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2025年2月10日 (月)

日米首脳会談とUSスチール問題

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まぁ、ようござんした。
ゲルさんとてつもないバカやるんじゃないかと心配していましたが、まずまずの成功です。
共同記者会見でトランプが握手する前に帰ったからどーの、ゲルが肘をついて握手したとか、大嫌いなシンゾーの名を5回も言われたとかは、まぁご愛嬌でしょう。
いい仕事をした時には、それなりに評価しないといっそう目つきが悪くなりますからね。
ご承知のように、私は彼をまったく評価していないのですが、客観的に見なければと自分に言い聞かせています。

さて、今回の訪米はふたつのことを相互に確認することにありました。
ひとつは、いうまでもなく日米軍事同盟の確認。
二つ目は、米国経済の覇権を再構築に協力する日本経済の確認。
つまり日本は米国による世界秩序構築の支柱であることを、トランプにしっかり落とし込み、日米間のUSスチール問題のトゲを抜くことが、訪米の任務でした。
その意味では見事に目標達成です。

安倍氏の敷いた路線の上を走っただけだろうって。それは言わない約束でしょうが。
岸田氏もそうですが、だれが首相になろうとそれしか選択肢がないんですから仕方がない。
岸田氏のように露骨にバイデンのリベラル路線にすり寄る醜悪さはありませんでした。

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トランプ氏、初対面の石破首相は「偉大な首相になるだろう」 石破氏「実際に会うと誠実」 - 産経ニュース

トランプは今日はとことんゲル氏を持ち上げる気だったらしく、こんなことを言っています。

Well, I think that he is going to be a great prime minister. I think he's a very strong man, very, very strong. I have great respect for him. I've known him for a long time through a reputation. Shinzo Abe thought the world of him.
そうですね、彼は素晴らしい首相になると思います。彼はとても強い男だと思う、とても、とても強い。私は彼をとても尊敬しています。彼とは評判を通じて長い間知っています。シンゾー・アベは彼を高く評価していた。

わけないしょ。シンゾー氏はくさしはしなかったにせよ、ゲル氏を「高く評価する」はずがない。
これはシンゾー、シンゾーと連呼することで、彼の路線をはずれるんじゃねぇぞというシグナルです。
分かっているのか、ゲル氏もふてくされたような顔をしていました。(いや、あれはたんなる地の顔か)
まぁ、この記者会見の時点では一番の難所は乗り切っていました。例のUSスチール問題です。

日米間の喉に引っかかったトゲになりつつあるUSスチールの買収問題が、これ以上こじれずに軟着陸させることが緊急に必要でした。
これについて、ゲル氏のオファーはなかなかよい。
「買収ではなく投資」という言葉で、話を砕いてトランプに呑み込ませたのです。
こういうやり方はシンゾーがよくしたもので、対峙するのではなく問題の角がどこにあるのかを探り当てて、ブレークダウン(砕く)する手法です。

「石破茂首相は9日、 NHKの「日曜討論」に出演し、日本製鉄によるUSスチール買収計画について、「単なる買収ではない。そこにおいて投資を行い、あくまで米国の会社であり続ける」と述べた。
石破首相は、トランプ米大統領との7日(現地時間)の首脳会談を振り返って発言した。日鉄による投資額の積み増しに関しては「具体的な数字は民間の話なので申し上げることはできない」とした。
 トランプ大統領は会談後の記者会見で、日鉄は「USスチールを所有するのでなく、同社に大規模な投資を行うことで合意した」と述べていた。
 石破首相はまた、日本が対米投資額を1兆ドル(約150兆円)に引き上げる意向を表明したことに関し、具体的な投資分野として自動車や人工知能(AI)、エネルギー、鉄鋼を挙げた。米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入拡大は、米国にとっての貿易赤字削減につながるほか、安全保障の観点から「日本の国益にかなう」と述べた」
(ブルームバーク2025年2月9日 )
石破首相「USスチールは米の会社であり続ける」、首脳会談受け - Bloomberg

カマラも大統領選で駆けつけたし、トランプも「ならんならん、ゼッタイにならん」と組合員の前で演説した製鉄所です。
いっちゃナンですが、単純なことです。
社名にUSとついていたからです。恐れ多くも「US」様を冠しておられるのだぞよ。
方や買収するこっち側も「日本」製鉄ですがね。
これではいまさら70年代から80年代に戻ってもう一回日米貿易摩擦をやるのか、ということになります。

USスチールは、米国人の忘れられないプライドなんですよ。
世界の鉄鋼業のリーディングカンパニーとして君臨したピッツバークの老Tレックスみたいなもんです。
今は甘やかされたために企業体力を失い、なんと生産量では落ちも落ちたり世界27位。
オレ様は大リーガーだと思っていたら、田舎の貧乏球団だったという悲喜劇です。
現実を直視したくないからプライドにすがるんです。

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USスチール買収はナゼもめるのか 日本人が無自覚なワシントンの視線 | 三井住友DSアセットマネジメント

現実はどうかといえば、ご覧のように2位のアルセロール・ミタル(オランダ・ルクセンブルク)を除いて、1位から6位までは全部中国の製鉄企業が独占しています。
10位以内にいるのは韓国のポスコと日本製鉄くらいなもの。

ちなみにこの2位のアルセロール・ミタルの北米事業は不振で、2020年にクリーブランド・クリフスに売却しました。
このクリーブランド・クリフスの名に覚えがありませんか、そうあの暴言王ゴンカルベスCEOの製鉄所です。
この男はこんな差別的なことを言って、この買収劇をまるで日本の経済侵略のように煽りました。


クリーブランド・クリフスはUSスチールをも安く買い叩こうと、日本製鉄よりはるかに安い買収額を提示していました。
そこでゴンカルベスは、バイデンとハリスに訴え出て、政府に拒否を出させて日米貿易摩擦を再来させようとしたのです。悪い奴です。

対してゲル氏はこう考えたのだそうです。

「首相はインタビューで、製造業復活を掲げるトランプ氏にとり「象徴が鉄だ」と指摘。会談で、USスチールが米企業であり続けることと日本の投資によって鉄の品質が向上する利点を説明したと明らかにし、「精神的な意味、実利の面の二重に大事なことがトランプ氏の心に響いたのではないか」と分析した。事態が解決に向かうかを問われると「そう思う」と語った」
(読売2月9日)
石破首相「二重に大事なことがトランプ氏の心に響いたのではないか」…USスチール「投資」提示で(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

 正解です。劣位の交渉者は相手のプライドをくすぐりながら実利を落すしかないのです。
たぶん安倍氏ならもっと対等の関係で交渉できたでしょうが、ゲル氏としては上出来。
正直、ゲル氏にこういう外交的駆け引きができるとは思わなんだ。

では、なぜこんなにも中国製鉄業が強力なのでしょうか。
理由は簡単、中国政府がゲタを履かせているからです。
中国の鉄鋼企業は全部国営で、中国政府がジャブジャブと産業補助金を注ぎ込んできたからです。

そして進出した海外企業に焚いては強制的に技術を吸い取ることをしてきました。
そして見境のないダンピング攻勢の三拍子です。
このことは中国のダンピングと戦った米国商務省はよく分かっていたはずです。

「中国側が「国家主権に抵触する」と抵抗したのは、どの条件だったのか。正式な情報の公開はないが、アメリカと中国の双方がリークした情報では、(1)不適切な産業補助金、(2)国有企業、(3)技術の強制移転であったらしいことが伺える。さらに、公表された第一段階の合意文書では、(3)技術の強制移転への対応が発表された」
RIETI - 中国鉄鋼国有企業の競争中立性:補助金の影響についての因果推定

いま米国は景気絶好調なので、鉄鋼需要はふんだんにあります。
そもそも米国の世界覇権を支える軍事品なんかすべて鉄の固まりです。
いくらでも鉄が欲しい、需要はふんだんにあるのです。

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 三井住友DSアセットマネジメント

この供給不足につけ込んでダンピングした低価格で、米国鉄鋼市場を一気に制圧したのが中国でした。

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〈なぜ、日本製鉄はUSスチールを買収するのか〉米国鉄鋼市場だけではないエネルギー価格という側面  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)

米国は自国内シェアで3位と4位のあいだをウロウロしているような状況です。
長年の政府の甘やかしで技術革新が遅れ、高炉も8基あるうちの2基が休止中、電炉も5基なければならないのに2基が建設中。
これも資金不足が原因です。
ここに技術と資金を提供しようと言うのですから、このどこがイヤなのと逆に聞きたくなります。
日本にとっても米国内での生産ということで一気にシェアを伸ばせてちゅうごくに勝てます。
まさにウィンウィンを絵に描いたような案件です。

「もし、こうしたUSスチールの設備に日本製鉄の技術を導入すれば、その生産性、生産量はともに伸びる可能性が高く、今回の買収提案は魅力的な成長戦略と言ってよさそうです。また、USスチールは環境技術に優れた最先端の電炉メーカーを子会社に抱える上に、両社統合後の粗鋼生産高は世界3位の規模まで拡大する点も、買収のメリットとすることができそうです」
USスチール買収はナゼもめるのか 日本人が無自覚なワシントンの視線 | 三井住友DSアセットマネジメント

だから、角をとって飲み易くすりゃいいのです。
買収がいやなの、なら投資と言おうかね、投資といえばトランプさんの貿易赤字が減るでしょう。
貿易赤字ってその国の食欲みたいなもんで、自国生産だけで足りないからよそから買っているわけで、むしろ景気がよくて喜ぶべき現象なんですが、言葉が「赤字」だからイヤなのね。こういう所になると、トランプは急に企業経営者の感覚に戻ってしまう。
まぁたんなる言い換えなのですが、これで納得してくれたんだからいいじゃないですか。
とまれ、ゲルちゃん大変よくできました。

 

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コメント

もし安倍さんが存命なら安倍さんを外務大臣に任命したいところでしたね…山上のバカの破滅願望のせいでとんだ国益損失です。(同情できるところもなくなないですが…)

トランプ大統領自身の資質・傾向から、USAID削りを始め繰り出す数々の政策まで、一喜一憂よりも是々非々、或いは事の両面を見ていく方が宜しいでしょうね。
なお、しょうもないネタによる石破下げで盛り上がる界隈がありますが、不当なノイズは取り除いておきましょう。
報復関税をやるかとの記者の問いに「仮定の質問には答えられない」と石破首相が応じた部分を、「あれは誤訳だ」「意味不明な事を言って石破は記者にもトランプにも笑われた」とする言説だけを信じている人たちがあるようですが、ネイティヴスピーカーや英語話者が実際の動画とともに、記者の釣り質問をぴしゃっと封じた石破首相を見て、トランプ大統領は「良い答えだ。石破はやるべきことがわかっていると言い、笑って感心したように見える」「記者たちが笑ったのも、この人は引っ掛けに食いつかないんだな、という笑い」としていることに留意。
あと、「石破は'Mr.P.M.'とトランプから記述されて名前も書いてもらえなかった笑」と噴き上がる人たちもありますが、石破首相とトランプ大統領は知り合ったばかりなので'Mr.P.M.'はごく自然なこと、ちなみに2017年、互いを知り合う途上にあったトランプ大統領は安倍晋三首相を'Mr.P.M.'と記述したと、当時の記録画像付きで在日本米国人から投稿されていることにも留意。
他人を腐すのは超簡単ですが、根拠が与太話では時間がもったいないので念為。
ともあれ、多くの国民やメディアが「とりあえず上手くいって良かった」とする今回の日米首脳会談、日米双方の事務方が擦り合わせに頑張ったという話を聞けば「でしょうね」とも思いますし、トランプ大統領が陰謀論ベースの発言が強い人々を要職に付けていたり、イーロン・マスクに「政府特別職員」として、利益相反を名目上避けながらほぼフリーハンドを与えていたりで、油断ならない現実は続きますし、これからも極端な話やデマ・思い込み・飛ばしが現れるでしょうから、落ち着いて観察したいと考える次第。

これ、日本製鐵は「投資」じゃなくて「買収」(子会社化して経営に口出しして再び力をつけさせる)がしたかったんじゃないのかな?そう言う意味じゃ、トランプが誇らしげに言う「過半数の株式は絶対に認めねーから」は敗北になるのでは、と思ったのですが。

経営の話はよくわかりませんね。日本製鐵が「それで良い」なら良いのですが。

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