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2025年3月 8日 (土)

関税が天ツバであることを知らないトランプ

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関税は天ツバです。
天そばではありませんよ、天に唾するというやつです。
天に向かってつばを吐けば、そのつばは自分の顔に落ちてくるという戒めです。

さて関税を政治的武器にしてはいけない、そんなことは現代の常識のハズでしたが、トランプがなんと大々的に関税ウェポンを使いまくっています。
猶予を与えたカナダとメキシコに、改めて関税をかけ始めました。

「トランプ米政権は4日、メキシコとカナダ、中国に対する関税を発動した。メキシコなどから完成車や部品を輸入する自動車産業への影響は大きい。関税発動に伴って米国内の自動車産業にかかるコストは合計で年間610億ドル(約9兆円)膨らむ可能性がある。米国の競争力を取り戻すための関税政策が逆に米国の製造業の力を落とし、中国勢の力を高めることにもつながりかねない」
(日経3月4日)
トランプ関税が招く「米国離れ」 車産業コスト9兆円増 - 日本経済新聞

大昔、関税はウェポンでした。といっても第1次大戦前までのことですが、それまで気に食わないと外国製に関税をかけて悦にいっていたものです。
結果どうなったのか。高関税をかけられた側は報復関税をかけ、それを受けてさらに重い関税をかける(以下繰り返し)、そしてやがて互いにインフレを招いて不況となり戦争に活路を見いだすようになる、はい、そしてほんとうに戦争です。

こんなばかなことをしたのは、ひとつに関税は貿易に必ず付帯しますから取りッぱぐれのない重要財源だったからという実利もありました。
この反省から、戦後にその調整機関としてのWTOをつくったのです。
まぁ、今は空洞化していますが、いちおう骨格だけは残っています。

そしてもうひとつ関税をかける建前は自国産業の保護です。
国際競争力が弱い産業を外国製品から守るために関税をかけて高くするわけですが、なんども書いてきていますが、関税を払うのは自国民なのです。
ですから関税は消費者が手にする食品や消費財、あるいはエネルギー価格にそのまま転嫁されてしまいます。
それを買う米国民にとってそれは増税であり、企業や国民を圧迫します。
また2割関税を乗せれば2割価格が跳ね上がり、インフレを招きます。
今の米国はインフレ退治が終了したといえない状況ですから、FRBは政府金利を上げて火消しをせねばなりません。

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米国のインフレ率、ついに4%割れ それでも再び利上げ論が出るわけ:朝日新聞

たぶん好意的に見てやれば、トランプはこう言いたいのでしょう。
けしからん麻薬を流入させて来るカナダやメキシコは関税で首を締めてやる、お前らの国の輸出は米国頼みだ、それがたちゆかなくなれば困るだろう、うちの国を逃げ出したヘタレの米国企業は国内回帰するに違いない、とまぁこんなところかな。

ところが、早くも関税ウェポンの副作用が明らかになりました。
国内回帰するもなにも、トランプ関税が自国自動車産業に大打撃を与えることがわかったのです。
考えてみればそりゃそうです。
いまやさまざまな米国企業は多国籍化していて、本社は米国にあっても製造工場はより賃金が安いメキシコやカナダに移しているのはよくあることです。
かつてはNAFTA(北米自由貿易協定)が存在し、今はUSMCA( 米国・メキシコ・カナダ協定)へと改定されています。
米国で活動する企業は、NAFTA の頃からサプライチェーンを構築してきました。
いまや自動車、畜産物、乳製品などはカナダ、メキシコで、全部あるいはその一部を作られるものが増えています。

もちろん自国産業の空洞化を防ぐために、自動車部品の5割は国内製造とするといった規制があったのですが、国内産業の流出に歯止めがかからなかったのです。
だって、国内の賃金は高いもん、というわけです。

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Cumbre de líderes del G20 (44348050270) - 米国・メキシコ・カナダ協定 - Wikipedia

「自動車の原産地規則の要件により、自動車の価値の一定部分は、締約国内から得られなければならない。NAFTAでは62.5%が要求された。USMCAはこの要件を12.5ポイント増やし、自動車の価値の75%にする。トランプ政権の当初の提案は、85%に引き上げ、自動車部品の50%はアメリカの自動車メーカーが製造するという条項が追加するものであった」
米国・メキシコ・カナダ協定 - Wikipedia

そして今回のカナダ、メキシコへの関税は、事実上USMCAの違反行為です。
では、この関税ウェポンがどんな副作用があるかといえは、自国の産業が破壊されてしまいかねないということが分かってきました。

「トランプ米政権が4日にメキシコとカナダに対して発動した25%の関税措置は、米国に輸出される自動車の価格上昇を招き、市場を冷え込ませる可能性がある。メキシコ、カナダを米国向け輸出の拠点とする日米の自動車メーカーには大きな打撃だ。さらに日本は、米国が検討する自動車への税率25%程度の関税の対象となる恐れもあり、日本政府は適用除外に向けて交渉を加速する。
米商務省によると、2024年の乗用車の輸入額は2140億ドル(約32兆円)で、輸入額が最も大きいのはメキシコ(487億ドル)。カナダは4位で276億ドルだった」
(産経3月4日)
トランプ関税影響でGM利益90%減、マツダ57%減の試算 自動車に追加も、日本交渉へ - 産経ニュース

たとえば自国の自動車産業が打撃を受けることが明らかになりました。
野村證券リサーチによれば、米国ブラントの車は平均で6%値上がりし、25年の新車需要を25%も押し下げます。
おいおい25%需要を下げたらエライことですぜ。

「需要の冷え込みは、メキシコとカナダを米国向け輸出の拠点とする日本メーカーに大きな逆風となる。野村証券の試算では、関税措置がメキシコからの輸入に影響し、マツダの26年3月期の営業利益が57%減る。トヨタ自動車は両国からの輸入が打撃を受け18%減だ。ホンダは2月の決算会見で、カナダ、メキシコへの関税が発動されると、年7000億円規模の影響が出るとの見方を示した。打撃がより大きいのは米国メーカーだ。野村証券の試算ではメキシコからの輸入が多いゼネラル・モーターズ(GM)は25年12月期の営業利益が90%減る。フォード・モーターも30%減という」
(産経前掲)

そのトッバッチリを最も受けるのがGMです。

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産経ニュース

政府が損害を補填してくれるというなら話は別ですが、トランプにはそんなきはありません。
ドーンドーンと派手に関税ウェポンを投下し続けてやってる感を出したいガキですから。
なんのこたぁない、関税ウェポンはじぶんの国の巨大企業を直撃してしまったのです。馬鹿ですか。
これで産業は国内回帰するどころか、いっそう米国離れを起こし、個人消費は落ち込み、インフレ型不景気に落ち込むかもしれません。

ビッグスリーは恐慌を来し、ホワイトハウスに泣きついて、自動車だけは執行を猶予してくれるように頼んだようで、関税執行は少し伸びました。カナダ、メキシコに対しての2カ月の猶予と一緒です。
こういう高めの危険球を放って、その後泣きついてきたら交換条件で言うことを呑ませ、少し執行を値切ってやる、これがトランプという男のいうディールです。
しかし半年一年ではサプライチェーンの変更はできませんから、焼け石に水でしょう。
この関税ウェポンを嫌って米国株が一斉に下がり始めました。

「6日のニューヨーク市場でドル売り・株売りが進んだ。トランプ関税の先行きなど新政権の政策不確実性や米景気の悪化懸念を背景に、ドルは円、ユーロなど幅広い通貨に対して売られ4カ月ぶりの安値をつけた。ダウ工業株30種平均も反落し、前日比で427ドル下落した。米政権が追加関税の一時猶予を発表したにもかかわらず、投資家の懸念は深まるばかりだ」
(日経2025年3月7日 )
ドル4カ月ぶり安値・NYダウ急落 関税猶予も拭えぬ不安 - 日本経済新聞

たぶんこんな関税を武器にして貿易構造を破壊し続ければ、米国株はさらに下がっていくはずです。
そもそも関税を政治的武器として使うなんぞ外道もいいところ。
認められているのは安全保障上の狭い範囲だけなのに、拡大解釈をして使いまくる。

そもそも貿易赤字を問題視するほうがどうかしています。
貿易赤字は米国の消費が堅調で、国内供給で間に合わないから貿易で輸入しているだけの話で、むしろ貿易赤字は誇ってよいことです。
サプライチェーンがカナダ、メキシコに伸びているのも、別に米国の雇用を奪っているわけではなく、自動車産業が盛んだから起きる現象にすぎません。
その証拠に米国の最新の雇用統計は雇用が堅調だと教えています。

「2月の米雇用者数は堅調に伸びたもようだ。トランプ政権の政策の不確実性が高まる中でも労働市場は安定を維持したことが7日公表の雇用統計で示されそうだ。
ブルームバーグのエコノミスト調査の中央値によると、2月の非農業部門雇用者数は、前月比16万人増に伸びが加速したと予想されている。失業率は歴史的低水準の4%で横ばいと見込まれている」
(ブルームバーク3月7日)
2月の米雇用者数、政策の影響前で堅調な伸び維持の公算-7日発表 - Bloomberg

中国にサプライチェーンが伸びすぎたことに対して日米で反省が生まれているのは、あの無法国家が恣意的にルール破りをしてサプライチェーンを政治的カードに使うからです。
カナダ、メキシコはそんなことはしていないはずです。
確かに私企業なら決算が赤字なら大変ですが、国は違います。
トランプは私企業と国の区別がついていませんから、「赤字」と聞いただけで大騒ぎして世界相手に貿易戦争を開始するのですから、困ったやつです。

それにしても政府機関を壊し、軍を壊し、国際関係を壊し、とうとう経済もぶっ壊したわけで、Breaking America Againです。
こんなことをし続けて喜ぶのは中国だけです。

 

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コメント

トランプの焦りを感じますね。
今度はロシアにもさらなる大幅な制裁を加えるそうで···中間選挙の前までに「停戦」を成果にどうしてもオレにノーベル平和賞をよこせ的な。かつてプーチンに向けて演説しただけのオバマですら貰ってるだろぉ!だから「お前ら、さっさと交渉テーブルに付け」と。

交渉カードにもならないただの脅しで関税カードは切りまくるし。条約なんて無視しまくり。側近は信者か利権繋がりばかりでマトモな政治家がいないから誰も止めない。
そして困るのは富裕層以外の国民。その国民も正直言ってアホ(失礼)というか宗教的に結束というよりも排他主義で攻撃的になっているからトランプを崇める構図です。彼らは冷戦終結直後でアメリカが世界唯一の超大国だった一時のノスタルジーですかね。当時は不動産屋トランプは時代の寵児でしたし。

GMは異常だとしてグラフでのMAZDAの比率がビッグスリーに並ぶ高さなのは、元々同業他社よりも規模が圧倒的に小さくて殆どが日本の広島と防府で生産して完成車を輸出しているからです。
80年頃までは国内でもトップのトヨタや永遠の2位だった日産の次は大差でMAZDAと三菱とホンダだったんですけど、その後ジャパンバッシングやら日本メーカーの現地生産やらサプライチェーンのグローバル化とかありまして。同時にMAZDAがバブル期に5チャンネル展開で大失敗したこともあって現在に至ります。当時はフォードが株主トップでしたが、リーマンショックで離れて今は実質トヨタ傘下ですね。

 「関税上げるぞ!」と言って「脅し」をかけた成功体験がトランプにはあって、その延長線上の気分なんでしょう。
ところが、そんな「脅し」も米国経済が弱含みのスタグフレーション目前では、足元見られて恥かきますね。
「官から民へ」をやっているように財務長官は言ってますが、米国は関税ごっこをやってる場合じゃありません。

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