「香港47人」に重罪判決
香港で逮捕されていた「香港47人」に重罪判決が下りました。
「香港の高等法院(高裁)は19日、民主化運動のリーダーらに、国家転覆共謀罪で禁錮4~10年の刑を言い渡した。リーダーらは、物議を醸してきた国家安全保障に関する裁判で、5月に有罪判決を受けていた。
「香港47人」と呼ばれるグループの活動家や議員らは、2020年9月の立法会(議会)選挙に向けて非公式の「予備選」を実施したことが国家転覆の共謀に当たるとして、香港国家安全維持法(国安法)違反に問われ、有罪とされた。
この日の量刑言い渡しでは、元大学法学部教授で、予備選を発案したとされる戴耀廷(ベニー・タイ)氏が、最も重い禁錮10年とされた。裁判官からは「革命を提唱した」と断定された。
著名活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は、禁錮4年を超える刑が告げられた。有罪を認めたことで、量刑は3分の1に減らされた。ただし、他の何人かとは異なり、裁判官から「善良な人物とは認められなかった」ため、それ以上の減刑はなかった。
このほか、ジャーナリストから政治家に転じた何桂藍(グウィネス・ホー)氏や、元議員の毛孟靜(クローディア・モー)氏と梁国雄(レオン・クオックホン)氏らが、禁錮4~7年の刑を言い渡された」
(BBC2024年11月19日)
香港の民主化運動リーダーらに量刑言い渡し 禁錮4~10年 - BBCニュース
この「罪」に問われたのは3年前の予備選です。
「問題とされた非公式の予備選は、2019年の「反送中」デモの勢いをうけて同年の区議選で民主派が勝利したのち、2020年の立法院選挙勝利にむけたデモンストレーションとして、ベニー・タイらが企画。2020年7月に開かれ、50万人以上が投票しました。
主催者側は当時、香港の憲法ともいえる「香港基本法」の下で許されている行動だとし、無罪を主張していました。ですが、香港政府側は、これは政府の「転覆」を企てたとして、活動家らを逮捕しました」
(福島香織11月23日 中国趣聞№1090)
当時のBBCの報道はこう伝えています。
「香港警察は2月28日、1月に逮捕した民主派50人超のうち47人について、国家「転覆」を狙ったとして起訴した。昨年6月に施行された、香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」(国安法)に基づく起訴としては最大規模。
1月の逮捕者の多くはその後保釈されていたが、47人は2月28日、3月1日の出廷に先立ち警察に出頭するよう求められた。
中国政府は「破壊的な」行為を犯罪行為とみなす国安法の施行について、香港に安定を取り戻すために必要だと主張している。イギリスのドミニク・ラーブ外相は2月28日、民主派の起訴は「政治的な反対意見を排除」するために国安法が使われている実態を示しているとツイートした。
「国安法は英中共同声明を侵害しており、このような方法での国安法の使用は、中国政府が約束した内容に矛盾している。このような敏感な問題について約束を守るという信頼をさらに損なうだけだ」」
(BBC2021年3月1日)
香港警察、民主派47人を「国家転覆罪」で起訴 国安法施行後で最大規模 - BBCニュース
この予備選挙は、9月の立法議会選挙を迎えて民主派候補の共倒れを防ぐ目的で、民主派が独自に開催したものです。
予備選挙に61万人 香港市民は諦めていない: 農と島のありんくりん
性格的には国際的によくやられているもので、米国の民主・共和両党の予備選が有名です。
この香港予備選に参加したのは実に約61万で、この数字は2019年に民主派がが圧勝した区議選の獲得票の約3分の1に相当し、立法会選の有権者全体の14%にあたります。
つまり、9月に立法会選挙が通常どおり行われれば、民主派の勝利は確実なことが予想されていました。
さまざまな不利益を省みず立ち上がった香港市民の姿に胸が熱くなります。
AFP 香港民主派の予備選に投票するため並ぶ人々(2020年7月12日撮影)
これに恐怖したのが香港行政府と中国政府でした。
彼らは新型コロナウィルス(このように呼ぶことにいたします)を理由に9月の立法会選挙を中止してしまい、そして今回、予備選挙を理由に国家転覆罪を仕掛けてきたのです。
その起訴理由を検事はこう言っています。
「立法会選挙で過半数を握り、あらゆる予算案に反対して行政長官を辞任に追い込む計画を企てていた。
これは政権転覆行為である」
驚くべき理由です。
一瞬なにをこいつは言っているのか、ポカンとしませんでしたか。
それが正常です。民主主義があたりまえだと思っている国民には理解不能です。
選挙とはそもそもそういうものだからです。
選挙の結果過半数を握れば、行政府の出したあらゆる予算を検証し、議論し否決することが可能です。
それはこの検事のいうように「すべて」かもしれないし是々非々かもしれませんが、いずれにせよ議会の否決権は民主主義制度のイロハのイです。
それを議会で多数派をめざすこと自体が国家転覆罪に相当するというなら、もはや選挙という概念自体が成立しません。
今回、もっとも重罪を言い渡されたベニー・タイ氏はこの予備選を「革命だ」と断じられました。
中国という国においては民主主義の権利を行使することは、すなわち「革命」なのです。
国民は選挙という方法でしか自らの意志を政治に反映できない以上、選挙を理由とした弾圧は民主主義そのものの完全否定です。
ならば香港行政府よ、いやその背後にいる中国政府よ、いっそ選挙自体を廃止して、共産党が指名する者だけに丸をつける共産党式でやったらどうなんでしょうか。
「米国、オーストラリアなどの政府は、この判決に強い異議と深い懸念を表明。一方、中国と香港政府は、国安法は社会の安定を保つに不可欠だと開き直り、香港の自治を損なってはいないという立場です。今回の判決は、中国の国家安全保障を弱体化しようと外国と結託する勢力に対する警告にもなった、という立場です」
(福島前掲)
自由主義陣営は民主主義を共通の価値観としている以上、「香港47人」を支援する道義的義務があります。
習近平にもっとも直近で会っている自由主義陣営の首相がいました。
ゲル首相です。彼はひとことの抗議はおろか、香港の「ホ」の字も口にせず、両手で習の手を握りしめて「友好」を誓いました。
いま、習近平は、トランプの再登場を前に慌てて西側諸国との関係改善を急いでいます。
「習近平はトランプ政権復活の前に、英国、欧州との関係改善に動いており、リオのG20では英国、オーストラリア、メキシコ、ドイツ、フランス、ボリビア、アルゼンチンの首脳と会談。G20では、バイデンはまもなく退任、プーチン欠席という中で、けっこうやりたい放題やっていたようです。G20では習近平は、一帯一路を通じた支援も含め7800人民元の融資、アフリカへの3600人民元の資金援助を発表。また中国と国交のある途上国に対する100%ゼロ関税待遇を宣言。2030年までにそうしたゼロ関税国家から8兆元分の製品を輸入するとしています」
トランプ政権の米国にデカップリングされることを前提に、米国外の経済圏構築を急いでいるようです」
(福島前掲)
日本に対してはビザなし渡航の解禁です。
「中国外務省は22日の記者会見で日本を含む9か国に対して短期滞在のビザを免除する措置を今月30日から実施すると発表しました。
ビザの免除は出張や旅行などで中国を訪れる多くの日本人が利用していましたが、中国政府は、2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて停止しました。
今回の措置では、人々の往来の利便性を高めるためだとして、これまで15日としていたビザなしの滞在期間を30日に延長し、実施期間は2025年末までとしています」
(NHK11月22日)
中国 日本人の短期滞在ビザ免除措置を30日から実施と発表 滞在期間30日に延長 2025年末まで | NHK | 中国
ゲル氏は、習との会談ができたことで、「戦略的互恵関係」が修復できたとして外交的手柄と考えているようです。
ゲル氏と岩屋外相は習の訪日と外相訪中を狙っているそうですが、トランプの目指す方向とはまさに真逆。
まるであてつけにすら見えます。
それでいてトランプと面談したいだなんて、なんなんでしょうかね、あの人たち。
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以前、アメリカの批判に対して中国は「中国には中国の民主主義がある。外部が口を出すな」と反論?していましたが。
これのどこが民主主義やねん、カケラも無いやんけ。中国式とかそういうレベルじゃねーよ、と思ってしまいますね。
投稿: ねこねこ | 2024年11月27日 (水) 08時15分
外交センスなさすぎ?なのか、岩屋外相にいたっては、米国から中共のスパイとみなされてる?ネットでは中国からの賄賂云々でもりあっがてるけど、TVその他の既存メディアは全く無視ですね。
投稿: 一宮崎人 | 2024年11月27日 (水) 15時58分