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2024年12月11日 (水)

アサド政権陥落、トルコとイスラエル

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アサド政権が崩壊したことは、巨大なショックウェーブとして関係国に衝撃を与えました。
プーチンは平静を繕っていますが、2015年9月以来、営々と積み重ねてきた中東戦略はこれでほぼ破綻したことになります。
アサドの国と同じで、ひとりに権力が集中する独裁国家の脆さを目の当たりにしてプーチンは冷や汗を流したかもしれません。
プーチンがバッシャール・アサドをどんな顔で迎えたのか見物です。

「ロシア国営タス通信は同日夜、ロシア大統領府筋の話として、シリア大統領を辞任したアサド氏がモスクワに到着し、亡命を認められたと伝えました」
(朝日12月8日)
【速報中】ロシア報道官、アサド氏亡命認める 「プーチン氏決めた」:朝日新聞デジタル

2015年にアサド政権は崩壊の危機に瀕していたのを救ったのがロシアの空爆と、イランが送り込んだ革命防衛隊(コッズ部隊)でした。
この空と地上部隊の連携作戦は、反政府側の都市を焼き尽くし、シリア北部におけるトルコと正面からぶつかる構図を作り出しました。
イランと昵懇の仲になったのはこのシリア内戦介入からで、そのよしみはいまもウクライナ戦争支援に現れています。

この軍事介入でロシアはシリア領内にタルトゥース海軍基地とフメイミム空軍基地を得ました。
現在に至るも、航空機や艦艇は脱出したものの、保安要員のロシア兵は残存しており、反政府軍もあえて占領はしていないようです。

「今後、シリアにあるロシア軍基地の扱いが焦点の一つとなりますが、ペスコフ氏は「非常に重要な問題だ。基地の安全確保のため、あらゆる措置を取っており、軍も警戒態勢を保っている」としています。
ロシア外務省は「反体制派のすべてのグループと連絡をとっている」と強調。国営タス通信は反体制派側から基地や大使館の安全の保障を得たと伝えたものの、先行きは不透明です」
(TBS12月9日)
シリア・アサド政権崩壊でロシアの影響力低下必至 「主導権失った」ロシアメディアも報道(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

まだ新政府が作られていないので、それからの交渉となるでしょうが、アフガンのように巨大なバグラム空軍基地も捨てて逃げたのと違ってしぶといことです。
前政権が基地を何十年かで貸すと、HTSのゴーラーニーが作るであろう後継政権もそれを引き継がねばなりません。
ロシアとしてはいつでも還ってこれるのだぞ、という権益のシンボルとしてしがみつかねばなりません。
ただし、今のロシアに還ってくるような力は皆無ですが。

アサドを支えていた最大勢力はイランです。
イランは制裁下の経済的な苦境の中で、膨大な武器支援をし、アサドの戦闘員はイランの第1の舎弟であるレバノンシーア派組織ヒズボラでした。
しかし、ハマスの起こしたガザ戦争に乗じて共闘したために、ヒズボラはイスラエル軍の猛爆でほとんどの指導者が殺害され、戦闘員も壊滅しました。
とてもではないが、イスラエルとの戦局に無関係なシリアに戦闘員を回せる余裕はなく、アサドは2本の柱を同時に失って倒れたのです。
イランにとってハマス、ヒズボラに次いでシリアを喪失したことは深い痛手でした。 

それはさておき、周辺国は一斉にどよめきました。
大きく動いたのが、トルコとイスラエルです。
トルコは北部の国境地帯から自分の息のかかったSNA(シリア国民軍)を南下させています。

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XユーザーのDiliman Abdulkader

反政府勢力は一枚岩ではありません。
シリア内戦によって、反政府勢力は全国に分散して拠点を構える形になっていてそれぞれ性格が異なっています。
下図をご覧ください。
大きく分けて、今回の主力となった赤色のHTS(ハヤト・タハリール・シャム)、トルコ国境の黄色のSNA(シリア国民軍)、そして紫のクルド勢力(シリア民主軍)です。

「反政府勢力の最後の砦は、トルコと国境を接するアレッポ県とイドリブ県だ。この地域には政府側の支配地域から避難してきた400万人以上が暮らしていた。
この飛び地はHTSの支配下にあった。HTSは2016年に正式に関係を断つまで、シリア国内のアルカイダ系組織だったため、国連やアメリカ、トルコなどからテロ組織に指定されている。
トルコが支援するシリア国民軍(SNA)系勢力やトルコ軍とともに、多くの反体制諸派や聖戦主義グループも、この地域を拠点としていた」
(BBC12月6日)
シリア反政府勢力、中部の主要都市ハマを掌握 政府軍の撤退後 - BBCニュース

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 BBCニュース

トルコはシリア国境地帯のクルド人を攻撃してきました。
2018年には、トルコ国境で活動していたクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)を越境攻撃しています。
今回もおそらくアサド政権の崩壊の混乱につけ込んでクルド勢力を攻撃するはずです。

また自分が支援するSNAには、ダマスカスに入城して、次期政権の一角に座れと命じるはずです。

一方、イスラエルもこの混乱に乗じようとする国のひとつです。
ネタニヤフは素早く反応しました。
めざしたのは、イスラエルとシリアの間に横たわっているゴラン高原です。

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ゴラン高原国際平和協力業務(1996(平成8)年~2013(平成25)年) : 内閣府国際平和協力本部事務局(PKO) - 内閣府

12月8日、ネタニヤフは国防軍がゴラン高原の非武装緩衝地帯を一時的に掌握したと発表しました。


「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、シリアとの間にある占領地ゴラン高原の非武装緩衝地帯を、イスラエル軍が一時的に管理下に置いたと発表した。シリアで反政府勢力が実権を握ったことで、同国と1974年に合意した兵力引き離し協定は「崩壊」したと述べた。
ネタニヤフ氏は、イスラエル国防軍(IDF)に対し、ゴラン高原の占領地域から、緩衝地帯と「その近くの指揮所」に進入するよう命じたと述べた。
イギリスを拠点とする戦争監視組織によると、シリア軍は7日、緩衝地帯の内側にあるクネイトラ県の陣地を離れたという。
ゴラン高原は、シリアの首都ダマスカスの南西約約60キロメートルに位置する岩だらけの高原。イスラエルは1967年の6日間戦争の終盤にシリアから奪い、1981年に一方的に併合した。国際的には承認されていないが、2019年にトランプ米政権が単独で認めた。」
(BBC12月9日)
イスラエル、ゴラン高原の緩衝地帯を管理下に シリア軍が陣地離脱で - BBCニュース

ゴラン高原はシリア、イスラエル、ヨルダンの国境が接する岩だらけの台地で、ダマスカスの南約60キロに位置しています。
シリアとイスラエルはこのゴラン高原の領有権を巡って長年係争しており、国際的にはシリア領とみなされています。
ただしトランプはこれを否定してイスラエル領土だと言っています。
このゴラン高原を巡っては、第三次中東戦争でイスラエルが7割を実効支配、1981年に一方的に併合を宣言、すでに入植を始めています。

イスラエル空軍は、反政府勢力の手に渡るのを防ぐため、ダマスカス近郊の化学兵器貯蔵庫、防空ミサイル基地、ミサイル工場に対して夜通し空爆を開始しました。

「イスラエルは、シリアのアサド政権崩壊を受け、同国の化学兵器およびミサイル貯蔵施設を攻撃したことを明らかにした。市民の安全確保に向けた予防措置だという。
武装組織「シリア解放機構(HTS)」が主導するシリアの反体制派は週末に首都ダマスカスを制圧。イスラエルのサール外相は9日の会見で、反体制派は「極端なイデオロギーを持つイスラム過激派だ」と述べ、イスラエル国防軍が化学兵器を含む兵器システムを狙ったことから、これらが「過激派の手に渡ることはない」と説明した」
(ブルームバーク12月9日)
イスラエル、シリアの化学兵器庫を攻撃-市民の安全確保と主張 - Bloomberg

さらに緩衝地帯を越えてダマスカス近郊まで攻め込んでいるという情報もあります。

「エルサレム=船越翔、ワシントン=淵上隆悠】イスラエル紙タイムズ・オブ・イスラエルは10日、複数の関係者の話として、イスラエル軍がシリアとの国境にあるゴラン高原の緩衝地帯を越え、首都ダマスカスの南西約25キロ・メートルの都市カタナまで進軍したと報じた。イスラエル軍は否定しているものの、シリアのアサド政権崩壊による混乱に乗じてシリア国内への侵攻を強めている可能性がある」
(読売12月10日)
シリアでアサド政権崩壊、イスラエル軍が首都近郊まで進軍との報道…混乱に乗じて侵攻の可能性 : 読売新聞

また、米中央軍も、この混乱に乗じてISが勢力を拡大する事を懸念して、シリア国内のISの拠点に空爆を行っています。
いずれにせよ、当分の間、混乱が拡大することでしょう。

 

 

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コメント

なんというか、イスラエルの強靭さが際立ちますけど、ネタニヤフも実効支配してたゴラン高原確保までで止めて置けよという話。マジで陸上進撃しているようです。
ネタニヤフとしてはここで戦闘止めれば政権崩壊必至なので何としても戦い続けるんでしょうけど。。

ロシア艦艇はとりあえず沖止めしてるようですね。とは言っても乗員はやる事無くて暇を持て余しつつニュース見てることでしょう。

あとはトランプさんがどう出るのかで年明けに世界中が揺らぐというのを待つばかり。

残ったロシア兵なんて皆殺しにすれば良いのに…と思いつつ、正に「殺す価値もない」くらい無力化されてるのでしょうね。コイツらも、そのうちコソコソロシアに逃げ帰るのかな。

APによると、テロリズムを放棄し、化学兵器の在庫を破壊し、マイノリティと女性の人権を保護するシリア新政権は認め支持することになるとバイデン政権は述べた、という。
https://apnews.com/article/syria-united-states-assad-b02790878868ddb3d2f5bc887b66fd5e
ブリンケン国務長官は声明の中で、米国はシリアのスムーズな政権移行を確保する上で協力することになるシリアのグループがどれであるかは明らかにしていないが、国務省がHTSをテロ組織に指定したままであるものの、主要なシリア反政府組織との対話を除外していない、という。

この記事の最終パラグラフにあるように、米国にとって、シリア反政府組織の穏健性維持と、シリア国内で「独自の」軍事作戦をやるイスラエルへの支援継続は、アサド後のシリア支援をどう的確に担保するかのポイントになるのでしょう。
そして反政府組織の穏健性維持については、現状主となっているHTSがSNA他と共に折り合い調和が取れるのか、も。

アサド政権が自国民に対して化学兵器を使った殺戮を行った2013年から、安倍晋三元首相が「アサド政権は退陣し、シリア国民の政府が樹立されるべき」と述べてきたことがSNS上でリビューされている中、他国の報道や人々の反応もウォッチしていましたが。
反政府組織は過激派!アルカイダ!だからアサド政権を擁護!な人に解説させるテレビとか、「ロシアはアサドにこれ以上付き合う必要は無いと判断しただけ」などという人にコメントさせる新聞とか、パレスチナ絶対支持!イスラエルが嫌い!よってイスラエルと対立するアサド政権を擁護する!という政党とその政治家、「ロシアは友人を大切にする、信義を守る姿勢を世界に示した」とか書く政治家、そういうのが湧いているのは我が国くらい、出羽守的な物言いは本当に嫌なのですが。
いやそれよりも、沢山殺した者、国際法に裏付けられない・反する攻撃や支援をした者は、誰でもその事についての非難はされるべきでしょうよ、という感覚を共有するのはそんなに難しいことなのか、と考えます。

 HTSが掲げた宣言みたいなものを読みましたが、実にうまく書けていて逆に嘘くさくていけません。かつてアフガニスタンのタリバン政権発足時の焼き直しを見ているようで、日本が援助するのは当分様子見した方が良さそうです。
ISISと別れはしたし、戦闘までしたけれど、政権のリーダーの決め方や政府の意思決定の方法まで憲法にでも規定されない限り信用ならないような。けど、バイデン政権は前向きです。
トランプはロシアが後退局面なので、「米国が(支援や承認への関与を)急ぐ必要は全くない」といってますね。おそらくトランプが正しいでしょう。

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