ゲル氏、トランプに会ってもらえず
ウクライナについて書かねばと思いつつ、重いんだなぁ。もうちょっと待って。
先にこちらの「軽い」ニュースから。
まぁダメだとは思っていましたが、やっぱりね。
ゲル氏がトランプ次期大統領との面会を断られたそうです。
これをほくそ笑んで、いきなり首脳会談をやってくれたのが習というのも分かりやすい構図です。
「【リマ時事】石破茂首相とトランプ次期米大統領の早期会談が見送られる方向になった。複数の日本政府関係者が16日、明らかにした。首相は南米からの帰途に米国での会談を模索していた。しかし、トランプ氏側は来年1月の就任式まで外国首脳に会わない方針で、日本政府にもこうした意向が伝えられた」
時事11月17日)
首相、トランプ氏との会談見送り 南米帰途は断念:時事ドットコム
いちおう言い方としては、「来年1月の就任式まで外国首脳に会わない方針」と言ってくれてはいますが、ウソに決まっています。
だって、アルゼンチンのハレイ大統領とは、フロリダの私邸で会っていますから。
「アメリカのトランプ次期大統領がアルゼンチンのミレイ大統領と会談しました。大統領選挙で勝利した後、外国の首脳との会談は初めてとなります。
トランプ氏は15日、フロリダ州にある私邸、「マー・ア・ラゴ」で開かれた保守系シンクタンク主催の祝賀イベントに出席し、ミレイ大統領も駆け付けました。
ミレイ氏はトランプ氏を崇拝し、過激な言動から「アルゼンチンのトランプ」とも呼ばれています」
(時事11月15日)
米トランプ次期大統領と「アルゼンチンのトランプ」ミレイ大統領が会談
前回の「電話会談」だって、たった5分。通訳で言って返ってハローハワユー、でおしまい。
子供の遣いにもならへん。
いちおう「政府関係者」はアレは祝勝会の最中であったからこちらが気をつかったんだ、なんて言っていますが、バカですか。
そもそもなんで祝勝会の真っ最中に電話すんのよ。
そういう相手のスケジュールを押さえて、初の電話会談を設定するのが、「政府関係者」の仕事でしょうが。
なんだったらフロリダまで乗り込んで祝勝会に出ればよかったのです。
ただしお一人様では無理ですから、トランプ氏がシンゾーの盟友と思っていた麻生さんに連れていってもらうのですね。
うがった見方をすれば、祝勝会の最中ならすぐに終わって、ボロがでないで済むとでも思ったんじゃないでしょうか。
なまじじっくり話したら初手からケンカになりかねませんからね。
ゲル氏には外交経験がまるでありません。
単に総裁候補9人で唯一英語がまるでダメというだけでなく(他の候補者は全員英語で政策議論が可能なレベルですが)、実際の外交現場に出ることないヒッキーでした。
オタクが美少女フィギュアを作るように、プラモデルを作ったり脳内で「アジア版NATO」などという珍説を構築してしまう人なのです。
まるっきりアジアや米国首脳と会ってもいないうちから、「アジア版NATO」も「米国との双務関係」もないもんだとフツーは思うのですが、この人は評論家の高見にいらっしゃる方ですからいいんでしょう。
現実に鍛えられていないのです。
それに気の毒にも、トランプは明瞭にゲル氏を嫌っています。
トランプはリベラルメディアと大バトルをして再選を果たした人物です。
だからトランプは深甚とした孤独に耐えて戦ってきたわけです。
第1期に選挙前には、会いに来る外国要人としてなく、トランプハウスで寒々とした日を送っていたのです。
そこに太平洋を渡って会いに来たのがシンゾーでした。
トランプは安倍氏を、抱き抱えんばかりにして出迎え、以後この二人は文字どおりの盟友として、安倍氏が非業の最後を遂げる日まで支え合う関係になりました。
下の写真は、訪日したトランプと共にゴルフをしている時の安倍氏の自撮りですが、こんなにくったくない顔をできる数少ない友人が安倍氏だったのです。
トランプ米大統領と安倍首相、仲良く自撮り 首相官邸が写真公開 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
初めてのトランプ氏との会談の席上で安倍氏が「あなたはニューヨーク・タイムズにたたかれた。私も朝日新聞に徹底的にたたかれたが、私は勝った」と語ったエピソードは有名ですが、それと真逆に左派メディアの代弁者としてじめついた批判をしていた男が、他ならぬゲル氏でした。
今回の閣僚人事でも、ゴルフ仲間が選ばれています。
たとえば中東特使に内定したスティーブン・ウィトコフは、ゴルフをしている時に暗殺されそうになった仲です。
「トランプ次期米大統領は12日、中東問題担当の大統領特使として、不動産会社を経営するユダヤ系の富豪スティーブン・ウィトコフ氏を起用すると発表した。
トランプ氏は「平和のために不断に声を上げ、われわれを誇らしくさせてくれるだろう」と強調した。
ウィトコフ氏は、トランプ氏が9月に南部フロリダ州のゴルフ場で暗殺未遂に遭った際、一緒にプレーしていた「ゴルフ仲間」。トランプ氏が1期目で取り組んだイスラエルとアラブ諸国との正常化などに向けて取り組むとみられる。
彼はユダヤ人の不動産王でトランプ氏の長年の友人でありゴルフ仲間でもあります。外交経験はないが、イスラエルに対する揺るぎない支持、妥協しない対応は絶対的なものがある」
(時11月13日)
トランプ氏、中東特使にゴルフ仲間起用 ユダヤ系富豪のウィトコフ氏:時事ドットコム
たぶんこのふたりでプレーしていた時に、かなり突っ込んだ意見交換をしていたのでしょう。
大物政治家にとって「ゴルフ」とはスポーツ以上何かなのです。
かつてゲル氏は首脳外交についてこんなことを言っています。
「18年9月の自民党総裁選に出馬表明した記者会見。首相は、安倍氏のようにトランプ氏とゴルフしたいかを尋ねられると、明言を避けた上で「お世辞やおべんちゃらをいうのではなく、国益をもって不退転の決意で臨んでいると相手に思ってもらうことが大切だ」と〝心構え〟を説いた。
20年9月の総裁選に挑戦した際も、同じような質問を受けたが、「限られた時間で、いかに国益(に関する主張)を全身全霊でぶつけないと(トランプ氏から)信頼を得られない」と繰り返した」
(産経11月7日)
石破茂首相はトランプ氏と「ゴルフ外交」できるのか 高校時代ゴルフ部の腕前も最近は距離(産経新聞) - Yahoo!ニュース
このゲル氏の意見を聞いて、この人首脳外交を根本的に勘違いしているな、と思いました。
なんでもゲル氏は、慶応のゴルフ部だったそうで、うまいんだとか。
シングルで回れるそうですが、私だったら「全身全霊で国益を」なんて目をつり上げている奴とゴルフするのはイヤだな。
なまじ「競技としてゴルフ」をしていただけあって、この人は首脳ゴルフを勝つか負けるか、あるいは政治的にベネフィットがあるかないか、といった実益で捉えているような気がします。
違うんですよ、ゲルさん、首脳間ゴルフで大事なのは、コースを回っているときに通訳なし(ここ大事)で1対1でしゃべることの機微、あるいは、一汗かいた後での、クラブハウスの風呂でのざっかけない会話の感触だったりするのですよ。
首脳外交は正式の協議の場ではなく、休憩時間のロビーで決まると言われます。
正式な政府間交渉は、随行の役人がやればよい。
それは既に数カ月前から細部まで煮詰まっていき、共同声明の隅々まで決定しています。
ある意味で、首相の出番はないのです。
ですから、首相ができるのは、いわゆるアンダーザテーブルでの微妙なやりとりです。
そこに「国益を全霊で」なんてまなじり決してやられたら、口もほぐれませんがな。
まだしも岸田氏は「立ち話」が得意でした。
ゲル氏の座右の銘は「鷙鳥不群(しちょうふぐん)」だそうです。
鷙とは猛禽類のワシのことですからなかなかのナルシストでいらっしゃいますが、自分をワシに例えて群れないことを信条としてきました。
だから党内ですら友人はゼロ、派閥の仲間とさえ飯すら食わないのですから、人望など望むべくもありませんから、世界に対する人脈がありません。
したがって、これほど外交に、というより政治そのものに向かない人はいないでしょう。
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いつにも増して平滑流暢な書きぶりに思わず笑っちゃいました。
(いちいち言ってることも的確ですので)
私も主さんの仰るように大きく首肯するところがあります。
安倍さんという政治家は稀有も稀有。
戦後の宰相の中でもトップレベルで大宰相というに相応しい政治家です。
私は、安倍さんの外交手腕のしたたかさは、オバマの広島訪問実現に尽きると思っています。
オバマのプラハでの【核無き世界】演説を最大限に利用し、日米間に横たわる日米戦争の負の遺産である「広島・長崎」、のどに刺さった大きな骨を丁寧に取り除きました。他の大統領だったら、広島訪問は困難だったかもしれません。
同時進行で2015年の安倍さんの米両院議会合同演説、2016年末の真珠湾訪問慰霊、一連の流れの中、日米は過去を大きく【超克】しました(すべてではありませんが)。
そして、トランプ大統領の誕生後には、すぐさま相手の懐に飛び込む。
シンゾー・トランプペアは、「盲亀の浮木」レベルの僥倖だったと思います。
あの二人のケミストリーが合ったからこそ、日米は新たなステージに進めたと思っています。
この大事な時期にも関わらず、よりにもよって我が国の外務大臣があの岩屋さん。
主さん仰るように今アメリカへの特使としての適任は、自民党副総裁となった菅さんではなく、最高顧問となった麻生さんを置いて他にはいないでしょう。石破さんがこの札を使うかどうかは未知数ですが。
私は先の総裁選において、自民党の人材層の厚さを再認識できました。英語を流暢に喋れる林さん、茂木さん、河野太郎、コバホーク、この四人は見事です。高市さん、上川さんもなかなか。
そして意外にも小泉進次郎さんも上手でした(英語でもシンジロー構文は健在でしたが)。
安倍さんもサムライイングリッシュでしたが、トランプ御大とコミュニケーションを取れました。
そしてご存じのように、我が国の象徴である天皇陛下、皇后陛下におかれましては、ハーバード仕込みの完璧なブリティッシュイングリッシュです。
外交の場において、通訳を介せずに英語を話せることは大きなアドバンテージです。
吉田翁も英語が出来たからこそ、対米交渉において成果を出し、サンフランシスコ講和条約で日本の独立を勝ち取れました。
昭和の時代ならいざ知らず、今や首脳の英語力は、必須条件ではないにしろ、身につけるべきスキルの一つになっていると思います。
果たして、石破さん、岩屋さんコンビでどこまで外交ができることやら。。。
投稿: osyou | 2024年11月18日 (月) 10時38分
体裁よく断られたんですね、アルゼンチン大統領のニュースが出てアララと思いました。
慶應高校ゴルフ部OB同期の方の談ですと、10人しかいないクラブで、石破総理の存在は薄い、確か100を切らないくらいの腕前、それから大学のゴルフ部には入部しなかったと。
2018年に石破総理は10年以上ゴルフをやってないと発言しているので、トランプさんと回るのは難しいですかね。
投稿: 多摩っこ | 2024年11月18日 (月) 13時13分
政治のど素人ですが、ゲルさんとトランプさんの会談が実現しないのは至極当然な気がします・それより、トランプ共和党のアメリカががっつり中国に敵対してるのに、その中国の指導者と、ホイホイと会談するゲルさんのセンスのなさ?というか、日本の外務省のセンスのなさはどうにかならないのですかね?
投稿: 一宮崎人 | 2024年11月18日 (月) 16時16分