ガザで反ハマスデモ勃発

日本のメディアはハマスについて大甘ですから、あまり報じられていませんが、ガザで反ハマスのデモがありました。
「パレスチナ・ガザ地区で25日、同地区を実効支配するイスラム組織ハマスに対する抗議デモが行われ、何百人もが同組織に権力を手放すよう求めた。ガザでの反ハマス・デモとしては、イスラエルとハマスの戦争が始まって以来、最大規模。
覆面姿のハマス戦闘員は銃や棒を持ち、抗議行動に介入。デモ隊を強制的に解散させたり、数人に暴行を加えたりした。
ハマスに批判的な活動家たちがソーシャルメディアで広く共有した複数の動画では、ガザ北部ベイトラヒアで若い男性たちが行進している。参加者は「出ていけ、出ていけ、出ていけ、ハマスは出ていけ」と声をあげている。
ハマスの支持者たちは、抗議デモは大きな意味をもたないとし、参加者は裏切り者だと非難した。ハマスはこれまでのところコメントしていない。
ガザ北部での抗議デモは、ガザの武装組織イスラム聖戦機構がイスラエルに向けてロケット弾を複数発射したことを受け、イスラエルがベイトラヒアの大部分に避難命令を出した翌日に行われた。
(BBC2025年3月26日)
ガザでハマスへの抗議デモ、何百人もが参加 開戦以来最大規模 - BBCニュース
BBC
またXにも
このなかの「カタールが支援する偏向マスコミ」とはアルジャジーラのことです。
まぁ当然の声です。
ガザの一般住民にとってハマスがガザに居てテロを起こし続けることは、イスラエルの攻撃対象となってしまいます。
ですからこのデモはは、別にイスラエル万歳なんて言っているわけではなく、ストレートに「ハマス出て行け」です。
ハマスの親類であるイスラム聖戦機構がイスラエルにロケット弾を撃ち込んだ翌日に起きています。
こういった過激派のテロ攻撃は、報復されることを前提としており、イスラエル軍機が報復爆撃に来た時には過激派は遁走し、住民だけが被害を受けて、ガザ保健省という名のハマスが怒りの声明を出す、という仕組みです。
ハマスなどは空爆による民間人被害を喧伝して、このようにイスラエルは無法なのだ、停戦協定は守られていないと宣伝できます。
ガザの一般住民にとってはたまったもんじゃありません。
ですから、疫病神は出て行けというデモとなりました。
「ガザ北部での抗議デモは、ガザの武装組織イスラム聖戦機構がイスラエルに向けてロケット弾を複数発射したことを受け、イスラエルがベイトラヒアの大部分に避難命令を出した翌日に行われた」
(BBC前掲)
同じようなことが、1979年9月にパレスチナゲリラ(PLO)とヨルダン政府との間で起きたことがあります。
「ヨルダン王国はアラブ諸国の一つであり、パレスチナに隣接してその東に位置するため、第1次中東戦争と第3次中東戦争で生じたパレスチナ難民の多数が移住してきていた。パレスチナ=ゲリラ組織のPLOもヨルダンを拠点に活動し、イスラエルを攻撃したので、イスラエルもしばしばゲリラ鎮圧の名目でヨルダン領内に侵攻してきた。
当初、ヨルダン政府はPLOを支援していたが、ゲリラの中にはヨルダンの王政を批判するものも現れたので、フセイン国王はパレスチナ難民とPLOの存在を、ヨルダンを危険にさらすものと考えるようになり、1970年9月にPLOに国外退去を宣告し、弾圧を加えた。首都アンマンのパレスチナ難民キャンプが戦場となり、一般市民も巻き込んで、パレスチナ人だけでも4000人近い死者が出た」
ヨルダン内戦/黒い9月
今回の反ハマスデモも構図は一緒です。
過激派はそこに住む人たちの平和な生活を犠牲にして、「パレスチナ解放」を唱えて爆弾を破裂させ、ロケット弾を撃ち込みます。
そしてとうとう一昨年10月7日にはハマスの戦闘員が、野外コンサートにロケット弾を大量に撃ち込んだ後に突入し、手当たり次第に発砲して200名以上を虐殺し、100人以上を拉致しました。
下の写真は、血だらけの女性が髪をつかまれて車に連れ込まれています。
この女性は長期に渡る人質となったはずで、生死は不明です。
ハマス戦闘員が音楽イベントに――若者ら260人が犠牲に 「奇襲」「民間人の人質」「SNS」…イスラエルに異例な大規模攻撃 - ライブドアニュース (livedoor.com)
これが「武装勢力」とやらの「パレスチナ解放闘争」だそうです。
このようなテロ行為を日本のメディアは「イスラム組織ハマスの解放闘争」と呼んで美化しました。
つまり、ハマスはガザ地区を暴力で支配しているだけであって、なんの合法性も正義も持たないテロリスト組織にすぎません。
それを知ってか知らずか、うちの国の首相はこの10.7テロの後、パレスチナ自治政府とイスラエルに平和を呼びかける電話をしたそうです。
「岸田文雄首相は10日、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と近く個別に電話会談を行う方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが大規模な戦闘状態に陥っていることを踏まえ、イスラエルとアラブ諸国の双方とも良好な関係を持つ日本の立ち位置を生かし、停戦を呼びかける」
(産経10月10日)
<独自>岸田首相、イスラエル・パレスチナに停戦呼びかけへ - 産経ニュース (sankei.com)
当時、おもわず馬鹿ですか、と吹き出したことを思い出しました。
だってパレスチナ自治政府はなんの力も権限もない映画の大道具みたいなところですよ、そんな所になにを期待しているのですか。
そりゃ、パレスチナ自治政府は、即時和平を働きかけよう、もっと支援のカネを送って下さい、と答えるでしょうが、なんの力もありません。
パレスチナ自治政府とは、昔のPLOのことですが、かつてはソ連の後ろ楯でブイブイいわしていましたが、今は腐敗して衰弱しきっています。
カネなし、武力なし、人材なしで、136カ国から承認された 「国家」のようなものだという看板だけが頼りですが、これもハマスに奪われかかっています。
パレスチナ自治政府 - Wikipedia
2007年にイランをバックにつけた新興勢力であるハマスと内ゲバを演じてコテンパンにされて以来、ガザ地区の実権はすべてハマスに「実効支配」されてしまいました。
ハマスはイランから潤沢な資金と武器、そしてイラン革命防衛隊の支援をもらって勝利を収めました。
以後、自治政府はヨルダン川西岸に引きこもって、ガザはハマスの天下です。
「2007年3月17日、ハマースとの挙国一致内閣が成立したが、両者の抗争は断続的に続いた。6月11日、ハマースがガザ地区の占拠に及んだことで、アッバースは一方的に内閣の解散を宣言。ハマースを排除した新内閣(首相:サラーム・ファイヤード)を組織したが、ハマース側は当然これを認めなかった。以後はパレスチナは、ガザ地区を領するハマースと、ヨルダン川西岸地区を領するファタハの分裂状態となった。2012年10月にヨルダン川西岸地区のみで実施された地方選は、ハマースがボイコットしたため事実上のファタハへの信任投票となったが、主要都市で敗北した」
ファタハ - Wikipedia
一方、ハマスはUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に浸透し、世界からの支援を独占してきました。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) |UNRWA
UNRWAは通常の支援機関とは異なり、パレスチナ難民キャンプの運営自体に関わっています。
教育や病院など900以上の施設を運営しており、道路などのインフラ整備なども実施しています。
その結果、UNRWAだけで3万人という大量の職員を雇用して、もちろんハマスに忠誠を誓う者しか採用されません。
UNRWAは5地域で702校を運営し、年間約55万人のパレスチナ難民の子どもたちに無料で初等教育を提供しているほか、次の教育・訓練施設を運営しています。
教員養成校2校(ヨルダン川西岸およびヨルダンに各1校):約2000人が教育学を学んでいます。
技能・職業訓練センター8校:約8000人のパレスチナ難民が様々な分野の技能・職業訓練や高等教育を受けています。
EUだけで毎年UNRWAに6億9100万ユーロ(約1080億円)もの援助をおこなっており、巨大な利権となっています。
日本もUNRWAに対し第6位の援助国で、3320万米ドルを拠出していました。
このUNRWA利権を握っているのは、ガザ地区を「実効支配」しているハマスだからです。
日欧の「善意」は、ロケット弾に変わっているのです。
それを知っているガザ住民は、一昨年の23年7月には、大規模な反ハマスデモを起こしています。
ガザ地区住民がハマスに抗議 生活苦から数千人がデモ参加(AP通信) - Yahoo!ニュース
「ハマスは"鉄の拳"でガザ地区を支配し、デモは禁止され、反対意見は封じ込められた。
2006年に実施されたパレスチナ自治区の選挙で多数派となったハマスは翌年、ガザ地区を実効支配するに至り、イスラエルとエジプトは同地区を封鎖した。
イスラエルにしてみれば、同国の生存権を否定するハマスを封じ込める必要があったが、封鎖はガザの経済を荒廃させ、失業率を急上昇させ、頻繁な停電をもたらした。
現在の猛暑下で電力受給が逼迫、住民は1日に4時間から6時間の電力供給しか受けられない。
湾岸の富裕国カタールから、ガザ地区の最貧困家庭に毎月100ドルが支給されるが、ハマスはそこから約15ドルの手数料を天引きしていることに対しても、デモ参加者はハマスを批判している」
(AP2023年7月31日)
そしてとうとうハマスは「教育組織」「福利厚生機関」はたまた「UNRWA 」「ガザ保健当局」といった仮面を脱ぎ去って、10月テロを行い、ガザを焦土と化しました。
ハマスは「悲惨なガザ住民を救うための勇敢な戦士」という顔を外には見せつつ、ガザ住民に対しては厳しい抑圧政治を敷いてきました。
そしていったんイスラエルとの戦闘になれば、住民を楯にしてその影から攻撃を加えます。
「ハマスは学校や病院を作ってきた」と言いながら、その地下には大規模なトンネルを堀り、戦闘拠点を作っていました。
人質はこのなかに閉じ込められていたようです。
イスラエルのワンブロックを焦土にするような空爆は強く批判されるべきですが、それはこのような背景があったからです。
やっとガザ住民にハマスノーと言えることが出来るようになったことを祝福します。
いままでの戦争中にも、ハマスが備蓄した支援の食料、燃料などを独占したために何度か暴動が起きていました。
そして戦後もまた支援を横取りしようとしていることに怒っているのです。
このようなデモを過大に評価することはできませんが、仮にイスラエルでネタニヤフが失脚するようなことになれば、それと連動して新たなガザ政府を選ぶ選挙も不可能ではありません。
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