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2025年2月 4日 (火)

さぁ、米国はインフレ再燃だ

S-252

トランプ関税戦争によって引き起こされる事態でもうひとつ深刻なことは、米国のインフレが再燃し、それを押さえるためにFRBが金利を上げざるをえなくなることです。
トランプはこんなことをうそぶいています。

「ドナルド・トランプ大統領は31日、米政府は早ければ2月中旬にもコンピューターチップ、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅、石油・天然ガスの輸入品に関税を課すと表明した。カナダ、メキシコ、中国からの輸入品には2月1日付で関税を発動する方針を繰り返し示してきた。トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し、「かなり早期に実現するだろう」とし、「2月18日になると思う。鉄鋼に多くの関税を課すつもりだ」と述べた。
トランプ氏は、想定している関税は、既存の関税に上乗せする追加関税だとし、インフレ再燃や世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱を懸念する声を一蹴した。「関税はわれわれをとても豊かにし、強くするだろう」と述べ、有権者や市場の反応については懸念していないと付け加えた」
(ウォールストリートジャーナル2月1日)
トランプ米政権、半導体や鉄鋼などに関税発動へ 2月18日にも | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン

おいおい、なにが「関税はわれわれを豊かにする」だ。頭大丈夫か、と言いたくもなります。
彼のロジックは、推察するに関税収入を政府の財源にするから、関税上げた分だけ「豊かになる」ということのようです。
しかし関税を払っているのは米国民ですから、形を変えた増税です。いいんでしょうか、米国の有権者の皆様。

実は第1次大戦前まで関税は重要な政府財源でしたが、結局関税戦争がエスカレートしてホントの戦争になったので、戦後にその調整機関としてWTOをつくったのです。
今どきそんなレトロな関税戦争に戻るなんて、大丈夫かい。

関税は消費者が手にする食品や消費財、あるいはエネルギー価格にそのまま転嫁されるのですから、2割関税を乗せれば2割価格が跳ね上がります。
ただ国際競争にさらされている商品、たとえば自動車なんかは簡単に価格転化できないでしょう。

結局、製造会社がかぶることになり企業体力は落ちます。

ただし唯一のいいことは、自動車生産などが低賃金のメキシコで生産していたメリットが消滅しますから、米国に回帰します。
ひょっとしてこれをトランプは狙っての深慮遠望かしら。
だとすると今回の蛮行はわからないではありませんが、今の時点ではなんともいえません。

しかし食肉や果実などの消費財はストレートに反映するはずです。
そうなったら米国民をあれだけ苦しめたバイデン・インフレがまた再燃します。
下図は米国のインフレ率の推移を見たものですが、新型コロナの時に国民にカネをバラ撒きすぎて米国は深刻なインフレに陥りました。

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米国のインフレ率、ついに4%割れ それでも再び利上げ論が出るわけ:朝日新聞

例のドジャーススタジアムでホットドックセットを食べたらウン千円という時期です。
これだけ商品価格が上がると、せっかく上がった賃金によって個人消費の見かけは活発でも、内実は打ち消されてしまうことになりかねません。
米国の中央銀行FRBはこの狂乱インフレを消し止めようとして、政策金利を上げました。

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アメリカ 2025年の米国の政策金利とインフレの見通し |フランクリン・テンプルトン

上のインフレ率と政策金利が同調しているのがおわかりでしょう。
米国の金利上昇と日本のデフレから抜け出しきらないための低金利の金利差が、日本の為替相場を円高にしていた原因なのはご承知のとおりです。

このようなFRBの奮闘努力のかいあって、やっとインフレという山火事は鎮火しはじめてきていました。

「一時は約40年ぶりの高水準だった米国の物価高(インフレ)が和らいできた。6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3・0%上昇と、2021年春以来の低水準になり、ピークの昨年6月の3分の1まで縮んだ。それでも、米連邦準備制度理事会(FRB)は一度止めた利上げを今月再開するとの見方が大勢だ。背景に何があるのか。
米労働省が12日発表した6月のCPI上昇率は、5月の前年同月比4・0%から減速し、3%台となった。これは、2・6%だった伸びが4・2%に急加速した21年3~4月の水準に近い。2年以上かかって今回のインフレ局面の入り口まで水準が戻った」
(朝日2023年7月12日 )
米消費者物価、6月は3.0%上昇 伸びは鈍化、1年前の3分の1に:朝日新聞

やれやれと胸をなでおろしていたら、こんどはトランプ王が関税爆上げという必殺技で、またまたインフレ再燃です。
自動車だけではなく、食肉や果実、アパレルといった消費財まで直撃ですからタチが悪い。
そのうえに、しかも今回の命令では、小規模な貨物に適用されるデ・ミニミス免除が撤廃されました。
メキシコなどから来る個人宛て小荷物にはよく麻薬が仕込まれているからです。

このデ・ミニミス免除とは、少額の電子商取引やオンライン小売業の課税を免除する仕組みですが、これが麻薬取引の温床になっていたのです。

「輸入貨物の申告額が800ドル以下の場合、米国ではデミニミスルールの下、関税が賦課されず、また原産地などの情報を申告せず、簡易的に輸入できる。そのため、フェンタニルなどの違法合成麻薬などがデミニミスを利用して輸入されているのではないかと懸念されていた」
バイデン米政権、デミニミス利用した不公正な輸入に対処する新たな措置発表(中国、米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

これで抜け穴が塞がれてしまって、小売業・通販にまで広く関税が課されるようになります。
自動車産業の関係者は前々から関税が雇用や投資、消費者に悪影響を与えると警告してましたが、これが現実となったわけです。
たぶん自動車株や食品株は暴落することでしょうから、金利高・株安・ドル安は必然です。

しかしトランプは、インフレ再燃は折り込み済み、短期で終わると言っているようですから、つまりはインフレ容認・ドル安容認ですから始末に悪い。
たぶんトランプは、カナダやメキシコとチキンゲームをする気です。
報復関税合戦して、先に音を上げたほうが負け、くらいに考えています。
この結果はなんとも予測がつきません。トランプいい意味でも悪い意味でも根っからのポピュリストだからです。
インフレ再燃に怒った国民によって支持率が下がり始めたら方針転換する可能性もあります。
ぜひそう願いたいですが、こればかりはわかりません。

 

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