不思議の国の不思議な戒厳令騒ぎ
ユンさんの「ひとりクーデター」については、考えるだにユーウツ。
どうも与党の「国民の力」も訴追には微妙な態度のようです。
ヘンですね、たしか与党は党議として弾劾訴追には一致団結して反対していたと思ったのですが。なにがなにやら、あの国のことは。
「【ソウル=時吉達也】韓国与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は6日、「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の速やかな職務執行停止が必要だ」と述べ、弾劾訴追案に賛成する意向を示した。在籍国会議員の3分の2に当たる200人以上が賛成に回る要件を満たし、弾劾訴追案が可決する可能性が高まった」
(産経12月8日)
韓国与党代表が大統領の弾劾訴追案に賛成、可決の可能性高まる 「速やかな職務停止必要」 - 産経ニュース
これでは、自分の党の大統領の首を差し出しているようなもので、ならば初めから訴追賛成と言ってりゃいいのになにをジグザグしているのでしょうか。
たぶん弾劾が成立し、大統領の不逮捕特権が喪失して、そのまま内乱罪で逮捕、死刑判決(ただし執行はされず)という段取りとなるでしょう。戒厳令は権力の武装蜂起のようなものですから、失敗すれば死刑になるのはやむを得ません。
「警察庁の禹鍾壽(ウ・ジョンス)国家捜査本部長は、野党の告発を受けて尹氏に対する捜査に着手したと述べた。内乱罪の最高刑は死刑で、大統領の免責特権が及ばない」
(BBC12月6日)
尹大統領、「内乱」容疑で韓国警察が捜査着手 辞任求めるデモ続く | Start Magazine
この国の法制度のベースを作ったのは統治時代のウチの国です。
だから民法、刑事訴訟法などは日本のそれを下敷きにしています。
しかし日本の法体系と大きく異なるのは、統治制度が大統領制と議院内閣制の併用というキテレツなものなことです。
ヘンに思いませんか。
だって、議院内閣制ならウチの国のように、スッキリ最大の得票を得た党の党首が首班に任命されます。
しかし大統領選挙は別枠でしてそこから大統領という最高権力者を選ぶというのですから、おいおいドッチが上位権限を持つのかわからなくなる、と思いませんか。
日本や英国ならば「国民の力」代表のハン・ドンフンが自動的に首班指名されるのに、別枠で大統領選で選ばれて「国民の力」の支持を受けたユン・ソンニョルが大統領として強い権限を持つのですから、竹と木を繋ぐようなもの。
権限を巡ってとうぜんバッティングします。
日本ならば、ゲル首相とサナエ大統領が併存しているようなものです。
今回の戒厳令騒ぎでは、大統領とその与党が股裂き状態になってしまっています。
これが韓国の統治構造が、まったく体質の違うふたつのシステムを繋いだ二重権力を作ってしまったからです。
こんなキメラを作れば、大災害などの非常事態や有事、あるいは戒厳令を出す出さないという極限状態では混乱が起きないはずがありません。
せめて韓国に日本の内閣法制局のような法案が憲法や既存の法体系と矛盾していないかを判断する機関が、行政の介入を排する位置にいてくれたらまだましだったのでしょう。
しかし韓国はそんなシャレたもんがありません。
ないので、どうなったのかといえば、その時の政権が自分に都合のいい法律を作ってそのまま交付して行政化するもんですから、矛盾する既定が生じてしまいます。
では、これを憲法や法律に従って判断する司法が機能しているかといえば、これが自称「徴用工」事件で明らかになったように、そのときの裁判官と時の政府の好き放題できる人治主義と、国民感情が支配する情治主義の権化ときていますから処置なしです。
こういうグダグダなケイオスを、韓国では「民主主義」と称しているようです。
今回ならば戒厳令を布告する権限を与えられた大統領が発令しながら、議会の(しかも戒厳令下で出席した議員の)過半数の反対で無効になってしまっています。
「戒厳」とは、いわゆる非常事態宣言のことです。ちなみにわが国にはありません。
そういえば今回の一件で、立憲の女性議員がに日本に軍隊がなくてよかった、非常事態など憲法に入れさせないと鼻の穴を膨らませてきましたっけね。
こういうお約束はさておき、戦争や大規模災害時などの有事に憲法や法律の効力を一部停止して、行政と司法が軍隊に統制下に入る状態のことです。
「戒厳令」はそのための命令で、目的は非常事態をできる限り早く終わらせて、平時の状態に復旧することにあります。
韓国では憲法77条で戒厳を規定し、細部を戒厳法と戒厳施行令で定めています。
議会は憲法の既定を盾に取り、大統領は戒厳令法を楯にとるという具合です。
これでは戒厳令が戒厳令足り得ません。戒厳令はあくまでも民主主義の非常事態における一時的凍結だからで、数時間後に集まった議員多数決で無効になるくらいなら、初めから非常大権など大統領に与えなければよかったのです。
今回の戒厳令騒ぎはおかしなことがいくつもあります。
戒厳令で出動した軍が最初に行ったのが中央選管で、携帯を没収したそうです。
これはなんでも不正選挙の摘発だと朝鮮日報が伝えています。
「戒厳軍が最初に到着したのはソウル・汝矣島の国会ではなく、果川にある中央選挙管理委員会でした。選管の職員たちの携帯電話を押収し、選挙関連の資料を入手していたことが分かりました。金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部(省に相当)長官は、不正選挙疑惑を捜査するためだと述べたそうです」
(朝鮮日報12月5日)
「不正選挙疑惑を捜査」 戒厳軍は韓国国会より先に中央選管に到着、職員たちの携帯電話を押収していた(朝鮮日報日本語版) - Yahoo!ニュース
なんでも、これにより共に民主党の幹部を逮捕し、国会を正常化させようとしていたというのですが、それ以前に出席した議員の多数決で無効とされないように議員を拘束し、国会を完全に物理的に封鎖すべきでしたが、それをしないからこうなるのです。
だからユンさん、中途半端に戒厳令もてあそんじゃダメりんだよ。
ところでたちどころに深夜なのに4万とも言われる反対派の大群か湧いて出たのもなんだかなぁ、です。
韓国野党「戒厳令は違憲」 尹錫悦氏の弾劾案が国会で報告、6日にも採決へ - 産経ニュース
手に手にプラカードを持ち、集会場には巨大な横断幕まで現れて、戒厳令が出てたった数時間だというのにずいぶんと出来すぎた話です。
この大デモ隊のことを韓国の民主主義死せずみたいに日本のメディアは書いていますが、おいおい手回しが良すぎでしょうが。
まるで戒厳令がでることをあらかじめ知っていて準備していたみたいです。
こういうように今回の戒厳令騒ぎは腑に落ちないことばかりです。
« ロシア戦争経済の幻 | トップページ | 速報 弾劾決議案廃案 »
兵庫県知事選挙と同じく、ここは「見」です
真相は分かる日が来るのかな
投稿: ねこねこ | 2024年12月 7日 (土) 13時00分