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2025年1月18日 (土)

ガザ戦争停戦、しかしハマスは生き残る

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ハマスとイスラエルが停戦に合意したと報じられています。
CNNによればこういった内容です。

「カタールのムハンマド首相兼外相によると、戦闘停止の合意は19日に発効する。
ホワイトハウスで戦闘停止と人質解放の合意を発表したバイデン米大統領は、戦闘停止の次の第2段階で恒久停戦を話し合う見通しを示した。バイデン氏によると、今後6週間で恒久停戦の条件を詰めるが、期間を過ぎても交渉が続く間は戦闘は停止される。
合意に基づきハマスなどの武装グループは2023年10月7日にイスラエルに奇襲をかけた際に連れ去った人質のうち33人を解放する見通し。バイデン氏によると、米国人の人質も解放されるという。
引き換えに、イスラエルは国内に収監しているパレスチナ人のうち数百人を解放する。バイデン氏は、避難しているパレスチナの人々は住んでいた地区に戻ることができ、ガザへの人道支援物資の搬入も始まると説明した。
また、第3段階で殺害された人質の遺体が家族に返還される可能性があり、大規模なガザの再建計画も始まるという」
( CNN2025年1月16日)
イスラエルとハマス、ガザ戦闘停止で合意 19日発効 - CNN.co.jp

アルジャジーラはもう少し詳しく述べています。要約すれば

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イスラエルとハマスがガザ停戦で合意、19日から段階的に実施 カタールとアメリカが発表 - BBCニュース

①イスラエル軍は停戦の第一段階としてガザ境界の700メートル地点まで撤退する。
②イスラエルは終身刑250人を含む約2000人のパレスチナ人受刑者を釈放する。
③ハマスは33人のイスラエル人捕虜を解放する。
④イスラエルはガザ地区内で負傷した人々が治療を受けるために移動することを許可する。
⑤イスラエルは停戦開始から7日後にガザ南部とエジプトを結ぶラファ国境検問所を開放する。
⑥イスラエル軍はガザとエジプトの境界フィラデルフィ回廊から撤退を開始し、後の段階で完全に撤退する。
⑦カタールとエジプトは合意の履行を確実にするために努力する。
⑧停戦は1月19日(日)に発効する。
⑨ハマス側はパレスチナ人捕虜と引き換えに、この合意の第一段階で33人のイスラエル人捕虜を解放することに合意した。
⑩停戦の第一段階は42日間続く。

よくイスラエルがこんな合意を受けたなと思いました。
この合意の肝は人質の解放です。
人質を解放するというのが、そもそもこのガザ戦争の目的だったはずです。
それがハマス殲滅にとつながり、ガザ地区全体に戦争は拡大し、さらにはハマスと連携してイスラエルを攻撃したヒズボラを追ってシリアまで攻め込みました。

初めの目的だった人質解放は遠のくばかりで、ハマスはこれぞ自分の保険とばかりに握りしめてきました。
そして今に至りますが、ハマスは現在の人質の名簿を伏せたままです。
今回も合意したといいながら、いまだ解放する人質の名簿をイスラエルに提出しておらず、停戦から7日後に提出するとしています。
一方、イスラエルはパレスチナの囚人釈放を、終身刑でイスラエルの刑務所にいる290人、その他の囚人1687人を釈放します。

人質解放と、イスラエルのパレスチナ人囚人の交換は、3段階で行われます。
合意内容をよく読んでほしいのですが、第一段階として「イスラエル軍はガザ境界の700メートル地点まで撤退する」とあります。
この段階でイスラエル軍は、ガザを南北に分断するネツァリム回廊から撤退しており、ハマスが残存している南部ガザに対する軍事的圧力は相当に弱まっています。

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NetzarimCorridor - ネツァリム回廊 - Wikipedia

ハマスが第2段階協議において、かれらがもっとも取り返したいテロリスト指導部のマルワン・バルグーティやハッサン・サラメなどの解放要求を出せば、イスラエルは到底呑めませんから、ここで交渉は中断するはずです。
またハマスが最初に出してくる人質は米国人2名などの外国人と、これ以上ハマスが拘束していると死んでしまうような重病人ばかりでしょう。
国際世論はこれで相当になだめられ、人道的ハマスと称賛するでしょうが(実際にうちの国のメディアならしかねませんが)、まだ大部分の人質はハマスの拘束下にあります。

では、残りの人質をどうやって解放させるかですが、ハマスにとって人質はくりかえしますが「保険」です。
だから全員解放したとしても、自身は「戦後」も残存し得るという保証が必要です。

ガザ地区の「戦後」統治の枠組みが、今回の合意はその部分が欠落しています。
日本のメディアや中東専門家はイスラエルをジェノサイド、殺人嗜好国家とすら呼んでいますから、イスラエルさえ撤退すれば万事解決のようです。
しかしほんとうにそうでしょうか?

方やイスラエルは、ブリンケンが口にしていた「ハマスをガザ復興に関与させない」という保証を求めるでしょう。
バイデンはもはや他人事ですから、「ガザの戦後統治」のありかたこそほんとうの地雷です。
方やハマスは生き残りを保証しろと言い、イスラエルはハマスなきガザを主張する、という問題は解決されたのでしょうか。

たぶんバイデンは、ハマスの保証としていままでどおりUNRWAやパレスチナ自治政府の看板を掲げることを許容したと思います。
国際世論もそれを「ガザを救え」という美名で認めてしまっているからです。
その結果、ハマスは根強くガザにしがみつき、次の機会を狙い続けるはずです。

となると、「2023年10月7日」が再現される温床は残り続けるわけです。
このままだと数年でハマスは戦闘部隊を再建します。
今は壊滅寸前ですが、釈放された囚人たちや、ガザ戦争で恨みつらみを持つ若者を集めて元の勢力をとり戻すことは容易です。
その時にガザ地区にイスラエル軍がいれば、そうそう簡単に復活は難しいでしょうが、そこが停戦会議でどう話されたのか気になります。

しかしこんなことを読めないイスラエルではありませんから、トランプ登場の前にいちおう「停戦」のかっこうだけつけて、その後はハマスの出方を慎重に見極めることでしょう。
イスラエル国内はこの停戦を巡って完全にふたつに分裂したようですが、それも当然です。

 

 

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