アサドの逃げっぷり
独裁者アサドの亡命直前の有り様が伝わってきました。
やはり政府内部にも知らせずに、会議ではロシアが支援してくれると伝えましたが、自分はさっさと逃げる準備をしていたようです。
さすがだね。
独裁者はひとり独裁。だれも信じない。家族すら信じない。したがって逃げる時もオノレだけで逃げる。なぜなら、自分は権力であり、国家そのものだからだ、ということのようです。やれやれ。
「先週の土曜日、モスクワに向けて出発するわずか数時間前に、アサドは国防省で約30人の軍と治安部隊の責任者と会議を開き、ロシアの軍事支援がシリアに向かっていると伝えられ、地上部隊に忍耐強くなるよう促したと、会議に出席していた司令官が確認した。
会談後、アサドは大統領府のマネージャーに帰宅すると伝えたが、そうではなく、彼は空港に向かった。詳細は、彼の側近のアドバイザーによって明らかにされました。彼はまた、コミュニケーション・アドバイザーに電話して、彼のためにスピーチを書くために彼の家に来るように頼んだ。しかし、彼がそこに着いたとき、そこには誰もいませんでした」
アサドの最後の数時間/彼はどうやってみんなを裏切って逃げたか、彼は兄にさえ言わなかった
バッシャール・アル・アサドと彼の妻
SHKRUAR NGA REDAKSIA VOX
寝耳に水の反政府軍の進撃に驚愕したアサドは、初めはUAEに受け入れを求めましたが拒否され、結局ロシアから身の安全を保証され、フメイミンロシア空軍基地からモスクワへ亡命したようです。
もちろんアサドがロシアの支援が来るといったのはその場しのぎのデタラメで、既にロシアは支援はできないと伝えてあったようです。
アサドは軍の緊急招集すらせずに、彼の膨大な数の取り巻きたちを置き去りにしました。
「アサドは抵抗さえしなかった、最後の時でさえ。彼は軍隊を召集さえしなかった」と、地域シンクタンク、アラブ改革イニシアチブのナディーム・コーリー事務局長は語った。「彼は支持者たちを彼らの運命に直面させるように任せた」と彼は付け加えた。ロイターは、政治亡命が認められているモスクワにいるアサド大統領と連絡を取り、彼に対する疑惑を確認するか否定するかすることができなかった。
彼の動きを知る人々が、彼の支配の最後の数日と数時間について明らかにしたことは、彼の仲間たち(彼の側近から地域の外交官やイラン高官まで)の秘密と欺瞞を解き明かす前に、彼の24年間の支配を延長するために外部の助けを求めている指導者の姿を描いている」
(SHKRUAR NGA REDAKSIA VOX前掲)
アサドは兄弟すら見捨てました。
共和国防衛隊の指揮官だった弟マーヘル・アサドは2018年の内戦に際して化学兵器を用いた虐殺を指導した張本人ですが、彼も逃げ損ないましたが、なんとかヘリでイラクに逃れて今はロシアにいるようです。
母方のいとこ2人の運命は悲惨で、陸路レバノンへ脱出を試みたものの、反政府軍の検問に引っ掛かり殺傷したようです。
ロシアがアサドの亡命を「人道的理由」で受け入れたのは、混沌としたシリア情勢がまた内乱にでも発展すれば、アサドを亡命政府として使えるカードとなるからです。
ロシアは、フメイミム空軍基地に大型輸送機2機を派遣して、盛んに物資や人員の撤去を進めていましたが、基地自体を放棄するつもりはないようです。
中東での唯一の同盟であるシリアを支えるべく、ロシアは10年間にわたり、約6〜7千人を派遣し、そのコストだけで10兆円にのぼるとさえ言われています。
これら軍事資源の投資が無駄になります。
それでなくても、旧ソ連圏の親露国アルメニアを見捨て、中東ではシリアまでも見捨てたため、今後ロシアと同盟を組もうという国は激減することでしょう。
いざという時は、守ってくれないような国と同盟をむすんでも、西側から敵視されるだけですからね。
いまや世界を見渡しても、ロシアの友好国は腹になにを隠しているのかわからない中国と、ミサイルと核技術が目当ての北朝鮮だけです。
おっと、もうひとつイランがありましたが、いまやその手先のヒズボラは崩壊寸前です。
アサド政権が崩壊した理由のひとつは、シリア内戦の主力であったヒズボラが自分の尻に火がついて手を引いたことにあります。
ヒズボラはガザ戦争にハマス支援で介入したことが裏目に出て、イスラエル軍の猛爆で指導者はことごとく死亡しました。
とてもではないが、シリアに戦闘員を出せる余裕はなくなりました。
アサドはロシアとイランに助けられて政権を維持していたので、この2本のつっかえ棒がなくなると同時に崩壊したのです。
今後、イランはイラク、シリア、レバノンという地中海までのいわゆる「シーア派ベルト」、別名「抵抗の枢軸」を死守しようとするでしょう。
しかしアサドのシリアは既になく、レバノンのヒズボラは武器の補給路を断たれたために再生は厳しいといわれています。
イランがコッズ部隊を使って半世紀近く営々と浸透を図ってきた「抵抗の枢軸」は、イラクを除いて見るも無惨に砕け散ってしまったのです。
上写真のロシア輸送機特別便で逃げた人員はロイターによれば、ロシア大使館職員の一部とベラルーシ、北朝鮮の外交官だったそうです。
ところでこのフメイミム空軍基地は、中東全域のみならずアフリカへの中継の要衝として機能してきました。
ロシアのビジネスモデルは、このフメイミム空軍基地を拠点としています。
ロシア型ビジネスモデルとは、アフリカの独裁政権に大量の武器を売りつける代わりに、その国の鉱山利権を得るというモデルです。
これをやっていたのが、ブリゴジンが率いた民間軍事会社ワグネルでした。
彼らはこのダーティビジネスを政府にかわって代行してきました。
ワグネルの派兵先は、リビア、ニジェール、マリ、中央アフリカなどにおよび、同地域から欧米の影響力を排除し、資源利権を確立しました。
このワグネルの傭兵ビジネスのロシアとの中継基地がこのフメイミム基地だったのです。
一方地中海沿岸のタルトゥース海軍基地は、地中海全域をにらむ海軍の修理・補給拠点でした。
「2017年1月18日、ロシアとシリアは、ロシアがタルトゥースの海軍施設を49年間無料で拡張および使用し、基地の主権管轄権を享受することに合意した。条約はロシアがタルトゥースに核搭載船を含む11の艦艇を維持することを許可している。また、施設のロシアの人員と物資に対するシリアの管轄からの特権と完全な免責を規定している」
タルトゥース海軍補給処 - Wikipedia
ここには黒海艦隊の分遣隊が派遣されていましたが、現在は衛星画像によれば基地を出発し、一部は沖合に停泊していることが確認されています。
彼らはタルトゥース基地には戻れず、かといって元来の母港であるセバァストポリ港は度重なるウクライナ軍の攻撃で使用できず、いまやさまよえるロシアン・フリートとなっています。
今後新政府とどのような協定が結ばれるかわかりませんが、元のままということはありえないはずです。
ロイター
両基地ともロシア国旗を掲げたロシア軍が難く守りを固めているのが観測されていますが、このていどの守備隊ではたちまち制圧されることでしょう。
ロイター
一方、このふたつの基地に関して、新政府は方針が定まっていないようで、いきなり旧反政府軍を使って奪取する気はなく、基地近辺に配置されているだけのようです。
「ロシア側と接触しているシリアの軍・治安当局筋によると、ロシアは前線から軍を引き揚げ、一部の重装備やシリア軍幹部を撤退させている。ただ、2つの基地からの撤収はしておらず、現時点で撤収するつもりはないという。
あるシリア軍幹部は一部の装備やアサド政権軍の上級幹部がモスクワに送られているが、現時点の目標は現地の状況に応じて再編成し、再配置することだと述べた。
新暫定政権に近い反体制派幹部は、シリアにおけるロシア軍のプレゼンスや、アサド政権とロシアの過去の合意に関する問題は議論されていないと指摘。「それは今後話し合う問題で、シリア国民が最終的な判断を下すことになる」とし、ロシアが対話ルートを設けたと明かした。「われわれの部隊は現在、ラタキアのロシア軍基地の近くにいる」とも述べたが、詳細には踏み込まなかった。
ロシア関係筋はシリア新指導者らとの話し合いが行われているとし、駐留基地から撤退はしていないと述べた」
(SHKRUAR NGA REDAKSIA VOX前掲)
今回、プーチンは悪夢を見る思いでシリア情勢を眺めていたことでしょう。
反政府軍は攻勢開始後、瞬く間に首都・ダマスカスに迫り、政府軍の防衛線は戦わずして崩壊。
アサドは命からがらロシアに逃亡しました。
この開戦劈頭の奇襲で敵の心臓部を突くという戦術は、実はプーチンがウクライナ戦争におけるキーウ進撃でとった方法でした。
虎の子の空挺部隊とスペツナズを投入し、電撃的な勢いで首都を押さえればウクライナ軍は崩壊し、政府も降伏シ、ゼレンスキーは亡命するだろうという筋書きです。
しかしウクライナは耐えてしまい、皮肉にも自分が支援してきたシリアでは見事に実現したわけです。
このように、このシリアの政変で最大の打撃を食ったのは、ロシアとイランだったわけです。
いずれにせよ独裁政権の崩壊というのは、古今東西を問わず見苦しく悲惨なようです。
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東京も空挺団に襲われて
政府即降伏なんてシナリオもあり得ますね
閣僚の分散勤務とかも必要に感じます
日本政府
どうも戦時という認識がない
投稿: にゃんだふる | 2024年12月17日 (火) 12時49分
この逃げっぷりで亡命とか言っても、手駒もなく亡命政府樹立とは口が腐っても言えないでしょう。また、今日のフィナンシャルタイムの記事で、数年前からロシアへ2億五千万ドルの現金を運び出していたとか。
さんざん自国民を毒ガスで殺めておいて、売〇奴という称号が一番ふさわしい御仁でした。独裁者なら独裁者らしく、せめて自裁するとか考えりゃよさそうなもの。そういう都合の時だけ英国仕込みの民主主義的になり、「命が大事」に変わるんでしょ。
ところで、イスラエルがしたタルトゥースでのロシア軍残置弾薬庫破壊の映像みましたけど、ものすごい規模の大爆発でした。
ロシアのシリアでの痕跡は完全に消えます。新生シリア政権がどいうものかまだ分かりませんが、恐露の時代は全世界で終わるものと期待します。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年12月18日 (水) 00時34分