なぜかくもハリスは惨敗したのか
11月8日 15時21分現在、 開票が遅れていたネバダがレッドステートになりました。
この州は2回続けて民主党の牙城でしたので、民主党のショックは大きいはずです。
ミシガンもトランプで決まり、あとの注目はアリゾナですが、トランプが優勢です。
おそらくスイングステートは、全部トランプが征することになりそうです。
11月9日午前2時時点で、トランプ301、ハリス226となりました。
総得票数も、9日正午現在、トランプが約7414万票、ハリス氏が約7023万票で、トランプは約391万票の差を付けています。
総得票数で共和党が勝利するのは20年ぶりだとか。
また議会選挙はすでに上院を52議席と過半数を握り、下院も210議席で過半数まであと8議席に迫っています。
これで大統領・上院・下院のトリプルレッドにが完成するすることがほぼ確実な情勢です。
共和党の歴史的大勝利、民主党の歴史的大敗北となりました。
ハリス副大統領が敗北宣言 米大統領選から一夜明け - YouTube
さて、惨敗した民主党では、お定まりの敗戦責任が噴出し始めています。
特に民主党左派の怒りは大きいようで、左派の重鎮バーニー・サンダースはこう言っています。
「敗因については様々な臆測が飛び交っている。ハリス氏が20年大統領選の党指名候補争いで早々に敗れたにもかかわらず、競争を経ず大統領候補に選ばれた今回の手続きへの批判もある。
民主党系無所属で急進左派のバーニー・サンダース上院議員は6日、「労働者階級の人々を見捨ててきた民主党が労働者階級から見捨てられたと気付いても、さほど驚くことではない」とする声明を発表した。富の不平等や生活水準の低下などの問題に取り組んでこなかった党指導部をサンダース氏は痛烈に批判した」
(読売1月8日)
全米各地で支持離れ、民主が惨敗に衝撃…「戦犯」探し活発化で泥仕合(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
あれあれ、読売も強烈な反トランプで「大接戦」を連日ガナっていましたが、いいですねぇ、メディアというのは負けたらヒトゴトです。
それはさておき、サンダースが指摘しているのは2点です。
ひとつは、民主党の正規の手続きを踏んでいないでハリスに決まった手続き論です。
いまひとつは、民主党が労働者の党であることを止め、富裕層のための党になってしまったという政策的問題です。
今日は前者を考えてみます。
ハリスは、実は前回2020年の大統領選の党指名候補争で早々に敗れた弱い候補ににもかかわらず、左派への配慮から副大統領になりましたが、エアホースツーに乗れる身分になったからといって能力が上がったわけではありませんでした。
副大統領は不思議な職務で、常に大統領のそばにいながら補佐官や閣僚よりも権限がなく、絶対的な閑職です。
要するに、スペアであって大統領が無事である限りは透明人間のような存在を強いられています。
この4年間、ハリスはホワイトハウスで昼寝をしていました。
就任早々の2021年時点でこう言われる始末です。
「ハリスの評判が芳しくない上に、バイデンの足を引っ張る要因になっているからだ。政策的失態というよりはマネージメント能力への疑問である。コミュニケーション戦略の破綻によるメディア対策不足でリークが頻出するところは、1993年のクリントン政権1期目の混乱にも似ている。複数の米メディアが副大統領室の混乱を6月以降相次いで報じている」
(笹山平和財団 渡辺将人 2021年8月21日)
バイデン政権を悩ますハリス副大統領という難題 | SPFアメリカ現状モニター | 日米関係インサイト
マネジメント能力が欠落しており、重大案件は必ず副大統領室からリークされる、その改善のために専門家を呼べばこれも漏れるという悪循環だったようです。
このマネジメント能力の著しい欠落は、ハリスの選挙事務所のスタップは47人中43人が辞めてしまいまったことにも現れています。
「ハリスのオフィスは、副大統領になって以来、91.5%という驚異的な離職率を記録していることが、政府の監視組織であるオープン・ザ・ブックス(OTB)の調査で月曜日に明らかになりました。ハリス氏が2021年に就任した際に採用された47人のスタッフのうち、2024年3月時点で彼女の雇用に残っているのは4人だけだったと報じられています」
(フェデラリスト2024年7月23日)
カマラのスタッフの92%は、副大統領としての最初の3年間で退職しました
辞めたスタッフは「心を打ち砕かれるほどの批判」(a constant amount of soul-destroying criticism)に耐 えられなかったと言っています。
「準備や仕事をやろうとする人と一緒に仕事をしていないのは明らかです」と、匿名の元スタッフはポスト紙に語りました。「カマラの場合、常に魂を破壊するような批判に耐えなければなりません。また、彼女自身の自信のなさにも耐えなければなりません。だから、常にいじめっ子を支えているようなもので、その理由がはっきりしていないのです」
(フェデラリスト前掲)
たまにいますが、カマラは持ちたくない上司の典型だったようです。
外ではキレイゴトを言っているが、帰れば口汚い暴君になってふんぞりかえる、部下の失敗は許さず追い詰める、という人のようです。
どうやらカマラにはいじめっ子体質があるようで、当時を見た人によれば事務所は混乱し荒んでいたようです。
この人望のなさは深刻でした。
この人物は、まるで田中真紀子のように下卑ています。
支援集会で、いま寝たきりになっているジミーカーターを嘲笑している姿が動画にあります。
自分に投票しようとがんばっているカーターに浴びせ掛けた言葉がこれです。
「(寝たきりの)カーター元大統領が期日前投票できたんだから、(聴衆の)あなたたちもできる! ギャハハハ!」
XユーザーのCollin Ruggさん
また決定的だったのは中南米歴訪でした。
絶対に失敗しないと言われたこの歴訪を見事にハリスはブチ壊して、中南米諸国と外交的緊張を作ってしまったのです。
「鳴り物入りの初外遊であった6月初旬の中南米訪問中、グアテマラでの記者会見で「アメリカ国境に来ないで」とハリスは発言し、物議を醸した。ハリスの場合、不法移民を取り締まる側である検察官という前歴との連想性が不幸だった」
(渡辺前掲)
これに左派が噛みつき、民主党内部の抗争にまで発展してしまいました。
「人道的な移民政策に反すると「失望」を示したオカシオ=コルテスに続き、イルハン・オマル、ラシーダ・タリーブら新世代左派の顔である民主党若手議員から批判の集中砲火を浴びた。バイデン政権は、共和党の女性差別とマイノリティ差別に基づく中傷がハリスを追い込んでいるという線で擁護してきただけに、民主党の女性マイノリティ議員集団の反発は痛恨の一撃だった。「ジェンダー」「人種」の属性だけで左派が納得するのは選挙戦までで、若い世代の左派はハリスに政策上の厳しい踏み絵を踏ませる段階に入りつつある」
(渡辺前掲)
選挙前からハリスは本来の地盤であるはずの民主党左派からの信頼すら喪失していたのです。
つまり、ハリスは大統領になってはいけないタイプの人間だったのが、なんの巡り合わせか大統領候補になってしまったといことのようです。
このあたりは首相にだけはしていけない男が、居すわり続けているどこぞの国も笑えませんが。
いずれにせよ、そこへ降って湧いたバイデンの老耄問題が到来し、期せずして副大統領に座っていたハリスがなんの党内の選択も経ないまま緊急登板してしまいました。
ミシェル夫人をほんとうは押し込みたかったであろうオバマが、ダメとわかると一転してハリスの背を抱き抱えんばかりにして擁立してしまったのです。
オバマ元米大統領、近くハリス氏支持を表明へ 情報筋 - CNN.co.jp
「この情報筋によると、オバマ氏はハリス氏と定期的にやり取りしており、20年来の知り合いであるハリス氏の相談役を務めているという。
バイデン大統領が21日に再選不出馬を発表した後、オバマ氏はすぐにはハリス氏への支持を表明しなかった。オバマ氏は代議員が大統領候補者を選ぶという正当なプロセスを踏むことが民主党にとって重要との考えで、ハリス氏が印象的な滑り出しを見せたとの認識を示しているという」
(CNN2024年7月26日)
オバマ元米大統領、近くハリス氏支持を表明へ 情報筋 - CNN.co.jp
この擁立の経緯を見ると、最大の戦犯はオバマです。
オバマは自分が後ろ楯となって推薦人となることで、本来予備選挙があれば絶対に選ばれなかったであろうハリスを押し込んだのです。
だがハリスは、4年間を無為に過ごしていたために特に大統領選挙への準備をしていたわけではない上に、政策も考えていない状態でした。
急に言われてもムリよ、てなもんでしょうが、弁解してやるなら、これはハリス個人の問題ではなく民主党が抱える宿痾があったことを知ってやらねばなりません。
それは民主党内保守派と左派では、ありとあらゆる政策が1光年も違うからです。
民主党保守派は共和党と言っていることがほとんど変わりませんが、左派は共産党が非合法な米国における代用共産党です。
バイデンが前回民主党候補になれたのは、彼の立場が中間派だったからで、どちらかの立場を取ると必ず反対方向から非難のつぶてが飛んでくるような党なのです。
その点、この4年間かけて、反トランプ派を完全に沈黙させて、一枚岩に近い状態にまで練り上げたトランプとえらい違いです。
したがって、民主党大統領候補はトランプは嫌だという層を目当てするという情けない消極的な理由から選ばれたわけです。
それが結局、中絶問題でしか政策を打ち出せない原因となりました。
これがサンダースが言う政策的失敗ですが、その責任をハリスだけに押しつけるのはやや気の毒です。
これはこの4年間黒人やマイノリティ、労働者は民主党のものと思ってあぐらをかいていた民主党政権の怠惰によります。
この4年間準備をし続けてきたトランプによって、この牙城が土台から切り崩されていたのに気がつかなかっただけです。
「そして24年大統領選挙では、伝統的には民主党を支持していたものの、民主党によって声を汲み上げてもらえなくなったマイノリティの人たちの声を吸い上げたことが、トランプに勝利をもたらしたのではないだろうか。トランプが意識的にそのような行動をとっていたのかはわからない。
だが、トランプがそのような層にウイングを広げることが可能になった背景には、彼らの民主党に対する不満があるのは間違いないだろう。 伝統的には民主党が労働者の政党で共和党が資産家の政党というイメージがあったが、トランプ以降は、民主党が金持ちの政党で共和党が労働者の政党というイメージが生れつつある」
(渡辺前掲)
まさにサンダースの言うように、民主党は「白人富裕層の党になってしまっていた」一方、共和党はブルカラーの党に変身していたのです。
彼女は本来選ばれてはいけない人であり、ガタガタの党内でなり手がいなかった火中の栗を拾ってしまったといえなくもないのです。
伝統的に、共和党は予備選挙段階では対立があっても本選挙では大同団結する傾向があるのに対し、民主党は党内対立を本選挙の際にも引きずる傾向がある。ハリスからしてみれば、反トランプ、そして民主党内でコンセンサスが比較的あると思われる中絶問題の2つを中心に据えて「ふわっと」支持をまとめるのが最適解だったのだろう。これでは、選挙直前に支持基盤を広げることはほぼ不可能である」
(西山隆行2024年11月7日)
<米民主党敗北>党内から反発くらったハリス、汲み上げたマイノリティの人たちの声、トランプ現象とは何か Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) 。
「ふわっとした支持」で、いままでになくトランプの周りに団結した共和党に勝てる道理がありません。
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サンダースの仰る通りなのだが、これを「党内批判と戦犯探し」なんて矮小化して伝える日本のマスコミの劣化も酷い。投票直前まで「史上稀な大接戦」とか流してましたからね。願望と現実の乖離が激しすぎます。
もう30年も日本にいておそらく母国の世情を体感していないであろう民主党支持派エリート層の典型例でパトリック·ハーランの絶望コメントが実に分かりやすいです。なるほどぉ、盲信してるとこんな反応になるのか!と。
自分はパックンがまだ売れて無くて深夜の「テレコン·ワールド」とかやってた頃からファンなんですけどね。95年頃ですね。
投稿: 山形 | 2024年11月 9日 (土) 07時03分
あと、忘れてならないのは、前回選挙と比して不正行為を極力抑える事に成功した点もあげられるでしょう。
共和党は選挙ボランティアを民主党なみの10万人にふやし、多重投票などの不正が発覚した場合、即座に弁護士~裁判官ルートの構築を各地で事前に行っていました。
カリフォルニアのように、大統領選前に「投票人のIDを確認する事」自体を禁止するという憲法違反の法律を制定してしまうところもありましたが、前回選挙でも問題になっていた激戦州での改善が結果に寄与したと考えられます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年11月 9日 (土) 22時06分
何はともあれ、トランプ親ビンが勝ってよかったですわ。たとえ程度の低い人でも、もう似非リベラルにダマされるようなトンマな者は少なくなったんです。その似非リベラルの象徴がカマラハリスさんだったわけで、あの彼女のウソ笑いに怖気が走る私みたいな者にとっては、民主党が嫌われる理由はもうリクツじゃないんですわ。
似非リベラルは、その本質は単なる意識高い系のエゴイストで、自分のエゴ丸出しだと他人から承認されないしビジネスもできないんで、批判されることが許されない絶対的な弱者やポリコレをダシにして、自分達の利益を最大化しようとする悪党どもですわ。いくら鈍感な大衆であっても、あのカマラ笑いの裏にあるものを感じ取ってしまうんですわ。
前評判では大接戦だったハズが大差であっけなく勝負がついたのは、米国本土でも日本でも、エライ学者先生やマスゴミ各社がカマラハリスさんを持ち上げたからです。私も、せっかく暗殺未遂時の星条旗をバックにドヤ!のポーズで決めたと思ったのに、投票日が近づくとともに「もうアカン、米国は社会主義になるんか」とダマされたのは、コレが原因でしたわ。
とある有名投資ブログを見る機会があって、そこに何故、学者やマスゴミの連中はこうも左巻きが多いのか?という理由が、経済学者で財務長官などを歴任したラリーサマーズさんが語ったコトバとして書かれていました。彼によると、彼自身は民主党員でその中道なんだそうですが、学者の集まりやマスゴミ記者の中へ行くと、彼はトタンに極右になってしまうんだとか。それほど学者や記者の連中は、あまりにも極端な左巻きが多いらしいんですわ。
その理由として、米国は職業選択が自由な国なんで頭のいい連中は、資本主義の中枢であるビジネスの道へ進んで大成功することも可能なんですが、頭のいい連中の中にも元々資本主義がキライというか憎んでいるような者がいて、そんな彼らはビジネスの道へ進まず、ワザワザ比較的収入の低い学者や記者になるんだとか。もう職業を決める入口の時点で、学者や記者になる者のアタマは極端な左巻きだというわけですわ。
そういう訳で、日々マスゴミのバイアスのかかった報道に晒されている身にとって、こちらの記事は頼りになります。
投稿: アホンダラ1号 | 2024年11月 9日 (土) 23時52分