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2025年3月 4日 (火)

ドイツの分裂

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ドイツ総選挙の結果、ご承知のとおり、中道左派の社会民主党(SPD)や緑の党などで作る現政権が敗北し、ショルツ首相は首相の座を失いました。
第1党となったCDU(キリスト教民主同盟)はSPDなどと連立を組む予定だそうで、メルツ党首が新首相となるでしょうが、変わり映えのしないことです。

ただし新首相のCDUのメルツは、いままでのメルケルの流れを大転換しようとしています。
理由は、トランプの出現と後述するAfD(ドイツの選択肢) が第2党となったことです。

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ドイツ野党メルツ氏、トランプ氏との取引に前向き-総選挙前倒し促す - Bloomberg

「私の絶対的な優先事項は、できるだけ早くヨーロッパを強化し、アメリカからの真の独立を徐々に獲得できるようにすることです」
これは、次期ドイツ首相となるであろうフリードリヒ・メルツ氏の宣言である。(略)
メルツ氏は昨年12月初旬、ベルリンの連邦安全保障政策アカデミーで講演した。
その際に、将来的にドイツ連邦軍には「少なくとも年間800億ユーロ」が必要になると強調した。今のレート(1ユーロ約155円)で計算すると、約12兆4000億円である。1ユーロ130円で計算しても、10兆4000億円だ。
ちなみに、2025年度の日本の防衛予算案(米軍再編経費など含む)は、過去最大の8兆7005億円である」
ドイツが「アメリカからの独立」を目指して軍拡の準備を始める。米ではなく欧州の核の傘へ。独仏の連携強化(今井佐緒里) - エキスパート - Yahoo!ニュース

このヨーロッパの大転換は別途記事にしますが、とにもかくにも、第2党となったAfD だけは政権に入れないということのようです。
まぁ、マスクやバンスらの贔屓の引き倒しが反発を招いたのでしょうか。
ちなみにAfDはトランプと一緒で、ウクライナ支援反対です。

得票数はこのようなものでした。
AfDが孤立しておらず、連立を組める党がひとつでもあれば政権党となった可能性があります。

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BBC


「ドイツの総選挙が23日に行われ、最大野党会派の中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が得票率28.6%で第1党となった。24日未明(日本時間24日朝)までに開票が終了した。CDUのフリードリッヒ・メルツ党首(69)が次期首相になる見通し。メルツ氏が、「防衛においてアメリカから独立できるよう、できるだけ早くヨーロッパを強化することが最優先事項だ」と述べたことが注目されている。
開票の結果、CDU・CSUに続き、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率20.8%で2位、現与党の中道左派・社会民主党(SPD)が同16.4%で3位、緑の党が4位、左派党が5位となった。
オラフ・ショルツ首相率いるSPDにとっては、過去最悪の結果となった」
(BBC2025年2月24日)
ドイツ総選挙、最大野党の中道右派が勝利 極右AfDは第2党に - BBCニュース

今回、ドイツが地方別であまりにもはっきりと色分けされてしまって、米国の南北戦争を思わすような鮮明さです。
下の地図をご覧ください。
左が各選挙区で最も得票した政党で、右が二番目に得票した政党で、AfDは青、黒がCDU、赤がSPDです。

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JIIA 

「第一党がCDU/CSU、第二党がAfDであることより右派政党への支持が伸びたと考えられがちであるが、両者は分けて整理する必要があるだろう。まず、CDU/CSUへの支持は数字を見れば分かる通り飛躍的に伸びているわけではない。一方で、AfDの伸び率は全政党の中でも二番目に高く、注目に値する。各選挙区で最も得票した政党(Stärkste Kraft)を見ると、とりわけ旧東ドイツにおいてその強さが目立ち、多くの選挙区で第一党を獲得した。東西ドイツが統一後も経済格差や文化の違いを経験してきたことはこれまでも多く指摘されており、このことからAfDを「東ドイツの政党」と理解する向きもあるが、一方で、二番目に得票した政党(Zweitestärkste Kraft)を見ると分かる通り、伝統的にCDU/CSUの牙城であるとされる南部でも得票率を上げていることに注意する必要があり、AfDの影響力が拡大しつつあることが窺える」
(髙島亜紗子 日本国際問題研究所研究員2024年6月24日 )
JIIA -日本国際問題研究所-

これは去年6月の選挙のものですが、今回その傾向はいっそう鮮明になったようでてす。
AfDは完全に旧東ドイツを代表する政党となっており、いつまでも極右の色物政党と見る時期を脱しています。
一方ショルツ首相を出しているSPDは労組などの固定票頼りで、浮動票の獲得には失敗しています。
年齢別支持者層も老年層が基盤のようで、これも世界的なリベラルと軌を一にしています。

CDUはいまやドイツの衰退を作った責任者なので単独政権を作ることは難しく、SPDと組むという大連立をするしかない状況です。
CDUの党勢は、ヨーロッパ議会の動向にも影響があり、CDUが加盟している欧州人民党グループ(EPP)は、現職委員長のフォン・デア・ライエン(CDU所属)を出しています。

緑の党はひと頃の熱に浮かされたような脱炭素時代にはそれなりの力は持っていましたが、いまや国民の支持を失っているようです。
たとえばドイツは極端な脱炭素・反原発政策が実施されており、たとえば緑の党が作った暖房法のようなすべての暖房に再エネ使用を義務づけるようなことをしてきました。

「緑の党が主導して行った「暖房法」などに代表される、経済問題への関心の低さが離反要因であるように思われる。2024年より新設される全ての暖房設備は再生利用エネルギーの使用を義務付けられ、現行の暖房が壊れた場合なども適応される。とりわけ旧東ドイツ時代に作られた建物では、一時的な退去を含めて様々な対応が必要になることが予測され、インフレが続く中で住居にかかるコスト増に批判が集まった」
(高島前掲)

ドイツは緑の党と連立を組んだSPDのシュレーダーの下で脱原発が始まり、パイプラインによるロシアへのエネルギー依存を高めていきました。
そのシュレーダーは首相の座を降りるとすぐにロシア国営エネルギー企業ガスプロムの役員に転身し、その後もロシアのエネルギー企業の役員に天下りし、ロシアの代弁者となるという姿をさらけだしています。
メルケルもこのシュレーダーの脱原発路線を継承し拡大しました。
そしてドイツは、この脱炭素こそが21世紀のエネルギー政策だ、反対する者は地球の敵だくらいに吹きまくったわけです。

そのような極端なエネルギーシフトをしている時に起きたのが、新型コロナとコロナ回復後のエネルギー高騰であり、その後のロシアのウクライナ侵攻によるロシア制裁でした。
これで脱炭素・脱原発できた秘密であったロシアからの安価なエネルギーを失ったドイツは、国内の製造業が一気に不採算化してしまったわけです。

ドイツはロシアから輸入した安いエネルギーで自動車を作り、中国へ輸出するというモデルを作ってきました。
しかし自らが作った脱炭素政策はEVをうみだしました。
ドイツの強みは内燃機関誕生国であったはずですが、その優位性をみずから捨ててEVに走るという歴史的な失敗をしたのです。
フォルクスワーゲン、アウディー、揃ってEVに全振りです。

EVの仕組みは単純。ただの電気モーターで動くゴーカートのようなもので、一定の工業力があればどんな国でも作れます。
内燃機関のような複雑な仕組みも、エンジンを統御する精密な電子システムもいらない、 それを築き上げた百年の歴史も必要がなく、チャチャっとできる、まことにイージーなものでした。
だから中国政府の補助金を得てBYDなどが、一瞬にして世界有数の自動車会社となれたのです。
問題は世界のランバルを同じ土俵に引き込むことでしたが、まんまと脱炭素イデオロギーの僕と化して自分から、チャイナEVと同じ土俵に上ってくるのですからなんともかとも。
とうぜんのこととして、チャイナEVは外国製EVを蹴散らして、世界市場を独占しました。
日本も日産のように大きな打撃を受けた企業もありますが、トヨタは賢明にも揺るぎませんでした。

かくしてドイツは自らのビジネスモデルを一挙に失い、深刻な壁に突き当たっています。
この経済不況に最も影響を受けたのが、統一後も発展が遅れた旧東ドイツだったのです。
そこから誕生したのがAfDでした。
トランプが行き過ぎたリベラルのグリーン政策やDEIから生まれたように、このAfDもまた同じなのです。

 

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