ころんでもタダ起きないウクライナ
ウクライナの鉱物資源が注目を浴びています。
ウクライナは意外な印象を受けるかもしれませんが、資源大国です。
ただ戦争によって利用できないだけです。
ウクライナ戦争が始まった2022年春には、ハイテク製品に必須のレアメタルのサプライチェーンが大混乱しました。
「ロシアのウクライナ侵攻を受け、希少資源の調達懸念が世界規模で強まってきた。半導体製造に不可欠なネオンの7割をウクライナに、自動車の主要部品に使うパラジウムの4割をロシアに依存するなど両国産の希少資源が多いためだ。すでに陸海空の物流寸断で供給が止まる例が出るなど、昨年から続く半導体不足に拍車がかかる可能性が高まる。世界的な供給網の混乱に自動車など幅広い産業が身構えている」
(日経 2022年3月4日)
希少資源に調達危機 ロシア・ウクライナ産7割依存も - 日本経済新聞
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このようにロシアとウクライナの希少資源の占めるシェアは大きいのですが、多くは岩石の中に存在し気の毒にもロシアにはそれを掘り出す技術がありません。
ロシアは主力輸出品の天然ガスですら、プラントの維持保全ができずに生産効率を落す体たらくで、高度の採掘技術が必要な希少資源があることはわかっても単独では掘り出せないのです。
米国はこの採掘技術を独占しています。
表のメジャーはエクソンやモービルですが、裏のメジャーはハリバートン、ベーカーヒューズ、SLBなどの米国に拠点を持つ資源開発企業です。
これらの「裏メジャー」は石油や天然ガス、シェールガスなどの開発会社向けに各種技術サポートを行う油田サービス企業です。
彼らは希少資源の採掘技術も有していて、ロシアには米国籍の資源開発会社の技術がぜひとも必要なのです。
これがロシアがこのウクライナ資源問題で米国に再三「共同開発しよう」と言っている理由です。
トランプは、ウクライナが米国にその希土類鉱物へのアクセスを与えることに「本質的に同意した」と主張している - Euromaidan Press
上図のように、ウクライナは全土にチタン、リチニウム、クリプトン、ヘリウムなどの豊富な資源を持っています。
緑がレアースです。ドネツク州にロシアに支配されている所が3カ所見えますが、西部にも5カ所、中部には4カ所も鉱山が存在します。
ウクライナ中央部や西部地域には、ネオジムやジスプロシウムといった希少元素が含まれる鉱床が存在しています。
チタニウムも中部に大きな鉱脈を持っています。
これらの元素は、高性能磁石や電子機器の製造に必要不可欠であり、世界的な需要が非常に高い。
ウクライナは非常に有望な希少資源の産地として注目され、2021年にはEUとの間で「戦略的原材料パートナーシップ」に署名し、レアアースを含む重要鉱物の探査・開発において協力関係を深めることを確認しました。
これにより、ウクライナの鉱業開発への外国投資が活発化することが期待されていた矢先にロシアの侵略にあってしまったのです。
希少資源に調達危機 ロシア・ウクライナ産7割依存も - 日本経済新聞
今後、米国は今回の合意に基づいてウクライナの希少資源開発に本腰を入れるはずです。
たぶんトランプは米国籍の「裏メジャー」に採掘権を与え、そのために安定した政治環境を望むでしょう。
つまりはウクライナの安全保証の提供です。
ロシアのドローンやミサイルに怯えながら採掘はできませんからね。
理念や友情ではなく、むき出しの利害でもかまいませんからね。
ロシアにどのような飴玉をなめさせるのかはわかりませんが、いずれにせよ掘ったものは運ばねばなりません。
資源は重量があるために陸路か海路となりますが、そこで参考になるのが、戦争中の穀物輸出ルートです。
「ウクライナは小麦やトウモロコシなどの生産が盛んで、「欧州の穀物庫」と呼ばれる。ウクライナからの輸出は、南部オデッサ港からトルコのボスポラス海峡を通るのが主要ル ートだが、ロシアによる海上封鎖や機雷敷設の影響で2000万トン以上の穀物がウクライナ国内に滞留、世界的な穀物不足と価格高騰につながっている」
(産経2022年6月9日)
〈独自〉ウクライナ穀物輸出、G7が代替ルート確保へ 露の封鎖回避 - 産経ニュース
黒海に敷設されたロシアの機雷を除去せねばなりませんが、オデッサ港が使えるようになればここからの黒海ルートを使用することが可能です。
トランプも大いに協力するのではないでしょうか。
このようにゼレンスキーは、当初はトランプのオファーを蹴飛ばしましたが、米国に一定の採掘権を与えることで、ウクライナの安全保障に噛ませることができることに思い至ったのだと思います。
ただ守ってくれ、武器援助をしてくれではテコでも動かないオッサンですからね、トランプは。
そう考えると、ゼレンスキーの深慮遠謀には舌を巻きます。
ゼレンスキーはワシントンでまだ粘っているようです。ころんでもタダ起きないウクライナを見せて下さい。
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希少資源の獲得競争という観点から見ると、ゼレンスキーは中々の強かさを見せています。最初は欧州、次にそれをロシアが侵略で横取りしようとし、平和の美名のもとにトランプがわがものにしようとした。
それならそれで良いが、ゼレンスキーは更なる追加支援を求めてネゴしたのが今日の決裂の原因。しかし、米国はウクライナへの支援・関与はあきらめる事は出来ないでしょう。
フランスが触手をのばし、トルコが復興支援契約にこぎつける中、米国は一歩後れをとっています。
ロシアはトランプに資源提供を呼び掛けているが、これ以上ロシア寄りになる事は国内的に不可能だし、プーチンなんぞ信用できない。
米国の支援に対する欧州の代替品や国産化がすすみ、スターリンクの代替えさえ可能となる時がくる可能性も高い。ドイツからのタウルスの獲得も目の前。時間がたてばたつほど米国の優位性が失われて来てい、それがトランプのあせっている理由でしょう。
こういう見方が正しいかどうかわかりませんが、一面の真実だと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年3月 1日 (土) 17時40分