ロシアはどうなる?
トランプは、プーチンがお前オレの仲で、すぐにでも和平会談が開かれるとでも思っていたようです。
そうとうに馬鹿だと思います。もう少しで勝てると考えているプーチンと、いまさらナニを話そうとだからなんだというのです。
時間稼ぎに使われるれるだけのことです。
ゼレンスキーさえ這いつくばらせればオーケー、小うるさい癖に無力なヨーロッパをオフリミットにすれば段取り終了、あとはポン友と密室談合だけ、そう思って起こしたのがあのホワイトハウス事件でした。
そして続くサウジの会議で、トランプはゼレンスキーに事実上の領土放棄を認めさせました。スゴイね。
西側同盟の盟主が、被侵略国の小国をつかまえてお前領土くれてやれよ、それで収まるんだからさ、というのですから。
まさに苦汁の選択そのもので、これでウクライナの勝利という道は閉ざされ、残るのはよくて引き分け、最悪は敗北ということになります。
「サウジアラビアで11日に行われた米国との会合で「ロシアとの30日間の停戦」という米提案にウクライナが同意したことは、同国が事実上、露軍の占領下にある領土の武力奪還を断念する用意があるとの立場を示したことを意味する。侵略された側のウクライナにとって苦渋の決断となるが、戦場で劣勢にある上に国力も疲弊している同国は、譲歩に応じてでも米国の支持を取り付け、将来的な対露交渉で可能な限り「引き分け」に近い条件での停戦を実現したい思惑だとみられる」
(産経3月12日)
【動画】ウクライナ、領土奪還方針を事実上放棄 「引き分け」狙い苦渋の決断 サウジでの対米協議 - 産経ニュース
そりゃ心ならずも屈するよ、誰でもね。トランプはただ支援を止めるといっただけではなく「即刻、何もかも止める」と言ったのです。
ほとんど数日をおかずして支援は止まり、軍事機密情報もまた停止しました。
ロシア軍の位置や勢力がつかめなくなったために、クルスクに侵攻している精鋭部隊はロシア軍に包囲されたのです。(戦争研究所は包囲されたことを認めていません)
こういう行為を世の中では、恥知らずの裏切り、あるいは利敵行為と呼びます。
トランプという男には、国境を接してロシアと対峙しているウクライナの戦略的意味が理解できないのです。
たぶんウクライナの価値は鉱物資源ていどだ、小麦はうちの国のライバルだしな、人口も3000万人ぽっち、テキサス州と同じくらいなチッポケな国だし、メンドー起こすならいっそなくなってもいいような国だ、ウクライナ戦争なんてただの局地戦でロシアとガチでなぐりあったら大戦になるぜ、ていどの認識なのでしょう。
まるで田舎のおっさんていどの認識です。
前ウクライナ外務大臣のドミトロ・クレバ氏(現パリ政治学院教授)はこう言っています。
NHK
「戦争を終わらせるのがなぜこれほど難しいのか。それはプーチン大統領が勝利に向けて順調に勝ち進んでいると確信しているからです。
プーチン氏はウクライナ全体を手に入れることができると信じているのです。彼がウクライナの一部を獲得することで満足できるわけがありません」
(NHK3月14日)
「トランプ氏は騎兵隊?」ロシア プーチン氏との停戦協議は?ウクライナ侵攻どうなる?クレバ前外相に聞く | NHK | WEB特集 | 国際特集
クレバ前外相が指摘しているように、プーチンが狙っているのは「ウクライナ領の一部獲得」ではありません。
それはなぜ侵攻したのが、フィンラントやエストニアではなくウクライナであったのかを考えればわかってきます。
西村金一元自衛隊情報本部一佐が解説するように、ウクライナの価値は鉱物資源になどにあるのではなくその地勢的位置にあります。
ウクライナこそ、ヨーロッパの「要石」(キイストーン)なのです。
下図をご覧いただくと、ウクライナがロシアに対して最初のファイアウォールになっていることが理解できるでしょう。
西村金一氏作成
JBpress (ジェイビープレス)
西村氏はこう述べています。
「今後、ウクライナが米国とロシアとの交渉などによって、弱体化された場合には、再びロシアの侵攻を受ける可能性がある。
そうなれば、ロシアの脅威は、ウクライナに隣接し南西方向にあるモルドバやルーマニア、北西方向のポーランドに及ぶことになる。
また、ロシアに直接接するバルト3国であるエストニア、ラトビアおよびリトアニアにも脅威は及ぶ。
さらには、ロシアと陸続きのフィンランドをはじめ、ノルウェー、スウェーデンのスカンジナビア3国に波及することになるだろう。
ウクライナの戦略的価値は、欧州各国へのロシアの脅威を止めることができる「要石(KeyStone)」なのである」
(西村金一3月10日)
ウクライナを蔑むトランプとその子分は、安全保障を全く分かっていない 現代戦では、大西洋・太平洋は米国を守ってくれる障壁ではなくなった(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)
西村金一氏作成
JBpress (ジェイビープレス)
そしてウクライナという防波堤が崩壊すれば、その危機は西欧全体にも及びます。
米国の支援を受けられない場合、西欧は孤立し、全域が不安定にさらされます。
この状況はすでに始まっていて、西欧を代表するフィナンシャルタイムスなど、「米国はすでにヨーロッパの脅威だ」という言い方をし始めています。
「欧州の世論に見られる劇的な変化だ。
先週実施された世論調査は、英国人の78%がトランプを欧州に対する脅威と見なしていることを示していた。ドイツ人の約74%、フランス人の69%もこれに同意している。
ドイツで実施された別の世論調査では、フランスがドイツ人の85%から「信頼できるパートナー」と評価され、英国も78%の高得点を獲得したのに対し、米国は16%にとどまった。
外交上の理由から口に出して言う人はほとんどいないものの、欧州諸国の多くの指導者はトランプの米国が今では脅威になったと考えている(略)
トランプは米国大統領としてロシアに接近し、北大西洋条約機構(NATO)への信頼を損ない、欧州連合(EU)を関税で脅し、欧州で極右勢力を後押しした。
これらすべてがEUにショックを与える効果を発揮した。
これまで何十年も滞っていた欧州の結束強化へ向けた抜本的な対策が今、進み始めている」
ドナルド・トランプは欧州を再び偉大にしている、進展なかった結束強化に弾み――ギデオン・ラックマン(1/3) | JBpress (ジェイビープレス
しかしヨーロッパが団結して米国を友邦ではなくはっきりと脅威と位置づけたとしても、屁ともおもわないのがトランプです。
だって大西洋があるじゃん、グレートアメリカはどこからも侵略されない「安全無比な国」だぜ、というのがトランプの思惑です。
「米国が何によって、誰によって守られているのかについて認識がなく、米国は他国の協力を得なくても「どの国からも侵攻を受けることのない安全な国」という誤った認識が根底にあるからであろう。
米国とロシア間の交渉の行方によっては、米国と欧州がお互いに不信感を抱き、分断が現実になるかもしれない。
そして、米国がNATO(北大西洋条約機構)から脱退して米軍が欧州から去れば、欧州の軍事力は著しく低下することは明らかだ。
私は、「ウクライナが弱体化し米軍が欧州から去れば、いずれ世界のパワーバランスが崩れ、ロシアと中国の脅威が米国を囲む大西洋・太平洋に及ぶことを、米国は予測していない」のではないかと危惧している」
(西村前掲)
いとも簡単にトランプは西側同盟の守護者という立場を捨て去り、むしろ全体主義国家と手を組みました。
ならば、気楽なもんです。
どうなろうとかまわない、自分の政治的手柄としてはウクライナ和平を考えてもいいが、それ以上ではないというところです。
実はこの部分は妙にバイデンと平仄が合っています。
前出のクレバ前外相はバイデンの対ウクライナ政策についても、「答えにくい質問だが」と断ってこう言っています。
「バイデン氏はウクライナにとても強い思いを持っていたし、きずなもありました。しかし、バイデン氏は冷戦時代にその地位を確立した政治家です。
その政策の根底にあったのは『ウクライナを支援する。ただしロシアとの直接対決は避ける』というものでした。これをロシアに巧みに利用されました。
バイデン氏は(武器の供与など)多くの決定を下しましたが、すべての決定に時間がかかりすぎ、ロシアが戦闘で優位に立つことを可能にしてしまいました。
バイデン氏には冷戦時代の米ロの対立の記憶が強く残っているのです」
(NHK前掲)
決定に時間がかかりすぎ、常に及び腰、これがバイデンの政策でした。
トランプはこの米国の「及び腰」を修正するどころか、決然としてロシア勝利に導こうとしました。
トランプ氏、ウクライナでの「ばかげた戦争」の停止をプーチン氏に求める 応じなければ新たな制裁科すと警告 - BBCニュース
ところで、ゼレンスキーがトランプに殴り倒されたことを見ていたプーチンは、この事態にどう見たでしょうか。
さっそく和平会談に乗り出した、いえいえ喧嘩を売るだけが能のトランプとは違って「待ち」を知っているのがプーチンです。
深遠な「待ち」ではなく、文字通り交渉相手を待たせるのです。
いままでも正恩をポツンと夜の駅頭に待たせたことがありましたし、バチカン法王すら待たせたり、わが安倍氏など数時間待たせて後のスケジュールを台無しにしました。
こういう男です。巌流島の武蔵よろしく遅刻することでマウントをとろうというのですから、なんとも卑しい。
今回は、和平提案を持って来た米国の特使がたっぷり8時間待たされました。
フツーこれだけ待たされたら、ふざけるなと捨て台詞を吐いて帰っていいのです。
というか、むしろ決然として帰るべきです。
しかしプーチンは自分が圧倒的有利な立場にいると思い込んでいますから、なんなら1日でも待たせようか、という気分なんでしょう。
「英スカイニュースは14日、ロシアの首都モスクワを13日に訪問した米国のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使が、プーチン大統領との会談のため少なくとも8時間は待たされたと報じた。プーチン氏は首脳会談などでも遅刻が多く、スカイニュースは主導権を誇示するための「古典的な威圧の手法だ」と伝えた」
(読売3月15日)
「遅刻魔」プーチン氏、アメリカの特使を8時間待ちぼうけに…「古典的な威圧手法」の指摘も(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
こういうことを平気でして見せるのがザ・プーチンです。
プーチンは少なくともクルスクのウクライナ軍を完全殲滅するまで和平会議には乗りません。
そして乗っても「非ナチ化」がどうしたの、占領地は神聖なロシア領だのと盗人猛々しいことを言い続けて、なにひとつ決まらないはずです。
さて、盟友にこう出られてトランプはどうする気でしょうね。
追加関税なんてまったく意味をなしませんよ。今週には電話でサシの話あいをするとか。
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>【ワシントン=坂口幸裕】トランプ米大統領は15日、ウィットコフ米中東担当特使が13日にロシアでプーチン大統領と面会するまで「少なくとも8時間待たされた」との報道について「フェイクニュースだ」と主張した。他のロシア高官とも会談し「明らかに時間はかかったが、建設的だった」と訴えた。
…だ、そうです。信じたいものしか信じず、周りにイエスマンだけ固め、事実から目を逸らす。
完全に独裁者ですよ。バカプーチンみたいに、任期中に「大統領の再選制限撤廃」くらいはするんじゃないですかね。
投稿: ねこねこ、 | 2025年3月17日 (月) 01時48分
プーチンは内心ゲラゲラでしょう。
トランプが勝手に踊ってくれるんですから。
おとはいくらでも引き伸ばして有利な条件を飲ませるだけです。
そして、あくまで「停戦」としておいて、いずれ全面侵攻すればいいだけ。今まで何度もやってきてます。
ウクライナは厳しいですね。クルスクでも押し返されてますし。とにかく武器も兵士も足りない。
投稿: 山形 | 2025年3月17日 (月) 06時00分
ヨーロッパ各国自身も、自分ごととしてロシアと正面切ってきちんと戦争すれば良いのに、とも一方で思います。
ウクライナ一国にあれだけてこずり、核兵器も本当に機能するか怪しいのですから、普通に「ロシア軍を追い払うための」連合軍をNATO(アメリカ抜き)で派兵しても良いのでは。
投稿: ねこねこ | 2025年3月17日 (月) 08時20分
いつもありがとうございます。
プーチンを交渉の席に着かせるには原油相場の下落しかないと思います。
実際、トランプ氏がサウジ皇太子と会談したりゼレンスキー氏がサウジを訪問したりというのは、まさにそのためなのではないかと思うのですが。
その原油、WTIは今、67ドル台。本気を見せて欲しいです。
投稿: プー | 2025年3月17日 (月) 09時59分
トランプは、まんまプーチンの傀儡に成り下がりましたね。
包囲されてもいないウクライナ兵の助命嘆願をして見せるという、プーチンの戯言にのっている姿は非常に嘆かわしいもの。底流に米ロ和解論という未熟にして稚拙な考え方があり、それであって初めて米中衝突に備えられるという誤謬があります。
また、領土面では食い込まれているウクライナですが、欧州と米国の支援さえあれば継戦能力はロシアより上でしょう。
ここはトランプを無駄に怒らせるよりも、なだめて停戦不可の理由がロシアにあり、支援を途切れさせる事のないよう留意してかかる事です。
トランプの親露姿勢に呆れているのはウクライナや欧州だけでなく、米国民や身内の共和党からも噴き出しつつある。状況は変わると信じます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年3月17日 (月) 16時06分