業が富み、社会が富めば、勤労者たる国民も富むのです。
それがわかる幸福の指数が失業率低下です。
FOMC(連邦公開市場委員会 )の金利決定に際して、米国雇用統計などが大いに影響を与えているのはそのためです。

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昨年度の完全失業率 2.6% 前年度から横ばい | NHK | 雇用統計

日本は現況で2.6%で推移しています。
これは漠然とこの数値になっているのではなく、2%を物価上昇率を目 標とし、これを持続的・安定的に実現することを目 指して金融政策を運営しているからです。

そしてさらに、立憲は公約で最低賃金を1500円などと言い出しました。
そんなことをすれば、失業が増えるに決まっているでしょうになぜ分からない。
立憲には中小企業を経営した者はいないのですか。

最低賃金を上げれば国民は喜ぶ、そんな簡単なことではありません。

今年の賃上げは大きかったとよく言われますが、しかし悠々と賃上げができたのは大企業だけです。
なぜなら大企業の多くは円安の恩恵を被って業績が順調だからですが、一方その下請け孫請けの中小企業はどうかといえば元気がありません。
賃上げをせねばいい人材が来ない、だから大企業に賃上げに同調して上げた、しかしその経営実態は苦しいからです。

下図は濃い青色は業績が好調での賃上げした企業、青い斜線は業績の改善がないが賃上げした企業の割合です。

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労働政策研究・研修機構(JILPT)

「賃上げ実施予定企業(「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」もしくは、「業績の改善がみられないが賃上げを実施(予定を含む)」と回答した企業)を100とした場合の「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合をみると、「前向きな賃上げ」が40.9%なのに対し、「防衛的な賃上げ」は1月調査(60.3%)より1.2ポイント減少したものの59.1%と、6割近くにのぼった」
中小企業の7割超で賃上げを実施・予定、正社員で4%以上の賃上げを行う企業は3割台に(2024春闘における賃上げの状況:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年7月号)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

この業績が改善していないのに賃上げ」ということを防衛的賃上げと言いますが、この割合が6割です。
こんな状況で最低賃金を一気に1500円に上げたら、いったいどうなるのか子供でもわかりそうなものです。
大企業はすでにこんな最低賃金なんか軽くクリアしていますから、最低賃金上昇の負荷を中小企業がもろに被ることになります。
たぶん中小企業の倒産が激増するでしょう。

立憲は民主党時代の経済政策について反省と総括がない、だからこわいのです。

 

 

2024年10月 9日 (水)

準備がないまま首相になってしまった男

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米国の雇用統計がよかったために、FRBは政府金利を下げないということになったようです。
日本もあれだけの石破ショックの後で、しかも植田総裁は金利上げるなよとゲル氏から厳命されていますから、当面は円安基調、かつ株高基調のはずです。
ゲル首相、なんていうラッキー。

「[ニューヨーク 4日 ロイター] - ニューヨーク外為市場ではドルが上昇し、対円で一時149円台に乗せた。9月の米雇用統計が予想を大きく上回ったことで、連邦準備理事会(FRB)の大幅利下げ観測が後退した。
ドル/円は一時149.02円に上昇し、8月16日以来の高値を更新。日米金利差が縮まりにくいとの観測からドルは対円で上昇しており、週間ベースの上昇率は2009年以来の大きさとなる見通し」
(ロイター10月5日)
NY外為市場=ドル一時149円台、雇用統計受け大幅利下げ観測後退 | ロイター (reuters.com)

東京市場もこれを好感して一気に39560円となり、1000円上げました。

そういえば、産経の看板記者のひとりである田村秀男氏が、こんなことを書いていました。
かつてゲル氏は、いくら田村氏がレクチャーしてもゲルの耳に念仏で、アベノミクス清算を頑なに主張していたそうですが、この夏くらいから風向きが少々変わったそうです。
田村氏はこんなことを書いています。

「そして、ことし8月下旬。筆者知り合いの石破さんのブレーンから突如、経済問題で助言を依頼された。石破さんは本欄など拙論に目を通しているとも聞かされた。ならば、とA4判で1枚程度のメモを送付した。要は脱デフレ、財政出動、実質可処分所得の引き上げ、家計消費の拡大、税収増の民間への全面還元、日銀利上げの凍結である。
ブレーンからは「石破さんはしっかりと読んでいます」との返事があったが、当方は半信半疑だ。
すると石破さんは9月に入ると、「財政出動なければ経済が持たない」「税増収分の防衛費や少子化対策への充当」「最低賃金の引き上げ」と言い出した。9月27日の総裁選勝利後の会見では「デフレからの脱却を完全なものにする」「物価上昇を上回る賃金上昇」「海外の生産拠点の国内回帰」を強調した。8月7日出版の「保守政治家 わが政策、わが天命」(講談社)での反アベノミクス色は薄れた。「君子豹変(ひょうへん)」、大いに結構だ」
(産経10月1日)
石破首相は「円安」を受け入れるのか 田村秀男 - 産経ニュース (sankei.com)

さすが田村さんの指南は的確ですが、これって実はアベノミクスなんですがね。
ホンマでっか、という話ですが、本紙で記事化しているくらいなのでホントなのでしょう。
ここからわかるのは、ゲル氏に金融・財政がわかる政策ブレーンが総裁選直前までいなかったことです。
そしてもうひとつは、夏頃から、つまり総裁選が匂ってきたあたりからやっと本腰で政策を考え始めたようです。
つまり、当人も本当に首相になるとは思っていなかったので、経済政策などという地味なことには蓋をして派手な反安倍言動にうつつを抜かしていたようです。

あまりに遅すぎてヤッツケですが、増税、金融正常化などとやられるよりはるかにマシです、と言っておきましょう
ただし、高市氏のように近畿大学経済学部教授(産業政策論・中小企業論)のようなプロとは違ってヤッツケだけに、いつまた先祖返りするかはわかりませんが。
要は、ゲル氏の能力がいささか怪しいことも手伝って、最高権力者になる準備が足りないのです。
しかし痩せても枯れてもうちの国の首相ですから、頑張っていただかなくては民が迷惑します。

たとえばこの準備不足感が如実に示されているのが、例の腹だし老人会記念写真の一枚です。
まるで服を初めて着た3歳の子供のような写真です。

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組閣時の集合写真のドレスコードに対するささやかな疑義 - Togetter [トゥギャッター]

「だらし内閣」という言葉がトレンド入りして、さすがに官邸もあせったようでレタッチしておポンポンを隠してしまいました。
いままでこんなコトをいきなり仕出かした新首相は最初です。
たぶんゲル首相をサポートする官邸の態勢が充分整っていないのでしょう。

「首相」は個人ではなく日本を人格的に代表する「機関」ですから、多重でサポートされねばなりません。
内閣総理大臣補佐官は5人の政治家で構成され、内閣総理大臣秘書官は霞が関からのエリート官僚の出向です。
岸田内閣の時は秘書官は6人となり、下の写真のように岸田氏の後ろをゾロゾロ大名行列していました。
ちなみに財務省だけはなぜか他の省庁の倍の2人います。

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官邸の心臓部 首相秘書官に迫る! どんな仕事?誰がなる? | NHK政治マガジン

これがゲル内閣ではまともに機能していないようです。
政治秘書というのは独特の慣習に満ちた世界で、マニュアルがあるわけではなく先輩からの口伝です。
総理秘書官ともなれば、将軍のお側用人のような絶大な権勢を誇り、そこらのペイペイの平大臣などよりよほど大きな権力を持っているとされています。
安倍氏の今井秘書官、小泉総理の飯島秘書官、麻生総理の村松秘書官などです。どれも食えない顔をしているでしょう。

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日朝首脳会談20年 交渉舞台裏、飯島内閣官房参与に聞く | カナロコ by 神奈川新聞 (kanaloco.jp)

これらの秘書官は普通に派閥に属していれば、派閥内で融通されていくものですが、如何せんゲル氏はいままで孤高の言うだけスナイパーであったために、まともな秘書がついていなかったようです。
ですから、この認証式の写真一枚でも、ゲル氏に、あ、首相モーニングにベルトを使ったら裾が弛みます、こちらにショルダーストラップをご用意してありますから、なんてサポートをする者が誰もいません。
文書もチェックする者がいないようで、こんな官邸発の発信をしてしまいます。

「石破総理は能登の被災地を訪問し、お一人お一人と話され、困難な環境下にある人々のために力を尽くす決意を新たにされました」

わ、はは、自分のボスに丁寧語をつけるなって、社会人の常識だろって。
SNSで指摘されて、慌てて「表現の適正化」をしています。

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軽いんだよね。なにもかも。
準備をしてこなかった、言い換えれば自分がよもや首相になるなんて思っていなかった男が首相になると、上は経済政策から下はズボンの裾までわからないことだらけというわけです。

 

※岸田氏に関してクレームがきましたので全削除しました。

2024年10月 8日 (火)

ゲル閣下、自民党を敗北と分裂に追い込む

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難破寸前のゲル号、またまたやってしまいましたね。

「石破茂首相(自民党総裁)が政治資金収支報告書に不記載が確認された自民党議員を次期衆院選で公認した場合でも、比例代表との重複立候補を認めない方針を固めた。重複立候補できない非公認の対象も従来より広がる。衆院選を前に有権者の不満を抑える狙いがある。ただ、当選の確率が下がるだけに自民議員の動揺は激しい。深刻な党勢後退を懸念する声も強まっている。
「(世論調査などで)地元から説明責任が評価されていないと判断された議員は非公認となる。厳しい判断だ」。自民幹部は首相の決断についてこう語った」
(産経10月6日)
自民に激震「比例重複認めず」 非公認対象広がる 党勢後退すれば首相の責任問題も - 産経ニュース (sankei.com

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日テレ

選挙選を前に悪手の極みです。どんなことになるか、誰にも想像がつくってもんです。
つい先日まで選挙戦の司令塔である森山幹事長は全員公認を打ち出していました。
そりゃ森山氏ならずとも当たり前の判断です。
後述しますが、もう党としての処分は下して、党からの追放が2人もでているのです。
ここで二重処分をすれば、死体に鞭打つようなもの。喜ぶのは野党とメディアくらいなもんです。

あれが「犯罪」なんかじゃないことは、自民党員なら誰でも知っているはずです。
そして目先のことを言えば、どこの党が衆院選直前になって党を分裂させて戦力ダウンをし、自党の候補を落選の憂き目に合わせるなんてしますか。
フツーしませんよね、非公認にしたりする不利益な扱いをした議員は落選の可能性が高いですから、確実に議席を減らすのは目に見えていますもんね。
必勝ならぬ必敗の布陣。石破さん、頭おかしくなったんじゃありませんか。

そもそも、メディアは「裏金」「裏金」と煽ってまるで汚職で私腹を肥やしていたような印象報道をしていますが、しょせん政治資金報告書の記載漏れにすぎません。
安倍政権の時のモリカケ騒動となんら変わらない、火のないところに煙を立てる類のイリージョンです。

自民党執行部が毅然と記載ミスではねつけてしまえば終了した案件にすぎませんでした。
しかしこれをこともあろうに党首の岸田氏が、安倍派潰しに使えると閃いてしまい、今の大事に仕立て上げました。
党首が党所属議員を率先して売るという卑劣な行為です。

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「とんでもない野郎だ」岸田文雄首相、能登訪問で「頑張りましょう」直後の大雨災害スルーし“卒業旅行”「永久に帰らなくていい」非難轟々(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース

そして自民党の派閥は諸悪の根源だとばかりに解体(ただし自分の派閥は裏でひもを握っていましたが)政治資金パーティも禁止、そして司法が立件できないにもかかわらず党独自の処分と追放。
当然、岸田氏に権力が集中します。
今までも自民党には他派閥の切り崩しくらいはありましたが、ここまで徹底した冷酷な他派閥解体、自分への権力集中をした総裁など見たことがありません。
小派閥が権力を独占するにはこれが近道だったからです。
この手管を引き継いだのが、岸田氏の後押しで総裁になれた泡沫派閥のゲル氏です。

ところで、国会でまたヘンを人が生まれました。「れいわ」の大石あきこ氏です。
大石あきこ氏は名にし負うバリバリのサヨクです。
大石晃子 - Wikipedia

大石氏は国会の壇の上で「裏金議員隠しの解散やめろ」とプラカードを掲げて衛視に排除された強者で、懲罰を受けました。
懲罰を受けると箔がつくのですから、まるでヤクザ屋さんの世界みたいです。
これを報じるのは赤旗よりアカい日刊ゲンダイです。

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日刊ゲンダイ

「大石氏が壇上で私利私欲の好き勝手な主張をしたのであれば懲罰は当然だろうが、「裏金隠しの解散やめろ」「能登の補正予算を」は、多くの国民の声を“代弁”したに過ぎない。(略)
本会議場で紙を掲げて国民の叫びを訴える行為と、常習的、組織的にカネをため込み、識者などから脱税とも指摘される“犯罪”に手を染めていた裏金議員の行為のどちらが悪質なのかは明々白々。
《正論を言うと罰せられるのか》《じゃあどうすればよかったのだ》《裏金議員の方が悪質だろ。こんなことで懲罰するな》
 ネット上では大石氏に対して批判的な意見よりも、擁護する声が目立つ」
(日刊ゲンダイ10月3日)
れいわ大石晃子氏は「正論」掲げ懲罰動議…かつて国会ではプラカード抗議で怒声など日常茶飯事(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

おお、喜べ、日刊ゲンダイ様より人民英雄勲章を授与されたゾ!
ところがこの「英雄」は、たちまち馬脚を露します。それも「裏金」だからというのですから抱腹絶倒です。
笑えることには、大石女史にも「裏金」が、2022年の政治資金報告書だけで450万円の不記載が発覚、慌てて報告書を訂正したようですが、一説、450万どころか、1280万円にものぼるとさえ言われています。自民党でもトップクラスです。
まさに絵に描いたような天に唾するですが、しかし大石女史はめげません。あたしのは「不記載=裏金」ではないという言い訳をしています。
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派閥から還流するのは、別に違法行為でもなんでもありません。
東京地検が半年もかけても立件できなかったのは、それが政治資金報告書に記載されていない報告義務違反にすぎなかったから会計責任者だけ起訴されたのです。

ですから大石女史が自民党の記載ミスを「裏金」と呼ぶなら、大石女史の裏金はなんて呼んだらいいのでしょうか。
「キレイな裏金」とでも呼びましょうかね。

そのうえゲル首相の足元でも地雷がチュドーン。

「神戸学院大の上脇博之教授が3日、東京地検に告発状を出した。告発状によると、石破氏らが代表を務めた水月会は、2019~21年に開いた政治資金パーティーで、収支報告書の収入に計80万円分少なく記載したとしている。
石破茂首相は7日、自身が代表を務めた政治団体「水月会」による政治資金パーティーを巡り、政治資金規正法違反容疑で告発されたことについて「事務的なミスがあったことは好ましくない。厳粛に受け止める」と述べた。官邸で記者団の質問に答えた。

水月会事務局で収入の記載誤りがあったと説明。「事務的なミスが起こることがないようにしたい」と強調し、今後、訂正されるとした」
(産経10月7日)
石破首相「事務的ミスあった」 旧派閥の政治資金パーティー巡り刑事告発 - 産経ニュース (sankei.com)

ゲル首相は、「ルールを守る政党に」なんて言って重罰を適用し、政治声明すらうばいかねない非公認に処しながらながら、じぶんの派閥となると手のひら返しで「事務的ミスが起きないようにする」でオシマイにしてしまうのですから、たいしタマです。

そもそもこの「裏金」問題は、派閥事務局長だった会計責任者が、派閥所属議員に政治資金パーティでの余剰金はこうして処理するものだと教えてしまったことから生まれました。
だから旧安倍派はそれを慣習だと考えてやってしまったのです。
愚かではありますが、事務局長からこういうしきたりないんだ、と言われれば従ってしまう。
第一賄賂でもなんでもなく、自分らが開いた合法の派閥政治資金パーティーで得た資金ですしね。

額には大きな差があります。上は池田佳隆氏の3208万から下は藤原崇氏の10万までありますが、平均して100万単位です。
しかも4年間での合計ですから、1年ではあんがいショボイ。

上位2人は司法の取り調べを受けましたが、司法はどのように判断したのでしょうか。

「派閥から還流を受けた議員側でも、池田佳隆衆院議員が逮捕、起訴されたほか、大野泰正参院議員は在宅起訴、谷川弥一元衆院議員は略式起訴となった。一方で、塩谷立座長や派閥有力者の「5人組」らは立件を免れた」
(東京2月2日)
【一覧】安倍派「キックバック」所属99人のうち77人訂正 高額の議員は…収支訂正は3年分 裏金事件の全容は分からず:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

結局、この7月になって東京地検は告発されていた16人の議員は全員不起訴で、会計責任者のみが罰せたようです。
つまりこの「裏金事件」には賄賂性がなく、自分が集めたカネを自分らに還流しただけで、ただの記載漏れだと司法は判断したのです。

この司法判断が出る前の4月には、自民党が処分を出しています。

「処分対象となった39人は、2018~22年の政治資金収支報告書への不記載額が500万円以上の議員と元議員が中心。安倍派の幹部だった7人は500万円未満でも対象とし、比較的重い処分にした。
離党勧告は、安倍派座長を務めた塩谷立元文科相(不記載額は234万円)と、安倍派の参院トップだった世耕弘成前参院幹事長(不記載額は1542万円)。
この2人は、安倍派のパーティー券収入のキックバック(還流)の廃止や、その後の復活を協議した2022年の会合に出席していた。この会合に同席していた下村博文元政調会長(不記載額は476万円)と、西村康稔前経済産業相(不記載額は100万円)は、党の処分としては3番目に重い、期限付きの「党員資格停止」とした。期限は1年間」
(東京4月4日)
一覧表あり】安倍派幹部の塩谷、世耕両氏に離党勧告 裏金事件で自民党が39人処分:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

つまり、既に自民党自身が処分にかけ、塩谷氏と世耕氏は党籍剥奪となり、旧安倍派は屍累々で、事実上息の根を止められました。
そして今回の選挙の非公認です。
つまり既に2回に渡って「裏金議員」らは取り調べを受けて処罰されているわけです。
にもかかわらず、党は2回目の処分を課そうとしています。
これは近代刑法の一事不再理という理念に反する怨念むき出しの復讐政治です。
一事不再理とはこのような意味です。

「一事不再理とは、刑事裁判が確定した場合、当該事件について再び起訴することが許されなくなるという刑事裁判における基本原則のことです
憲法39条を見ると、「何人も、実行の時に適法であった行為またはすでに無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」とあり、明文で一事不再理が定められています」
一事不再理とは何か。再審との違いなどを解説 (vbest.jp)

さすがに森山氏はそのおかしさに少しは気がついていたようで、全員公認しようとしていました。
これは二重処分を強行し、非公認とすれば選挙戦前に党がガタガタになり、当選者も減るのが目に見えていたからです。

「自民の森山裕幹事長は4日、派閥パーティー収入不記載事件で処分した衆院議員をめぐり、原則として公認する意向を示していた。すでに不記載事件への党の処分が下された中、非公認が「二重処分」にあたるとの指摘もあった。
非公認となればテレビの政見放送でアピールできず、配布ビラの枚数も減るなど厳しい選挙戦は避けられない。自民重鎮は「公認問題は決着済みだと聞いていたので総裁選で首相を応援した。話が違う」と語気を強めた。
自民内では27日投開票予定の衆院選を目前に、非公認とすれば地方組織などが混乱するとの懸念が強い。森山裕幹事長は党本部で記者団に「選挙は当選第一主義だ。政治資金問題は党で調査し処分も下してきた」と強調。7日までに行われる各都道府県連からの公認申請に基づき、「裏金議員」も公認する考えを示唆した」
(産経10月4日)
自民、地元申請あれば不記載議員も原則公認 森山裕幹事長「党の決まりに基づき対応」 - 産経ニュース (sankei.com)

ところが、その二日後、ゲル首相はこれを覆して二重処分に突き進んでしまいました。
なにがあったか知りませんが(というか知りたくもありませんが)おおかた安倍派狩りに狂奔した岸田某がゲル氏になんかいったんでしょうかね。
岸田氏がいまや石破政権の影のオーナーですから。

いずれにせよ、これで自民党には深い亀裂が生まれました。
来る選挙では大きく票を落すことでしょう。
旧安倍派の皆さん、ひとりで這い上がって来て、当選したらリベンジして下さい。

 

 

 

2024年10月 7日 (月)

石破茂、キレイゴトだよ、人生は

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ひとことで言えば、石破氏は評論家です。
だから実現可能かどうかなどは斟酌なく、聞いたようなキレイゴトを言っていれば食っていけました。
それがこともあろうに総理になるという、たぶんこのウソだろうという展開にいちばんショックを受けているのはゲル氏当人ではないでしょうか。
あ、そうそう「ゲル」という名は石破氏が「広めてほしい」と言っているオフィシャル愛称ですので念のため。

下は認証式の後の有名な老人会の記念写真ですが、ゲル氏は腹出してモーニングのズボンはダヨーン。伊達メガネにはシール。
腹出している新首相なんて初めて見ました。
どうせ永田町の貸し服屋に持ってこさせたのでしょうが、サイズくらい合わせろよと思いますが、村上氏はあさっての天井見てホゲているし、岩屋氏もズボンがダヨーン、となかなかのもんです。

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画像・写真:記念撮影する石破首相と閣僚ら:時事ドットコム (jiji.com)

キレイゴトといえば、アジア版NATOの創設については、早くもインドと米国が即時に正式否定しました。
インドはFOIPが西側陣営による対中包囲網ととられるのを警戒しているのです。

「米国を訪問したインドのジャイシャンカル外相は1日、米カーネギー国際平和財団での対談行事で、石破茂首相が掲げる「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設について、「われわれはそのような戦略的な枠組みは考えていない」と述べ、支持しない考えを表明した。ジャイシャンカル氏は「われわれには異なる歴史があり、異なる取り組み方がある」と説明した」
(産経10月2日)
インド外相、石破首相の「アジア版NATO」創設支持せず 「重く受け止めなければ」との声も - 産経ニュース (sankei.com)  

少しでもインドの外交・安全保障政策を知っていれば、あまりにあたりまえの反応です。
インドは独立以来一貫して「非同盟」を外交の柱に掲げており、どちらかといえば東側に傾斜しつつも特定の同盟や大国によって自国の外交が左右されるべきではないという「戦略的自律性」の方針を堅持してきました。
だから、西側のウクライナ制裁には乗らず、かといってロシアを支援するわけでもないというアクロバティックな外交を演じました。

ですから、むしろFOIP(自由で開かれたインド太平洋)構想にインドが乗った時に世界は驚いたほどです。
これはマンモハン・シン首相の安倍氏への深い友情と信頼の賜物でした。
石破氏は仇敵アベの仕事にタダ乗りしてアジア版NATOなどと言っているだけのことで、相手にされるワケがありません。

 米国はすでに否定されているものを、なぜ蒸し返すのかと首を傾げているようです。

「米政府は、安保体制参加国が国家の安全を相互に保障する「集団安全保障」の議論は、アジア太平洋地域では「時期尚早だ」(クリテンブリンク国務次官補)との立場をとる。石破氏が主張する日米地位協定の見直しも、米側では必要性が十分認知されているとは言いがたく、まずは議論の土台作りが求められそうだ」
(毎日9月27日)
米政府、アジア版NATO議論は「時期尚早」 石破氏提唱で注目 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

そりゃ言われますよ。「議論の土台ができていない」、それに尽きますもん。
いままで米国との地位協定運用の協議には無関係を決め込み、集団的自衛権にもなにもしなかったような評論家が、いきなり首相になりそうだからと言い出しても、米国からすればWHO?のひとことです。

そもそも石破氏はFOIP(自由で開かれたインド太平洋)という枠組みを知っているのでしょうか。
自分では安全保障のプロという肩書をだいぶ使っていたので重々承知でしょうが、FOIPという枠組みに重ねて「アジア版NATO」を作るという意味がわかりません。

FOIPになくてNATOにあるのは、NATO第5条、つまり自動参戦条項です。
実例をあげましょう。
ドイツ連邦軍は、アフガニスタンに国際治安部隊(ISAF)として派遣されました。
さっそく朝日はNATOのドイツ軍人の犠牲者をデカデカと報じて、「後方支援でも犠牲者がでる。どこでも戦場だ」と書いています。
朝日はアベがやった集団的自衛権なんぞやったらドイツのように戦死者が多数出るんだぁ、いいのかぁと言いたいようです。
もちろん、集団的自衛権と集団安全保障体制の初歩的混同による誤報です。
安倍氏が使えるようにしたのは集団的自衛権、一方NATOは集団安保体制です。

「集団的自衛権は、憲法の解釈を拡大して、他国攻撃時に他国を守るために武力行使を許可する権利のことを指します。
一方、集団安全保障は、国際社会全体の平和と安全を確保するための取り組みであり、複数の国が協力して防衛や平和維持活動を行うことを指します。両者の違いは、集団的自衛権が国内法での枠組みであり、自国の防衛のために武力行使を認める権利であるのに対し、集団安全保障は国際的な取り組みであり、多国間での協力や連携を通じて平和と安全を守ることを目指す点にあります」
集団的自衛権と集団安全保障の相違点 | コラム | 東京都渋谷区のセミナーならバーチュー・クリエイティング株式会社|

下の写真はくだんのISAFに参加したドイツ連邦軍です。

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なぜ、ドイツ連邦軍がアフガンというドイツの安全保障とは直接関係ないアフガンの辺境に投入されているのでしょうか。
それはNATOが、2001年9月1日の米国同時多発テロを受け、翌月の10月2日にこれはNATO条約第5条に該当すると決議したからです 。

●NATO条約第5条
「NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する」

NATOは、トランプが批判的な言動をするので、米国とは別枠の組織と勘違いされますが、もちろん米国はこの大黒柱のひとつです。
理由はシンプル。現実に仮想敵であるロシアとの軍事衝突になった場合、ヨーロッパ各国軍の力だけでは防ぎきれないから、ヨーロッパは自動参戦条項で米国を逃げないように縛っているのです。
よく米国は世界に米軍を無理やり置いている、けしからんという人がいますが、逆です。
ヨーロッパが恐れているのは、トランプのような大統領が極端化してNATOを脱退して北米大陸に籠もってしまうことです。
そんな勝手なことをさせないようにNATO条約第5条で縛り、米国に対する直接攻撃にはNATO軍を出して反テロ戦争に協力したのです。
これが集団安保体制です。

さて話を戻して、アジア版NATOという枠組みを作るとなると、なんのためにどの国を仮想敵として軍事同盟を組むのかという本質的問題が最初に出てきます。
このアジア地域で、国境変更の常習犯である中国が仮想敵となるのは必定です。
というかここがあいまいなまま軍事同盟を作ってどないするねん、というもんです。
石破氏がアジア版NATOに中国や北朝鮮の加入も呼びかけるという噂を聞きましたが、ちちろん「安保のプロ」がこんなことを言うはずがない、きっと悪い冗談でしょう。
では中国と対峙するために軍事同盟を作るといって、現実にどこの国が来るのでしょうか。

石破氏はアジア版NATOについて一文をしたためています。
提出した相手は政府とも関連の深いハドソン研究所に宛てで、石破氏はこう書いています。

「現在、日本は日米同盟の他、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリスと準同盟国関係にある。そこでは「2+2」も開催されるようになり戦略的パートナーシップの面として同盟の水平的展開がみられる。韓国とも日米は安全保障協力を深化させている。これらの同盟関係を格上げすれば、日米同盟を中核としたハブ・スポークスが成立し、さらにはアジア版NATOにまで将来は発展させることが可能となる」
ハドソン研究所 (hudson.org)

おいおい、今の各国とやっている「2+2」(外相+防衛相)会談や物品役務相互提供協定を積み重ねれるという「同盟の水平的展開」があれば自動的に軍事同盟に熟成し、さらにはアジア版NATOに至り着くとでも本気で思っているのでしょうか。
政権担当者の論文ではなく、まるで頭の悪い学生の作文のようです。

「最近では、ロシアと北朝鮮は軍事同盟を結び、ロシアから北朝鮮への核技術の移転が進んでいる。北朝鮮は核・ミサイル能力を強化し、これに中国の戦略核が加われば米国の当該地域への拡大抑止は機能しなくなっている。それを補うのはアジア版NATOであり、そこでは中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対する抑止力を確保せねばならない。アジア版NATOにおいても米国の核シェアや核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」
石破茂氏が語る日本の新安全保障時代:日本外交の未来 |ハドソン研究所 (hudson.org)

ここでも石破氏は拡大抑止、つまりいわゆる「核の傘」が中露北の核戦力強化で綻びが出ているから、核三原則の「持ち込ませない」を改定しろという主張をしています。
具体的には書いていませんが、おそらく中国を念頭に米軍が配備をしようとしている中距離弾道ミサイルとワンセットで核弾頭の持ち込みを可能としたい、それを補うのがアジア版NATOだと言いたいようです。
日本に核の持ち込みができないのは、戦後イデオロギーから来る非核幻想があったからです。
むしろ米国の側の問題ではなく、日本側の国内的な事情によっていままでできなかった以上、アジア版NATO以前にじぶんの国の事情を真剣に変えて行かねばならないはずです。

大前提として、いままでの「集団的自衛権の一部容認」というあいまいな中間形態から、本格的な国際的集団安保体制へと移行するための法整備をせねばなりません。
あたりまえですが、そうなるためには専守防衛などという寝言は言っておられなくなりますから、きちんと自衛隊を憲法に位置づけねばなりません。つまり改憲です。
石破氏はたしか9条2項といういちばんハードルが高い改憲を提唱して、自民の改憲案を攻撃してきました。
ならば首相となった今、9条2項の削除でおやりになるといい。
これらをやる覚悟があって、その先にやっと集団安保体制が見えてくるのです。

そもそもこの石破茂という人は、ここまで集団的自衛権の蓄積に一滴の汗もかいていません。
集団的自衛権の出発点であった安保法制時、防衛大臣就任を安倍氏から要請されれば拒否して安倍氏を失望させたのは有名な逸話でした。
以後、「安保のプロ」を自認しながら、一切の協力を拒み高見から苦闘する安倍氏の背中を撃っていたのはどこの誰だったのでしょうか。
妨害こそすれ協力はしなかった人に発言権はありません。
だからまるで自動的に集団安保体制への赤絨毯が敷かれた道がそこにあるようなお気楽なことを言えるのです。

今の「2+2を同盟に格上げする」ってどうやってやるのですか。そのメリットが相手国にあるのでしょうか。
現在は、相互に共同訓練をして信頼醸成期間にすぎないのに、いきなりこの文脈でアジア版NATOという大業を繰り出す神経がわかりません。
こんなことをすれば、わざわざ日本にまで戦闘機を飛来させて「友好」を確認し合ったインドなどはドン引きでしょう。
だから「石破構想」はインドからすげなく拒否されたのです。

では、「アジア版NATO」ができるでしょうか?
現状では不可能です。それも米国に要求うんぬんではなく、わが国の側の問題です。
この話に乗ってきそうなのは、楽観的に見てせいぜいがオージーくらいなもので、ほかの諸国はせいぜいが「友人」止まりです。
ましてや、扱いひとつで爆弾となる自動参戦条項などとんでもないというのがASEAN諸国の本音です。
今フィリピンはまたもや南シナ海に中国の侵攻を受けていますが、他のASEAN諸国は知らんぷりです。
なぜか、彼らは中国経済にがっちり組み込まれているために、フィリピン支援などして報復されたら元も子もないと思っているからです。
むり押しすれば、親中派のカンボジア、ラオス、インドネシアがASEANを割るでしょう。

ですから現実的には出来ても「NATO+」構想止まりです。
加盟するのは日本だけ。よくてオージーも来るか来ないか。
「NATO+」とは、「アジア版NATO」と正反対に、日本のほうがNATOに加盟して、これを軸に欧州のNATOとアジアにおける民主主義国家で連合を組もうという、いわゆる「グローバルNATO構想」です。
これはヨーロッパでも真剣に議論されていて、実現の可能性はないわけではありませんが、本格化しようとすると出て来るのは、フランスの反対と集団安保体制に参加できないというわが国独特の問題です。

日米地位協定も一緒です。双務的と石破氏はよくいいますが、双務的とは米国内に自衛隊の基地を作ったり、地位協定を改定させたりすることではありません。
米国とグローバルパートナーシップを結ぶことができて初めて可能なのです。
アフガンに兵員を出したドイツと同じことをやる気概が日本にあるのか、そこから問いなさい。
なんでも行き着くところは、わが国独特の歪んだ安全保障のあり方なのです。

仮にこれをクリアしたとして、具体的には米国の航行の自由作戦参加国(英仏独豪)と日比などが連携し、さらにはこの枠組みに台湾を入れたいという構想もあります。
安倍氏が存命していたならば、そこまで実現したことでしょうが、背中を撃つスナイパーとなっていたのは他ならぬ石破氏ではなかったのでしょうか。
米国政府が言うとおり、「議論の土台から作れ」ということです。ま、それにまったく尽力しなかったあなたに、それができますか。


ま、言っただけです。安倍氏と差別化したかったのでちょっとカッコウをつけただけ。やる気なんかありません。
事実、所信表明演説では封印し、岩屋外相はすでに「将来構想のひとつ」にまで格下げされてしまいました。
改憲も「将来構想のひとつ」にしないようにお願いします。

 

2024年10月 6日 (日)

日曜写真館 ひつじ田の畦の景色の彼岸花

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お前さん どこへ行くんじや 彼岸花 伊丹三樹彦

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夕焼の 遥か 彼岸について語れ 富澤赤黄男

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悩みなど捨てよと咲けり彼岸花 中里カヨ

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ふるさとの曼珠沙華今も同じ道 細見綾子

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まんじゅしゃげ 墓地にて開ける法衣函 伊丹三樹彦

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今生の闇凛々と曼珠沙華 飯島晴子

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仏達を笑ふてくらす彼岸哉 政岡子規

 

 

2024年10月 5日 (土)

ゲル号、いきなり難破してしまう

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いきなり座礁です。ええ、もちろん石破政権のことです。
フツーは蜜月期間なんてシャレたもんがあるんですが、いきなりガラガラガッチャーン。

まず襲ったのは驚異的低支持率の大波です。

石破茂内閣の発足を受け、朝日新聞社は10月1、2日、全国世論調査(電話)を実施した。内閣支持率は46%で、不支持率は30%だった。現行方式で調査を始めた2001年の小泉純一郎内閣以降、発足直後の内閣支持率としては、岸田文雄内閣の45%に次いで、2番目に低かった。一方、不支持率は、麻生太郎内閣の36%に次ぎ、2番目に高かった。 」
(朝日10月2日)
石破新内閣「支持する」46% 組閣受け 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル (asahi.com)

だいたい政権というのは、組閣当初は御祝儀で高支持率を得るのが当たり前です。
いままでの垂れ込めた雲が晴れたような気分になりますからね。
だいたい悪くても6割、時には7割なんて高支持率を国民から貰えるものです。
しかしいいのは初めだけ。飽きっぽい世論にたちまち見放され、政権末期には2割台で終了というのが通例です。
なのに出発点がいきなり5割では目も当てられません。
たぶん1年以内に(そこまで持てばですが)20%を切るか切らないか、というデンジャラスゾーンに転落するんでしょう。

20241004-040839

図録▽歴代内閣の内閣支持率推移 (honkawa2.sakura.ne.jp)

しかしそれにしてもいきなり5割とは、さすがに官邸のみならず永田町は震撼したようです。
おかしいじゃないか、マスコミ、いままでボクのことをあんなに褒めてくれてたのに。ボクがアベをやっつけたのにヒドイや、という声が官邸から聞こえてきそうです。
テレビはこんな解説をしています。

「支持率の低さについて、自民党議員からは「裏金問題が根強く影響している」との指摘が多く出ています。別のベテラン議員は石破総理の解散方針が「言行不一致だった」とした上で、「人事も評価されなかったのだろう」と分析しています。また、ある閣僚経験者は「派手に総裁選をやっても、政治とカネの問題には何も前進がなかった」と指摘しています。
こうした状況から、別の閣僚経験者は「支持率があがる要素がないから選挙は厳しい」と話すなど、自民党内では衆院選を不安視する声が出ています 」
(日テレ10月3日)
石破内閣支持率51% 「裏金問題が影響」との声も (2024年10月3日掲載)|日テレNEWS NNN (ntv.co.jp)

誰に聞きに行ったか知りませんが、薄っペらいね。石破氏に入れた連中なら「政治とカネが未解決」といって、言外に「裏金議員は公認すんな」とつけ足したいのでしょう。
一方、「組閣の失敗」と言うに人らは、旧安倍派はおろか高市氏支持者が完全にオフリミットされた組閣に不満をたぎらせていることでしょう。

産経の看板政治記者である乾正人さんが「やっぱり石破さんは悪人じゃなかった」と感嘆の声を上げています。
「悪人」とは、「手練手管で権力中枢を握ろうとする者」だそうですが、ゲル氏が「悪人」ならば安倍憎しを抑えて敵を政権内部に取り込み真綿で首を締めるようにしてしまうそうです。
それをまぁやるに事欠いて、怨念全開。
怨敵安倍派一掃、政敵高市・小林排除、重臣村上・岩屋重用ですからね。
フツーは、派閥均衡人事とメディアにくさされながらも、もうちっとはバランスに配慮するもんです。

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産経

「新首相は、暗殺された元首相・安倍晋三を「国賊」呼ばわりして処分を食らった村上誠一郎を重要閣僚に据え、最盛時には100人を数えた旧安倍派からは誰一人として大臣にも党四役にも登用しなかった。絵にかいたような「報復人事」で、ここまで徹底するとかえって清々(すがすが)しい。(略)
彼らが、いま新総裁に就任したなら人気のある高市早苗を幹事長に、小林鷹之を重要閣僚に起用して総選挙と来年夏の参院選を戦い、終わったところでお役御免にしていたはずだ。あるいは、40歳代の小林だけ抜擢し、ライバルの高市を孤立させる策を採ったかもしれない」
(産経10月4日)
「自民大乱」の予兆が見えた! 「悪党政治家」ではなかった石破茂 大手町の片隅から 乾正人  - 産経ニュース (sankei.com)

こういう人事をしたら最後、党内に爆弾を抱えこんだようなものですから、干された連中は、高市・小林を中心に据えて、絶対に時限爆弾と化します。

続いて、石破氏が首相に就いた瞬間、株価は2000円の暴落をしました。
武者陵司氏に言わせれば、「市場の政策審判」だそうです。

たぶん冷や汗を一升もかいたはずの石破氏は、慌てて植田総裁に、「利上げ上げすんな」とプレスをかけました。
日銀は財務省の子会社みたいなものですから、政府が政府方針を伝えるのはいいんですが、直近の金利政策に介入するのはおいおいです。
まぁ、とりあえずこれで株価は持ち直しました。

それにしても、石破さん、「日銀は政府の子会社」と表現した安倍氏をあれだけ強く批判していたのはあなたですよ。
総理になったとたん手のひら返しですか、やりますなぁ。

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日経平均株価:リアルタイム推移・最新ニュース - 日本経済新聞 (nikkei.com)

石破茂首相は2日、日本銀行植田和男総裁と首相官邸で初めて会談した。首相は会談後、報道陣に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と語り、日銀による利上げに慎重な姿勢を示した。その上で「緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展し、デフレ脱却に向けて経済が推移することを期待していると総裁に申し上げた」と述べた」
(朝日10月2日)
石破首相「追加利上げの環境にない」 日銀・植田総裁と会談後に言及:朝日新聞デジタル (asahi.com) 

そもそも石破氏の経済スタンスは、一貫して反アベノミクス、異次元緩和反対、円安反対、日銀に対するプレス反対、金融正常化、財政緊縮、「金利のある国」がモットーだったはずですから、政権をとるやいきなり真逆に触れてあからさまに日銀をけん制するとは、なかなか並の人ではできないまねです。

このように正反対にブレると、為政者の意志がどこにあるのかわからなくなります。
これで石破氏の金融経済政策の基本がどこにあるのか、わからなくなりました。
しかもこの人らしく、言い切らないでこういう逃げた言い方をします。いかにもいかにもです。

「石破首相は、政策金利の引き上げに関して「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と語った」
(ブルームバーク10月2日)
「現在、追加利上げするような環境にない」と石破首相-日銀と連携確認 - Bloomberg

なにが「個人的には」ですか、ゲル氏が自宅のお茶の間で言ったならともかく、一国の総理がテレビの前で言ったら最後、それはまがいもなく公的発言なのです。
こんな煮え切らない言い方をする最高権力者って初めて見ました。
この調子で米国大統領に、「日米地位協定を改正したい。米国内に基地作らせろ、と個人的には思っている」なんて言うんでしょうね。
そしてアチラから一蹴されたら、「国民的に議論を積み重ねていく」とすごすごと撤退。
こういう責任を取りきらないキレイゴト評論家体質は、雌伏していた時にメディアにおだてられてついたんでしょうが、治さないと致命傷になると「個人的には」思いますよ。

そしてその前にやらかしたゲル砲が、いま政界を揺るがせている解散発言です。
なんせフライングもいいところで、総理になる前に言っちゃったんですから困ったお人だ。

自民党の石破茂総裁は30日、党本部で記者会見し、次期衆院選を10月27日投開票の日程で行うと正式に表明した。まだ正式には首相に就任していない中で、異例ともいえる衆院解散・総選挙表明に踏み切った。
「明日国会の首班指名で内閣総理大臣に選出されれば直ちに組閣を行い政権を発足させたい」とした上で「新政権は、できるだけ早期に国民の審判を受けることが重要。諸条件が整えば、10月27日に解散総選挙を行いたいと考えています」と述べた。
選挙実施日まで1カ月を切る中、「全国の選挙管理委員会の準備の観点から、本日、表明させていただいた」と述べた」
(日刊スポーツ9月30日)
異例の表明 石破茂氏、解散権持つ首相就任前に10・27衆院選を正式発表「選管の準備のため」 - 社会 : 日刊スポーツ (nikkansports.com)

石破氏はかつてこう言っていました。

「石破氏は21日昼、岸田文雄政調会長らと都内で会食した後、記者団にこう語り、今秋にも安倍首相が踏み切るのではと臆測を呼んでいる衆院解散・総選挙に反対する考えを強調した。
憲法7条は、内閣の助言と承認により天皇が行う国事行為の一つに「衆議院を解散すること」と掲げており、これが首相による衆院解散の根拠とされる場合が多い。ただ、石破氏は2日の講演で「7条解散」について「憲法論から『すべきではない』との立場だ」と強調。内閣不信任決議案可決か信任決議案否決に伴う憲法69条による解散などに限定すべきだと主張する。
さらに、石破氏は首相になったときの記者会見では質問を無制限に受け付けると明言。2日の講演で「手が挙がらなくなるまで質問を受けたい。メディアを取捨選択するのは国民を取捨選択することだ。民主主義の在り方として私はとらない」と訴えた 」
(産経2020年7月24日)
石破氏「7条解散」封印宣言 首相就任なら足かせ懸念 - 産経ニュース (sankei.com)

7条解散という内閣の解散権の根拠を否定し、不信任案が出た時に解散に撃って出ることができる69条解散を主張し、「手が上がらなくなるまで質問を受けたい」と言っていた人が、突然の豹変です。
手が上がらなくなるまで議論をすると言っておきながら、森山幹事長とゴニョゴチョと密室で相談しただけで解散。
しかもまだただの「一政党の総理」にすぎない立場で解散宣言をしたのですから、野党が怒るまいことか。

「野田氏は、石破氏が国会で首相指名を受ける前日に衆院選「10月27日投開票」を発表したことに関し、「(首相就任前の)自民党総裁なのに(首相の専権事項である)伝家の宝刀を抜いた」と指摘。「フライングだ。違憲の可能性がある行為で信じられない」と反発した。国会内で記者団に語った。
石破政権は野党が求めた衆参両院の予算委員会の審議も拒否した。野田氏は「臭いものにふたをするとしか思えない」と断じた。日本維新の会の馬場伸幸代表は記者会見で「一度も(実質的な)議論をしないままに解散する。敵前逃亡内閣だ」と非難。玉木氏は、石破氏の愛称「ゲル」に引っ掛けて「議論から逃ゲル内閣だ」と訴えた」
(時事10月2日)
「違憲の疑い」「逃ゲル内閣」 野党、石破政権を一斉批判:時事ドットコム (jiji.com)

「逃ゲル内閣」ですか、座布団3枚(笑)。
今回は珍しくも野党の言う方が正しい。もちろん首相でもない人間が解散なんか宣言できるはずがありません。
予算委員会も開かない、一切の質疑には応じない、即刻解散だ、だって野党が選挙体制ができない奇襲だから勝つってモリヤマが言ってたもん、
かつてのリベラル評論家ゲル氏なら、「憲法から照らしていかがなものか、質問が出尽くすまで応えるべきだ。立憲政治を踏みにじった自民はまた独裁に近づいた」なんてヒトゴトのように言ったンでしょうがね。

いやかつてどころか、つい先だっての総裁戦でも「民の判断を厳粛に受けなければいけない。そのために判断してもらう材料を提供するのは政府の責任だ。選挙をすれば衆院議員がいなくなるんだ。世界情勢がどうなるかわからないのに、すぐ解散をしますという言い方を私はしません」なんてキッパリ言ってたんですからねぇ。
この人、なんでもキレイゴトを言っていられる評論家人生が長すぎました。
そのまま評論家やっていれば、令和の石橋湛山なんていわれそうで、幸せに暮らせたのにね、よしゃあいいのに総理になんかなるもんだから。
そのうち『石破・失敗の本質』なんて本を出されそうですね。

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しかし言ってしまった以上、先を考えねばなりません。
選択肢としてはいくつかしかありません。

①このまま解散して、27日に投票日を迎える。
②予算委員会を開いて質疑に応じる。

①のようにいま解散を強行しても、選挙戦は「憲法違反の豹変野郎」一色で、さすがの石破推しのメディアも露骨には応援できないはずです。
②のように、野党の要求に応じて予算委員会をやればやったらで、これまた「憲法違反で逃ゲルのか」の一色。
なんだどっちに転んでもカチカチ山で、選挙は負けとなるでしょう。
日経は世論調査で立憲躍進と打っています。

「日本経済新聞社とテレビ東京は1、2日の緊急世論調査で、次期衆院選で投票したい政党を聞いた。自民党と答えた割合は40%で、前回の9月調査に比べ2ポイント下がった。立憲民主党は3ポイント上昇の15%、日本維新の会は2ポイント上がり8%になった」
(日経10月4日)
次期衆院選の投票先、自民40%立民15% 首都圏、内閣不支持上回る/政治資金問題「自民、信頼取り戻す」28% 本社世論調査 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 

彌縫策として森山幹事長をに因縁を含めて首を差し出すという手段もないではありませんが、そんなことをしたら内閣崩壊です。
もうすでに自民党議員らの、特に石破氏に入れた連中には動揺が走っているようです。

 

 

2024年10月 4日 (金)

イラン、イスラエルをミサイル攻撃

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なにやらゲル内閣が早くものたうち回っているようですが、今日はこちらから。

イスラエルがヒズボラの指導者を一掃する攻撃を行い、さらにはレバノンに地上進攻も開始しました。

「イスラエル軍は28日、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師をイスラエル軍の空爆で殺害したと発表し、ヒズボラ側もナスララ師の死亡を認めました。一方、ヒズボラの後ろ盾であるイランの最高指導者ハメネイ師は「この地域の抵抗勢力はヒズボラを支援している」としてイランが支援する各地の武装組織の連帯を強調し地域での紛争拡大が懸念されます。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間で攻撃の応酬を続けるイスラエル軍は28日、前日に行ったレバノンの首都ベイルート近郊にあるヒズボラの本部への空爆で最高指導者のナスララ師を殺害したと発表しました。
イスラエル軍の報道官は空爆を行ったとき、「ナスララ師は地下のヒズボラ本部にいた」としています」
(NHK9月29日)
“ヒズボラの最高指導者ナスララ師 死亡” 地域紛争拡大が懸念 | NHK | イスラエル・パレスチナ

このイスラエルの空爆で、地下3階に居たヒズボラ指導者のナスララとその指導部が殺害されました。
イスラエルが使ったのは精密誘導ユニット(JDAM)つき地中貫通爆弾バンカーバスター(BLU-109)で、約80発が同時に使用されました。
様々な爆弾が同時につかわれたのでしょうが、それにしても80発とは。
それも一発が1t近いものを、1機が3発として26機がほぼ同時に一カ所に投下するというご丁寧さです。

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イスラエル軍によるヒズボラ最高指導者ナスララ師暗殺で複数の戦闘機から大型航空爆弾80発以上を大量投下(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

それにしてもやりすぎです。
ヒズボラのテロリスト指導者を抹殺することがいけないとは思いませんが、そのやり方が常軌を逸しています。
市街地にいるひとりの目標に対して8tもの爆弾を投下する必要があるとはにわかに信じがたい。
こんなことをすれば市民の被害が甚大になります。
イスラエルが常にヒズボラのテロ攻撃にさらされているのはわかった上でも、イスラエル軍の空爆を正当化できません。
国際法を持ち出すまでもなく、このような攻撃は均衡性と必要性の原則を逸脱しています。

「均衡性の原則は、敵対行為のあらゆる面において適用されま す。 例えば、軍事目標に対する攻撃で、文民や民用物に甚大な 被害を与えるものは禁止されています。 紛争当事者は、攻撃を 実行する前に、文民に生じうる影響が、予想される軍事的利益 と比べて過大なものでないかどうか、毎回見極める義務を負 います」
戦争で使ってはいけない武器とは?~国際人道法の観点から - 赤十字国際委員会 赤十字国際委員会 (icrc.org)

ヒズボラが繰り返す執拗なロケット弾攻撃は強く非難されるべきですが、それに対してこのような過剰な反撃をすれば、イスラエルの道義的正当性は大きく毀損されます。
それでなくてもガザ戦争で、イスラエルは過剰な報復を国際社会から糺弾されているのですよ。
イスラエルのこのような過剰な攻撃を聞くたびに、彼らがいっそう壊れていくのを見させられているような気持ちにさせられます。

ただし、これは軍事作戦としては妥当なものです。
これはJFフラーが言う、頭脳に打撃を与えて壊滅させ、現場の戦闘部隊と切断するために行われました。
したがって、空爆3日後の10月1日、レバノンへの地上進攻も開始しましたが、これもワンセットです。

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CNN

「イスラエル軍はヘブライ語の声明の中で、「数時間前にレバノン南部でテロリストおよびテロ組織ヒズボラのインフラを標的として、標的を絞った限定的な地上作戦を開始した」と発表。標的とする国境付近の複数の村落を「国境地帯のイスラエル人入植地を脅かす差し迫った現実的な脅威」と位置付けた」
(CNN10月1日)
イスラエル軍、レバノン地上侵攻を開始 - CNN.co.jp 

イスラエル軍の制圧目標は、イスラエル北部(レバノン南部)の国境地帯で、ヒズボラがロケット弾発射を繰り返してきた地域です。
当然のことながら、ナスララ氏と指導部を一挙に殺害したのは、この掃討作戦のためだったと思われます。
おそらくイスラエルは、レバノン南部とイスラエルの間にバファゾーン(緩衝地帯)を作るつもりなのでしょう。
ヒズボラ指導者の殺害はこのためのものです。

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イスラエル軍が「限定的な」地上侵攻、ヒズボラの通信機器の爆発や指導者殺害で指揮系統が混乱 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

このような一連の流れがあって、先日イランが報復として約200発の弾道ミサイルを発射しました。
今回は4月の時と違ってドローンなどはなく、全弾が弾道ミサイルという防ぎにくいものだったようです。

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イスラエルに180発以上、イランがミサイル攻撃 報復の応酬で泥沼化か「代償を支払うことに」ネタニヤフ首相が宣言 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

「(CNN) イランは1日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師らの殺害への報復として、イスラエルへのミサイル攻撃を実施した。イラン革命防衛隊(IRGC)が明らかにした。
米国はイスラエルがレバノン南部で地上作戦を開始したことを受け、イスラエルへの弾道ミサイル攻撃が差し迫っているとの見方を示していた。
イスラエル軍はイランが180発の飛翔体を発射したと推定しているが、最終的な数ではないとも強調している。CNNの取材班は、テルアビブ、エルサレム、ハイファの上空で数十発のミサイルを目撃。取材班の1人は、複数のミサイルが迎撃されたのを目にした。イスラエル軍の広報官によると、イランのミサイルの一部はイスラエルの中部・南部に直接着弾した。
イラン国連代表部は1日午後、同国の対応は「正当に実行された」とし、イスラエルが「あえて対応したり、さらなる悪意ある行為を行ったりすれば、その後に壊滅的な対応が取られる」と述べた。一方、イスラエル軍の報道官は「深刻な結果を招く」と述べた」
(CNN10月2日)
イラン、イスラエルにミサイル攻撃 ヒズボラ最高指導者殺害の報復 - CNN.co.jp

4月のミサイル攻撃は9割以上を撃墜するという鉄壁のミサイルデフェンス(MD)の手際を見せましたが、今回は少数の着弾を許しています。
迎撃ミサイルも新型のお宝である固体燃料式弾道ミサイル「ファッターフ1」や「ハイバルシェキャン」などを使用しています。
今回、これらを180発以上使うという飽和攻撃を仕掛けました。
飽和攻撃( Saturation attack)とは、攻撃側が攻撃を仕掛ける際に、攻撃目標のもつ防御処理能力の限界を超えた量で攻撃することですが、いかな手慣れたイスラエル軍でも、同時に180発もの弾道弾攻撃には討ち漏らしが出ました。

イージスアショア無用論の時も、同時飽和攻撃に対して対処できないからいらないということを言うものかでましたが、そんなことは当たり前です。
足りなければ迎撃側を増やせばいいだけのことで、MDシステム全体がいらないということにはなりません。
またSNSでは「アイアンドームが使い物になっていなかった」というトンチンカンなことを言うものがいますが、そもそもアイアンドームは対ロケット弾用の迎撃システムで、今回のイランの弾道ミサイルは大気圏外から突入してくる弾道ミサイルが主でした。
イスラエル軍は高空から落下してくるミサイルには「アロー2(大気圏内)」と「アロー3(大気圏外)」を使用しています。

MDシステムは脅威度を判定して、脅威が高いものから撃墜していきます。
着弾しても砂漠だったりするものは、撃墜しないで放置します。
今回、イランが目標としたのはネバティム空軍基地などの航空基地とモサドの本部でした。
脅威度判定が高いのはテルアビブ市街地やディモナ核施設などですが、ここには攻撃を受けていないので、着弾するに任せた可能性もあります。

イランがテルアビブや核施設を狙わなかったのは別に人道的だからではなく、ここを狙えばイスラエルは絶対にテヘランと核施設を攻撃することは明らかだからです。
いま、イスラエルがイランの核施設を反撃対象にしないようにと、バイデンが必死で説得しているようですが、どうなりますか。

 

 

 

 

2024年10月 3日 (木)

政界の動的平衡が始まった

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熱帯雨林の研究者がスマトラの奥地での研究をまとめた『生物と無生物のあいだ』(福島伸一 )という本に、「動的平衡」という言葉が出てきます。
どういうことかと煎じ詰めていえば、生態系というのはガチッと固定されたものではなく、むしろ常に流動しながらバランスを取っているという考え方です。

たとえば、熱帯雨林では毎日ドカドカと巨木が倒れています。
人が伐採するんではなく、いわば寿命で倒れるのですが、倒れる時に隣の樹もついでに倒してしまうと、密林にポカッと大きな空き地が出来るそうです。
するとこのような密林は極相林といってこれ以上大きくなりようがない巨木ばかりの集団で、樹木の枝が大きく冠状になっている樹冠を作っています。
ですからあんがい密林の下の土地はスカスカで人も自由に往来できるような空間ができています。
巨木の樹冠で太陽が差さなかったのですね。

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生命とは何か? - YouTube

それが巨木が倒れると、地表に太陽が一気に差すようになります。
すると、今まで土の中に眠っていて発芽を抑えられていた様々な樹の種が我も我もと発芽を開始し、新しい植物相を作りだしていくのだそうです。
古い巨木が天を覆っている限り、新しい植物は育たないわけですが、その巨木が倒れた新しい空間、隙間(ニッチ)ができると、我先にとその新たに出来た空間に新しい植物が育ち始めます。
するとここに新しい植物同士の均衡(バランス)が生れます。このようなことを「動的平衡」というそうです。

考えてみれば、人間の世界も同じようなところがあります。かつてのIT産業も、バイオテクノロジーも、重厚長大産業の不況の間隙を縫って登場しました。発生した時代はまさに90年代の不況時です。
不況時といえど全てが後退し凍結してしまったわけではありません。むしろ、新しい価値観と行動指針、更にいえばまっとうな倫理観を合わせもった新しい産業が生れる絶好のチャンスなのです。

さて、人間界の一部である政界も似たところがあります。
いままでは自民党長老という巨木が派閥という小集団を作って支配していました。
派閥を否定するわけではありませんが、派閥とはしょせん頭領を首相に押し上げる装置でした。
40代、いや50代ですら「若手」と呼ばれ、総裁選に出るなど考えられもしなかったのです。

岸田氏が単独支配を目指したために始まった派閥解体は、自身が政治的に行き詰まることで総裁選というバトルロイヤルを生みました。
実に「面白い」総裁選で、国民のいいガス抜きとなりました。
同時に開かれていた立憲の貧相な競争と較べれば一目瞭然のように、はからずも自民が多士済々であることが証明された結果になりました。
結局、岸田、菅をつけた石破氏が勝利したわけですが、指導力がなく人望もない新首相が座ったためにただの新たな動的平衡の始まりにすぎなくなりました。

いままでのそれなりによくできていた党内生態系を破壊して出来上がったまがい物の安定であるが故にに、きわめて不安定なのです。

特に大集団だった安倍派は再起不能なほど裏金問題で叩かれたために四分五裂し、弱体化しました。
旧経世会という大派閥だった茂木派も同様です。
言ってみれば、密林の大樹が倒れてポカっと空間ができたのです。
とりあえず3人の長老支配で均衡しようとしていますが、いまや長老間は猜疑心が蔓延して憎み合っていますから、かつての角福戦争の再来のような状態となるでしょう。

今回の組閣を見ると長老支配そのものです。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「派閥が関与できなかった珍しい人事だ 」(読売10月1日)と妙な褒め方をしていますが、たんに極小派閥の悲しさで身内がいなかっただけのことです。
結局、大臣、政務官の人事はできずに菅、麻生、茂木、森山、二階氏らの協力を得る形でしか頭数を揃えられないという重鎮主導型となってしまいました。
今回岸田派は林官房長官しか入閣していないのはなぜかわかりませんが、菅岸田の長老紛争のタネになるでしょう。

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【図解】衆院選、10月27日投開票=新内閣10月1日発足―石破総裁「早期に国民の審判」(時事通信) - Yahoo!ニュース

次の選挙まではなんとか党内対立は抑えるでしょうが、終わったら見物です。
石破氏は泡沫派閥しか持たない弱いリーダーですし、あのような人望がまったくない陰キャラですから党の抑えが効きません。
たぶんかつての角福戦争もかくやというものと思われます。
かつての角福戦争は第3次まで繰り広げられ、様々な政治家が入り乱れた党内闘争に発展しました。
角福戦争 - Wikipedia

いずれにせよ、今の閣僚は選挙までの生命です。
選挙が大幅議席減にでもなれば内閣自体が持ちません。
仮に勝ったとしても、その後こそが長老たちの出番であり、派閥解体後の新勢力図を巡って党内闘争が激化します。
事実上分裂してしまった旧経済世会の茂木派、安倍氏という核を失って好き放題に叩きまくられた安倍派、派閥解消をとなえながらしっかり勢力温存をはかっている岸田派、派閥を解消しなかった麻生派がそれぞれの思惑で競り合うことでしょう。
そのとき一方の核となるのが、派閥横断的支持を持つ高市・小林ホークなどの保守ブロックであることは間違いありません。

今、この新たに開いたニッチに、次の新たな動的均衡を求めて新しい芽が吹き始めます。
これで石破氏がしっかりとした派閥運営をして人材を育て上げていたら、まったく違った展開となったはずなんですがね。
しかし、安倍氏への怨念と権力欲だけで首相になった石破氏にはなにもないカラッポです。
ですから、小林ホークなどの若手人材が次々に表に出てくるはずです。

 

2024年10月 2日 (水)

石破・岩屋コンビの外交は察しがつきます

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誰でも同じことを言っていますが、今回の組閣で許せないのは、岩屋氏と村上氏に大臣を処遇したことです。
安倍氏に対する個人的怨念による報復人事です。
石破氏の後ろ楯になって、決戦票をこの男に集中させた菅氏は体調がかなり悪いとうかがいますが、よくこんな人事案を承認しましたね。
村上氏など公然と安倍政治の清算を掲げ、「負の遺産」とまで言っているのですから、菅氏がしてきた仕事を全否定したも同然じゃないですか。
菅さん、晩節を汚しましたね。

岩屋氏は、最低の防衛大臣と呼ばれていました。
ともかく融和、融和、なにもしないでもひたすら融和。
なんと宮古島の「市民団体」の言うがままに、いったん弾薬庫に収めた弾薬を運び出し、宮古警備隊を丸裸にしてしまいました。

「岩屋毅防衛相は2日の記者会見で、陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)の迫撃砲や中距離多目的ミサイルの弾薬について、島外に搬出するよう指示したことを明かした。地元への十分な説明がないまま弾薬を保管していたことに伴う措置で、岩屋氏は『不十分だった。おわびしたい』と謝罪した。
防衛省は今後、島内で駐屯地とは別の場所に、今年度末にも配備される地対空・地対艦ミサイル部隊の弾薬庫を建設する予定。完成し次第、島外に撤去した迫撃砲などの弾薬も保管する方針だ。ただ、使用する警備部隊との間に距離が生じることから、初動対処の任務に影響が生じることは避けられない」
(産経 2018年4月2日)

次に2019年、日韓防衛大臣会談をやり、唯々諾々と韓国の言い分を丸ごと聞いてしまっています。
日本の哨戒機がレーダー照射をされた事件について、ムン政権の韓国国防相に、日本は国際法を守れと言わしてしまっています。

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中央日報

「チョン長官はこの日の会談を終えた後、記者たちと会って、「日本の防衛相と日韓の防衛協力についてよい会談となった」とし「哨戒機近接脅威飛行関連しても虚心坦懐に率直な意見を交わした」と述べた。そして「これから両国が緊密に協力しながら、今後このようなことが再発しないように発展させていこうのに意見を一致させた」と説明した。
この日の会談でチョン長官は、岩屋防衛相に韓国艦艇の射撃統制レーダー照射について明白な根拠があることを説明した後、日本哨戒機の飛行のための国際法遵守を強調した。問題の本質は海上自衛隊の哨戒機による近接脅威飛行形態にあるという理由からだ。
チョン長官は続いて「韓国と日本は、隣接する友好国として国際社会で起こるすべてのことについて緊密に協力して協力をする必要がある」とし「協力して発展させてべきという意見の一致を見た」と話した」
(中央日報 2019年6月1日)

当時のムン政権は、極度の反日小児病患者の国で、日韓関係の条約や取り決めを一方的に廃棄するわ、慰安婦合意はちゃぶ台返しするわ、果てはこのレーダー照射事件のように戦争行為一歩手前の軍事挑発までするわ、と話にもなりませんでした。
このような相手には、日本は信頼関係の前提が崩壊しているので、接触を断つべきで、「緊密に協力関係を築いていく」などということは口の端にも乗せるべきではありませんでした。
それが唯々諾々と、相手の言い分丸飲みが「外交」多と岩屋氏は信じているようです。

韓国は総裁選で石破壊氏が勝ったことを直ちに速報して、こんな期待をしているようです。

「また、韓国との関係については、韓国政府が2019年に日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を破棄した際、石破がドイツの戦争責任処理を引き合いに日本政府の歴史問題への態度を批判したことを紹介。また、石破が靖国神社への参拝をしていない点についても触れている。
一方、韓国の通信社・聯合ニュースはごく短い報道に留まったものの、「日本の次期首相に「韓日歴史認識ハト派」石破茂」と題した記事の中で「韓日の歴史問題で比較的穏健な声...『極右』高市に決戦で大逆転」と伝え、保守派の高市早苗経済安保担当大臣との対比で、石破がハト派であることを強調するような報道をしている」
(ニューズウィーク9月27日)
自民党総裁選、石破氏選出を韓国メディア速報「極右高市に決戦で大逆転」(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

石破壊氏の韓国のGSOMIA廃棄の責任が日本の歴史認識にあるというひとことが、韓国はよほど嬉しかったと見えます。
「韓日歴史認識ハト派石破茂」だそうです。

ところで、岩屋氏が防衛相を辞めた後ですが、「信念でもの申す」とまなじりを決して台湾有事には関わるな、反撃能力なんてとんでもないと宣言しました。

「湛山はどの民族も尊重すべきだとの言論を一貫して続け、博愛主義的なところがあった。防衛の仕事では「いざ戦わば」という話になりがちだが、大事なことはいかに戦わないようにするかだ。その思いで防衛交流をやらなきゃいけない。昨年の防衛力強化の議論は危機感をあおって防衛費の増額につなげるという冷静さを欠いたものだった。台湾海峡の安定は極めて重要だが、「台湾有事」などと軽々に言うべきではない。
 ある意味で湛山が警告した戦前と近い空気があると感じている。空気ができていても、勇気を持ってものを言う人がいないといけない。湛山は終戦後「日中米ソ平和同盟」を作ろうと言って笑われた。すぐにできると思うのは幻想かもしれないが、そういう世界を希求して困難を乗り越えていく思いが必要だと思う」
(毎日2023年8月12日)
石橋湛山研究会:なぜ今、石橋湛山か 「信念貫き、もの申す人必要」 6月発足・超党派研究会、岩屋共同代表に聞く | 毎日新聞 

湛山は学ぶべきところも多い政治家ですが、戦争へとなだれ込もうとする軍部の時代と、敗戦後の武装解除された時代の政治家です。
ある意味、特殊な時代背景を背負った政治家であって、それを岩屋氏は時空を超越させて普遍化して偶像視しています。
現代の日本は侵略の危機にさらされている側であって、侵略を受ける危険に瀕している側であって、石橋の時代とはまったく性格が違うのです。
独裁者が自在に侵略戦争を起こせてしまうウクライナ戦争の真っ最中のいま、石橋の時代と比較するほうが愚かです。

たぶん岩屋「外相」は岸田氏に輪をかけたパシフィストとして、北朝鮮や中国とは融和を説き、ロシアの侵略には目をつぶり、米国には反核平和を訴えることでしょう。

 

 

2024年10月 1日 (火)

株価は政策選択の審判者

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岩屋氏起用について書くつもりでしたが、先にこちらから。
週明けの東京市場は一気に2000円の暴落を示しました。
ご祝儀相場という言葉はありますが、岸田氏に続き2代続けて不祝儀相場です。

「週明け30日の東京株式市場で、日経平均株価(225種)が大幅反落した。終値は1910円01銭安の3万7919円55銭で、節目の3万8000円を割り込んだ。下げ幅は一時2000円を超えた。自民党の石破茂総裁が27日に選出された後、初めての取引だった。石破氏が積極姿勢を示す日銀の追加利上げや金融所得課税強化などへの警戒感が広がり、株式市場を〝石破ショック〟が襲った」
(産経9月30日)
東証、終値は1910円安 〝石破ショック〟総裁選出後初の取引は大幅反落で終える  - 産経ニュース (sankei.com)

市場は高市総裁誕生を折り込んで円売り株買いが支配的となっていました。
あたりまえですが、高市氏の保守理念とは関係なく、氏の持論である「高圧経済」路線が好感されていたからです。
聞き慣れない高圧経済とは、飯田泰之氏によればこのような経済政策のことです。

「高圧経済論とは、金融と財政の両面から経済を需要超過にすることによって、あるいは、経済が超過需要状態にあっても金融財政両面からの緊縮を遅らすことによって、超過需要状態を継続し、短期的、長期的に経済を拡大させる考え方である。
経済を高圧状態にすることは、短期的に人や設備の稼働率を上昇させ、利益を増大させるだけではなく、さまざまな経路を通じて生産性を上昇させることが、長期的な経済の拡大につながる」
(飯田泰之 原田泰『高圧経済とは何か』)

つまり金融を緩和し続け、そして同時に財政拡大することで超過需要というプレスを経済にかけつづけます。
するとヒトと資材が活性化し、デフレを吹き飛ばす効果を期待できるというものです。
いうまでもなく、アベノミクスがこれです。

この真逆が貧血経済論とでもいうべきもので、政府が金利を上げることでカネの支出を渋り、財政は無駄を省くと称して緊縮財政を経済に課します。
いま、金融政策正常化論といわれているのがこれです。

この経済の貧血を好む者たちは、「コンクリートからひとへ」とか「里山資本主義」「足るを知る」などと耳に快い表現を使いますから、景気の底が抜けます。
これをやった典型が、かつての民主党政権です。
下図を見てください。株価は民主党に政権交代するや7000円台にまで急落し、民主党3代の期間には1万円を出ることはなく、野田政権末期には多少上昇しますが、それは民主党の終わりが近いという市場の政権崩壊期待からでした。

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第一生命経済研究所

「2000年以降の日経平均株価をみてみると、自民党の短期政権、民主党政権下では株価が低下している一方、小泉政権や第二次安倍政権の長期政権では株価が上昇している。また、支持率が低いと言われる菅政権下でも株価は上昇しており、現在は一時3万円を超えた。首相が総裁選不出馬を表明した後も株価が伸びている要因は、来る衆院選での自民党大敗リスクが後退したことで、政治が安定する期待が高まったことである」
(第一生命経済研究所l研究所 永濱 利廣)
政権と株価の関係 ~コロナ下に求められる政権とは?~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

今回も同じ心理が株式市場を襲いました。
1回目の投票で、党員票でも国会議員票でも、アベノミクスの継承と高圧経済を主張する高市氏が石破氏を上回っていたために、東京市場27日午後3時の後場終値は、高市氏の当選を確信して4万円目前の39892円まで急騰していました。
実はこの27日は金曜日という市場の終了で、本格的な市場の反応は月曜日の朝に持ち越されていました。
そして「石破ショック」の襲来です。
まさにドカーンと落ちました。

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武者リサーチ

武者リサーチの武者陵司氏は、市場経済の世界において「株価は政策選択の審判者だ」と述べています。

「これで3回目となる市場の急落と政策修正の意味するところは、市場が政策の審判官に躍り出たということである。米国では「グリーンスパン・プット」「バーナンキ・プット」など市場が急落する場面で、中央銀行が金融を緩和して市場を支えた事例が頻発したが、日本もそうした時代に入りつつある。
日本にも株式資本主義が浸透し、株安をもたらす経済政策が容認されない時代である。特にNISAにより個人資金を株式、投信等の価格変動性投資商品に誘導している今、市場の安定化が最優先の経済課題にならざるを得ない。市場の合理性により政策の可否が判定される時代に入っていく」
(武者リサーチ9月30日)
株価が審判官 | 武者リサーチ (musha.co.jp)

2020年代に入ってこれで3回目の株価ショックです。
上図をご覧下さい。1回目は2021年9月26日の「岸田ショック」でした。
この時も岸田氏は、金融所得課税を提唱して総裁に就任したこと対する株式市場の審判は就任直前の30183円から1週間で27678円へと2500円の下落を示しました。
「貯蓄から投資へ」と調子のいいことを言ってNISAを始めながら、儲かったら税金ガッポリ取るからねでは矛盾もいいところです。
さすがの岸田氏も懲りて、慌てて金融所得課税取り止め、改めて金融緩和の継続を誓ってやっと株価は下落前の水準に戻りました。

そして2回目は、今年7月31日の日銀利上げと植田総裁の利上げタカ派発言に端を発する「植田ショック」でした。
平均株価は7月31日に39101円から、3営業日後の8月5日には7600円下落して31458円まで下落しました。
これも翌週の内田副総裁による「市場が不安定な時に利上げはしない、時間は十分にある」と総裁発言を修正をしたために、8日間で20%上昇し暴落前水準に戻りました。

このように株式市場は、リアルに時の政府の金融・財政政策の「審判」をおこなっています。
これが株式資本主義なのです。
このように、石破「首相」の誕生は手荒く迎えられました。
こんな状況下で、古い自民党の煮汁のような森山幹事長が解散を石破新総裁に提案したことで、就任そうそう解散するようです。

「この中で、石破氏は「あす国会の首班指名で総理大臣に選出されれば、直ちに組閣を行い、政権を発足させたいと考えている」と述べました。
その上で「新政権はできるかぎり早期に国民の審判を受けることが重要であると考えており、諸条件が整えば、10月27日に解散・総選挙を行いたいと考えている」と述べ、衆議院選挙を10月27日に行う方針を表明しました」
(NHK9月29日)
自民 石破総裁 衆院選 10月27日投開票方針表明 森山幹事長 鈴木総務会長 小野寺政調会長 小泉選対委員長は | NHK | 衆議院選挙

信じられないですね。株価が激堕ちしてるのに解散だなんて、正気ですか。
就任前は早期解散はやらんと言っていたために、野党は選挙区調整もできないままの選挙ですから怒り狂っています。

「国民民主党の玉木雄一郎代表は、石破氏が国会で首相指名を受ける前に表明したことを問題視した。「首相の最大の権限のひとつである解散権を、まだ首相ではない者が言明することに強烈な違和感を感じた」とし、「自民党を変えてくれるという期待の中で選ばれたのに、自民党を変える前に自分自身が変わってしまった。国民の政治に対する深い不信感を払拭できるのか、早くも赤信号がともった」と断じた」
(毎日9月30日)
早期解散方針、野党「話が違う」 選挙区調整や短期決戦に焦り(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

石破氏がある程度専門家顔をしてしゃべれるのは安保と農業関連だけに限定されています。
共に経済とは距離がある部門で、石破氏は興味の範囲が狭いまま歳を食ったオタクタイプの政治家なのです。
米国の大統領補佐官すら務まりそうな実務派の高市氏とはエライ違いです。
だからこのままプラモデルと鉄ちゃん余生を満喫していればよさそうなものなのに、人一倍強い総理になりたい権力欲だけはあったのが国民にとっての不幸でした。

 

 

 

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