トランプ、ガザを米国領にするって?
こういうのを右派急進主義とでもいうのですかね。
トランプは一斉にあらゆる分野で、しかも急激かつ過激に「革命」を始めました。
しっかりしたものもある反面、おい、こりゃただの思いつきだろうというものも大量に混在しています。
内政面の政策はさすがに練られていますが、外交はハチャメチャです。
就任前からトランプはグリーンランドを売れ、パナマ運河はオレのモノと言ってきましたが、冗談めかした本気程度に思っていましたがそうではないようでまったく本気のようです。
このことについては別途記事にする予定ですが、言っているのが合衆国大統領ですからなんとも。
ところで今回はなんとまぁあのガザを米国領にするというのですから、さすがにトランプ耐性がついて来たと思った私もたまげました。
飛躍している、なんて生易しいものではありません。
トランプの横のネタニヤフですら困ったような微妙な表情をしていました。
ネコニヤフからすれば、武器支援さえくれれば万々歳なのに新たな火種をつくりやがって有難迷惑というところでしょうか。
「アメリカのトランプ大統領は4日午後、日本時間の5日朝、ワシントンを訪れているイスラエルのネタニヤフ首相とホワイトハウスで会談しました。
その後の共同記者会見で、トランプ大統領は「アメリカはガザ地区を引き継ぎ、われわれが仕事をする。ガザ地区を所有し、責任を持って、そこにある危険な不発弾や兵器を取り除く」と述べました。
その上で「長期的に所有することを見込んでいる。それが中東の一部そして、中東全体の安定にもつながると見ている。私が話した誰もがアメリカが土地を所有し何千もの仕事を作り出すというアイデアを気に入っている」と説明しました。
またトランプ大統領は「ガザ地区は何十年もの間、死と破壊の象徴であり、その近くに住む人々にとって最悪だった。ガザ地区に住む180万のパレスチナ人が最終的に住むことになるさまざまな場所を建設する。死と破壊、そして、不運を終わらせる」と述べて,
ガザ地区の住民の別の場所への再定住を進めるべきだと主張しました」
(NHK2月5日)
トランプ大統領「アメリカがガザ地区を所有」長期所有の考え示す イスラエル ネタニヤフ首相と会見 会談も | NHK | トランプ大統領
アメリカ大統領選:トランプ氏とイスラエル・ネタニヤフ首相が会談へ、20年9月以来 : 読売新聞
まだ速報レベルですので詳細はわかりませんが、このようなプラン(なのか?)のようです。
当人は「綿密にあらゆる角度から見当した」と言っていますが、ご冗談でしょう。
整理するとこんなかんじかな。
【速報】トランプ大統領「ガザはアメリカが所有する」 ガザ住民「全員の移住」を提案(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース
① 米国はガザ地区を引き継ぎ、ガザ地区を長期的に所有し、その責任を負う。そのことが中東の安定につながる。
② 米国はガザを平定し、破壊された建物や不発弾を撤去する。
③ 帰還まで全員が移住する。
④ 移住する住民の受け入れ先の候補地はヨルダンやエジプトである。
⑤ パレスチナ人は帰還するが、彼らは他の方法を試して失敗した。歴史から学ばなければならない。
結論から言います。
絶対に不可能です。成功するはずがありません。
パレスチナ側にとっては再び祖国を追われることになりますし、米国にとってブッシュが始めた反テロ戦争を繰り返すことになります。
トランプは米軍派遣を口にしていませんが、軍事的安定なくしてはガザの復興、ましてや再開発などは夢幻です。
すると誰がどのような形で軍隊を派遣するのでしょうか。
イスラエル軍がそれをすれば、ただの占領地の固定化である以上、パレスチナ側と国際世論、そしてトランプが味方につけたいと考えている中東諸国から猛反発を受けることでしょう。
だから米国が一時的に所有権を握るという奇手で乗り出したのでしょうから、このイスラエル軍支配はありえません。
紛争地に軍を派遣するには、国際的枠組みを作るのが常道です。
最近の典型的なケースは、国連安保理1386号を根拠にした米国とNATO軍の作ったISAF(国際治安支援部隊)があります。
「憲章第43条の規定に基づいている。軍事的強制措置は、「安全保障理事会と加盟国の間の特別協定に従って提供される兵力・援助・便益」によって行われる。ISAFはこの措置に従い、2001年12月31日にアフガン暫定政府と軍事技術協定(Military Technical Agreement)を結んでおり、この協定はアフガン正統政府の発足後、2003年12月9日に再び調印されている」
国際治安支援部隊 - Wikipedia
トランプはこのような国連を通した国際的枠組みが大嫌いですから、法的根拠に国連と言う枠組みを使わないつもりでしょう。
だとすると、誰の要請に基づいてどこと協定を結んで米軍を派遣する気なのでしょうか。
よもやイスラエルではないですよね。ガザはイスラエルの領土ではありませんよ。
今ガザにイスラエル軍が存在しているのは、ハマスのテロに対応した自衛戦闘という建前になっているからで、たぶん十数年かかるであろう再建復興までイスラエルが支配してよいということではないのです。
唯一合法の主権者はパレスチナ自治政府です。
彼らがいかに復興という名目であろうとも、ガザから住民を追い出すことに同意するとは思えません。
パレスチナ自治政府は絶対にこのプランに同意しない以上、このトランプ案の法的根拠は存在しないのです。
ガザのパレスチナ人たちが平穏な戦闘のない生活を望み、復興を望んでいるのは事実でしょう。
しかし同時に彼らの大多数はハマスの精神的支配下にあるのもまた事実です。
ハマスが仕掛けたテロだ、ハマスは人間の楯を使ったというのは、彼らにとってどうでもよよいことです。
そしてガザ戦争の結果、彼らはイスラエル軍によって家族を失い住む場所を失いました。
いまやパレスチナ人は、ガザ戦争前の意識とは違う宗教的とすらいってよい反イスラエルと化しています。
そういう彼らがおとなしくガザの地を離れて難民生活をするでしょうか。
とてもそうは思えません。
仮に移住先が見つかったとしても(それ自体きわめて困難ですが)、そこはテロリストの巣窟となるのは必至だからです。
そもそも米国が引き受けないと言っているまさにその理由で中東諸国も引き受けないのです。
ただちに中東諸国は拒否の共同声明を出しています。
「土曜日、強力なアラブ諸国は、ガザから隣国のエジプトとヨルダンにパレスチナ人を移住させるというドナルド・トランプ米大統領の提案を拒否した。
エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、パレスチナ自治政府、アラブ連盟は、ガザと被占領西岸地区のパレスチナ人を自分たちの領土から退去させる計画を否定する共同声明を発表した」
アラブ諸国は、パレスチナ人をガザからエジプトとヨルダンに移住させるというトランプの提案を拒否 |AP通信 。
特に候補となっているエジプトは、ハマスの母体であるイスラム同胞団がいるために国境検問所すら締め切っています。
よりによってこの時期に、ネタニヤフの直後に訪米するゲルさん、ガザ難民を受け入れるなどと寝ぼけたことを言っていると、ではひとつ日本かうけいれないかねと言われますよ。
まだ速報ていど程度の情報量なのでここまでとしますが、トランプの底抜け脱線ぶりが改めてわかりました。
道理でリアリズム外交のポンペオを呼ばなかったはずです。
« トランプ関税戦争、中国の不思議な静けさ | トップページ | パナマ運河問題は「領土拡張意欲」などではありません »
コメント
« トランプ関税戦争、中国の不思議な静けさ | トップページ | パナマ運河問題は「領土拡張意欲」などではありません »
無理だ。
投稿: 山形 | 2025年2月 6日 (木) 06時10分
トランプは鳩山みたいに最後に話を聞いた人の言うことに納得しやすい性格らしいから今回みたいな周りの閣僚も十分理解していないような放言はそういった類なんでしょうな
投稿: 中華三振 | 2025年2月 6日 (木) 08時17分
ガザ住民を強制移住させれば、民族浄化で国際法違反になる。
イスラエルの好きにさせれば、イスラエルが民族浄化をやる。
人口の約半数が15歳未満だろうと、ガザの人々はいずれにせよ浄化される。どちらの浄化がマシか。
とでもいうのだろうか。
実利と名誉の実現>人道と法の尊重、ビジネス∪人道、ビジネス∩人道…
トランプ大統領が何をどう考え意図し、あのように言っているのかは、私には今のところ全然わからない…
投稿: 宜野湾より | 2025年2月 6日 (木) 13時03分
せめてトランプもアメリカが「所有」ではなく「管理」するといえばよかったのに。ネタニヤフも内心ではトランプを軽蔑してるのでは?ぶっちゃけパレスチナ問題を本気で「解決」したいならジェノサイド的方法しかないと思いますが、それができないことがこのパレスチナ問題が「問題」である由縁です。万万が一周辺アラブ諸国がガザ人を受け入れたとしても問題は何も解決しません。これまでの歴史的経緯を考えれば移住した先が新たなテロの拠点となり新たな紛争の火種となることは火を見るよりも明らかです。それにしてもなぜトランプがこんなことを言ったのか理解に苦しみます。
投稿: | 2025年2月 6日 (木) 19時40分
管理人様
つい先ほどの投稿ですが、ハンドルネームを入れるのを忘れてしまいました。このコメントも公開していただけると嬉しいです。
投稿: 中島みゆき | 2025年2月 6日 (木) 19時43分
そうですかね?
私はトランプの言っている事には、一定の合理性があると思うんです。
岩屋が国会答弁で言うには、「日本は従来どおり二国間解決を希求する」と。
これの意味するところは、国連中心主義の堂々巡りです。
だれがあの恒常的うそつきのハマスを信用しますかね。きっと、数年後には同じ事になる。国連だってUNRUWAだかハマスだか見分けがつかない有様ですし。
いづれにしても、いっぺん住民を外に出して地下迷路を徹底的に破壊のうえじゃないと、ガザ再建に着手しちゃダメでしょ。
でも、実現性には遠く、トランプは領土的野心を言われる事になるでしょう。けれど、湾岸諸国は内心賛意を持っている可能性も高いと思います。彼らの不文律だった「パレスチナ承認までは、イスラエルを国家承認しない」とする鉄の掟を覆させたのもトランプ前政権だったワケですし。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年2月 6日 (木) 22時18分
そらイスラエル全面無条件支持の山路さんからしたら問題ないでしょうね
投稿: 中華三振 | 2025年2月 7日 (金) 09時37分