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2024年10月15日 (火)

イスラエルUNIFIL隊員を負傷させる

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イスラエルが国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を負傷させました。
国際世論は激怒しています。

「[ベイルート/エルサレム/カイロ 11日 ロイター] - 国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は11日、レバノン南部にある監視塔付近で2回の爆発が発生し、隊員2人が負傷したと発表した。
UNIFILは声明で、これは「深刻な」事態だとし、国連職員と施設の安全は保障されなければならないと改めて強調した。
イスラエル軍はその後声明を発表し、イスラエル軍の砲撃でUNIFILの隊員2人が負傷したと認めつつも、発砲前に隊員らに対し安全な場所にとどまるよう指示したと釈明した。
イスラエル軍のハレビ参謀総長は軍が公開した動画で「敵に対する作戦を継続しており、(避難しているイスラエル北部の)住民の安全な帰還を確保するまで作戦を止めることはない」と述べた。
イスラエル軍はまた、10日に砲撃を加えたUNIFILの別の陣地の境界線も突破したという」
(ロイター10月12日)
レバノン国連部隊2人負傷、イスラエル軍は避難指示したと釈明 | ロイター (reuters.com)

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ロイター

初めにこのニュースを聞いた時、イスラエルがまたまた過剰な戦闘行為をしたと思いました。
黒井文太郎氏は「イスラエル軍が行なっているガザの民間人殺戮という戦争犯罪を正当化する話では全然ない 」と断った上で、こう述べています。

「他国であるレバノンやイランでの暗殺作戦を実行するイスラエル側については、ネタニヤフ本人の政治的思惑を指摘する声もある。イスラエル国内ではかねてネタニヤフに対する批判は強く、ガザ情勢の長期化でますます国内政治状況的には追い詰められている。そのため、彼は自らの政治的延命のために対外的緊張を拡大したがっているとの見方が、イスラエル国内の言論界でも見られる。
 ネタニヤフ本人がそう言ったわけではないので、あくまでひとつの仮説だが、仮にそうであっても、ネタニヤフはヒズボラが何もしていないのに攻撃を命じているわけではない。イスラエルとヒズボラの戦闘は、常にヒズボラが先に手を出し、イスラエル側を挑発することから発生している。ヒズボラが何もしなければ、両者に戦闘は起こらない。2023年10月以降の戦闘も、ガザでの攻防の直後にヒズボラがイスラエル北部に越境攻撃をかけたことで始まっている」
(黒井文太郎8月2日)
イスラエルを挑発するヒズボラ特殊部隊「ラドワン部隊」の黒幕はイラン:黒井文太郎 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

イスラエルからの発砲は2回、うち一回は戦車砲によるものでUNIFILの司令部監視塔が破壊され、その時に負傷者を出しています。
ガザのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は「ほぼほぼハマス」で、国連としての中立性が大きく損なわれている団体です。
だから死傷してもいいとはいいませんが、レバノンで死んだハマス指導者のファトフ・シャリーフはUNRWA学校の校長でしたし、教師20人は戦闘員だったという笑えない話も伝わってきているような、戦争の一方の当事者です。

しかし一方、イスラエル・レバノン国境で兵力引き離しをしているUNIFILは、いままで中立性を保ってきたと考えられてきました。
概要によれば、要員派遣国は2023年9月の時点で、インドネシア、イタリア、インド、ガーナ、ネパール、韓国など計47か国で、日本は含まれていません。

では、なんのためにこの国境地帯に派遣されているのでしょうか。
UNIFILは1978年に、レバノンに駐留する国連の治安監視団として設立されました。
設立のきっかけは、ここでもパレスチナ側のテロ攻撃が発端です。

(1)1978年3月、何者かによる部隊がイスラエルを襲撃し、多数の死傷者が出たことについて、パレ
スチナ解放機構(PLO)が犯行声明を出したことを受け、イスラエルは報復としてレバノンに侵攻、
ティール市とその周辺を除くレバノンの南部の全域を占領。
(2)同月、レバノン政府はイスラエルの侵攻に対する強い抗議書を安保理に提出し、パレスチナの奇
襲部隊の関与を否定した。安保理はこれを受けて決議第425号及び決議第426号を採択し、イス
ラエルに対して軍事活動を早急に停止し、すべてのレバノンの領域から軍を撤退することを求め
た。また併せて国連レバノン暫定隊(UNIFIL)の設立を決定した。
(国連レバノン暫定隊(United Nations Interim Force in Lebanon (UNIFIL)概要)
0000060693.pdf (mofa.go.jp)

つまりUNIFILを作らねばならない原因となったのは、「何者かによるイスラエル襲撃で多数の死傷者が出た」ことにあります。
概要ではボカしていますが、「何者か」とはもちろんヒズボラのことです。

その後1982年と2006年の2回のレバノン戦争の後、国連安保理での決議1701が可決され、イスラエルとの国境(ブルーライン)から、リタニ川までの約30キロの間が非武装地域とされました。

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欧米各国、イスラエルに国連平和維持軍への攻撃停止を要求 レバノンで - BBCニュース

この地域に、「UNIFILとレバノン軍以外、いかなる武装勢力も存在しない」ことを監視する役割を担っていたのがUNIFILです。
この「レバノン軍」というのが問題です。
そもそもレバノンは、まとまった統一国家とは到底いえない国です。
朝日新聞風にいえば「価値多元化社会」の極であり、イスラム教だけでスンニ派、シーア派、キリスト教も負けじとマロン派、ギリシャ正教などがあり、実に18の宗教・宗派が同居しています。

彼らは融合することなく、自らのテリトリーを主張してひしめき合い、独自に民兵組織まで持っているために「モザイク国家」とも呼ばれます。
ちなみに日産の大泥棒であるカルロス・ゴーンが逃げ込んだのも、このレバノンの首都でした。
こういうことが可能な社会なのです。

とりあえず「国もどき」はあります。
政府も議会もありますが、なんと大統領はマロン派にすれば首相はスンニ派、議会議長はシーア派から選出すると決まっていてバランスを取っているというのですからなんともかとも。

議会もあることはあります。
ヒズボラは、2022年の議会選挙で128議席の内過半数に近い62議席を押さえて第1党です。
どうしてテロリスト団体が支配政党になれるのかといえば、理由はハマスと一緒です。
正規軍をはるかに陵駕するような強力な軍事力を持ち、資金豊富で、したがって支配地域が下図のようにもっとも広大だからです。

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NHK

ヒズボラはこの力にモノを言わせて、首都ベイルートの南半分を支配し、国の南部と東部で政府などの支配を受けない「ヒズボラ国家」を作っています。
このヒズボラ支配地域では、レバノン政府など名前だけで、軍も形骸化するか、事実上ヒズボラに従属しています。
支配地域では、レバノン政府などまったくお飾りで、ヒズボラが法を作り、独自の軍隊を持ち、警察権を握り、病院や学校まで経営しています。
ガザのハマスとまったく同じ構図です。

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fsight.jp

このヒズボラを作り、育成し、武器と資金をあたえたのは、イランの対外工作班のコッズ部隊なことは言うまでもありません。

今回も前述したように、ヒズボラの越境攻撃がありました。
あまり日本では報じられていませんが、ヒズボラは8月10日もイスラエル北部のアッコやナハリヤ方面へ50発以上のロケット弾が発射しています。
イスラエル軍はこのロケット弾攻撃に対処するために出動し、UNIFIL基地近くで戦闘になり、UNIFILの監視塔に戦車砲があたってしまったようです。
ですから、イスラエル側はUNIFILはヒズボラとの戦闘に巻き込まれたのであって、意図的な攻撃ではないとしています。

これに対して国連ラクロワ事務次長は反論しています。

「国連の平和維持活動を担当するジャン=ピエール・ラクロワ事務次長はBBC番組「ニューズアワー」に対して、レバノン南部に展開する国連に対する攻撃の一部は、直接的なものだったと思わせる根拠があると話した。
「たとえば、監視塔が砲撃されたケースがあるほか、監視カメラが破壊された事案もある。明らかにこれはかなり、直接攻撃のように見えた」と、事務次長は話した。
レバノンのナジブ・ミカティ首相は、UNIFILに対するIDFによる11日の攻撃は、「国際社会に対する犯罪だ」と強く非難した」
(BBC前掲)

またイスラエルのダノン国連代表は、国連決議に従っていないのはヒズボラであって、イスラエルはその履行にむけた戦いをしているのだと反論しました。
つまり、国連決議1701に基づいて、ヒズボラをリタニ川以北まで押し戻すという、本来はUNIFILがするべきことをイスラエル軍が今しているというロジックです。
また、イスラエルは、南レバノンに地上軍を派遣する際、この地域では巻き添えになる可能性があるとして、UNIFILに一時撤退を求めていましたが、UNIFIL側がこれを拒否していたと言っています。

たしかにイスラエル側の主張にも一理あります。
なぜかくも頻繁にヒズボラがレバノン南部からイスラエルに向けて、かくも大量にロケット弾を撃ち込むとが可能なのでしょうか。
おかしくはありませんか、ヒズボラが撃っているのはUNIFILが引き離しをしている非武装地帯なのですよ。

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イランの支援受けるヒズボラ、レバノン領内からイスラエル攻撃…ロケット弾一度に40発も : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「ところが、ヒズボラは、この国連決議を全く履行せず、2006年以降、この地域に膨大な数のミサイル発射施設、イスラエルに続く地下トンネルシステム、膨大な数の拠点と武器庫を壮大に完成した。目的は、イスラエルに攻め込んで、これを亡き者にすることである。
今現在、イスラエルが必死に摘発しているのは、これらの危険なヒズボラの拠点なのである」
ヒズボラと激戦:UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)隊員負傷で国際社会からイスラエル非難殺到 2024.10.11 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

このイスラエルの言い分を検証できる立場にありませんが、では、UNIFILは2006年以降、実に20年近く、いったい何を監視していたのでしょうか。
推測ですが、このヒズボラに浸透された「レバノン軍」となぁなぁの関係が出来上がっていて、好きにさせていたのかもしれません。
いずれにしても、これほど膨大なヒズボラのトンネル網や大規模な弾薬庫、武器庫の存在をなぜUNIFILが見逃していたのか、この疑問に国連側も答えねばなりません。

 

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コメント

 地上波や報道では見かける事のない、本当の中立性を貫いた良記事でした。かく言う私なんぞ、イスラエルがグレーデス事務総長を入国禁止にしたあたりから様々調べて理解していったのですが。

2000年頃、イスラエル軍をレバノンから撤退させるための条件としてUNIFILの駐留があったわけで、レバノンには国軍とUNIFILだけの存在が許されるはずだった。ところがUNIFILはヒズボラを放置するどころか、その勢力伸長に手を貸した疑いさえあります。イスラエル軍から見れば、今もヒズボラの拠点をUNIFILが身を挺して守っている格好になっています。UNRWAといいUNIFILといい、国連機関が平和構築に何の役にも立たないどころか、中東のテロを育てて来た中心的役割を担ってきた事は明らかです。
一方、自国の兵士が傷つけられるならイスラエルが批難される事はあきらかで、しかしまた良く言って国連の無能、あるいは中立的立場をかなぐり捨てたあり方が糾弾される展開になるのではないか?と期待しています。

UNRWAの職員には、清田明宏保健局長という日本人もいる。
この方もハマスなのだろうか?テロに関与したのだろうか?
黒井文太郎氏によれば、UNRWAの政治部門や社会活動部門と軍事部門では、知っている事やっている事が違う一方で、相互に絡む人物もいるという。
そして、BBCがレバノンで拾った本音建前様々な国民の声の最後に、ヒズボラ地域のレバノン国民の声として、「政治家も権力者もレバノン政府もイランもイスラエルもアメリカもヒズボラも、全部うんざり、知ったことか」
https://www.bbc.com/news/articles/cgk707kv3dvo
これらの現実にモヤる。
UNIFILには強制力が無く、ヒズボラの安保理決議無視も事実上の黙認だったようだが、組織として、中の個人として、積極的黙認か不本意な黙認かは、私には確かめられない。

以下Xより引用。

ヒズボラがUNIFILポストの近傍に潜んで「人間の壁」とするのは彼らの常套手段ですが、だからといってイスラエル軍がUNIFILを攻撃していいわけがない(黒井文太郎氏10月14日)

国際政治。
そんなに難しい話ではなくて、たくさん人を殺してる陣営に「殺すなよ」と強制・誘導するのが、必要なだけ。
難しく見えるのは、一般の民間人を殺戮・弾圧してる側が、罪を糊塗するために偽情報プロパガンダを流してるから。なのでそれを暴く分析&発信作業が必要になっています(黒井文太郎氏10月11日)

①イスラエルによるパレスチナ人の弾圧・虐待
②イランによる対イスラエル破壊工作
③イスラエルによる過剰防衛
↑これらは全て止めること必要。
ただし優先順位としては
現在、③の被害があまりにも甚大なので最優先事項です(黒井文太郎氏10月10日)
〜引用終わり

何も知らない・関わらせない職員や地域の人々を平気で壁や盾にするわ、無関係な民間人もまとめて攻撃するわ、これほど滅茶苦茶な中で、黒井文太郎氏が挙げる①②③全てにNOと言い、また優先順位付けが生じても止む無しとするより、私にはなく。

 今日のロイターの記事ですが、「UNIFILの監視所のわずか200メートルの位置から、ヒズボラの地下トンネル出口が複数発見された」との映像ニュースが出ています。
https://www.reuters.com/video/watch/idOWjpvC38U53MJHA4LV0LPPDW065PEJY/

こんなものも発見、阻止できないUNIFILはいったい何?
良く言ってブログ主様の推測通り、「なぁなぁにして、好きにさせていた」ってのが実情でしょう。グレーデスは世界中に向けて説明責任を果たすべきです。

ここに来る多くの人がご存知の通りイスラエルとUNIFILの仲が悪いことは今に始まったわけではなく、確か2006年の前回のレバノン侵攻の際もUNIFILを攻撃していたはずです。確かあの時はUNIFIL側に死者まで出たはずです。当時に比べれば国際的非難の高まりもあってかイスラエルは比較的自重しているように思えます。それなのに今更大騒ぎしている人は政治的な意図があるか無知なのでしょう。

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