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2024年12月23日 (月)

飯山さん、そりゃ間違っているよ

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飯山陽氏という論者はイスラムや中東では聞くべきものを持った人ですが(ただしイスラエル贔屓にバイアスしすぎ)、こと安全保障となるとまるでトンチンカンのようです。
飯山氏は読売の社説を批判しながらこう述べています。

「アメリカからすれば、日本というのは同盟国のひとつにすぎない。
日本の「保守」的な論者は、「アメリカにとって日本は極めて重要な同盟国なんだ!」と主張しがちですが、客観的に見ればとてもそうとは言い難い。それが証拠に、トランプは日本からの米軍撤退を仄めかしたことがあるし、大統領選挙中から今にいたるまで、外交について語る際に日本について言及することはほとんどない。
日本人は認めたくないかもしれませんが、日本はアメリカにとってもはや、とるにたりない存在になりつつある。少なくとも私はそう見ています。そしてそれはアメリカにとってだけではなく、世界中の多くの国にとっても同様です。
かつて急速に発展を遂げたアジアの雄として途上国の憧れの的であった日本は、もういない。
アメリカにとっても、冷戦の際、ロシアの東側の抑えとして重要な意味をもっていたその日本も、冷戦終結後にはその重要性を失った。
確かに今のアメリカにとって、中国は脅威でありライバルです。しかし中国はアメリカ本国からはるかに遠い。
日本が中国に近いからといって、アメリカが多大な戦略的資源を投入してまで日本を死守しなければならない必要不可欠性は、はっきりいってほとんどない。特にアメリカ第一を掲げるトランプ政権にとってはそうです」
(飯山陽note12月20日)

ウヘぇ~と言うほど全部間違っています。「中国は米国からはるかに遠い」って、あなたねぇ。
経済、軍事のみならずいかに中国が米国内のありとあらゆるところに手をのばしているのか、それを糾弾してきたのが他ならぬトランプでしょうに。

飯島氏は初歩的な地政学を学んでいないようで、一昔前のジャパン・パッシング論を蒸し返しています。
トランプが「日本撤退をほのめかした」と言っていますが、本当に在日米軍を撤退させると言い出したら、米軍は力づくでもそれを阻止しようとするでしょう。

日本の、というより日本列島の地政学的位置を確認しておきましょう。
地図を見れば一目瞭然です。 

Photo_3

 まぁよく見慣れた普通の地図ですが、これをヨイショとひっくり返すとこうなります。

Photo_2http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1510/kj00000275.htmlより転載)

 俗に「逆さ地図」と呼ばれていますが、正式には「環日本海・東アジア諸国図」といって、れっきとした国土地理院が作っているもので、ちゃんと市販しています。
一般の地図だと、なんとなく日本側からだけ見てしまいますが、中国から見ると日本列島はこう見えるというのを知るにはうってつけの一枚です。 
画面中央やや右の、朝鮮半島と山東半島に囲まれた大きな内海が渤海です。 
ここにはなにがあるでしょうか。
はい、日露戦争で有名な旅順港です。ここは有数の良港なので、ロシアが軍港を作り、日露戦争の激戦地になったので地名くらい聞いたことがおありでしょう。 

当然のこととして中国海軍は、ここに中国北海艦隊の軍港を置きました。司令部は海を隔てた青島です。
おそらくこの海域が中国にとって最も重要な軍事ゾーンです。

Photo_4
旅順軍港は遼寧省にありますが、これもどこか聞いたなという方は鋭い。中国の初の空母の「遼寧」の名はここから取られているのです。
なぜ、最初の空母に遼寧とつけたかは説明しなくてもわかりますね。 

ロシアが不凍港を求めて19世紀の南下政策をとって世界をグレートゲームに巻き込んだのと同様に、中国にすれば奥まった場所にある深い港、が垂涎でした。
というのは、大陸に面した海は大陸棚に囲まれていて浅い港ばかりだからです。
中国は南部がズっと海に面しているだろうって。 
残念。この沿岸部は、一部を除き浅い大陸棚が続いているために軍港に適していないのです。 
しかも地形的になにも遮るものがなく、むき出しで東シナ海に面している守りにくい港はばかりです。

次に、この旅順港すら目の前にわが日本列島が封をしているように立ちふさがっているのが分かりますか。 
日本列島は、まるでそのためにあつらえたかのように、ロシアの太平洋の出口を塞ぎ、本州全体で沿海州に面した日本海を内海化してしまい、さらに南に下れば、九州から奄美諸島、沖縄、八重山と南西諸島が連なって、中国の前にのびのびと連なっています。
さぞかし目障りなこととお察しします。
そして、沖縄から先はさらに台湾につながり、台湾からはバシー海峡を挟んでフィリピンへと続き、その端はベトナムに連結しています。 
こうして見ると、中国にとって自由に動ける海はごく限られているのが分かります。 

となると中国からすれば、広い海へ出て行こうとしても、先に挙げた日本列島の島々の間を縫って行かざるをえなくなります。 
実際に、こんな感じです。 

20241223-075717
ch_d-act_a_2023.pdf

上図は近年の中国海軍の動向を見たものです。 
西に東に四方八方に、中国海軍が近隣諸国を脅迫し威嚇を加えながら、ヤクザよろしく膨張している様子がお分かりになるだろうと思います。 
しかし、太平洋方向に出ようとすると、どうしても沖縄諸島の間を縫って通過していかねばなりません。 

20241223-080002
ch_d-act_a_2023.pdf

こういう狭い地点のことをチョークポイントと呼びます。チョークとはプロレスの反則技でもありますが、締めつけて窒息させることもできる急所のことです。 

世界的には、海上交通の多い狭隘な海峡のような場所のことで、有名な地点としては、マラッカ海峡、ホルムズ海峡、スエズ運河、パナマ運河、マゼラン海峡、ジブラルタル海峡、ダーダネルス海峡などがあります。
わが国は、幸か不幸か、地理上たくさんのチョークポイントを持っている国です。
しかも相手国が、中露二ヶ国ときています。
トルコやギリシャは黒海の入り口を塞いでいてロシアにとって障壁となるために、NATO諸国で重要な位置を与えられていました。

同じような働きをアジア地域でしていたのが、わが日本です。 

 

Photo_6海防ジャーナル

日本のチョークポイントは北から宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡があり、これらの3地点だけで、太平洋に出たいロシア艦隊にとって、ヒジョーにイヤな急所になります。 
さらに大隅海峡、宮古海峡というチョークポイントは、中国艦隊にとって、不愉快極まりない地点になっています。 

中国からすれば、そもそもそこにあるだけで目障りな上に、日本は経済的にも巨大で、最先端のハイテク兵器を国産して、兵員数や武器の数は少ないながらも高度な訓練が行き届いた自衛隊が存在します。 
何がなんでも海洋膨張したい中国にとって、日本ほどうっとおしく邪魔な存在はないでしょう。 

長くなりそうなのでここで止めますが、こんな日本列島を米国が「取るに足らない存在だ」と認識するはずがありません。

 

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