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2025年3月13日 (木)

なんだただの帝国主義じゃないか

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なんだ「ただの帝国主義」じゃん、昨今のトランプの所業をみているとそう見えてきます。
というか、帝国主義と言い切ってしまうと実に分かりやすい。

トランプの再登場に期待をこめて見ていたはずの武者陵司氏が、こう苦々しげに書いています。

「歴史の針が大きく逆回りし始めたように見える。20世紀前半までの、列強による世界分割、各国が権益追及を丸出しにして、戦争にまい進した帝国主義時代に戻ったとしか思えない変化が起きている。南シナ海の公海上の岩礁を埋め立てて軍事要塞化した中国や、主権国家ウクライナにあからさまに侵略し領土を奪取したロシアなど、ならず者国家群(Rogue Nations)だけかと思ったら、トランプ政権もそれに劣らず対外膨張の意欲をあからさまにしている。
トランプ氏はグリーンランドの領有やパナマ運河の管理権の奪還の意志を示した。また。メキシコ湾をアメリカ湾への呼称変更し、2015年に「デナリ」と改称されていたアラスカ州の北米最高峰の名称を、それ以前の「マッキンリー」の呼称に戻した。これらは領土拡大の野望をむき出しにしたものととらえられている。マッキンレーはハワイ併合・フィリピン併合・米西戦争など帝国主義政策を推し進めた第25代大統領(1897-1901)である」
トランプ氏は帝国主義者なのか | 武者リサーチ

ただし武者氏は、さらに露骨な古典的帝国主義国家である中国とトランピズムは同じではないとして、こうもつけ加えています。

「一見帝国主義に見えるトランプ氏の一連の政策、言説の多くは、この中国の「現代版帝国主義」に対抗してのものである。グリーンランドやウクライナの鉱物資源は、今や世界の希少資源生産の大半を支配する中国依存を脱却する必要性から出てきている。パナマ運河も中国による権益支配を許さないために打ち出された。トランプ大統領が侵略者であるプーチン氏と気脈を通じ、祖国防衛に苦闘するゼレンスキー氏に大きな譲歩を求めているが、それも対中戦略から出てきていると考えられる」
(武者前掲)

つまり武者氏は、帝国主義的外交が対中包囲シフトの形成のために必要なのだと説明していますが、これは保守文化人共通の贔屓の引き倒しにすぎません。
残念ながらそうではないと思います。

トランプが自由主義陣営の盟主としての責任とプライドを放棄していなければ、そうもいえないことはないと思いますが、残念ですがその大前提がくるってしまっています。
自由主義国家を保護するという西側盟主の任務を放棄してしまえば、そこに現れてくるのは「ただの帝国主義」にすぎないのです。

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習主席とトランプ次期大統領が電話会談 “意思疎通で合意” | NHK | 習近平主席

トランプは、今後予想される台湾侵攻に際して、台湾防衛の義務について言葉をにごしながら、半導体産業は貿易赤字を生んでいるのだ、なんとかしろと言っています。
ウクライナの鉱物資源と同じことで、これもディールなのです。
トランプは台湾をカードのダシに使って習近平とディールするはずです。
そしてディールの配当は米国のみが独占するのでしょう。

日本に対してもまったく同じ。
安倍氏がいたら別だったでしょうが、特に日本への思い入れもなにもないはずで、日米安保の世界戦略上の構造的意味などには無頓着で「米国が日本を守ってきた」という一面しか見ようとしません。
当然のこととして、これからも守ってほしかったらナニかを寄こせと迫ってくることでしょう。

その典型がウクライナ戦争です。
トランプはゼレンスキーに対して、「米国の軍事支援がなければ、この戦争は2週間で終わっていただろう。我々に感謝するべきだ。あなたはカードを一切持っていない。鉱物資源を兵器供与の見返りで寄こせ」と言いましたが、ほんとうにそうでしょうか。
根本的にまちがっています。
米国の武器供与がなければ、ウクライナは2週間ももたなかったとは、事実と正反対の認識です。

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ウクライナ侵攻、首都キーウで爆発音か 数千人が国外へ避難 - BBCニュース

では、この侵略後2週間になにがあったのでしょうか。
ロシア軍は北部と東部国境から一気に雪崩込み、首都キーウを陥落させ、ゼレンスキーを亡命に追いやり、傀儡政権を作る目論見でした。
その時、「米国供与の武器」があったとでもいうのでしょうか。
いや、ウクライナに対しての本格的武器供与のためのレンドリース法(武器貸与法)が成立したのは、開戦後3カ月後の22年5月でした。
仮にゼレンスキーがウクライナから逃亡し、国民も団結して抵抗しなかったなら、トランプの言い草のように間違いなく侵攻から3日で戦争は終結していました。

そしてウクライナ軍は武装解除され、1カ月以内に西部も含んでウクライナ全土が事実上のロシア領となっていたことでしょう。

その結果、ウクライナにはロシア軍が軍事進駐し続け、事実上のロシアの「国境線」はウクライナとポーランド国境となったはずです。
そしてプーチンは次なる侵略の標的としてバルト3国か、フィンランド、あるいはポーランドに狙いを定めたでしょう。
つまりは旧ロシア帝国の勢力圏の回復です。
このようにロシアが肥大化した場合、ヨーロッパの勢力図は大きく塗り替えられたはずです。
日経の欧州総局長赤川省吾氏がこう述べています。

「不安が広がる。在英ヘッジファンドの運営責任者は「バルト3国消滅」を地政学リスクの「最悪シナリオ」に組み込むかどうか頭の体操を始めた。
米国の大幅譲歩により、ウクライナがロシアの属国になる。その後、ロシア・ベラルーシなど旧ソ連の強権国家軍が「旧領回復」を目指してバルト3国に侵攻するという筋書きだ。その際に金融市場がどう反応するのかをシミュレーションしている。
心配は市民生活にも忍び寄る。筆者は記者の傍ら、ベルリン自由大学で週1回、非常勤講師として教えている。先日、授業で欧州の安保政策をテーマに議論したところ、学生の多くが内心、恐れていることがあった。「近い将来、徴兵され、ロシア軍と戦うために東欧の前線に送られる」。米国が西側の盟主であると信じられなくなったことによる心理的な影響は計り知れない。
いずれトランプ政権は行き詰まり、穏健な政権に交代するとの期待はある。しかしトランプ大統領を選んだ米国の民意は残る。「ポスト・トランプ」で古きよき米国に戻り、それが長続きするという保証はどこにあるのか。安保も経済も米国に頼る日本もひとごとではない」
(日経2025年3月9日)
「西側の盟主」アメリカ、終わりの始まり ヨーロッパに漂う距離感 - 日本経済新聞

この「強権国家軍の旧領回復」を、いま、板一枚で防いでいるのがウクライナなのです。
ウクライナにカネと武器を渡して助けたから恩に着ろ、というのは真逆で、ウクライナにヨーロッパと世界は助けられたのです。

このような発言をいやしくも合衆国大統領が恥ずかしげもなく言える米国は、ウクライナの真の価値を見誤っており、世界の安全保障を大きく脅かしている大馬鹿者のように思われます。

元駐米大使の佐々江賢一郎氏はこう見ています。

「中露など米国に挑戦する国々を念頭に、もう一回力を背景とする国益の維持を図らなければ、きれいごとでは済まされない。米国から見たこうした現実主義的な見方を端的に率直に表した外交が、〝トランピズム〟といえる。
懐深く世界のために資金を出し、軍事・安全保障も提供し、鷹揚に構えていた米国の時代はもう終わりつつある」
(産経1月25日)
「世界に軍事力を提供した米国」の終焉 トランプ氏が突きつけた「自分の力で自分を守る」時代に対応を 佐々江元駐米大使 - 産経ニュース

残念ですが、このような狭い視野しかない男が大統領になってしまい、無邪気にグリーンランドを寄こせ、カナダは米国の1州だ、ウクライナの鉱物資源を寄こせと言うのですから、なんともかとも。
こうして米国は「ただの帝国主義」に堕していく道を歩むことでしょう。

 

 

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コメント

トランプの言うことは帝国主義的である一方、実際に軍事力を行使することについては臆病なほど忌避しています。いくらマッドマンセオリをしかけても結局トランプはから脅しだ、という所を各国に見透かされたときがアメリカの終焉なのかなあと感じます。あまり考えたくないですが、すでにロシアや中共はトランプの関税政策によるアメリカの凋落を待っている(もしくは、誘導している?)のでしょう。

↑「だからトランプはさっさと大砲をぶっ放せ」と言いたいわけではなく、
自らを追い込むような同盟国相手の経済戦争政策をそもそもとるべきではなかった、と思っています。

おっしゃる通り、最初の数週間をウクライナが持ち堪えてキーウも落とされなかったのは、一重に「ウクライナ軍が持てる火砲全て使って全力で頑張ったから」に他ならないんですよね。

ジャベリンやスティンガーはもちろん「戦場の女神」としてとても有効に働いてくれましたが、一番貢献したのは「元々ウクライナが持っていた火力」でした。

彼我の圧倒的な戦力差にも心を折らずに、とにかく攻めて来る相手のいる場所に、何が何でも弾を撃ち返す。その基本を、仲間の屍を積み上げながらも愚直に繰り返したからこそ、鬼畜どもロシア兵は逃げ帰った訳です。

トランプは馬鹿。コイツの存在するデメリットは、メリット(とされているもの)と「ディール」する価値すらない、別次元の害悪です。アメリカの良識な国民(どのくらい残ってるか知りませんが)が一刻も早く引き摺り下ろすことを期待します。

 トランプ政権はウクライナの欧州における「要石(キーストーン)たる価値」を全く分かっていません。ウクライナ戦争はトランプ政権が考えているような局地的な限定戦ではないのです。
また、ウクライナをロシアに献上する事によって、ロシアがアメリカと対中共同歩調を取るなどと言うのは迷信です。
むしろ友好国に向けた関税政策などトランプが取る政策によって、欧州各国は政治・経済面でも中国を捨てきれずに推移する可能性が高い。この日本だってそうです。中国と米国、政治と経済をこじつけで分離して、これまで二股でやって来た事を安堵しているのが事実でしょう。

NATOが弱体化して米国が孤立すれば、トランプのおかげで復活したロシアは大西洋から、中国は太平洋からアメリカを目指します。そのとき、すでに世界のパワーバランスは崩れていて米国を助ける向きは残っているのか?
アメリカは広い海を隔てていて最新鋭の物量も備えているおかげで誰の助けも借りず、「どの国からの侵攻も受けない安全な国」と考えているなら、これほど傲慢で大きな誤謬はありません。

他国の大統領でありながらトランピニアンしてる(?)私として言いたいのは、過去記事にあったようにトランプ親ビンはあくまで米国、それもプアホワイトと呼ばれる落ちぶれた中間白人層が選出した大統領だということです。親ビンは殊のほかクソ誠実なので、自由主義陣営の結束や世界平和の為に働くことよりも、まずプアホワイト層ファーストなんですわ。それを主張してきて大統領選を勝ち抜いたんですから。

前にも書いたと思いますが、リッチな連中を除けば、米国政府の財政や並の米国民は巨額の借金漬けですわ。FRBが利下げに動いても米国10年債の金利は高いままなかなか下がってきません。超大国米国の信用も、もう絶対ではないんですわ。この先、米国債が連続して格下げされたりして暴落でもしようものなら世界経済には大激震必至(米国債を大量保有する日本は、自国債の暴落ともども即死しそう)で、そうなれば地域紛争や貿易戦争どころではなくなりますわ。トランプ親ビンが「カネカネカネだ!」と守銭奴なのは、そうでもしないと米国が借金ジゴクに落ちるのを防げないからですわ。親ビンは殊のほかクソ誠実なので、自分自身がリッチマンだとしても、他同国民の借金ジゴクを無視できない。

関税は、プアホワイト救済には欠かせない。なんせプアホワイトときたら他国労働者に労働力コスパでは勝てないから(勝てるのなら、チャンスの国アメリカで貧乏なままのハズがない)。そして貧乏で心が折れた彼らの多くが違法麻薬などで廃人になっている現実があるんで、それを取り締まらないメキシコやカナダや中共は仇同然なんですわ。不法移民も、プアホワイトから仕事を奪っていて仇ですわ。それが保護貿易であろうと血も涙もないリアリストだと言われようと、親ビンは殊のほかクソ誠実なので、支持者を見捨てるワケにはいかないんですわ。

ガチのアメリカン保守なんで、カウボーイ時代よろしく「テメーのケツは自分で拭け、汚いケツならなおさらだ」の精神から、自衛についてはまず自己責任と思ってるんですわ。ヨーロッパのことは、ヨーロッパがなんとかするのが当然です。ウクライナのことも、親ビンは殊のほかクソ誠実なので、「まず泣きつくのならドイツやフランスだろ? モノを頼むのなら仁義をきってもらおう、手ブラで来て、手打ちを仲裁してくれだなんて失礼じゃないか」と思ってる。

以上がプアな私の推測ですわ。よりによってゲルの時代にトランプ親ビンと対峙するなんて、私は不幸な時代の日本人だと覚悟してます。安倍さん、生き返ってくれよ。

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