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2025年4月24日 (木)

トランプ、ウクライナ「最終調停案」出る

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とうとうトランプの「調停案」なるものが明らかになったようです。
予想どおりのシロモノで、これがロシア案だと言われても納得してしまいそうなものです。

トランプには恥を知る心がありません。
先だっての4月15日、ウクライナのスムイ市へのロシア軍のミサイル攻撃による民間人死者に対してこう言っています。

「トランプ氏は、「悲惨な出来事」であり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による「過ち」だと指摘する一方で、ゼレンスキー氏もやり玉に挙げた。
中米エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領との会談中、「数百万人の死者」を出した責任はゼレンスキー氏とプーチン氏、ジョー・バイデン前米大統領にあると主張。
「プーチン氏が1番目だが、バイデン氏も自分が何をしているのか全く分かっていなかったという点で2番目、そしてゼレンスキー氏だ」と述べた。
ゼレンスキー氏について、「ミサイル購入を常に画策していた」とし、「戦争を仕掛けるなら、勝算がなければならない」「自らの20倍の(戦力を持つ)相手に戦争を仕掛け、ミサイルを供与してもらうことを期待するなんてあり得ない」と批判した」
(AFP4月15日)
ウクライナ北東部攻撃、民間人標的をロシア否定 トランプ氏はゼレンスキー氏非難 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

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米大統領の代理人ウィトコフ氏、外交手腕に世界が注目-政権で存在感 - Bloomberg

ほぼ同時期、トランプの「最終提案」なるものが提示されました。
サンクトペテルブルクで今月、米政権のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使と会談した際に伝えられたそうです。
このウィトコフはズブの外交素人で、トランプが連れてきたビジネス人ですが、言うことは100%プーチンナラティブです。
こんな男を特使に仕立て上げた時点で、トランプが言う「仲介」なるものがいかなるものかわかります。

ゼレンスキーはウィトコフを評してこう言っています。

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「ゼレンスキー大統領は17日にキーウで記者会見した際、「ウィトコフ氏はロシア側の戦略を取っていると思う」と述べ、「これは非常に危険だと思う。意識的なのか無意識になのかはともかく、彼はロシアの言い分を広めているからだ」と批判した」
(BBC4月18日)
ゼレンスキー氏、ウィトコフ米特使が「ロシアの言い分を広めている」と批判 - BBCニュース

内容的には、あーあやっぱりね、というような内容で、歴代大統領ならこうまで破廉恥なものはだせないでしょう。

「文書では、2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島の支配を米国が承認することを明記。ロシアが支配している4州のほぼ全域の占領も非公式に認め、現在の戦線を凍結する内容となっている。
米欧各国はクリミア併合後に対露制裁を強化したが、文書では14年以降に科された制裁の解除も掲げた。
ロシアが求めているウクライナの北大西洋条約機構(NATO)非加盟を「約束」する一方、文書では欧州連合(EU)加盟を容認する方針が示された。
ウクライナ側の要望も踏まえ、ロシアの再侵略を抑止するための「強固な安全の保証」として、欧州有志国などで構成する平和維持部隊のウクライナ駐留を認める。
ロシアが占領中のウクライナ北東部ハルキウ州の一部地域を返還することに加え、ウクライナの再建に向けた「補償や支援」も盛り込まれたが、誰が補償するのかは明示されなかった。南部のザポリージャ原子力発電所の周辺地域は米国が管理する方針も掲げられた」
(読売4月23日)
アメリカ和平案、ロシアによる4州占領容認…クリミア支配も承認にゼレンスキー氏「我が国の領土だ」 : 読売新聞

ウィトコフが「5つの地域」と言い出したとき、それはクリミアを含むというのはすでに予測がついていました。
クリミアは2014年の侵略を国際社会はこぞって否認しており、経済制裁の対象としてきました。
これを真正面から覆しクリミアはロシアの領土として認定する、経済制裁は解除するというのですから、もはやなにをかいわんやです。
ゼレンスキーはこの「最終調停案」を即座に拒否したようで、ルビオ国務長官も協議に出ないようです。

「米国のルビオ国務長官が、ロシアによるウクライナ戦争の終結に向けてロンドンで23日に開かれる協議を欠席する見通しであることがわかった。ウクライナ側は、3年に及ぶ戦争の終結に向けたトランプ米政権の提案に盛り込まれた重要項目を拒否する構えを示していた。
ルビオ氏は、ウクライナや英国、欧州の当局者らとの協議に出席するとみられていたが、国務省報道官は22日、「物流的な問題」で欠席すると明らかにした」
(CNN4月23日)
米国務長官、ウクライナ協議を欠席へ ゼレンスキー氏は米国の和平案を拒否 - CNN.co.jp

ウィトコフはこの「最終仲介案」なるものが、米露のビジネスチャンスを修復し発展し、米露関係を修復すると言っています。
ゲスな下心を漏らしてしまいましたね。
ちなみにウィトコフは「プーチンとトランプは素晴らしい友情で結ばれている」と言っています。

「「それに加えて、とても魅力的な商機を通じて、ロシアとアメリカの関係を再構築する可能性があると信じている。それが、この地域にも本当の安定をもたらすと思う」と、ウィトコフ氏は話していた」
(BBC前掲)

かねてからウクライナ和平に絡んで出てきているのがこの「商機」という和平交渉にはそぐわない概念です。
なんの商機なのか、これもわかってきています。おそらくは石油と資源利権の回復です。
私はこのての米国は石油のために戦争をしているという類の噂は信じないことにしていますが、今回はどうやらそのとおりのようです。

「18日(現地時間)、ウクライナ戦争終息のための米ロ間初の歴史的交渉が行われたが、平和という本質が抜けて天然資源利権に偏ったという皮肉が出ている。
ニューヨークタイムズ(NYT)やポリティコなどの米国メディアや海外通信社の報道を総合すると、ロシア代表団として今回のサウジアラビア会談にロシア代表団として参加したキリル·ドミトリエフ·ロシア国富ファンド(RDIF)会長は、交渉のテーブルで自国のエネルギー開発の議題を伝えたものと把握される。
彼は会談開始前の短いメディアインタビューで「米国の石油メジャーはロシアで非常に成功的なビジネスをしてきた」とし、両国関係改善で米国メジャー石油会社が終戦を通じて対ロシア事業機会を再び得ることを示唆したのだ。
さらに、「ウクライナ戦争の勃発で、米国企業がロシアのエネルギー事業から一斉に撤退し、ロシアが被った経済的被害が3000億ドル(432兆ウォン)に上るという点も、今回の交渉で提示するだろう」と伝えた。
露骨な利権と取引的アプローチを追求するトランプスタイルに合わせて、ロシア側が交渉テーブルに念仏(平和)より「縄張り」(天然資源事業)を投じる戦略を示したのだ」
(韓国毎日経済2025年2年19日)
念仏よりご飯に関心を示すトランプ式取引主義が早くもうわさを残している。18日(現地時間)、ウクライナ戦争終息のための米ロ間初の歴史的交渉が行われたが、平和という本質が抜けて天然資源利権に偏ったという皮.. - MK 

ウクライナ侵略による経済制裁で、ロシアに投資していた石油メジャーは撤退を余儀なくされています。
ウクライナ「和平」が達成されれば、さぁ経済制裁も解除だ、ロシア産天然ガスで大儲けするぞ、というメジャーの声が聞こえるようです。
ゼレンスキーに資源利権を要求したのも同一の文脈のはずです。
そしてもちろんトランプの環境保護政策を切り捨ても一緒です。

ステーブ・ウィトコフはトランプと同じ不動産富豪で、ウィトコフグループの総帥です。
すでにホワイトハウスの補佐官に就任しています。
トランプの盟友らしく、イスラエル特使もしています。
スティーブ・ウィトコフ - Wikipedia

「高級不動産を扱うウィトコフ・グループを率いる同氏は、資金力のある国際的な投資家から多額の資金を確保し、不動産を販売してきた。トランプ氏のディール(取引)を重視する世界観と一致する経歴だ。
しかし、政権内での高い地位は、トランプ氏の財務を巡り生じる疑問と同様、外交で重要な役割と自身のビジネスをどう分けるのかとの疑念を生じさせる。
ウィトコフ氏はウェストウイングの執務室からインタビューに応じ、利益相反の可能性を回避するため、不動産会社と暗号資産(仮想通貨)投資から撤退し、保有資産を息子らに移転していると説明。自身の評価について、和平交渉と人質解放の「結果で判断してほしい」と語った」
(ブルームバーク3月14日)
米大統領の代理人ウィトコフ氏、外交手腕に世界が注目-政権で存在感 - Bloomberg 

一方、3年間をウクライナの任地ですごし、ウクライナを励まし続けた米国の良心とでもいうべきブリンク米国大使は辞任しました。

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CNN

「トランプ政権が発足し、米国の政策がウクライナからロシア寄りへと劇的に転換して以降、ウクライナと米国の関係は大きく変化している。ブリンク氏の突然の辞任もそうした変化の最新の事例だ。
ブリンク氏に好意的な見方をしているウクライナの元当局者はCNNに対し、ブリンク氏がもはや新政権では正しいことができないと考えていると述べた。「ブリンク氏は(キーウでの)3年間、非常に組織的にウクライナを支援した。ウクライナの成功のため、ブリンク氏は自身の立場で許されることを全て実施した。ブリンク氏の信念は、それと反対のことをするのを許さなかった」
(CNN4月13日)
米国のブリンク駐ウクライナ大使の辞任、両国政府から圧力か 情報筋 - CNN.co.jp

ウィトコフ、「結果で判断」させていただきます。
あんたらがしたことは、長年において米国が世界に示してきた自由主義同盟の破壊以外なにものでもありません。

「トランプが同盟国を平気で敵視することによる地政学的コストもある。大統領の側近達は、米国は欧州の将来に対してほとんど戦略的な利益を持たないと信じているようであり、それゆえに大西洋同盟の国々の信頼を失っても気にしないのかもしれない。(略)
日韓豪といった国々は、中国の力を抑制・管理するために米国と協力する意思を示してきた。それは、最終的には米が自分達を守るために戦ってくれると信じていたからだ。しかし、トランプの取引主義で、予測不可能、かつ敵意を強める行動は、その信頼を破壊している」
(フィナンシャルタイムス2025年4月5日)
Trump’s destruction of global alliances

このような不動産屋特有のディール、つまり目先の取引を国際政治に持ち込んで、一国の平和と安全をただのカードと見なすやり方は、自分の商売の中だけにしてください。
その発想は、不動産ビジネスや債務再編ではカネを稼ぎだしたのかもしれませんが、国際政治においては米自身にも世界の平和にとっても極めて高い代償を払う結果となりました。

この「最終仲介案」を見て、西側同盟各国は一斉に米国から引き始めました。
ヨーロッパはもはや取り返しのつかないほど米国への不信を露にしています。
ウィトコフは盛んに「商機」といいますが、ロシアのナニを欲しいのか知りませんが、その代償としてヨーロッパ全体を失いました。
ヨーロッパは米国をむしろ拒絶して新たな自由貿易圏をTPPに求めとしています。
いままで英国がTPP加盟するのさえいい顔をしていなかったのに、EU全体も加盟することもやぶさかではないというのですから驚きです。
亡き安倍氏が作ったTPPは、いまやとてつもない大きさの経済ブロックに成長しようとしています。
ただし安倍氏の想定とは異なって米国を除外して、ですが。

「欧州連合(EU)が、日本や英国など12か国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)との連携強化を模索している。関税引き上げを乱発するトランプ米大統領に対抗し、自由貿易を推進する狙いだ。
EUの執行機関・欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は15日、シンガポールのローレンス・ウォン首相と電話会談し、「公平で開放的な世界貿易システムは重要だ」と強調した」
(読売4月16日)
EUがTPPとの連携強化を模索…関税引き上げ乱発のトランプ大統領に対抗、自由貿易を推進 : 読売新聞

いままでヨーロッパと米国は必ずしも考え方で歩調があっていたわけではありませんが、しかし最終的には、米国との同盟は共通の利益と価値観、あるいは理念という堅固な岩盤の上に成立しているという安心感がありました。
それが根こそぎ破壊されたのがトランプ関税であり、外交の禍々しい登場でした。

「関税によって打撃を受けた多くの政府は、経済への被害を緩和しようと、トランプと取引を結ぶために奔走する可能性がある。しかし同時に彼らは、米国による威圧的行為に対する脆弱性を減らすために、長期的な政策調整にも動き出すだろう。それはやがて、米国の富と力に長期的な影響を及ぼすだろう」
(フィナンシャルタイムス前掲)

とうとう来るところまできてしまいました。
米国は深甚な孤立を味わうことでしょう。
バイバイ、アメリカ。バイバイ、トランプ。そして呪われなさい、トランプ。


※関連記事
パンスよ、なにが「外交」だ: 農と島のありんくりん

 

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コメント

裸の王様となったトランプは、ただのワンマン社長にすぎなかったわけですね。
優秀なブレーキ役がいなくなり、成金のイエスマンばかりを近くに配置したトランプが、ロシアと同じような考え方に至るのは当然の結果だったのかもしれません。

政治は企業経営とは違い、ただ赤字を減らせば良いというものではありません。
たとえ赤字であっても必要なら続けなければいけないし、それでもなお赤字を解消したいなら同等な代替案が必要です。
手段を選ばず赤字解消に走るのは、テーブルの脚を無理矢理ひっこ抜くようなもの。
「米が支えてくれている」と信頼していた脚を、米自身が抜くようなマネをするなら、米に脚を任せておくことはできません。
そうして失った信頼を米が買い戻すには、テーブルの脚を支え続けるより、はるかに高い買い物になるでしょう。

いよいよ米国、いやトランプはロシアに何か弱みを握られているのでは、と言うゲスの勘ぐりがまたぞろ頭をもたげてきます。

個人的には意識高い系のええ格好しいが大嫌いなので、そういう手合いが跳梁跋扈していた米国に大きな楔を打ち込むという意味でトランプの登場には拍手喝采を送っていましたが、最近のグダグダぶりにはほとほと愛想がつきます。エントランスさんがおっしゃる通り裸の王様ぶりが半端ない。

結局、トランプというのは有能な側近がいなければまともに機能しない傀儡だったのかなあと感じます。

 このような一方づいた案は調停案などとは呼べません。
和解を言いながら「和解破り」への担保を提供しないトランプの欺瞞は見せかけだけのものであり、むしろゼレンスキー政権の支持率を押し上げました。
クリミアの放棄をゼレンスキーがのめようハズもなく、戦争は続くでしょう。戦況はウクライナにとってきびしいかも知れませんが、ロシアはもっと厳しいと考えられます。長距離ドローンの開発や新型ミサイル、武器の自国生産率の向上など、長期化はむしろウクライナにとって有利。
特にロシア国内への攻撃の幾多の成功は、前線における地上戦・肉弾戦重視から局面が変化しています。
ゼレンスキーはすでに、日本を含めた欧州の支援だけでも戦うという最終的な決意をしていると思う。ただ、真っ向からトランプ政権案を蹴っ飛ばすのも得策ではないという判断。
日本はやがて来る米国の正常化を視野に入れ、現在のトランプがもたらす危機を上手に回避すべきです。
また、トランプ支持ばかりの日本の保守派はいい加減目を覚ますべきです。日本のような成熟した民主主義国が、トランプが目指す世界の在り方を受け入れられるハズがありません。

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