• 20250317-110432
  • 20250318-013343
  • 20250316-080941
  • 20250316-082159
  • 20250316-160913
  • 20250316-162254
  • S-061_20250315055201
  • S-066_20250315055301
  • S-079
  • S-083_20250315055001

« 日曜写真館 曙の空色衣かへにけり | トップページ | さぁ、米国はインフレ再燃だ »

2025年2月 3日 (月)

あーあやっちゃった、トランプが高関税発動

142

ああやっちまった、というかんじです。
私はぎりぎりまで振り降ろさないというほうに賭けていたので、がっくりきました。
関税は武器、刀は抜かないから抑止になるので、抜いて斬ったらただの凶器にすぎません。
そのくらいトランプはわきまえていると思っていましたが、そうではないようです。
BBCはこう伝えています。

「ドナルド・トランプ米大統領は1日、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税をかけ、中国には10%の追加関税を課す一連の大統領令に署名した。ホワイトハウスが発表した。メキシコとカナダはそれぞれ、報復措置や報復関税を発表した。カナダのジャスティン・トルドー大統領によると、アメリカの関税発動は4日から。
ホワイトハウスは声明で、「本日の関税発表は、毒性の麻薬のアメリカ流入を阻止するという約束の責任を、中国、メキシコ、カナダに取らせるために必要なものだ」と表明した。
大統領令は、カナダからのエネルギー輸入については25%より低率の10%の関税をかけるとしている。
ホワイトハウスは関税措置について、「トランプ大統領は、麻薬との戦争でメキシコがアメリカに協力するまで、メキシコ生産者が支払う関税25%を実施する」としている」
(BBC2月2日)
トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税発動の大統領令 - BBCニュース

関税という武器を抜いた理由は麻薬と不法移民です。
米国、メキシコ、カナダの3カ国間で締結されていた北米自由貿易協定(NAFTA)がいったん解消され、それに代わって米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が締結されています。
2020年7月1日に発効。乗用車の対米輸出台数制限や自動車部品に関する原産地規則の強化、他国の通貨安誘導を防ぐ為替条項などが新たに導入されました。
とうぜん、この相互自由化に伴い大量の移民や、米国にとって好ましくないものも入ってくることになります。

たとえばカナダのトルドーが解禁した大麻や、メキシコから入って来るコカインや合成麻薬も大量に流入しています。

20250203-012016

カナダ首相「トランプ関税に反撃する用意ある」貿易戦争へ | KWP News/九州と世界のニュース

特にフェンタニルは麻薬鎮痛剤としても使われており、フェンタニルは2ミリグラム服用しただけで死に至る可能性があり、その効果はモルヒネの100倍といわれています。
トランプは、このフェンタニルの流入阻止と取り締まり強化を関税を上げた理由にし、「米国が求めるレベルの措置を導入するまで関税を維持する」と述べています。
一方、カナダ政府は、米国に流入するフェンタニルの99.9%がメキシコ産であり、トランプ氏がカナダとメキシコの麻薬・移民流入を同列に扱っていると反論しているようです。
そもそもフェンタニルの原産は中国ですが、なぜ中国に対して軽い関税なのでしょうか。

20250202-154036

麻薬の裏側:南北アメリカの麻薬ネットワーク | 国際問題レポート2021-2024

そして米国に流入する移民、あるいは不法移民によって安価で使い捨てにできる下層労働者が大量に生まれ、彼らによって米国民の賃金低下がもたらされました。 

また、この3カ国の間で複雑で大規模なサプライチェーンが構築されています。
米国への輸入額において、中国が首位陥落し 23年の貿易収支でメキシコが上回りカナダが並んでいます。

20250202-150129

 中日新聞

常識的に考えて、カナダ・メキシコ両国は対抗せざるをえませんので報復関税を取るでしょう。
しなければ負けっぱなしですから、国内に示しがつきませんもんね。

【カナダのトルドー首相は1日、記者会見し米国からの輸入品に25%の報復関税を上乗せする方針を明らかにした。同日、トランプ米大統領がカナダに最大25%の追加関税を課す大統領令に署名したことに対応する」
(日経2月2日)
カナダ、トランプ関税に報復 まず3兆円分に25% - 日本経済新聞

トランプはムシがいいことに、エネルギー関連だけはカナダ産の石油・天然ガスには10%の軽減税率を適用すると通知しているそうで、これは真冬に自動車の燃料や暖房用燃料を高騰させたくないからでしょう。
米国が輸入する原油の約60%、電力の85%がカナダ産ですからね。
しかしそんなことはよくわかっているカナダは天然ガスについて関税率だけではなく、供給そのものを制限するとしています。

「アルバータ州のスミス首相は、当局が米国への石油供給制限や関税賦課に踏み切ると懸念を示しており、報復措置に反対。当局との関係が悪化している。
カナダは輸出品やサービスの75%を米国に輸出。最大の原油供給国でもあり、米国が2023年に輸入した原油の半分以上がカナダ産だった。
ウィルキンソン氏は記者団に対し、米国への報復措置がカナダの特定の分野や地域だけに不公平な打撃をもたらすものであってはならないと強調。「西部(アルバータ州)だけを選ぶのではない。(対米報復措置が)痛みを伴うなら、ケベック州もオンタリオ州もそれを分かち合うことになる」と述べた」
(ロイター1月30日)
報復措置、米国に損害与える製品に重点=カナダ天然資源相 | ロイター

また自動車部品については高関税をかけ、輸入される自動車、特にイーロン・マスクの率いるテスラには100%の関税をかけると言っています。

「米国勢調査局によると、2023年のカナダからの原油輸入は1000億ドル近くに上り、同国からの輸入全体の約4分の1を占めた自動車メーカーは特に大きな打撃が予想される。
カナダとメキシコで生産される自動車は、最終組み立て前に部品が複数回、国境を越えるケースもあるため、新たな関税によって広範なサプライチェーン(供給網)に負担が生じることになる。

カナダのトルドー首相は、米国の関税措置に対抗して1550億カナダドル(約1065億米ドル)相当の米国製品に25%の関税を課すと記者会見で表明した。また、トランプ氏の関税により食料品やガソリンの価格が上昇し、自動車組立工場が閉鎖され、ニッケル、カリウム、ウラン、鉄鋼、アルミニウムなどの供給が制限される可能性があると米国民に警告した」
(ニューズウィーク2月2日)
「自動車は特に打撃」トランプ関税2月4日、メキシコ・カナダ・中国に発動...貿易戦争に発展か|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

当然ですが、カナダやメキシコに進出していた日本の自動車産業も大きな影響を受けます。
米国市場向けに高関税がかかり、部品の供給がメチャクチャになるのは日本も同じだからです。

しかしこんなことでめげるトランプではありませんから、待ってましたとばかりに対抗関税をつり上げるでしょう。
かくして本格的な関税戦争のエスカレーションが開始されます。

しかも同盟国内部での関税という名を借りた「戦争」ですからタチが悪い。
共にほんとうに実体経済にダメージが拡がってやっと止めるということになります。
その頃には、経済は相当に破壊され、安全保障の連携にまでヒビが入りかねません。
なんせ仮想敵国である中国には10%ですから、どっちを見て貿易戦争しているんだというカナダの気持ちもわかります。

先週書きましたが、間違いなくインフレが驀進します。
トランプは信じがたいことにこんな太平楽なことを言っています。

「トランプ米政権が1日に最初の関税引き上げに踏み切ると、ホワイトハウス報道官が31日の記者会見で明言した。関税により米国のインフレ率が上振れするリスクが高まり、米国の1世帯あたり830ドル(約13万円)以上の負担増になるとの試算もある。報復関税の応酬という、勝者なき消耗戦も現実味を帯びる。
31日に記者団の質問に答えたトランプ氏は、関税が輸入物価に転嫁される影響を聞かれ「短期的な混乱が起こるかもしれないが、人々はそれを理解するだろう」と主張した。「関税はインフレではなく、成功を引き起こす」と述べた」
(日経2月1日)
トランプ関税第1弾 インフレ上振れ、世帯13万円負担増も - 日本経済新聞

短期的な混乱?わけないしょ、あんたビジネスマンだろう、こんなことやって「短期的混乱」で済むはずがないでしょう。

まちがいなくインフレは亢進します。「関税をかける」という言い方をするから何かかけられた当該国が支払うと思ってしまうのですが、違うのです。
支払うのは関税をかけたほうの国で、たとえばカナダのエネルギーならば、西部や中部のカナダのエネルギー供給に依存している諸州の国民が払うことになります。
また産業用としては自動車部品の割合が大きいので、米国の自動車産業は関税だけはかんべんしてくれと前から叫んでいました。
この米加墨の3カ国は緊密な経済連携をとっていました。


20250202-145217

第Ⅰ-4-2-2-19図 NAFTA域内(メキシコ、米国、カナダ)の貿易関係(2016年) | 白書・審議会データベース検索結果一覧

そしてサプライチェーンは複雑に入り組みました。
今、一番問題となっている自動車部品では商務省国際貿易局(ITA)交通機械部(OTM)によれば、このようになっています。

20250202-154801

自動車・部品に対する追加関税により影響を受ける輸入先国は(米国) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

メキシコは第1位、カナダは2位です。これらの国に高関税をかければ、それはたちまち米国ブランドの自動車の価格に直結するのは目に見えています。
そのうえ自動車本体輸入においても、この2国は群を抜いています。

20250202-154910

ジェトロ

こんなことをしたら、アメ車が凋落してしまいますよ、いいんですか、トランプさん。
つまるところ、世界貿易は縮小します。
世界一の消費大国であり、自由主義貿易のリーダーの米国が関税を武器にするということをするからです。

そして最大の問題はインフレ率が急上昇することですが、これについては次回に。

 

 

« 日曜写真館 曙の空色衣かへにけり | トップページ | さぁ、米国はインフレ再燃だ »

コメント

>アメリカがカナダからの輸入品に対して25%の関税を課すと発表したことに対し、カナダが報復措置に乗り出す構えを示すなか、トランプ大統領はSNSで「アメリカはカナダの持っているものなど何も必要ない」と投稿し、アメリカ経済は打撃を受けることはないという考えを強調しました。

NHKより。この人ほんとバカですね…

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 日曜写真館 曙の空色衣かへにけり | トップページ | さぁ、米国はインフレ再燃だ »