石破茂、キレイゴトだよ、人生は
ひとことで言えば、石破氏は評論家です。
だから実現可能かどうかなどは斟酌なく、聞いたようなキレイゴトを言っていれば食っていけました。
それがこともあろうに総理になるという、たぶんこのウソだろうという展開にいちばんショックを受けているのはゲル氏当人ではないでしょうか。
あ、そうそう「ゲル」という名は石破氏が「広めてほしい」と言っているオフィシャル愛称ですので念のため。
下は認証式の後の有名な老人会の記念写真ですが、ゲル氏は腹出してモーニングのズボンはダヨーン。伊達メガネにはシール。
腹出している新首相なんて初めて見ました。
どうせ永田町の貸し服屋に持ってこさせたのでしょうが、サイズくらい合わせろよと思いますが、村上氏はあさっての天井見てホゲているし、岩屋氏もズボンがダヨーン、となかなかのもんです。
画像・写真:記念撮影する石破首相と閣僚ら:時事ドットコム (jiji.com)
キレイゴトといえば、アジア版NATOの創設については、早くもインドと米国が即時に正式否定しました。
インドはFOIPが西側陣営による対中包囲網ととられるのを警戒しているのです。
「米国を訪問したインドのジャイシャンカル外相は1日、米カーネギー国際平和財団での対談行事で、石破茂首相が掲げる「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設について、「われわれはそのような戦略的な枠組みは考えていない」と述べ、支持しない考えを表明した。ジャイシャンカル氏は「われわれには異なる歴史があり、異なる取り組み方がある」と説明した」
(産経10月2日)
インド外相、石破首相の「アジア版NATO」創設支持せず 「重く受け止めなければ」との声も - 産経ニュース (sankei.com)
少しでもインドの外交・安全保障政策を知っていれば、あまりにあたりまえの反応です。
インドは独立以来一貫して「非同盟」を外交の柱に掲げており、どちらかといえば東側に傾斜しつつも特定の同盟や大国によって自国の外交が左右されるべきではないという「戦略的自律性」の方針を堅持してきました。
だから、西側のウクライナ制裁には乗らず、かといってロシアを支援するわけでもないというアクロバティックな外交を演じました。
ですから、むしろFOIP(自由で開かれたインド太平洋)構想にインドが乗った時に世界は驚いたほどです。
これはマンモハン・シン首相の安倍氏への深い友情と信頼の賜物でした。
石破氏は仇敵アベの仕事にタダ乗りしてアジア版NATOなどと言っているだけのことで、相手にされるワケがありません。
米国はすでに否定されているものを、なぜ蒸し返すのかと首を傾げているようです。
「米政府は、安保体制参加国が国家の安全を相互に保障する「集団安全保障」の議論は、アジア太平洋地域では「時期尚早だ」(クリテンブリンク国務次官補)との立場をとる。石破氏が主張する日米地位協定の見直しも、米側では必要性が十分認知されているとは言いがたく、まずは議論の土台作りが求められそうだ」
(毎日9月27日)
米政府、アジア版NATO議論は「時期尚早」 石破氏提唱で注目 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
そりゃ言われますよ。「議論の土台ができていない」、それに尽きますもん。
いままで米国との地位協定運用の協議には無関係を決め込み、集団的自衛権にもなにもしなかったような評論家が、いきなり首相になりそうだからと言い出しても、米国からすればWHO?のひとことです。
そもそも石破氏はFOIP(自由で開かれたインド太平洋)という枠組みを知っているのでしょうか。
自分では安全保障のプロという肩書をだいぶ使っていたので重々承知でしょうが、FOIPという枠組みに重ねて「アジア版NATO」を作るという意味がわかりません。
FOIPになくてNATOにあるのは、NATO第5条、つまり自動参戦条項です。
実例をあげましょう。
ドイツ連邦軍は、アフガニスタンに国際治安部隊(ISAF)として派遣されました。
さっそく朝日はNATOのドイツ軍人の犠牲者をデカデカと報じて、「後方支援でも犠牲者がでる。どこでも戦場だ」と書いています。
朝日はアベがやった集団的自衛権なんぞやったらドイツのように戦死者が多数出るんだぁ、いいのかぁと言いたいようです。
もちろん、集団的自衛権と集団安全保障体制の初歩的混同による誤報です。
安倍氏が使えるようにしたのは集団的自衛権、一方NATOは集団安保体制です。
「集団的自衛権は、憲法の解釈を拡大して、他国攻撃時に他国を守るために武力行使を許可する権利のことを指します。
一方、集団安全保障は、国際社会全体の平和と安全を確保するための取り組みであり、複数の国が協力して防衛や平和維持活動を行うことを指します。両者の違いは、集団的自衛権が国内法での枠組みであり、自国の防衛のために武力行使を認める権利であるのに対し、集団安全保障は国際的な取り組みであり、多国間での協力や連携を通じて平和と安全を守ることを目指す点にあります」
集団的自衛権と集団安全保障の相違点 | コラム | 東京都渋谷区のセミナーならバーチュー・クリエイティング株式会社|
下の写真はくだんのISAFに参加したドイツ連邦軍です。
朝日
なぜ、ドイツ連邦軍がアフガンというドイツの安全保障とは直接関係ないアフガンの辺境に投入されているのでしょうか。
それはNATOが、2001年9月1日の米国同時多発テロを受け、翌月の10月2日にこれはNATO条約第5条に該当すると決議したからです 。
●NATO条約第5条
「NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する」
NATOは、トランプが批判的な言動をするので、米国とは別枠の組織と勘違いされますが、もちろん米国はこの大黒柱のひとつです。
理由はシンプル。現実に仮想敵であるロシアとの軍事衝突になった場合、ヨーロッパ各国軍の力だけでは防ぎきれないから、ヨーロッパは自動参戦条項で米国を逃げないように縛っているのです。
よく米国は世界に米軍を無理やり置いている、けしからんという人がいますが、逆です。
ヨーロッパが恐れているのは、トランプのような大統領が極端化してNATOを脱退して北米大陸に籠もってしまうことです。
そんな勝手なことをさせないようにNATO条約第5条で縛り、米国に対する直接攻撃にはNATO軍を出して反テロ戦争に協力したのです。
これが集団安保体制です。
さて話を戻して、アジア版NATOという枠組みを作るとなると、なんのためにどの国を仮想敵として軍事同盟を組むのかという本質的問題が最初に出てきます。
このアジア地域で、国境変更の常習犯である中国が仮想敵となるのは必定です。
というかここがあいまいなまま軍事同盟を作ってどないするねん、というもんです。
石破氏がアジア版NATOに中国や北朝鮮の加入も呼びかけるという噂を聞きましたが、ちちろん「安保のプロ」がこんなことを言うはずがない、きっと悪い冗談でしょう。
では中国と対峙するために軍事同盟を作るといって、現実にどこの国が来るのでしょうか。
石破氏はアジア版NATOについて一文をしたためています。
提出した相手は政府とも関連の深いハドソン研究所に宛てで、石破氏はこう書いています。
「現在、日本は日米同盟の他、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリスと準同盟国関係にある。そこでは「2+2」も開催されるようになり戦略的パートナーシップの面として同盟の水平的展開がみられる。韓国とも日米は安全保障協力を深化させている。これらの同盟関係を格上げすれば、日米同盟を中核としたハブ・スポークスが成立し、さらにはアジア版NATOにまで将来は発展させることが可能となる」
ハドソン研究所 (hudson.org)
おいおい、今の各国とやっている「2+2」(外相+防衛相)会談や物品役務相互提供協定を積み重ねれるという「同盟の水平的展開」があれば自動的に軍事同盟に熟成し、さらにはアジア版NATOに至り着くとでも本気で思っているのでしょうか。
政権担当者の論文ではなく、まるで頭の悪い学生の作文のようです。
「最近では、ロシアと北朝鮮は軍事同盟を結び、ロシアから北朝鮮への核技術の移転が進んでいる。北朝鮮は核・ミサイル能力を強化し、これに中国の戦略核が加われば米国の当該地域への拡大抑止は機能しなくなっている。それを補うのはアジア版NATOであり、そこでは中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対する抑止力を確保せねばならない。アジア版NATOにおいても米国の核シェアや核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」
石破茂氏が語る日本の新安全保障時代:日本外交の未来 |ハドソン研究所 (hudson.org)
ここでも石破氏は拡大抑止、つまりいわゆる「核の傘」が中露北の核戦力強化で綻びが出ているから、核三原則の「持ち込ませない」を改定しろという主張をしています。
具体的には書いていませんが、おそらく中国を念頭に米軍が配備をしようとしている中距離弾道ミサイルとワンセットで核弾頭の持ち込みを可能としたい、それを補うのがアジア版NATOだと言いたいようです。
日本に核の持ち込みができないのは、戦後イデオロギーから来る非核幻想があったからです。
むしろ米国の側の問題ではなく、日本側の国内的な事情によっていままでできなかった以上、アジア版NATO以前にじぶんの国の事情を真剣に変えて行かねばならないはずです。
大前提として、いままでの「集団的自衛権の一部容認」というあいまいな中間形態から、本格的な国際的集団安保体制へと移行するための法整備をせねばなりません。
あたりまえですが、そうなるためには専守防衛などという寝言は言っておられなくなりますから、きちんと自衛隊を憲法に位置づけねばなりません。つまり改憲です。
石破氏はたしか9条2項といういちばんハードルが高い改憲を提唱して、自民の改憲案を攻撃してきました。
ならば首相となった今、9条2項の削除でおやりになるといい。
これらをやる覚悟があって、その先にやっと集団安保体制が見えてくるのです。
そもそもこの石破茂という人は、ここまで集団的自衛権の蓄積に一滴の汗もかいていません。
集団的自衛権の出発点であった安保法制時、防衛大臣就任を安倍氏から要請されれば拒否して安倍氏を失望させたのは有名な逸話でした。
以後、「安保のプロ」を自認しながら、一切の協力を拒み高見から苦闘する安倍氏の背中を撃っていたのはどこの誰だったのでしょうか。
妨害こそすれ協力はしなかった人に発言権はありません。
だからまるで自動的に集団安保体制への赤絨毯が敷かれた道がそこにあるようなお気楽なことを言えるのです。
今の「2+2を同盟に格上げする」ってどうやってやるのですか。そのメリットが相手国にあるのでしょうか。
現在は、相互に共同訓練をして信頼醸成期間にすぎないのに、いきなりこの文脈でアジア版NATOという大業を繰り出す神経がわかりません。
こんなことをすれば、わざわざ日本にまで戦闘機を飛来させて「友好」を確認し合ったインドなどはドン引きでしょう。
だから「石破構想」はインドからすげなく拒否されたのです。
では、「アジア版NATO」ができるでしょうか?
現状では不可能です。それも米国に要求うんぬんではなく、わが国の側の問題です。
この話に乗ってきそうなのは、楽観的に見てせいぜいがオージーくらいなもので、ほかの諸国はせいぜいが「友人」止まりです。
ましてや、扱いひとつで爆弾となる自動参戦条項などとんでもないというのがASEAN諸国の本音です。
今フィリピンはまたもや南シナ海に中国の侵攻を受けていますが、他のASEAN諸国は知らんぷりです。
なぜか、彼らは中国経済にがっちり組み込まれているために、フィリピン支援などして報復されたら元も子もないと思っているからです。
むり押しすれば、親中派のカンボジア、ラオス、インドネシアがASEANを割るでしょう。
ですから現実的には出来ても「NATO+」構想止まりです。
加盟するのは日本だけ。よくてオージーも来るか来ないか。
「NATO+」とは、「アジア版NATO」と正反対に、日本のほうがNATOに加盟して、これを軸に欧州のNATOとアジアにおける民主主義国家で連合を組もうという、いわゆる「グローバルNATO構想」です。
これはヨーロッパでも真剣に議論されていて、実現の可能性はないわけではありませんが、本格化しようとすると出て来るのは、フランスの反対と集団安保体制に参加できないというわが国独特の問題です。
日米地位協定も一緒です。双務的と石破氏はよくいいますが、双務的とは米国内に自衛隊の基地を作ったり、地位協定を改定させたりすることではありません。
米国とグローバルパートナーシップを結ぶことができて初めて可能なのです。
アフガンに兵員を出したドイツと同じことをやる気概が日本にあるのか、そこから問いなさい。
なんでも行き着くところは、わが国独特の歪んだ安全保障のあり方なのです。
仮にこれをクリアしたとして、具体的には米国の航行の自由作戦参加国(英仏独豪)と日比などが連携し、さらにはこの枠組みに台湾を入れたいという構想もあります。
安倍氏が存命していたならば、そこまで実現したことでしょうが、背中を撃つスナイパーとなっていたのは他ならぬ石破氏ではなかったのでしょうか。
米国政府が言うとおり、「議論の土台から作れ」ということです。ま、それにまったく尽力しなかったあなたに、それができますか。
ま、言っただけです。安倍氏と差別化したかったのでちょっとカッコウをつけただけ。やる気なんかありません。
事実、所信表明演説では封印し、岩屋外相はすでに「将来構想のひとつ」にまで格下げされてしまいました。
改憲も「将来構想のひとつ」にしないようにお願いします。
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だらし内閣だとか、逃ゲル総理だとか、色々と言われてます。
国民民主の玉木さんは、総理の提唱する安全保障などは20〜30年前に言ったことであり、総理の中で時は止まっている。
窓際でプラモ作りが長く時代の変化についていけてないんです。
flip-flopping
投稿: 多摩っこ | 2024年10月 7日 (月) 02時15分
うん。冷戦終了後からゲルの中身はアップデートされていない。ミリヲタではあるけれどもそこを含めた「外交」を全く分かっていない、ただのプラモ大好きヲタですね。
先日の記事にも出た「自民党 失敗の本質」なんて本からして「帝国海軍 失敗の本質」という、もはや古典であるネタ本のタイトルパクリですしね。。
投稿: 山形 | 2024年10月 7日 (月) 07時26分
公明の石井代表は「石破さんが(総裁選で)独自色を出すために主張したもので、政府見解とは違う」と、正直かつ直截に述べてます。
長島昭久は「皆さんのご心配はごもっとも。ただ、地域の協力関係を深化させる事が本旨」などとぼかしていますね。
岩屋外相は「直ちに設立は難しい。中長期的に検討」などとして、事実上の撤回をしています。
ただ、事実上の撤回などではなくて、速やかな完全撤回をしないとマズイです。安全保障問題を軽く考え過ぎ。
可能・不可能の問題などでもなく、すぐに国際問題化してしまいます。
鳩山の「トラスト・ミー」以来の国際政治の惨めな大ポカであって、周辺国が黙っているハズがありません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年10月 7日 (月) 08時29分
アジア版NATOは外交ブレーンの川上高司の入れ知恵でしょうね、クアッド成立以降はもう過去のものとなった構想ですが安倍からの刷新しか頭にない人にとっては格好の遺物でした。
下手にハドソン研究所にメチャクチャな外交論を出したイカれた奴が総理になんかになったらそりゃ米国は騒然としますよね。
あと防災省設立も現状の自治体主導の災害対応を根底からぶち壊す可能性があるだけに早急に撤回して欲しいものです。
投稿: しゅりんちゅ | 2024年10月 7日 (月) 10時13分
石破首相が言う日米安保・地位協定改定を、「米国と摩擦を生む」「現実政治では困難」と、9月29日の朝日新聞がいっていると人から聞いて。
https://www.asahi.com/articles/ASS9Y312FS9YUTFK012M.html
有料記事なので私には続きが読めないのですが、どなたか朝日を読める方、ホントですの?
そんなことより。
中共で日本国民と中共国民が犠牲になっている襲撃・殺人事件への対応が、お留守になってませんかね?
靖国参拝も、この件をなあなあにするのも、どちらも在中共日本人の生命を危険に晒す。
なぜ起きたのですか?犯人の動機は何なのですか?愛国無罪はあるのですか?(真顔
中共政府にしつこく問うてくれ。
投稿: 宜野湾より | 2024年10月 7日 (月) 11時37分
憲法九条二項を削除して国防軍を設置なんて言ってましたけど、国防軍はおろか憲法改正も絶対進めないと思いますね。安倍元総理の「二項そのままで自衛隊明記」という案に単に反対したかっただけだではないでしょうか。
最近この人が著した本に「保守とは寛容であること」とかいう下りがあるそうですが、こんな分かりやすい報復人事をしておいてよくもまあ言えたもんだなと。党内の力学のままにこの人を総裁に選出した自民党の罪は本当に重いと思います。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2024年10月 7日 (月) 12時19分
ここまでグダグダだと選挙後を見据えて考えている議員も与野党にいるでしょうな
投稿: 中華三振 | 2024年10月 7日 (月) 12時50分
閣僚の集合写真、マジで勘弁してくださいです。どんだけフォーマルが似合わないんだと言いたくなります。
ネットの一部では、総選挙での敗北は織り込み済みで、岸田がどうしてもゲルを総裁にしたかったのは、選挙敗北、ゲル内閣辞職、岸田再登板の色気があるからともいわれています。自分も安部さんみたいに、再登板したいのかな?
投稿: 一宮崎人 | 2024年10月 7日 (月) 15時50分