トランプ、ヨーロッパに喧嘩を売る
トランプがヨーロッパに喧嘩を売っています。
かつてバイデンが当選したときには「米国は戻って来た」といいましたが、今回は「米国は喧嘩を売りに戻って来た」という塩梅です。
気取って言えば、戦後秩序への異議申し立てといったところですか、なんせ面と向かってEUを批判しちゃうんですから。
これを盟主たる米国が言ったというのがミソです。
それにしてもこういうマジなことも言うわけですから、「アメリカ湾」なんてつまんないことを言うなと思います。
場所はミュンヘン安全保障会議。
居並ぶEUの閣僚を前に、副大統領のバンスはこう言い放ちました。
顔を見ると怒りの表情凄まじく、といったところ。
初めはこの開催地のミュンヘンを美しい街ともちあげたかと思うと、一転いきなり本題に入ります。
「もちろん、この会議は安全保障を議論するために集まったものだ。安全保障というと通常、外部の脅威を意味するだろう。本日、とても多くの偉大な軍の指導者が集まっている。だが、トランプ政権は欧州の安全保障を非常に懸念している。
ロシアとウクライナは合理的な解決に達することができるだろうし、今後数年間で欧州が自国の防衛力を強化することも重要だ。だが、私が欧州に対して最も懸念する脅威とは、ロシアではない。中国でもなく、他の外部の面々でもない。
懸念するのは、内なる脅威だ。欧州が、米国と共有すべき最も基本的な価値観から後退していることだ」
(産経2月15日)
「群衆に車突っ込み地域を粉々に」「制御不能な移民に終止符を」バンス氏演説移民問題全文 - 産経ニュース
バンスはこの演説の1日前に起きたアフガン難民によるテロを背景にしてしゃべっています。
「【ミュンヘン=淵上隆悠】ドイツ南部のミュンヘンで13日、群衆に車が突っ込み、地元警察によると少なくとも28人が重軽傷を負った。警察は運転手のアフガニスタン国籍の男(24)の身柄を拘束し、テロの可能性も視野に捜査している。
公共放送ARDなどによると、群衆は労働組合のデモで、男は難民申請者だという」
(読売2月14日)
厳重警備のドイツ・ミュンヘンで群衆に車が突っ込む、28人重軽傷…難民申請者の男を拘束 : 読売新聞
実は去年12月20日にも、ドイツ東部マグデブルクでクリスマスマーケットに車が突っ込み、死者5人、負傷者は200人以上を出しています。
つまりドイツは恒常的にテロを「気安くできる」条件があるようです。
バンスはこれを「ヨーロッパが共通の価値観から後退したためだ」と指摘しています。
「この会議に集まった国々が直面しているすべての差し迫った課題の中で、大量移民ほど緊急な課題はない。現在、ドイツに住むほぼ5人に1人が海外から移民してきた。もちろん、史上最高数だ。米国でも同様で、過去最高を記録した。欧州連合(EU)域外からEUへ入国した移民の数は、2021年から22年の1年間だけで倍増した。もちろん、それ以降もはるかに高くなっている」
(産経前掲)
つまり、ヨーロッパ諸国は「そもそもわれわれが何を守っているのかを知らずに、予算編成の問題について考えている」のだ、ヨーロッパ首脳が移民・難民問題から目を逸らして国防費を討議しているのは馬鹿げていると、バンスは決めつけます。
「欧州の有権者の中で、難民審査を待つ何百万人もの移民に門戸を開くために投票した人はいなかった。有権者は何に投票したのか。英国ではEU離脱(ブレグジット)に投票した。賛成か反対か意見表明した。
欧州全土で、制御不能な移民に終止符を打つと約束する政治指導者に投票する有権者が増えている。私はたまたまこれらの懸念の多くに同意するが、もちろん、あなたがたが私の意見に賛成する必要はない」
(産経前掲)
そしてバンスは、欧州の不法移民対策の手ぬるさ、インターネット規制のあり方への批判へとつなげていきます。
そしてこれ見よがしに、会談後、AfD(ドイツの選択肢)のワイデル共同党首と会談しています。
JDバンス氏、ドイツの極右政党首との会談でタブーを破る |JDバンス |ガーディアン紙
一方、ドイツ首相のショルツはバンス氏の発言を頭から否定し、「国内政治に関して外国からの干渉は受け入れない」と述べています。
選挙干渉だ」とも言っていますが、これは近々国政選挙か行われる予定だからです。
ショルツ率いる社会民主党(SPD)は、他のドイツの主要政党と共に選挙協力をしてAfDを勝たせまいとしています。
彼らはこの選挙協力をその名もファイアーウォール(防火壁)と呼んでいます。
そこまでせねばならないのはAfDが、第1党になりかねない勢いを示しているからです。
去年9月の東部2州の選挙結果です。
ドイツ東部州議会選で右派政党が躍進、戦後初めて極右系が最大勢力…ウクライナへの武器供与に反対 : 読売新聞
「AfDは2013年、債務危機に陥ったギリシャ支援に反対する勢力が結党した。反移民・難民、反イスラムに加え、ウクライナへの武器供与に反対し、ロシア寄りの立場を掲げる。
特に最近は、両州などの共産圏の東独に属していた地域で、旧西独地域との経済格差を背景に既成政党に不満を持つ有権者に浸透している。
直近の世論調査ではAfDは支持率24%でトップを走る」
(読売2024年9月2日)
ドイツ東部州議会選で右派政党が躍進、戦後初めて極右系が最大勢力…ウクライナへの武器供与に反対 : 読売新聞
AfDは新しい政党で、2013年にギリシャの債務危機に対する支援に反対する勢力が結党しました。
東ドイツで誕生し、反移民・難民、反EUに加え、ウクライナへの武器供与に反対し、ロシア寄りの立場を掲げています。
そしてそれだけではなく、ナチスに対しても肯定的で反ユダヤ主義です。
「ちなみに、テューリンゲン州のAfDの代表,ビュルン・ヘッケ氏は国家社会主義の言葉を彷彿させるレトリックを常用し、国家社会主義に基づく専制政治を公然と主張している政治家だ。ドイツの基本法は「ドイツ国籍を有する者はすべてドイツ人」と明記しているが、ヘッケ氏はそれを認めていない。単なる外国人排斥政策だけではない。
反憲法、反民主主義、反ユダヤ主義的な世界観を標榜している。彼は過去、ホロコースト記念碑を「恥の記念碑」と呼び、 ドイツの「民族的再生」を強調し、移民や多文化主義に対して強く反対してきた。また、ドイツの過去に対する悔恨を「過度なもの」として捉えている。ヘッケ氏の存在は、AfDが単なる不満票、抗議票を集める野党勢力ではないことを示している」
(長谷川良ウィーン発 『コンフィデンシャル』)
長谷川氏が指摘するようにAfDには危険なネオナチ的傾向がみられるのも事実で、私にも彼らに対しての警戒心があります。
しかしやりすぎました。
川口マーン恵美氏によれば、おおよそ民主主義とはかけ離れた方法でAfDとその主張を押しつぶしてきたのがわかります。
「ドイツの全ての党は、AfDとは何があっても協力しない(ドイツではこれを防火壁と呼んでいる)ということを天命のように守り続けているため、AfDがどんな動議を出そうが絶対に通らない。
それどころか、提出された法案や動議にAfDが賛成しそうだとわかると、それらが取り下げられるのが常だった。あるいは、AfDが賛成できないような文言を最初からわざと織り込むとか。
つまり、ドイツの議会における重要度は、提出されている動議や法案の中身の是非ではなく、AfDがそれに賛成するか否かであった。これが7年間も続いてきたのだから、難民問題は一向に改善されず、さらには、ドイツの政治自体が機能不全になっていたのは、ある意味、当然だった。そして、この悪政に苦しんでいるのが、言うまでもなく国民である」
日本のメディアが報じない「ドイツのいま」がヤバすぎる…「難民問題」「極右打倒」で大混乱の「異常事態」に!(川口 マーン 惠美)
そしてイーロン・マスクが批判するように、右派が強いSNSの規制までしています。
フランスも同様で、AfDより穏健な国民連合(RN)が第1党となりそうだと見ると、マクロン政権もファイアーウォールを築いて選挙区割りを変えてまで国民連合を潰す、ただそれ一点で極左に政権を渡してしまいました。
このような状況に一石を投じて堂々と喧嘩を売ったのがバンスだったわけです。
それは純然たる利敵行為です。
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AFDが議席を伸ばすにしても、CDU・CSUとSPDの連立で政権を取り、メルツさんが首相になる路線は変わらないと思います。
AFDは問題が多すぎます。特に親ロシア的態度は度が過ぎているし、党員や候補はネオナチ的な発言で度々物議をかもしています。バンスがワイデルと会談した事もマイナスで、ドイツ国民は冷静な判断をするでしょう。
バンスの記事のスピーチはあまり受けず、そのあとにバンスの内容を否定したドイツのピストリウス国防相の方が拍手万来でした。ピストリウスは「再び戦争の出来る国を作る」が持論。続く政権でも、ウクライナ支援は変わらないものと考えられます。むしろ、いよいよ「タウルスを送る事になるんじゃないか、その方が安上がりだから」という見方もあります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年2月18日 (火) 16時44分
「ヨーロッパの戦争なんだから海を隔てたアメリカに頼らずにまずは自分達で目一杯武器を送れよ」という主張自体は何も間違っていないので、
今回カチンと来たヨーロッパ諸君には、ぜひとも「もうアメリカなんかに頼るか!俺たちだけでウクライナを救ってやる!ロシアを追い出してやる!」と奮起して欲しいものではあります。
…「アメリカ湾」はアホです。
投稿: ねこねこ | 2025年2月18日 (火) 22時37分
トランプ親ビンは、マジ半分冗談半分なんだと思いますわ。煮え切らない奴等にはドカンとカマしておいて、その反応を見て本心を値踏みしているような、EUなどという官僚主義的な相手に対しては、それが一番だと。キワどい不動産取引の世界とショー仕立てで観客を沸かすプロレス世界に海千山千の親ビンなんで、役人風情を右往左往させるのは、もう芯から楽しんでいるかのようですわ。青田赤道なら「役者やのぅー」と言うところです。
それが世界政治に対して良いか悪いかはともかく、硬直した情勢が揺れ動き流動し始めたのは、もう歳とった私なんぞは「ようやく歴史が又動くのが見られる」とポピュリズムにハメられて、無責任にも「次は何をしでかすんだ?」とワクワクしてたりするんで、世界じゅうにも親ビンのファンは多いと思いますわ。日本の庶民にとって、それが悪い結果を生むとしてもどーにもなりませんし。
ウクライナ軍はジリ貧で人海戦術のロシア軍に体力負けしそうになってきてるし、その割には当事者のEU諸国は積極的支援に及び腰でまだウダウダしてるしで、ウ軍敗北が決定的になるという最悪の事態まで時間の問題になってしまっています。実際、今どーにか動かないと取り返しのつかない結末になるんで、バクチだろうと今行動することは間違いないと思われますわ。しかし、兵器が売れに売れて、兵器商人にはタマリマセンのう。
先行しているアルゼンチンの親ビンの同類らしきミレイさんの政治経済の行方を見ると、案外、良い方向へ進むかも知れません。今までのジョーシキが塗り替えられ、それが成功するのなら、ハチャメチャな行為には深い意味が込められていると解釈したいですわ。ただ、既得権益層からはモーレツな反撃があるハズで、またもやの暗殺実行がありはしないかと心配ですわ。
病院へ検査に行くのは、それ自体がクスリですわ。この際、よく診てもらって下さい。
投稿: アホンダラ1号 | 2025年2月18日 (火) 23時20分