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2024年12月12日 (木)

かくしてイスラエルは中東最強国家となった

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イスラエル空軍は第一波で、シリア各地に点在する化学兵器関連施設を爆撃しました。
さらにアル・スワヤダ、ハルハラーといった空軍基地を爆撃し、旧シリア空軍が保有していたMig-29戦闘機が全滅しました。
アルバイダとラタキアの港には旧アサド海軍が15隻停泊していましたが、これもミサイル攻撃を受けて全滅しています。
これでほぼシリアの空海軍は全滅したことになります。
また内陸にまで陸上戦力が侵攻し、ダマスカスに接近しているという報道もありますが、こちらは未確認です。
イスラエル軍はこの報道を虚偽であり、緩衝地帯内にいるとコメントしています。
シリアの軍事目標250カ所以上を攻撃...「50年ぶり」に緩衝地帯に入り、一線を越えたイスラエル軍の言い分|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

「SOHR(NGO「シリア人権監視団 )によると、過去2日間でイスラエルによる空爆が数百回あった。これには、ダマスカスでイランの科学者がロケット開発を進めていたとされる施設も含まれている。
イスラエルの攻撃は、国連の化学兵器監視機関がシリア当局に対し、疑わしい化学兵器の備蓄が安全であることを確認するよう警告している中で行われている」
(BBC12月10日)
イスラエルがシリア各地で空爆との報道、化学兵器の研究施設も対象か - BBCニュース

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 BBCニュース

このような攻撃は、昨日今日の偵察でどうにかなるものではなく、長年の仇敵だったシリアの化学兵器貯蔵所とその製造施設、空軍基地、レバノンとの検問所などにまで攻撃の手を伸ばしています。
このうち化学兵器関連施設について、アサド政権は現代において実際に化学兵器を自国民に使ったことが明らかになっている唯一の国です。

「シリアは2013年にOPCW(化学兵器禁止機関の化学兵器禁止条約(CWC)に署名した。これは、ダマスカスの郊外で神経ガス「サリン」を使用した化学兵器攻撃が行われ、1400人以上が死亡した1カ月後だった。
犠牲者が苦しみながら痙攣(けいれん)する恐ろしい様子は、世界を震撼させた。西側諸国は、化学兵器攻撃を実施したのは政府のみだった可能性があると述べたが、アサド氏は反対派を非難した。
OPCWと国連は、シリア政府が申告した1300トンの化学物質をすべて破壊したが、国内での化学兵器攻撃は続いた。
BBCの分析によると、2014年から2018年の間に、シリア内戦で少なくとも106回の化学兵器が使用されたことが確認されている」
(BBC前掲)

一方、シリアとの緩衝地帯に駐留しているUNDOF(国連兵力引き離し隊)となんらかの事前の協議をしたようで、摩擦を起こさずに脇をすり抜けるようにしてイスラエルイスラエル軍が侵攻したようです。

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BBC

シリア緩衝地帯は、上図の点線で囲まれた灰色の地帯です。
この緩衝地帯は、1973年の第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)後、1974年に締結された合意により,ゴラン高原のイスラエルとシリアの国境を挟む形で制定された地域です。
なお、ここには自衛隊もUNDOFに1996年から最大3人派遣していましたが、現地の治安悪化が著しいと判断して2013年にには撤退させています。
こういう危険な場所にはもっとも遅く兵を出し、退くときは一番というのが、わが国のPKOです。

それはさておき、このゴラン高原はイスラエルの北に位置し、シリアとの国境地帯ですが、イスラエル領とダマスカスを一望できる戦略的要衝です。
中東戦争では、シリアはここに大砲をすえてイスラエルを砲撃し続けていたように、ここをシリアに奪われるとイスラエル北部はがら空きになってしまいました。
またゴラン高原はイスラエルの水源地帯でもあり、シリアとの戦略上非常に重要な地域であります。不毛地帯とされていましたが、一部にイスラエルの開拓者が入植してワイナリーなどを作っているようです。

この石ころだらけのゴラン高原に立ってネタニヤフはこう述べています。
ほぼ全文を引用しておきます。
めったに日本のメディアではイスラエルの立場や考え方は紹介されないので、ひたすら悪玉扱いなのでいい機会です。

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「これは、イスラエルが、アサド政権の主な支持基盤であったヒズボラとイランに打撃を与えた結果であり、先制的な独裁政治に不満を持つ人々の連鎖反応の突破口になった。
しかし、これは同時に、私たちは、起こりうる全てに事に対応しなければならないということでもある。その一つは、1974年に成立し、50年続いてきた、イスラエルとシリアの合意が、昨夜、崩壊したという点である。
シリア軍は、駐屯地から離脱した。そのため、その場所に入って、過激な組織が入ってこないようにするよう指示した。イスラエルの国境線のすぐ外側だからである。これは、よい代替策が出てくるまでの一時的な方策である。私たちは国境の向こうにいる、すべてのシリアの人々、ドルーズ人、クルド人、クリスチャン、そして、平和に生きたいと願うイスラム教徒にも、手を差し伸べるつもりだ。
今状況を見ている。隣人として、平和な関係が築けるような政権が、シリアに出てくることを願っている。しかし、そうならないなら、イスラエルの国とその国境を守るためには、あらゆる事をしていくことになる」
イスラエル軍と米軍がシリア各地の危険地点を空爆:IDFゴラン高原シリアとの緩衝地帯制圧 2024.12.9 – オリーブ山通信

[要約]
①アサド政権が崩壊したのは、イスラエルがイランとヒズボラに打撃を与えたからである。
②シリア政府が崩壊したために、イスラエルとシリアとの間の合意は崩壊した。
③現在シリア軍基地は空白であり、その場所に過激な組織が入ってこられないように予防的な攻撃をしている。
④新たにできる新政府と友好的に共存したいが、不可能な場合には国境を守る。

なんというか、かんというかまぁ勝手な言い分ですね。
化学兵器関連施設を爆撃したまでは許容できますが、空海軍基地を全滅するまで叩き、さらにゴラン高原まで占拠したとなるといくらなんでもやりすぎです。
シリアとは無条約状態になったとネタニヤフは言いますが、シリア新政府ができるまで待って、新たな条約を結びなおすのが筋です。
そんなわずかな期間すら待てないで係争地にセメンだのですか。常識を疑う。

イスラエルがシリアと戦争関係にあったならまだしも、シリアとはなんの交戦もなかったのですから「侵略」と非難されても致し方ありません。
こんな混乱に乗じて火事場泥棒よろしく既成事実を作るようなやり方では、いっそう国際社会はイスラエルを異質な国として認識するでしょう。
ネタニヤフは「緩衝地帯におけるIDFの存在は適切な取り決めが見つかるまでの一時的な防衛的措置」であると述べていますが、シリア新政権がイスラム原理主義的色彩が強かった場合、ゴラン高原を占領し続け、さらに空爆を続行するはずです。

かくして、イスラエルは10月7日から始まったガザ戦争でガザ地区をほぼ全域を占領し、ハマスを壊滅に追い込み、返す刀でハマスに共闘するヒズボラをレバノンに侵攻して壊滅状態に追い込み、イランの勢力を駆逐しました。
そして今回はシリアとの緩衝地帯を占領しました。
これでイスラエルの戦闘の前線は4正面となり、中東で最も恐怖をもって呼ばれる勢力となりました。

なお、当然のことながら周辺国はこれを非難しています。

「シリア国内の混乱に乗じたゴラン高原の制圧、軍事拠点の空爆にトルコ、エジプト、サウジアラビアといった周辺国は非難の声をあげており、ゴラン高原の制圧は停戦協定違反と国連も避難している」
(ミリレポ12月11日)
イスラエルは抵抗できないシリアの海軍と空軍を一方的に攻撃、無力化する│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア

トルコはこう言っています。

「トルコは、イスラエルが緩衝地帯に入ったことを非難している。トルコ外務省は、「シリア国民が何年も望んできた平和と安定が実現するかもしれないという大事な時期」に、イスラエルが「占領気質」を見せつけていると批判した」
(BBC前掲)

シリア領内のクルド勢力を一掃したいエルドアンとしては、内心ほくそ笑んでいることでしょう。
なお権力移譲中のシリア政府はなんの反応も見せていません。
丸裸にされたのですから、言いようがないのかもしれませんが。

 

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