トランプ、米軍と情報組織をプーチンに売る
トランプがウクライナへの支援を「和平をのぞむまで」一事停止するそうです。
【ワシントン=坂本一之】米主要メディアは3日、トランプ大統領がウクライナに対する全ての軍事支援を一時停止することを決めたと報じた。(略)ホワイトハウス当局者は産経新聞に対し、対ウクライナ支援に関し「トランプ氏は和平に専念している。パートナーにも同じ目標へ取り組んでもらう必要がある」と指摘。「支援が(和平に向けて)寄与するよう一時停止し、見直している」と述べた。
報道によると、軍事支援の停止は一時的な措置で、ウクライナがロシアとの戦争終結に向けた交渉を進めることを確約するまでの期間としている。2月28日にホワイトハウスで開いた米ウクライナ首脳会談でゼレンスキー氏がトランプ氏らに取った態度への対抗措置となる」
(産経3月4日)
トランプ米大統領がウクライナ支援を一時停止 4日の議会演説で政策を説明へ - 産経ニュース
かねてから大統領なったら直ちにウクライナ支援は止めるとは言っていましたから、有言実行です。
「トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました」
(テレ朝3月5日)
トランプ氏「最優先でウクライナ支援停止する」 大統領への返り咲きに自信 (tv-asahi.co.jp)
正直、本当にやるとはおもわなんだ。
ホワイトハウスからゼレンスキーを叩き出しただけでは飽き足らず、ここまでもというかんじです。まるでジャイアンですな。
もちろん大きな影響が出るでしょう。
「計画中および発注済みの10億ドル以上の武器と弾薬に影響するとされ、ウクライナに移送のため、隣国ポーランドに送られているものも移送が停止されているが、これらの内容は不明だ。
アメリカはこれまで3基のパトリオット、12基のNASAMSの両防空ミサイルシステム。3000発のスティンガー防空ミサイル、1万発以上のジャベリン対戦車ミサイル、31両のM1エイブラムス戦車、40台以上のHIMARS、300両以上のブラッドレー歩兵戦闘車、400両以上のストライカー装甲車、200門以上の155mm榴弾砲などを供与してきた。また、欧州が供与しているF-16戦闘機で使用するミサイルや支援パーツも供与している。停止が長引けば米国製兵器のスペアパーツの入手が難しくなり、稼働率が低下する恐れがある。また、これまで長距離射程と精密打撃でウクライナ軍を支えてきたHIMARSのロケット弾の補給がもし無くなればウクライナ軍は戦術の転換を強いられる」
(ミリレポ3月4日)
トランプ大統領、ウクライナへの軍事支援を停止!その影響は│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア
支援有志連合を作ったヨーロッパはなんとか援助を続けるでしょうが、ウクライナは厳しい状況に追い込まれます。
卑劣としかいいようがない措置です。
これほどまでに堕落した米国を初めて見ました。
ところで当人らはなにか深く勘違いしているようですが、トランプには交渉カードなんてもう残っていませんから。
トランプがいましゃかりきでしている「ロシアへのカード」とやらは、自国の軍事力をいっそう弱めていくという自滅行為でプーチン大帝のご機嫌とりをしようと言うものにすぎません。
たとえば黒人であるだけという理由で、統合参謀本部議長のチャールズ・ブラウン大将と、海軍トップのリサ・フランケッティ大将を女性であることを理由に解任してしまいました。
チャールズ・ブラウン・ジュニア - Wikipedia
トランプ大統領、米軍最高司令官を解任!ペンタゴンは粛清される│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア
トランプの掲げるDEI(多様性・公平性・包括性)排除で解任されたのでしょうが、彼らはいずれも有能で黒人だから、女性だからという理由で任命されたわけではありません。
軍人としての能力ではなく、反DEIというイデオロギーで解任されたのです。
たとえば女性で最初の海軍トップとなったリサ・フランケッティはこのような困難な仕事をこなしてきました。
リサ・M・フランケッティ - Wikipedia
「私はリサ・フランケッティをよく知っていますが、彼女はいわゆるDEI採用者ではありません。彼女は戦闘で誘導ミサイル駆逐艦、軍艦の戦隊、および2つの空母打撃群を指揮しました。彼女はまた、地中海の由緒ある第6艦隊の司令官でもありました。彼女は経験豊富な戦士であり、優れた戦略家であり、このような状況下での彼女の離脱は海軍にとって深刻な損失です」
最高司令官の解任で米国の治安が悪化 - ジャパンタイムズ
その他、空軍副参謀長のジェームズ・スライフ大将、陸軍、海軍、空軍のトップの制服弁護士である3人の判事擁護将軍(JAGS)も解任こされました。
この決定に対して、現政権のロイド・オースティン国防長官、ウィリアム・ペリー、チャック・ヘーゲル、レオン・パネッタ、そしてったジェームズ・マティスが抗議署名をしています。
こんなことをすれば米軍の士気はダダ下がることでしょう。
もちろんトランプに対しての忠誠心など生まれる道理がありません。ばかなことをするものです。
もちろん大統領は軍トップの最高指揮官( Commander-in-chief)として将軍ら上級将校を解任する権限を持っています。
いままで歴代の大統領は将軍たちをクビにしてきました。
たとえばエイブラハム・リンカーンは、南北戦争を勝利するために多くの将軍を更迭し、ユリシーズ・S・グラントに辿りついたのは有名な話です。
日米戦争が勃発した1941年には真珠湾に対する日本の奇襲攻撃の責任を取らせてルーズベルトは陸軍大将と海軍大将を同時に更迭して、チェスター・ニミッツ提督とダグラス・マッカーサー大将を据えました。
後任の数年後、ハリー・トルーマンは、朝鮮戦争中の不服従と政策の違いを理由に、当時の国家最高司令官であったマッカーサーを解任しました。
オバマですら、バイデン副大統領に対する暴言を理由に、マクリスタル陸軍大将を解雇しましたが、後に陸軍監察官によって無罪となっています。
このように大統領は軍の上級将校を解任する権限を持っていますが、今回はどうでしょうか。
ブラウン、フランケッティは共に優秀な指揮官として知られ、いままでなにかしらの失策や不都合なことをしたことは記録されていませんし、トランプはその解任理由を明らかにできていません。
なぜなら解任理由は単に黒人や女性であったからにすぎないからです。
安全保障上、いま、もし米国に戦争が仕掛けられたら軍中枢不在ということになってしまいます。
というのはひとりの上級将校が解任されれば、彼と仕事をしてきた彼のスタッフや系列の部下たちも一線からはなれざるを得ません。
それは会社の社長交代劇と軍も同じことです。
これが軍という厳しい命令系統を持つ組織にどれほどの混乱をもたらすのかはかりしれないほどです。
また、多くの黒人や女性は軍内部で活躍することをためらうようになるでしょう。
活躍して昇進し責任ある地位に就けば、貶めようとする者らから「DEI人事だ」といわれかねないからです。
あまりこういう言い方はしたくありませんが、これは差別ではないですか。
トランプ政権「ロシアによるサイバー攻撃を容認」 衝撃の180度方針転換 | クーリエ・ジャポン
トランプの米軍じゃ弱体化政策はこれに止まりません。
いまロシア、中国と熾烈なサイバー空間の戦いを演じているサイバー部隊に活動停止を命じました。
「米国がロシアに対するサイバー攻撃作戦の活動と計画を一時停止したことがわかった。米高官がCNNに明らかにした。
同高官によると、この停止は「大きな打撃」だという。そのような作戦の計画には特に時間と調査が必要なためだ。同高官はロシアに対するサイバー攻撃作戦の一時停止により、同国からのサイバー攻撃に対して米国の脆弱性が増すとの懸念を示す。ロシアは、米国の重要インフラを混乱させ、機密情報を収集できる強力なハッカー集団を擁している。
サイバー戦の攻守を担う米サイバー軍の活動と計画の一時停止は、トランプ政権がロシアとのより広範な緊張緩和を模索する中で決定された」
(CNN3月3日)
対ロシアのサイバー作戦停止 ロシアとの緊張緩和を模索 - CNN.co.jp
ロシアと中国は常習犯的に米国の重要インフラ、軍、官庁、研究所などに侵入し、多くの機密情報を盗み取ってきました。
まぁその政府官庁は、CIAを先頭にしてもう解任の嵐で倒壊寸前なのですが。
「米中央情報局(CIA)は4日、全職員に対して早期退職を勧奨する通知を出した。トランプ政権は1月下旬、連邦政府職員に在宅勤務禁止などの方針に従えない場合は退職を勧奨するとの通知を発出し、国家安全保障関連の職務は対象外としていた。ラトクリフ長官が組織改革を目的にCIAも対象とすることを決定した」
(日経2025年2月5日)
CIA、全職員に早期退職を勧奨 米紙報道 - 日本経済新聞
そしてその大量に解雇されたCIA職員たちには中国とロシアが再雇用に動いているそうです。
「ロシアや中国といった米国の敵対国は、ここへ来て自国の諜報機関に対し、米連邦政府職員の採用を強化するよう指示を出している。対象は国家安全保障に携わる職員で、既に解雇されたか、間もなく解雇されると感じている職員らを標的にしているという。この問題に関する最近の米諜報に詳しい4人の人物と、CNNが検証したある文書から明らかになった。
当該の諜報が示唆するところによると、複数の敵対国がトランプ政権の取り組む大規模解雇に乗じようと積極的に動いている。解雇は連邦政府職員全体にまたがるもので、今週人事管理局(OPM)が計画の概要を発表した」
(CNN3月1日)
解雇に不満の米連邦職員、ロシアと中国が採用に動く 情報筋 CNN EXCLUSIVE - CNN.co.jp
このトランプにより政治的に解雇された職員から大量の情報が流出することは間違いありません。
国家安全保障省ではロシアが監視対象からはずされました。
また、ロシアは大統領選挙にも介入したようです。
そういえば2016年のトランプ落選時に大量に流されたデマは、ロシアが発信元だったというのが有力です。
これも裏が取れない情報ですが、トランプは過去にロシアのオルガルヒからビジネスの恩恵を受けたという情報もあります。
これらは皆確認しようがない情報ですが、ここまで露骨なロシアラバーをされると信じたくもなります。
「米フェイスブック社は30日、ロシア政府系企業が投稿した情報は過去2年間で1億2600万人の米国内ユーザーに届いたと明らかにした。2016年米大統領選の前後に、約8万件の投稿が米国の有権者向けにロシア系アカウントから発信されたという。そのほとんどは、社会を分断し対立を煽る政治的内容だった」
(BBC2017年10月31日)
フェイスブック ロシア発偽情報、米国で1億2600万人に届いたと - BBCニュース
彼らは通常の戦いでの不利をサイバー空間における米国に対する戦術的優位性で凌ごうとしています。
一方、米国の軍や諜報機関のサイバー部隊はそれを食い止めたり、逆にロシアのハッカーに対して打撃を与えてきました。
CIAをぶっ壊し、ロシアを監視対象からはずし、米軍幹部の首を斬り、そしてサイバー部隊の活動まで止めてしまうとは、トランプがロシアにいかに媚を売っているかということを示しています。
露骨なまでのロシアへのすり寄り、これがトランプとバンスの言う「カード」、あるいはディールとやらです。
もはや売国といってよいでしょう。
日本のトラピストたちは、ここまで露骨なロシアへのすりよりが明らかになっても、まだ対中への深慮遠望なのだ、と言い張るつもりなのでしょうか。
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メディアは言うに及ばずエンタメにまで蔓延してきたDEIやポリコレの波に対して、トランプ氏が放った快刀乱麻を断つ振る舞いに快哉の声を上げていた人は多いはずです。しかし、まさかここまで針が逆向きに振り切ろうとは想像だにしていなかったとも思います。陰謀論に与する気は毛頭ありませんが、ここまでくると「さてはトランプ、プーチンに何か握られているのでは?」なんていう妄想まで頭をもたげてきそう。
日本においてトランプと言えばカードゲーム全体、またはそのカード自体を指すのが一般ですが、本来トランプとは切り札の意味なのだとか。管理人さんの指摘通りだとすれば、もはやトランプには「切り札」残っていないわけで、何とも皮肉な話ではあります。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2025年3月 5日 (水) 09時32分
呆れてしまう程に酷い。アメリカが崩壊して中露の時代になるのか。
安倍さんが存命ならいいアドバイスを与えたのではと思います。
ウクライナへの対応をみるに、日本や西側諸国はもし他国の攻撃を受け侵略されてもアメリカは傍観するだけで、助けてくれない。
自国防衛するには、中露に降るか核兵器を所持しようという発想になります。
運良くアメリカの支援を受けたら資源などで倍返しと大いなる感謝を延々と述べねばなりません。
円安も気に入らないそうですが、
投稿: 多摩っこ | 2025年3月 5日 (水) 11時05分
トランプ…ヴァンス…
傷つけられ凹まされた気持ちや価値観や立場やプライドや、見捨てられた労働者層やプア・ホワイト層、それらを盛り返させる華麗な復活劇ではなく、拗らせまくった復讐劇にしたいのか。
我々社会にかつていた、シールズ界隈の人たちが、「今度は俺たちが言うことを聞かせる番だ!」と言っていたのを思い出す。
考えが異なるどちらの側もそうなる繰り返し。
人は恩恵よりも侮辱を返しがち。感謝するのは重荷だが、復讐するのは悦びだから、とタキトゥスは言ったという。
極端を見ないと中庸が分からない、と私は変わらず考えているが、ヒトは極端から極端へ振るばかりになりがちなところにも、認知戦や情報戦を差し込む隙がある。
投稿: 宜野湾より | 2025年3月 5日 (水) 13時11分
トランプには対中国のためにプーチンが必要なのではなくて、プーチンが望むようにする事自体が目的でしょう。そのためには売国もする。
現にテスラは第二のメガ工場を中国国内で着工してますし、ロシアや中国よりもEUや民主党こそがトランプの敵なのです。トランピアンばかりでなく、日本の保守派は目を覚ますべき。
右翼も左翼も大嫌いさんが言われるように、陰謀論なんてものじゃない「トランプの真実」が検証されるべきものになりそう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年3月 5日 (水) 13時33分
結局、市井の人間には何もできず
ただの出来の悪い戯曲を見せられているだけなのか?
日々風向きが変わる報道を見るだけで心が痛みます
ウクライナにもロシアにも友達?(以前の仕事上の付き合いや取引相手)がおりますが、彼らは我々日本人のメンタリティとは違い自己の主張はキチンと行います
これは欧米人も同一と思います
攻撃的にいって制するか、まあまあで良しとするか
日本人としてどうするのか問われている気がします
投稿: スナフキン | 2025年3月 5日 (水) 22時44分