王の帰還
きのうの日米メディアの大統領選特番はしーんとして声なくお通夜状態だったそうで、ハリスが勝利したら割るはずだったくす玉も倉庫行き、ハリスの一代記もお蔵入り、ハリスの等身大パネルもごみ箱行き。
まぁ、ほんとうにメディアの予想ってこんなもんだ、というのがお分かりになられたでしょうか。
ほぼすべてのメディアがハリス推しなあまり、トランプを悪魔化したあげく、バイアスが強すぎて見事にハズしました。
大学のセンセ方もこの調子です。
11月3日、つまり投票2日前にこんなことを言っています。
(明治大学・海野素央教授)
「ただ、この平均値を取った世論調査には、『トラファルガー』『ラスムセン』『インサイダーアドバンテージ』といったトランプさんの応援団の世論調査機関が入っていますから、常にトランプさんに有利な数字を出してきます。また、その3つの世論調査機関に加えて、『アトラス・インテル』という世論調査機関会社も、トランプさんに有利な数字を出してくるので、若干差し引いて見ることも大切だと思います」
【独自解説】「間接的な買収でみっともない」トランプ氏支持者の“お金バラマキ作戦”に批判殺到!大接戦のアメリカ大統領選、支持率の“からくり”とハリス氏に立ちはだかる壁(2024年11月3日掲載)|YTV NEWS NNN
この海野センセ、世論調査会社はみんなトランプ贔屓だからダメだと切り捨てています。
リアルポリティクスなんかが優勢と出しているのも無視なようです。
どうやら「ハリスになって欲しい」という主観が、いつのまにか「ハリスがトランプを打ち砕くであろう」に変わっちゃったんですが、それに気がつかないのです。
ハリスは候補者となるや第一声で「自分は検事だった。トランプのような(悪人を)よく知っている」というように、裁判沙汰をトランプ追及の一手とすると宣言しました。
しかし議会襲撃事件、機密文書持ち出し問題など、どれも無理筋の訴訟であり、議会襲撃事件に関してはトランプが直接指示した証拠はありません。
また、機密文書問題を訴追してみれば、それはオバマもバイデンも同じことをしていたことがバレました。
それは自宅に帰ってまで仕事をしていただけのことであり、まさに重箱の隅をほじくるような訴訟方法でした。
民主党は、裁判所、FBIまで使ってトランプを潰そうとしたわけです。
しかし結局、これらの訴訟に関しては、米国連邦最高裁は各州最高裁の判決を却下し、「大統領の免責」として却下していました。
ところが、スミス特別検察官は、一時不再理を無視して再告訴し、CNNなど民主党寄りのメディアはこれを疑惑は消えない、トランプは犯罪者だ、報じてきたわけです。
こういった米国のリベラルメディアだけを情報源とするわが国のメディアもベッタリこれに追随し、お声がかかる識者も民主党寄りばかりといった風景がこの4年間だったわけです。
なぜ、ハリスにこんなに身贔屓となるのでしょうか。
いうまでもないことですが、それは彼らメディアとハリスの「意識高い系」的価値観がまったく一緒だからです。
つまり、ハリスが言っていることは、メディアがいつも説教を垂れていることとまったく同じ。
だから自分らの言っていることの全否定になりかねないトランプが大嫌いなのです。
したがって、今回のトランプの勝利は、あなた方リベラルの敗北なのです。
トランプの再登場は、宮家邦彦氏が少し前に言っていたように「徐々に理想主義に向かってきた米国政治への反発から生まれた暗黒面の登場」ではありません。
すごいね、これではまるでトランプはダスベーダーですが、「理想主義」ってひょっとしてBLMやLGBTQのことですか、宮家先生。
すいませんが、アレは社会病理的現象のひとつであって「理想」ではありません。
一方、「暗黒面」の実体とはなんなのでしょうか?
トランプが米国を分断したと、年がら年中言われて耳にタコが出来そうです。
とうとう米国では『シビルウォー』なんて映画までできて(映画自体は秀作ですが)、トランプに模した独裁者が最後撃ち殺されてしまいました。
トランプは「暗黒面」から出現した「独裁者」だというのが、リベラル筋の見方です。
私から見ればそれは逆です。
「暗黒面」とは、トランプがよからぬ企みをもって分断しようとしていることではなく、むしろ米国が分厚い中間層によって支えられてきた社会から、貧富の差の激しい社会へと変貌しつつあることにトランプが力を入れて是正したから、エスタブリッシュメントからは余計なことをしやがって、と見えるだけのことです。
トランプが米国を分断したのではなく、逆にすでに充分に深まっていた分断をトランプが転落する階層の側に立って戦ったからこのように批判されたのです。
では今回のハリスの敗因はなんでしょうか。もちろんメディアが言うように選挙運動期間が短かったからでも、マスクがカネをバラまいたからでもありません。
もっと本質的なことは、「民主党政治」あるいは「民主党的なるもの」に失望し、その延長を国民が望まなかったからです。
さもなくば、ここまでのトランプの雪崩のような圧勝はなかったでしょう。
あとは下院の議席数待ちですが、ここでも勝利すれば、国民はトランプにトリプルレッドの期待を寄せたことになります。
これを正当に評価しないで、グズグズと能書きを垂れているのは見苦しい。
たとえば常に激戦区のミシガン州はラストベルト(錆びた地帯)と言われたほど長い凋落が続いて、製造業の空洞化による賃金低下、雇用率の減少などに悩まされてきました。
結果、そこで働く労働者は中間階級から転落していきましたが、民主党系の全米自動車労組に代表されるような民主党系労組は、労働分配率にのみこだわるだけで、安易にレイオフを受け入れていってしまい、有効な救済策を持ちませんでした。
今回、この大労組は組合員の突き上げに合って、次々にハリス支持を取り下げたことがトランプの勝因に繋がっています
ひるがえって、民主党がこの4年間なにをしてきたでしょうか。
トランプの遺産を完全否定し、BLMやLGBTQといったキャンセルカルチャーに入れ揚げ、ポリコレで国民の言論を統制し、経済的には成長を否定するSDGsや化石燃料を推進した結果が、今です。
バイデンによって論功行賞で任命されたエマニュエル駐日大使など、LGBTQ法案を通すことに公然と圧力をかけましたが、常識ではありえない革命の輸出です。もうすぐクビですから、さよーならー。
●1月6日の議事堂乱入者たちの構成
● 職業 ・・・40%が中産階級。事業主、ホワイトカラー、医師、弁護士なども含む。無職は9%。
●平均年齢・・・40代、68%が35歳以上。
●地域 ・・・バイデン氏が勝った郡が過半数。トランプが票の60%以上を得た郡の住民は26%。
●過激派 ・・・白人至上主義団体に属するか支持する者は20名に止まる。
そしてバイデンが勝ったブルースステートの人たちが過半数、という以外な数字も出てきています。
不法移民が増えた結果、犯罪が増加し、治安が悪化する、街は混乱し、BLMは南軍の将軍像を破壊し、コロンブスも餌食となり、さらにはワシントンまで踏みにじり、いまや米国ではメリークリスマスとも言えない国になりつつあります。
ポリコレ、キャンセルカルチャー、LGBT、気候変動原理主義、不法移民野放し、こういったバイデンの失政への恐れこそが多くの米国人を「極右」トランプへと動かしたのです。
もはや戦いの軸は、「民主党対共和党」という従来の枠組みの外になってしまっています。
米国を再び偉大な国へという声は、自分たちの国を自分たちの手に取り戻したいという本源的感情と同義語なのです。
国民の基幹を成す中間階級の深刻な民主党リベラルへの鬱屈した怒りです。
これに恐怖した民主党とリベラル司法は、弾劾訴追を繰り返しましたが、皮肉にも訴追すればするほど、リベラルメディアが叩けば叩くほど彼らのシンボルと化した「われらがトランプ」は元気になっていきました。
結局のところ気がついてみれば、スポットライトを浴び続けたのはトランプばかりと相なったのです。
その結果、共和党支持者の間ではいっそうカリスマ性が強くなり、「受難の王」の帰還を求める声はいっそう強くなってきています。
まことにトランプというキャラクターは、誰かも言っていましたが、一種のロックンローラーなのです。
下半身スキャンダルが出れば出たで、これが民主党候補なら生命取りでしょうが、ドナルド、よーやるじゃん、さすがだねというわけです。
共和党内にも反トランプ派はうじゃうじゃいます。
小さな政府を目指すティパーティ派ら共和党本流は、政府を財政規律で締め上げて、財政支出は最低限に、金融緩和は引き締めてという緊縮路線を目指していました。
トランプは、それと真逆な大型財政支出・大規模金融緩和といういわゆるリフレ政策を実行し、米国経済に空前の繁栄をもたらしました。
これは本来、共和党本流が嫌ったリベラル経済路線そのものです。
この辺が、リベラル派の経済政策を換骨奪胎した安倍氏にそっくりです。
また繁栄に取り残された中間層以下をケアする減税政策もまた、本来は民主党がせねばならないものだったはずでした。
トランプが民主党と一線を画するのは、それを税金の再分配で行うのではなく、むしろ減税によって経済全体を豊かにし企業を国内に呼び戻して働く場所を増やす、ということを通じて行ったことです。
そしてトランプのほうがエスニックに対するケアが厚かったので、いまやかつては民主党の票田だったエスニック層はトランプ支持に回っています。
結果、失業率はFRBが驚嘆するほど低下しました。
一方、民主党リベラルは、この低所得層へのケアを、失業手当のバラ撒きという再分配政策でしようとして、徒に財政赤字を積み増ししていきます。
経済全体を豊かにしないで再分配だけに頼ろうとすれば、国民はやがて自ら働かずに糧を得ることを当たり前に思い、根っこから腐ってきます。今の米国が陥っている強インフレもそうで、この原因はコロナ対策として過度にバラ撒かれた支援金が原因でした。
ことほど左様に、トランプは「受難の王の帰還」であり、民主党、共和党の枠を超えたうねりだったのです。
だから、私はくっきりと南部と北部が別れたかつての南北戦争のようなモデルは起きない思います。
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民主党側が自分らの自滅だと分かっていればいいですね
トランプ氏だって相当嫌われていたはずなのに、それ以上だったわけですから
「リベラル?ああ、都市生活者の綺麗事ね」って感じの認識になっちゃってませんか?
投稿: しゃちく | 2024年11月 8日 (金) 13時02分
>>議会襲撃事件に関してはトランプが直接指示した証拠はありません。
確かに直接指示はしていませんが首都に集結した一揆に対して不正選挙を主張して「議事堂に向かえ」と煽動したのだから限りなく指示に近いと思います。
非武装のデモ隊ならまだしも、銃火器や火炎瓶を所持しているギャングのような集団を制止するのではなく、焚き付けたらどうなるのかもわかっていたはず。
投稿: 中華三振 | 2024年11月 8日 (金) 14時25分
日本のマスコミやエスタブリッシュメントはケネディの頃のように、今でも民主党がまだ「弱者のための党」だと勘違いしてるんです。
トランプがアメリカを分断したのじゃなくて、民主党が大企業・富裕層や高所得者の党になったから分断が生し、そこでトランプが登場したのです。
バーニー・サンダースは言っています。
<(民主党は) まず白人労働者を見捨て、それからヒスパニック系と黒人の労働者を見捨てた民主党が、労働者に見捨てられたのは当然だ>けだし、その通りです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年11月 8日 (金) 16時29分
まずは再選おめでとうのトランプ大統領ですが、掲げている経済政策の多くと目標(インフレの打開)に矛盾を起こしているので就任後これをどう折り合いをつけていくのかが最初の試練となりそうです。
失敗すればイギリスのトルド首相のような経済の大混乱を起こしかねません。
さっそくFRBが利下げを行い経済の過熱を促しています。
今後の状況次第では年度内にもう一度利下げを行うだろうと予想されていますし、インフレ抑制が困難な金利状況でトランプ政権がどのような立ち回りをしていくのか見ものですね。
投稿: しゅりんちゅ | 2024年11月 8日 (金) 17時48分