左翼リベラルの世界的崩壊現象始まる
つまるところ、これは世界の流れなのだとおもいます。
トランプ第2次政権が成立し、10年という長期リベラル政権を続けてきたカナダのトルドー政権が崩壊しました。
ドイツでも社民党政権が崩壊し選挙を迎える中、隣国のオーストリアもファーライトといわれている自由党が政権につきそうな勢いです。
イタリアは既に右派政権のメローニが握っており、フランスの中道政権は崩壊一歩手前です。
つまり労働党の英国と石破氏を選んでしまったわが国を除き、G7各国は雪崩をうつように右傾化しているわけです。
「カナダのジャスティン・トルドー首相(53)が6日、与党・自由党の党首と首相の職を辞任すると表明した。9年間にわたって国を率いてきたが、退陣を求める声が与党内で大きくなっていた。
トルドー氏は記者会見で、「党がしっかりした全国的な競争手続きを通じて次の党首を決めたのち、党首として、首相として、辞任する」と表明した。
「この国は次の選挙で真の選択が必要だ。私が党内抗争を戦わざるを得ない事態になっているなら、それはつまり、私が最良の選択肢ではないということなのだろう。そのことが、はっきりした」と説明した。
トルドー氏は国内で不人気で、10月20日までに実施される連邦選挙を控えた自由党にとって足かせになっていた」
(BBC1月7日)
カナダのトルドー首相、辞任の意向表明 「党内抗争」理由に9年間の政権に幕 - BBCニュース
ジャスティン・トルドーは、ひとことで評するなら「真逆のトランプ」「カマラ・ハリスの男版」です。
絵に描いたようなリベラルで、2015年、カナダ史上2番目の若さとなる43歳で首相に就任するやいなや、矢継ぎ早に気候変動や人種や性的マイノリティーの権利保護、などといった政策を打ち出します。
最初の組閣では先住民や身体障害者などを起用し、閣僚ポストの男女同数を実現しました。
能力と実績で入閣させるのはかまいませんが、彼の場合、その民族的出自、性別で任命したようです。
いわゆる「多様性」を至高の価値とみたてたリベラルらしい組閣です。
大喜びで拍手するハフィントンポストはこう書いています。
「世界中で右傾化が進む中、10年ぶりに保守党からの政権交代となったカナダでは、中道左派政党である若き自由党党首ジャスティン・トルドー首相(43)によって変革が進められている。
総選挙後の勝利宣言演説のなかで「真の変化をもたらす」と約束した通り、11月4日に発表された新閣僚は、首相を除く30人が男女半数ずつ、年齢もバランス良く入閣。さらに、障害を持つケント・ヘ氏、先住民の血を引くジョディ・ウィルソン・レイブルド氏、アフガニスタンから難民としてカナダに移住したマリアム・モンセフ氏(30)など様々なバックグラウンドを持つ議員が入閣した」
(ハフィントンポスト2015年12月20日)
変化するカナダ、先住民族迫害を正式に認め調査開始へ | ハフポスト NEWS
2018年には大麻の所持や使用をG7で初めて国家として合法化し、30万人のウクライナ難民を受け入れると表明しました。
そして気候変動対策を最優先課題に掲げ、いち早く炭素税(カーボンプライシング)を導入しました。
これはEUの脱炭素のための「Fit for 55」と名付けられた一連の施策に先んじたものです。
EUは2030年までに排出レベルを1990年の水準から55%下げることを目的としています。
●EUの「Fit for 55」の主要な提案
・自動車の排出量制限を強化する。これにより、2035年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売は実質的に禁止される見込み
・航空燃料に課税するとともに、低炭素の代替燃料を使用した場合には10年間の免税措置を実施
・EU域外からの鉄鋼やコンクリートなどの輸入について、いわゆる「国境炭素税」の導入
・EU域内の再生可能エネルギーの拡大目標の強化
・エネルギー効率の悪い建物の改修を迅速化するよう、加盟各国に要求
EU、気候変動対策計画を発表 2050年までにカーボンニュートラル - BBCニュース
これを全部やったら間違いなく大不況になります。
とうぜんのこととして、産業界は大反発しました。
「鉄鋼やセメント、アルミ、肥料や電気といった産業に対する投資見通しを不安定化する大きなリスクがある」と批判した。
また、国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ会長は、「航空業界はグローバル産業として脱炭素化に努めてきた。こうした変化の動機付けのために課税のような罰則的な施策は必要ない」と述べた」
(BBC2021年7月18日)
では、実際にこの脱炭素で突っ走ったドイツはどうなったでしょうか。
いまや製造業の背骨であった自動車産業は見るも無惨に崩壊しつつあります。
ドイツは、今、かつてない解雇の波が訪れています。
「予定されているのが、フォルクスワーゲンの2万3000人、アウディの4500人、テスラの3000人、フォードの2900人、そして、自動車部品のグローバル企業であるZFが1万2000人、同じく世界的な自動車部品メーカーのコンティネンタルが1万3000人、ボッシュが3760人。
また、世界的製鉄会社テュッセンクルップが1万1000人、ソフトウェアの世界的企業SAPが5300人。さらに、ドイツ銀行が3500人、ドイツ鉄道が3万人で、後者は主に貨物部門だ。不況で生産が落ち、運ぶものが減った」
日本も他人事ではいられない…自動車産業が傾いたドイツで「いま起きている」悲惨な現実(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
これはほんの序の口で、自動車産業は広大なすそ野を持つために次々に解雇の波が波及していきます。
ドイツ自動車産業のフラッグシップだったフォルクスワーゲンが揺れると、その余波は系列の自動車企業に及び、さらに同業他社、そしてサプサイチェーンを遡って部品メーカー、電子産業、鉄鋼産業にまで波及していきました。
原因はいうまでもなく、いままでシュナイダーが敷き、メルケルが教条にまで仕立て上げた脱炭素政策と中国市場に対する過剰な依存体質です。これはドイツに限ったことではなく、トヨタ、ホンダ、日産も、中国市場では販売不振を食っています。
日産は9千人の人員削減、ホンダは2024年第2四半期の営業利益が15%減少しました。
この2社の経営統合は弱体連合だったのです。
原因はひとつです。中国EV企業の大躍進に食われたのです。
いまやBYDは世界有数の自動車企業に成長しています。
「BYDは11月の販売台数が前月に続き50万台を突破し、世界のNEVの単月販売記録を塗り替えた。同社は2024年の年間販売台数を23年の20%増とする計画を明らかにしていた。23年の販売台数302万台をもとに計算すると、24年の年間販売目標は362万4000台以上となるが、1~11月の累計販売台数は375万7300台で、早々に年間目標を達成した」
2024年中国自動車通信簿:余裕のBYD、シャオミ。苦しいXpeng、Zeekr(36Kr Japan) - Yahoo!ニュース
それは中国政府による中国製EVに対する補助金政策があるからです。
中国のEV補助政策は、購入時の補助金、充電設備設置への補助金、バッテリーや半導体など電気自動車開発への補助金と多種多用であり、中国製EV普及に竹馬をはかせ、外国製EVを駆逐しています。
電気自動車販売数世界1位のBYDとは?会社概要や経営状況を解説 -海外事業のプロフェショナル集団~プルーヴ株式会社
しかしこれだけ作りまくった結果、中国のEV市場は中国製EVで満杯となり、鉄鋼や太陽光パネルなどと同じように外国へのダンピング輸出をかけています。
「中国では自動車の生産過剰状態が続く一方、中国政府が巨額の補助金を通じて安い価格で自動車を海外にダンピング輸出をしている、との批判を欧米諸国は急速に強めている。
上海のコンサルティング会社オートモビリティと中国乗用車協会(CPCA)によると、中国には現在、年間4,000万台を生産する能力があるが、国内での販売台数はその半分の2,200万台前後にとどまっているという。そして、中国の自動車輸出はわずか3年の間に5倍近くに増え、2023年には約500万台に達している」
(木内登英2024年05月08日)
中国EVの過剰生産問題とテスラの中国戦略 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)
このような仁義なき戦いをする中国企業の前に、中国市場への参入を阻まれたドイツはもはや米国市場を頼みとするしかなかったのですが、そこに大魔神のように現れたのがトランプでした。
トランプが外国車に対して高関税を強いるのは明々白々です。泣きっ面に蜂。
高関税を逃れるには米国内に工場を持ってメイドインUSAにするしかないのですが、フォルスクワーゲンも米国に工場はあるにはあってもそれはEV工場なのです、残念。
トランプはEVへの支援を完全に打ち切ると公約しています。
トランプは、「不都合な真実」のアル・ゴアから続くグリーンニューディール政策を完全否定しています。
具体的には、いままで再エネやEVに対して与えられていた補助金を廃止するとしています。
そもそも、民主党はこのグリーンニューディール利権から政治資金をえており、そのおこぼれがファーレフトの環境活動家に流れている構図です。
そしてこの活動家たちに資金を提供していたのが、去年破綻したSVB(シリコンバレー銀行)でした。
SVBはグリーン関連の債券の約6割を保有しており、融資についても1500件以上の大型グリーン融資をしていました。
そしてSVBはBLMの最大のスポンサーであり、活動資金の9割以上、100億円近い資金を提供していたことがわかっています。
このようなからみあったグリーン利権をトンプは徹底的に潰す気でいます。
金融界もトランプの意向を受けて、一斉にグリーン関連から資金を引き上げました。
「米銀大手JPモルガン・チェースは7日、銀行の二酸化炭素排出量削減を促す「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」を脱退すると発表した。ゴールドマン・サックス・グループやシティグループに続く動きで、ウォール街の大手銀の中では最後となる。
シティグループとバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン、ウェルズ・ファーゴが昨年12月に相次いで脱退し、1月に入ってからもモルガン・スタンレーが脱退を表明した。脱退は米銀に集中しており、トランプ次期政権による政治的圧力の高まりを懸念した動きとみられる」
(ブルームバーク2025年1月8日)
JPモルガン、銀行の気候変動対策グループ脱退-米大手行では最後 - Bloomberg
このグリーン利権からの資金の巻き戻しの流れに世界の金融業界も追随します。
もはやドイツだけの特殊事情ではないのです。
経済とエネルギー政策の失敗が産業全体を揺らがせ、さらに社会全体を変えていきます。
いままで20年間以上に渡って、我が世の春を歌っていたリベラルの一斉退場が始まったのです。
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