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2024年11月15日 (金)

活断層を再稼働禁止の理由にするな

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敦賀原発2号機が再稼働を禁止処分を受け、政府もそれを容認しました。
この電力不足の時代に、よくこんなことが出来たものです。

「福井県の敦賀原発2号機の再稼働を巡り、原子力規制委員会が不許可を決定したことについて、林官房長官は「科学的・専門的判断は尊重すべき」と述べました。林官房長官
原子力発電所の運転は安全性の確保が大前提であり、独立性の高い原子力規制委員会による科学的専門的な判断は、その結果のいかんによらず尊重すべきと考えております」
 日本原子力発電が再稼働を申請していた敦賀原発2号機について、原子炉の真下に活断層がある可能性が否定できないとして13日、原子力規制委員会は「不許可」とする処分を決定しました。
 処分を受けて日本原子力発電側は再申請を行う姿勢を示していて、林長官は今回の指摘を踏まえて「適切に対応していただきたい」と述べました」
(TBS11月13日)
敦賀原発2号機の再稼働“不許可”に林官房長官「判断は尊重すべき」(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

政府も、林官房長官がそうですか、と簡単に容認していますが、いいんでしょうかね。
というのは、岸田政権時からグリーン・トランスフォーメーション(グリーン化への転換計画・GX)という表現で原発の位置づけをCO2削減のためにという言い方で、再稼働に舵を切っているからです。

もちろんお約束の再エネ推進を大前提にして、一昔前ならありえなかった原子力の位置づけ変更がGX会議でさりげなく差し込まれています。
たとえばこんなふうにです。

「3) 原子力の活用
原子力は、出力が安定的であり自律性が高いという特徴を有しており、安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う。このため、2030 年度電源構成に占める原子力比率 20~22%の確実な達成に向けて、安全最優先で再稼働を進める」
siryou1.pdf (cas.go.jp) 

GX会議の基本方針では、ウクライナ戦争移行の状況を踏まえて、エネルギー対策に非現実的ではいられないという危機感から、2030年頃までに再び原子力をベース電源の2割にまで引き上げようとしています。
反原発派メディアが見たら目を剥くことでしょう。
なぜなら、これは福島事故前の水準に原子力を戻そうという意味ですから。

総合エネルギー統計これによると、2010年における原子力の発電量は2882億kWhでしたが、11年に前年比約3分の1の1018億kWhに激減し、12年には159億kWhと、前年比でさらに6分の1に激減しました。13年は93億kWhで、14年にはついに統計上ゼロとなってしまいました。
それに連れて化石燃料依存度は急上昇しています。

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1.1.2 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題 │ 「平成25年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2014)HTML版 │ 資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

原発停止による燃料調達コスト上昇は3.6兆円にも達しました。
カン政権の思いつき的原子力停止は、東日本大震災からの立ち直りに打撃を与えたのみならず、今に至るも日本のエネルギー供給に計り知れない損害を与えたのです。

その後、電力会社の安全対策工事の完成に伴って、徐々に原発の再稼働が進みましたが、2021年にようやく708億kWhにいまで回復しても、それでも福島事故以前の2010年と比べて発電量は4分の1の水準にとどまっています。

世の中的には、太陽光だの、風力、地熱、バイオマスだのといった再エネの発電量がさぞかし急増しているに違いない、といったことを考える方は多いはずですが、現実には化石燃料への依存度が、原発操業停止以降、逆に非常に高まっている現象を引き起こしました。
日本が環境団体から化石賞をとるとメディアは大喜びで報じていますが、再エネを増やせば、そのバックアップ電源で自動的に化石燃料による発電も増えるのです。

こういう流れの中に立ちはだかっているのが原子力規制委員会です。
規制委員会はとてつもない時間をかけて再稼働の承認を与えないでいます。

「世の中の方は「再稼動の検査をしている」としていますが、それはほぼ終わっているんです。再稼動審査というのは、法律上義務づけられた点検の審査です。今ほとんど終わっています。
今、原子力規制委員会がやっているのは、2012年6月の原子力規制委員会設置法にともない、「原子炉設置変更許可」「工事計画認可」「保安規定変更認可」の3点セットと呼ばれるものの審査です。
単なる定期検査の完了確認ではなく、新しく出来た規制基準への適合性を審査しているのです。つまり原子炉を設置するための、認可を最初からやり直しているわけです。これには大変な時間と手間がかかります」

(諸葛宗男(もろくず・むねお)元東京大学公共政策大学院特任教授)

そして規制委員会が重視するは活断層です。
今回の敦賀原発の場合、敷地内に活断層があることが問題視されました。
しかしそもそも、日本は活断層だらけの土地です。

三つのプレートが集まって、その上に浮いているわが列島に活断層なんぞフツーにそこにあるものなのです。
ハッキリ言ってしまいましょう。地震と原発 は関係ありません。

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日本全国の活断層マップ (imart.co.jp)

日本にはこれだけ活断層があります。
かといって、活断層があるから国民を立入禁止にするわけにはいかず、その上で普通に暮らして、生産を営んでいます。
問題は活断層があるかないかではなく、あるとしてもそれに万全の備えが出来ているかどうかなのです。

原発施設の地震の揺れの基準値は、個々の原発によって異なっています。

え、全国一律ではないのかって。はい、違います。
原発施設が立っている場所の地層は、場所により異なっていますからね。  
地層が軟弱な場所では、地震の揺れは大きいでしょうし、岩盤の上に立てられれば地震には強いわけです。
したがって、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。  

原発建屋を設計する場合、基準値に数倍をかけた値を基にして安全基準を定めます。
いわば崖の10メートル先が基準値だとすれば、そこから4、5倍先の4、500メートル先にテープを張っておくのです。
耐震設計の専門家の入倉孝次郎氏はこう述べています。


「仮に基準地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計している」 
原子力発電所の耐震設計のための基準地震動 - 入倉孝次郎研究所

つまり、基準値地震動=耐震限界値ではなく、実際の原発施設は必ず倍数の安全率をかけて耐震設計されているわけです。
これを知らない裁判官や訴訟団は、「基準地震動にあってはならない地震が来たらどうするんだ。だから、新安全基準は緩すぎる」と言うのですが、ソンナことはただの素人考えにすぎません。
入倉氏は、いかにもその道のプロらしく淡々とこう答えています。


「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」
「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
(福井新聞2015年4月15日)

そのとおりで、予想された以上の震度が原子力施設を襲ったことは何度かあります。
たとえば、東日本大震災時の福島第1原発においても、基準地震動を越える揺れが襲っていたことをご存じでしょうか。 

 

001

宮野廣法政大学教授による 単位ガル クリックすると大きくなりますhttp://www.gepr.org/ja/contents/20140630-02/

上図は、宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』から引用したものですが、最大の加速度は、いずれも基準値地震動の平均460ガルを超えています。 
最大に超えたものは、2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。
さらにもっとも震源域に近かった女川では基準値580に対して636ガルで、ここも実測値が基準地震動を上回っています。

東日本大震災以上の大きな振動が発電所を襲ったケースに、2007年の中越沖地震動があります。
東電は地層の褶曲構造によって、施設内に大きな影響が出たと説明しています。

Photo_2 地質調査と基準地震動|柏崎刈羽原子力発電所|東京電力

実際に柏崎刈羽原発を襲った実測震度です。カッコ内が基準地震動です。比較してみてください。

002_3宮野教授による 前掲

いずれの原子炉も基準地震動に対して約50%、最大の2号炉では273ガルの基準値に対して、実に3倍の680ガルが襲っています。
この激震に対して、各原子炉は正常にスクラム(緊急運転停止)しています。後の配管の調査でも破断は認められていません。
つまり原子力施設は、基準値を大きく上回る振動に耐えていたのです。

しかし後に起きる東日本大震災をみれば、東電はこの柏崎刈羽の教訓にもっと学ぶべきでした。
柏崎刈羽では、2700カ所以上の機器類の破損があり、3号機の起動変圧器は炎上し、外部電源も一時的に失われています。
ただし、非常用ディーゼル発電機が正常に起動したために、事なきを得ています。 
しかし起動後も電力不足状態が続き、タービン駆動給水ポンプを動かすために補助ボイラーが起動しましたが、1から5号機と6,7号機でそれぞれ一台しか使用できないようなシビアな状況でした。
そのため4号機の冷温停止には、丸2日かかっています。

東電はこの柏崎刈羽で経験した地震による全交流電源の停止(ステーション・ブラックアウト) という事態を、もっとシビアに総括して、今後に生かすべきでした。
そうしていれば、福島第1で簡単に水没する場所に予備電源エンジンを置くなどという大失態をせずに済み、福島事故そのものが起きなかったことでしょう。

福島第1では大事故になったものの、その隣の女川では高台に施設があったために事なきを得て、津波にあった被災者を施設内に避難させています。
双方共に外部電源を喪失しましたが、福島第1は予備電源水没によって事故に至り、女川は無事でした。
そしていま女川は再稼働を始めました。

この福島第1と女川との違いを強調しすぎてしすぎることはありません。東日本大震災クラスの地震でも、原発は壊れておらず、破壊されたのはその後の津波による非常用電源の水没による冷却機能の喪失です。

よく地震で原子力施設が壊れた、地震大国日本に原発を稼働させてはならない、などと言うガサツなことを言う人がいます。
おおむね社民党系や共産党系などの脱原発団体ですが、これは福島第1の事故原因が地震によるものだという意図的誤認識によっています。

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社民党

地震による施設損壊が原因ではないと、規制委員会は正式に否定しています。
あらためて福島第1原発の事故調査報告を読むと、こう記しています。


① 政府事故調報告書では、原子炉圧力容器、格納容器、非常用復水器(IC)、原子炉隔離時冷却系、高圧注入系等の主要設備被害状況を検討している。津波到達前には停止機能は動作し、主要設備の閉じ込め機能、冷却機能を損なうような損傷はなかったとしている。

② 民間事故調報告書では、津波来襲前に関して、地震により自動停止し未臨界を維持したこと、外部電源を喪失したが非常用ディーゼル発電機(EDG)により電源は回復したこと、その間にフェールセーフ(安全装置)が働きMSIV(非常用炉心冷却装置)が閉止したこと等、正常であったことが述べられている。

③東電最終報告書では、1号機~3号機について地震による自動停止と、自動停止から津波来襲までの動きに分けて評価している。前者は各プラントとも地震により正常にスクラムしたこと、外部電源喪失したがEDGにより電圧を回復したこと、EDG起動までの間に原子炉保護系電源喪失しMSIVが自動閉したこと等の結論を得ている。
(宮野論文前掲)

福島第1の事故原因は、ひとえに屋上に予備電源を設置していなかったから起きたのです。
このことを忘れて、揺れるからアブナイ、津波が来たらアブナイ、という脱原発派の認識は誤っているばかりか、現実にはなんの解決にもなりません。
だからこそその「残余のリスク」をいかにして減らしていくか、「想定外」が来た場合それをどのようにして極小化できるのか、というリスク管理的視点を完全に欠落させているからです。

これが工学系の考える、万が一事故が起きてもさまざまな方法でシビアアクシデントにならないようにブロックする深層防御の考え方です。
だから営々と福島事故以来、各電力会社はほとんど採算を度外視して、高い防波堤を作り、施設を強靱化し、予備電気を津波が到達しない高台に移設してきました。
それがどうみても法律のプロであっても、原子力工学や耐震設計のプロではない裁判官の鶴の一声で打ち消されてしまうからイヤになります。
この国の再稼働の権限者は、いつから地裁になかったのですか。
このような判決によっては、日本の原発の安全性は一歩も進化しないどころか、後退してしまいました。
なぜなら、それはかつてあった「原発は絶対に事故を起さない」という原発安全神話の、単純な裏返しとしての「原発絶対危険神話」でしかないからです。

原子力規制委員会は真正面から原子力施設の安全性と、それが果たさねばならない社会的役割を認識して答申するべきです。

 

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コメント

なんか10年以上経っても学習しない人が多すぎて。反対派は元々既に原理主義になってるから仕方ないですけど、かつてのこちらのコメント欄も理性と知性の無い人達が散々やって来て大変でしたね。
もはや懐かしいです。

中越沖地震の時は外部の配電盤から出火でしたっけ。当時テレビで柏崎刈羽の敷地内から黒煙が上がってるのを見て「おいおいっ!」と思ったのを、近所の床屋で話してたのを思い出しました。ああいう「重要な補機トラブル」に関しての防護や多重化はもっと真剣に検討するべきだったでしょうね。
先日勝俣元会長が死去して裁判も終わりました。

ちなみに柏崎刈羽の高台にあるPRセンターには何度も行ったことがあります。あと女川も。福島第一は一度だけ。
どこも原発の有用性と安全性を啓蒙するための施設ですが、無駄にカネ掛けてあるのでメカ好きには面白い上にタダ。
案内係のお姉さんは愛想の良いモデルばりの美女ばかりというね(笑)
あの3·11では女川原発の高台のPRセンター駐車場にクルマで地元民が集まったり、「あそこは一番頑丈で安全だ」と多数が原発敷地前に押し寄せて、本来絶対にダメな敷地内にある従業員用体育館に現場判断で収容したりしてましたね。当時をわざと忘れているのか、マスコミ報道は今回の女川2号機再稼働に「地元の不安」ばかりを上げつらってます。

おっと、前半増補されましたね。

原子力規制委員会は厳格であってしかるべきで、かつての原子力保安院とは全く違う建て付けで生まれたのでそこは当然なんですが···とにかく審査が遅い!申請文書の文言の誤植や誤記程度で半年や1年かけるというのは怠慢が過ぎると思います。
人が足りないのと書式への拘りが異常に強い官僚的にも程がある組織なのか、その両方なのか?と。
国がカネ出して増員しないとどうにもならん感じですね。。
女川2号機なんて、地元了解が取れてから既に1年半です。

最大加速度は地震の大きさを示す指標の一つではありますが、耐震設計上は、地震波の周波数、速度成分、継続時間、建屋、機器の応答(固有値)に依るので、最大加速度だけの比較はあくまで目安でしかありません。
本来、科学(工学)的には、活断層の有無が問題なのではなく、その活断層による地震波の大きさ、特徴及びそれに対する建屋、機器の応答が問題なのですが、3.11直後の国民総ヒステリーの中、活断層の有無だけで判断する新しい耐震基準が反原発学者の有識者会合で決められ、しかもバックフィットルールまで取り入れたのですから、技術者としては、こんな非科学的な基準は恥ずかしい限りです。

伊方原発でも数千年周期と言われる阿蘇山の大噴火で危険とかと言われてましたが、その規模の噴火なら原発関係なく九州全滅&西日本壊滅ですけど…と思った記憶があります。
立地の断層云々よりも災害が起きたときにどのような防止策を設けているか?
この点を重視した査定を行ってほしいものです。
再エネは今後半世紀は安定エネルギーとして用いるには厳しいというのはわかりきっているわけですし、円安で自国に産業を誘致するためにも安定した電源の確保が不可避。
合理的な判断をするなら現存してる原発は極力稼働させる方向を阻害する意味なんて無いと思うのですけどね。
なんならもう水不足の心配がなくなった沖縄にも1基欲しいくらいです、電気代高すぎる。

上越地震で柏崎刈羽原発が受けた被害を活かせなかったことが福島の惨劇を招いたということですね。
国と各電力会社は過去の教訓を元に事故の再発防止に努めてもらいたいし、野党やメディア、司法(樋口のような活動家はこれ以上勘弁)も原子力だからと頭ごなしに教条的に反対を唱えるのではなく理性を持って欲しいですね

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