USAIDで騒ぎなさんな
USAIDが炎上しています。
一呼吸置いて、深呼吸でもしてくださいな。
SNSを見ていると、まるでUSAIDは謀略機関で、果てはDS(影の政府)の鬼の 首を獲ったみたいなことを言うものまでいます。
ま、DSなんて論証不能なものを言い出した段階で眉唾ですが。
ところでUSAIDと関わった数少ない日本の政治家である国民民主の玉木氏はこんなXをしています。
「私はUSAIDと実際に仕事をしたことのある数少ない国会議員の一人だと思っていますが、それゆえ、USAIDとの関係について、謂れのない誹謗中傷を受けて当惑しています。やめていただきたいと思いますし、批判している皆さんも、正直、一呼吸置いた方がいいと思います。
そもそも、USAID(ユーエスエイアイディー)は米国の海外援助政策の執行機関で、あえて日本で例えると、JICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)を足したような組織のイメージでしょうか。トランプ政権ではUSAIDを廃止して国務省に統合しようとしているようですが、JICAとJBICを廃止して外務省の国際協力局に統合するようなものです。仕事が全てなくなるわけではありません。
米国の行政組織の見直しに日本が口を出すべきではありませんし、無駄な予算があるなら止めればいいと思います。ただ、私自身の名誉のためにも言わせていただきますが、少なくとも私がUSAIDと一緒に取り組んだヨルダンの灌漑事業は、大変有意義な事業でした。イスラエルと平和条約を結んだアラブの国であるヨルダンへの支援の政治的・経済的な意義は大きく、小渕政権時代に日米で力を合わせて取り組みました。
事実が確認できない言説がまかり通りやすいネタではありますが、冷静に事実を調べて発信されることをお勧めします。
また、与野党の議員でワシントンDCにあるUSAIDの本部を訪ねた際には、海外援助におけるNGO等民間セクターとの協働のあり方についてディスカッションさせてもらいましたが、とても参考になるもので、現在、日本の外務省もこうした対外援助における官民連携のアプローチを取り入れています」
Xユーザーの玉木雄一郎(国民民主党)さん
「JICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)を足したような組織」ですか、さもありなん。
このどこがDSの陰謀組織でしょうかね。
トランプがやりたかったのは、海外支援の再編です。
トランプが政権当初に出した大統領命令のひとつに「米国の対外援助再評価と再編成」に関する指示があります。
この大統領令にはこうあります。
「米国の対外援助業界と官僚機構は、米国の利益に沿うものではなく、多くの場合、米国の価値観とは正反対である」
SNSで大騒ぎしている人らはこのかんじんな部分を読んでいないのです。
これは今までのオバマからバイデン、ハリスへと流れるリベラル思想の普及こそが世界平和への唯一の道である、という民主党イデオロギーにとりつかれていましたが、その価値観に対する真正面からの挑戦です。
トランプはBLMやLGBTQを擁護し、資金提供して肥大化させてきたから歴代政権を批判しているのです。
USAID は国内の左派勢力に支援にとどまらず、世界のメディアや政党にまで資金援助して影響力行使していることが明らかになっています。
リベラルメディアの総本山であるBBCの寄付金において、USAIDは大きな割合を占めていることが明らかになりました。
BBC
たぶんこの調子なら日本のメディアにも潜り込んでいることでしょうし、一部は公金チューチュー団体に渡ったかもしれません。
あえて言いますが、だからなんなの。こんなていどの影響力行使は、米国はいままで民主、共和を問わずあたりまえにやってきたことじゃないですか。
今回は民主党路線に振れすぎた振り子を、ドランプが反対方向に修正したということにすぎません。
USAIDの方針が左傾化しすぎている、対外援助は国益と合致していないという声は前々から共和党内にはありましたが、いままではゴマメの歯ぎしりだったのをトランプが現実化したのです。
大統領令を受けたマスクが米国の対外援助を90日間停止し、事業の効率性と外交政策を見直すことにしました。
一方メディアは、USAIDの対外援助プログラムの見直しについて、これで海外援助は全滅だと叫んでいましたが間違いです。
巷間いわれるように全部を潰したわけではありません。
トランプがルビオ国務長官に委任し、彼が指名する人物が行政管理予算局(OMB)と協議しながら、対外援助プログラムを見直すことにしただけで取捨選択の基準はこのようになっています。
「これは、およそ600億ドルの対外援助予算のうち、どのプログラムが米国の支援に対するトランプ政権の凍結措置の対象外となるのかについて、支援団体に送られたメモのなかでのべられている。
メモのなかで、ルビオは人道的支援を「救命に必要な医薬品、医療サービス、食料、避難所、生活支援、およびそのような支援に必要な物資や妥当な管理費」と定義し、プログラムが「中絶、家族計画会議…ジェンダー」や多様性プログラム、「トランスジェンダー手術、または救命以外の支援」に関わる場合は、そのプログラムは免除されないとした。さらに、同報道では、「当初は、国務省がイスラエルとエジプトに提供する軍事支援のみが免除の対象となっていた」とされている」
トランプが暴露した「リベラルデモクラシー」という名のウクライナ支援の無駄使い(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
とりあえずルビオはいったん、1月24日に既存のほとんどの海外援助助成金について90日間支出を業務停止するよう命じ、その後人道支援については認めるとしました。
ただし「人道支援」がトランスジェンダーやDEI (多様性プログラム)に関わっていた場合、これを認めないとしています。
なおこの「業務停止命令」に例外措置があって、エジプトとイスラエルへの軍事支援、ガザへの緊急食糧援助は別枠です。
このあたりマスクと違ってマルコは中庸な保守リアリストであることが好感できます。
イーロン・マスクの「DOGE」が米政府の内部情報を掌握する未来 | WIRED.jp
一方、前後して動き出したのが、トランプ革命のロベスピエールであるイーロン・マスクです。
マスクは、新たに出来たばかりの「政府効率化省(DOGE)」の長官として、トランプに輪をかけたような強引さで、斬りまくっていますが、その標的とされたのがこのUSAIDでした。
DOGEのやり方はまるでアンタッチャブルで、1月27日にUSAIDの本部と関連施設に立ち入り、財務や人事の機密情報の開示を迫りました。
拒否するとその幹部は休職処分を受けてビルの外に締め出されたというのですから、そうとうなものです。
「DOGEのメンバーは、機密情報へのアクセス権限の大前提となる「セキュリティ・クリアランス(適格性評価)」を受けていません。そんなDOGE メンバーが高度な機密情報に接することができていることに多くの米国民が衝撃を受けています。
「これはクーデターそのものだ」という声すら上がっています。
合衆国憲法は重要な権限を持つ閣僚などの公務員は「上院の助言と承認を得て、大統領が任命する」と規定しています。マスク氏はじめDOGE のメンバーは議会の承認を得て改革を進めているわけではありません。前代未聞の急進的かつ大規模な政府組織の変革に対し、違法性を指摘する批判が拡大することが予想されます」
トランプが暴露した「リベラルデモクラシー」という名のウクライナ支援の無駄使い(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
うーん、はなはだ危険な動きです。
こういう急進主義こそ、トランプが言っていた良きアメリカの伝統を破壊するものではないのですか。
トランプ政権が、マルコ・ルビオのような方向に行くのか、イーロンマスクのような方向に過激化するのか、いまが別れ道な気がします。
それはともあれ、いまトランプ政権は、連邦政府調達にかかわるすべての企業団体に対して、DEI や脱炭素運動に関わらないように求めています。
製造業だけではなくこれは金融機関にも及んでおり、FRBに関わる米国のメガバンクや証券会社などにも影響を及ぼしています。
このためDEIやグリーン関連の投資や債権を組めなくなっているそうです。
おそらくこれは米国市場に関わっている外国企業にも適用されるはずなので、バイデン・岸田時代にわが世の春を迎えたリベラルは急激に資金難に陥るはずです。
資金源を断たれてしまってはどうしようもありません。リベラル冬の時代の到来です。
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イーロン・マスクがここまで権限持っていいのか?というのが最大の疑問で懸念点です。
まあ、あれくらいのトップダウンやれるのじゃなきゃ硬直化した官僚組織を変えられないのも確かだろうけど。
日本のマスコミ各社は肝心な所を説明せずにガザの映像とかを流してますね。全く何を言ってるんだか。
要はUSAIDのシステムに手を入れて効率化するという話なだけなんですけどね。
この手のシステムは実施するNGOとかの組織になります。組織を作り維持するには最もカネがかかるのは「人件費」です。日本だってJICAの職員はビジネスクラス移動なんて批判がありました。
だから「利権チューチュー連中」がいないかを国がチェック出来るようにして無駄遣いを無くそうという話。実際にはガザとかは特例で存続させるんだから問題無し。トランプのガザ保有論とわざと絡めて「横暴だ」と報じる日テレやTBSもいい加減にしなさい、と。
投稿: 山形 | 2025年2月13日 (木) 06時39分
USAIDについて、いちばん分かりやすく正確に説明しているのが、この玉木さんのものでしょう。USAIDが「影の政府」ったって、そもそも大した予算もありません。言われるほど広範に影響力があるとするなら、その予算の矛盾をどう説明するのでしょう。
トランプ政権はそれを省庁にもどして支出を明確化するために、統合しようとしているだけなんですね。かつてのCIAがやってた工作に比べれば雀の涙。
かくいう私も少しは引っ掛かりました。
ウクライナに慰問に行くハリウッドスターたち(例えばアンジェリーナジョリーとか)はUSAIDから全面的に金も支持も出ていたとか。
信じましたねぇ、おろかにも。(セレブたちは当初から全面否定。)
ニューズウィーク誌によって、マトリューシュカ誌が発端のロシア発のプロパガンダであった旨が検証されています。
これらは主にイーロン・マスク、トランプジュニアから拡散され(今は削除)、日本ではユーチュブを中心に保守派を自称する団体支持者が信じ込んでいます。最近、何とかスパイチャンネルとか、高橋洋一さんの発信ですら怪しくなっているように思います。
ユーチューブで情報収集するのは要注意だし、お気に入りの発信者頼りでもいけない難しい時代です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年2月13日 (木) 11時11分
東京の友人(50代江戸っ子)によると、高校時代、テスト範囲と言われなかったところから出題されたりすると、「やられた、〇〇〇人の陰謀だ」の定番セリフで苦笑し合っていたそう。
元ネタやベースとなる陰謀論話があったわけで、それは古くから繰り返し現れ続けるものですね。
ただし陰謀論は、それをオカルトエンタメとして楽しめる人以外には、混ぜるな危険。
Xでどなたかが、玉木雄一郎氏がUSAID批判に釘を刺したのは、自身の支持層に陰謀論者がいると気付いてのことではないか、と書いていて、それ少しあるかもと思いました。
「若者の手取りを増やす」で期待を集めた玉木雄一郎氏ですが、言い出す事や政策がだんだんと、れいわ新撰組と変わらない様相になってきて、それにがっかりして離れたor政策を批判する人々がある一方で、左右の極方向とか、闇雲&独善な反ワクチンや「ディープステートがー」ベースの真顔発言を繰り返す層(陰謀論へ誘導する確信犯含む)が、玉木雄一郎氏への寄り付きも誹謗中傷もやっているようには見えます。
確たる根拠が無くとも「私は真実を知っている!目覚めている!」と信じられることの魅力に呑み込まれる層が増えるのは、社会にとって良いことではありませんから、発言力を持つ人による「冷静になれば」の呼び掛けは、すぐ効く効かないに関わらず必要なことだと思います。
陰謀論に基づいて「USAIDに買収されている!」と誹謗中傷される被害には、小泉悠先生や東野篤子先生も遇われていて、お二人それぞれな返しにほっこりしますが、「あらゆる時事問題社会問題を即時的に捉えて次なる中傷に転換活用する努力を他の分野に活かしては」、という東野先生のご提案はもっともで、皮肉でも何でも無くストレートに受け止めた方が良いかと考えます。
USAIDの中身で変えるべきはどれの何なのか、他国の政策であれど本質や焦点や功罪両面を外さないで見る努力の邪魔になるものは、とっとと捨て置くのが宜し。
イーロン・マスクが不相応な権力を正しくなく振り回しても、スペースXによる帰還ロケット回収成功を遂げた素晴らしい事実は変わらないし、その素晴らしい事実がイーロン・マスクのあらゆる正しさを証明したりはしない。
というような当たり前のものの見方を失わず、その上で、功罪それぞれの中身が事実どんな性質のものかによって、罪を排除・軽減し功を改善・増強して続けるor出直すものがある、罪の内容ゆえに功があっても諦めて止めねばならないものがある、という判断を下す。そうであったらいいなと思う昨今。
投稿: 宜野湾より | 2025年2月13日 (木) 13時32分