ユン大統領の弾劾が成立
ユン大統領の弾劾が成立しました。
与党はユン氏がなんらかの辞意を表明することで、名誉ある撤退を策していたようですが、大統領の前回の演説で吹き飛びました。
「韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案の2回目の採決が14日夕、国会であり、在籍議員300人の3分の2以上の賛成で可決された。尹大統領は職務停止となり、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領の職務を代行する。
ただし、これで尹氏が大統領府から完全に姿を消すわけではない。今後、憲法裁判所が最長180日かけて弾劾の妥当性を審理し、裁判官9人のうち6人以上が弾劾を支持した場合に限って、大統領は罷免となる。弾劾の支持が6人未満の場合、尹氏は大統領の職務に復帰する」
(BBC12月14日)
尹大統領の弾劾案を可決、韓国国会 職務停止で首相が代行 - BBCニュース
ユン氏は、「私は決して諦めない。私への叱責と激励と声援を抱きとめ、この国のために最後まで最善を尽くす」と言っていますが、これで決まりです。
以後このような流れになります。
BBC
これで憲法裁判所でも天地がひっくり返らない限りユン氏は職務停止に追い込まれて、罷免されるでしょう。
そして次に来るのは、今検察が進めている内乱罪適用です。
改めて憲法第77条を見てみましょう。
韓国憲法
第77条 ①大統領は戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要に応じ,又は公共の安寧秩序を維持する必要があるときには法律の定めるところにより戒厳を宣布することができる.
②戒厳は非常戒厳と警備戒厳とする.
③非常戒厳が宣布されたときには法律の定めるところにより令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置をすることができる.
④戒厳を宣布したときには大統領は遅滞なく国会に通告しなければならない.
⑤国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求したときには大統領はこれを解除しなければならない.
今回、ユン氏が出したのは「非常戒厳」と「警備戒厳」の2種類のうち前者の非常戒厳です。
たしかにユン氏が釈明したように大統領は、第1項どおり憲法で戒厳を宣布する権限はあります。
その限りでは合憲ですが、第4項の国会ヘの速やかな通告を怠り、戒厳軍を国会に入れて制圧しようとしたことは明らかな憲法違反です。
この第4項は、事前になにかしらの形で国会と協議して戒厳令を発令しろという意味です。
したがって、国会を閉鎖したのですからダメに決まっています。
実態は、ごく一部の軍と警察の幹部に諮っただけで、内閣にさえ形式的に通告しただけだったようで、与党もまったく蚊帳の外でした。
これで戒厳令をやろうというのがいい度胸です。
議員を抑えるなら抑えるで、拘束すればいいものを(もちろん違法ですが)、それをしないものだから柵を乗り越えて国会に入った野党議員たちが多数決で第5項を根拠に無効を宣言してしまいました。
これでは憲法裁判所は、これらの違憲行為を理由に罷免するでしょう。
まぁユン氏から見れば、第1項で大統領に戒厳令の権限を与えて起きながら、第5項で国会の過半数で無効とする権限を与えるのは矛盾しているではないかというのも分からないではありません。
今回のように大統領と国会が真正面から対立した場合、第1項は死文化するからです。
たぶんひとつの憲法条文に相互に矛盾することが書いてあるのは、憶測ですが、元来あったのは第3項まで第4と第5項は文民政権になってからつけ加えられたのではないかという気がします。
ただし、このような言い訳が効くのは、あくまでも第1項が「戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態において兵力により軍事上の必要に応じ,又は公共の安寧秩序を維持する必要があるとき」と条件づけているような場合のみです。
戒厳令布告したことによって、今、韓国社会は煮えくり返っていますが、それは布告してしまったからであって、結果であって原因ではありません。
ユン氏は「国家非常事態」を国会運営の停滞にまで拡大解釈してしまいました。
この国で保守が政権をとったのですから、従北派のいかなる抵抗があってもおかしくはありません。
そんなことすら覚悟しないで大統領になったのですか、この人は。
司馬遼太郎は『酔って候』という山内容堂を描いた短編のなかでこう書いています。
「しかし革命は、白昼堂々の正論では成就しない。多少の非論理、飛躍、陰謀、虚喝の有毒成分を必要とする」
ユン氏は権力の側から戒厳令という名の「革命」をしようとして失敗しました。
革命は非論理の飛躍そのものですから、その失敗は死と決まっています。
与党退席に「何のため議員を」 野党絶叫、国会前に市民15万人(共同通信) - goo ニュース
ブリンケンがこんな能天気なことを言っています。
「アメリカのブリンケン国務長官は、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾(だんがい)訴追案が可決されたことについて「韓国は民主主義の強靭性を示した」と評価しました。
アメリカ ブリンケン国務長官 「最も重要なことは、韓国が民主主義の強靭性を示したことだ。憲法に定められたプロセスを平和的に進めている」
ブリンケン国務長官は14日、訪問先のヨルダンでこう述べたうえで「私たちは韓国国民を強く支持している」と強調しました。
ブリンケン長官はまた、アメリカと韓国の同盟関係によって「ここ数年で多くのことを成し遂げてきた」とも評価し、尹大統領の職務停止に伴って、大統領権限の代行を務める韓悳洙(ハン・ドクス)首相と「喜んで協力する用意がある」としています」
(アベマニュース12月14日)
米国務長官が韓国大統領の弾劾訴追案可決を評価「韓国は民主主義の強靭性示した」 | khb東日本放送
なにが「韓国の民主主義の強靱性」ですか。だから民主党系国務長官はイヤダ。
たぶんブリンケンは、トランプの議事堂占拠事件と重ねてイメージしているのでしょうが、まったく別物です。
韓国の自称民主主義はいかに未成熟なのか、法治ではなく人治主義の国なのかが改めて暴露されました。
なにかあるたびに保守は戒厳令を使い、左翼はろうそくデモをかける国のどこが民主主義なのです。
練達のコリアウォッチャーの鈴置高史氏はこのように述べています。
「鈴置:北朝鮮や中国と比べれば民主主義国家と言えるでしょうが、少なくとも日本や欧米のような民主主義国家ではありません。これらの国では「法治」の基盤の上に「言論の自由」や「公正な選挙」という民主主義の仕組みが働いている。
韓国は基盤が固まっていない。そこで何かあると、例えば左右対立が激化すると、民主主義の仕組みが簡単に揺らぐ。韓国人は「日本の民主主義の水準を超えた」と誇りますが、先進国の政治システムを上辺だけ真似したに過ぎません」
戒厳令が宣布されても「韓国すごい」「米国人や日本人より民度が高い」と誇る韓国人(3ページ目) | デイリー新潮
ちなみに、韓国では過去にも複数の大統領が弾劾されています。
「2016年には、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案が可決された。収賄、国家権力乱用、国家機密漏洩に関わったとされた。のちに憲法裁判所によって罷免された。
2004年にも、当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が弾劾され、2カ月間、職務停止となった。しかしその後、憲法裁判所の判断で大統領に復帰した」
(BBC前掲)
ノムヒョンは助かりましたが、パククネは憲法裁判所でも罷免されました。
どうもやたら罷免されるのは保守系大統領が多いようですが、まぁそういう国なのです。
これで100%、来年から共に民主党のイ·ジェミョンという超々極左が大統領となり、超々反日政権が誕生するはずです。
岸田さん、こういうカントリーリスクがある国なのですから、ユン氏に代わったからといっても韓国と間合いを詰めすぎましたね。
一朝で親日風の国から転じて超反日国家に変貌するのがこの国なのです。
それも正常な方法ではなく、方や戒厳令を、方や大規模デモの怒号で国が変わってしまうのです。
心しましょう、韓国とはこういう国なのです。
さぁ、今から覚悟しておきましょう。
大河のまひろの最後の台詞ではありませんが、確実に「嵐が来ます」。
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近年は、日本の国民の側に「そういう国」という認識と覚悟が形成されている気がします。尹大統領が就任した後の融和傾向を見ても浮かれることが無くて、「また政権末期になったら、あるいは次の政権に代わったら、ちゃぶ台ひっくり返すんでしょ?」という冷めた雰囲気でした。その点、政府よりも国民のほうが冷静だったような印象があります。
投稿: あいうえお | 2024年12月16日 (月) 10時57分
私に事実関係が詳らかにわかっているわけじゃありません。
ただ、弾劾可決後の伊大統領談話での自信満々さはなんだろう?と思うんですよね。報道ベースでみるところ「国会閉鎖」は主たる目的ではなくて、あくまで選挙管理委員会でした。
そこに30分間いて各種サーバなどの写真を撮ったりしていたわけですが、何らかの証拠を握った可能性もあるんじゃないか?とも思うのです。過去の韓国同社製投票機はキルギス、コンゴ、エルサルバドル、ボリビアなどで活用され、手集計と12倍の差異があったりして、無効選挙となった事例が複数あります。
また、憲法裁は定員9名ですが、今は6名。そのうち4名が保守派と目されていて、これが全員一致するのか?
いや、お隣の国でありながら加熱すぎる報道のせいで、本当のところもわからない気がするし、あいうえおさんが言う「そういう国」で起こる事。どうも、私には見当がつきません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年12月16日 (月) 22時34分