ロシアにふりまわされているトランプ
トラ親方は自信満々で再登場しましたが、やることなすことヘマばかり。
特に外交は悲惨なばかりに失敗の連続ですが、そのなかでももっとも苦しんでいのは、ウクライナ和平交渉とイラン交渉でしょう。
どちらもいいように振り回されています。
イランは後回しにしてウクライナから。
プーチンは急にこんなことを言い始めました。
「 ロシアのプーチン大統領は米国のウィットコフ中東担当特使との会談で、ロシアは前提条件なしにウクライナと交渉する用意があると改めて表明した。 インタファクス通信が26日、ロシア大統領府のペスコフ報道官の発言として伝えた。 トランプ米大統領側近のウィットコフ氏は25日、訪問先のモスクワでプーチン大統領と会談し、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた米国の計画について協議した。会談は3時間に及び、同席したロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、米ロの立場が接近したと述べた」
(ロイター4月27日)
プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 米特使に伝える
「前提なしの協議」というのが曲者で、そう言いながら必ずゼッタイ条件をつけてくるのがいつもの手口です。
プーチンにベタ甘だったトランプにもそれがわかりかけてきたようで、ロシアのキーウ爆撃以降はこう言っています。
「 トランプ米大統領は26日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナの民間地域を攻撃すべきではないと主張、ロシアと取引する第三国を制裁対象にする2次制裁が必要かもしれないと述べた。
トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「プーチンが過去数日間で民間地域、都市や町にミサイルを撃ち込む理由はなかった。彼が戦争を終わらせたくないのではないかと思わざるを得ない」と投稿。
「彼はただ私を弄んでいるだけで、『金融』や『2次制裁』を通じて、異なる方法で対処する必要があるのだろうか。あまりにも多くの人々が死んでいる!」と述べた」
(ロイター4月27日)
トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁」言及(ロイター) - Yahoo!ニュース
【詳細】ウクライナ情勢 ロシアが軍事侵攻 戦況地図とともに詳しく 各国の外交や支援は(4月28日の動き) | NHK | ウクライナ情勢
分かりきっているじゃないですか。
プーチンは、戦争目標を達成するまで戦争は止めませんよ。
戦争目標とは、ウクライナ全土の占領と属領化です。
属領化とは彼らの言葉を使えば「非ナチ化」ですが、これはゼレンスキーを倒して親露政権を作ることです。
全土の占領は諦めてはいないものの、現実には5州の完全領土化と、そして忘れてはいけないのはロシア領クルスクの完全奪還が含まれています。
両方とも「完全」がつくのは、いま戦争を止めたらウクライナ領の奪取も、クルスク奪還も不完全なままの線で止まってしまうからです。
そうなれば英国の国防省が発表している2022年戦争開始以降のロシア軍の戦死者数20万~25万人、死傷者全体では約90万人、失ったロシア軍の主力戦車1万292両、装甲車2万1400両という戦後最悪の損害を国民にどう説明するのでしょうか。
これはロシアが被った第二次大戦以降最悪の損害です。
アフガン戦争では戦死者1万5千人、負傷者3万5千人で、ソ連は崩壊したのですから推して知るべしです。
プーチンはソ連の崩壊と、その後の無政府状態を肌で知っている世代ですしね。
だからここで戦争を止めさせるには、さらに圧力をかけ続けねばならないのに、トランプは真逆の方向に全力疾走してしまったのですからなんともかともです。
一番の圧力はトランプがほのめかしたように、今のロシアと取引している第三国に対しての2次制裁です。
これをしたらトラン親方の株は一気に上がるでしょう。
できるかどうか。
さて、トランプ特使のウイットコフはイラン問題の特使も兼任していますが、こんな職業外交官ですら解けない交渉を、ズブの素人の不動産屋にやらせるというのがそもそも非常識の極みです。
このオトコには交渉の機微がわからず、自由主義国盟主の理念すらありません。ただの小僧のお使いです。
ブリンケンのほうが100倍ましでした。それにしてもマルコよ、どこに消えちまったんだ~い。
プーチンはこのお使い小僧を相手にいいように時間稼ぎをしています。
最低でも5月9日の戦勝記念日くらいまでは、休戦を折り込んでダラダラと引っ張る気でしょう。
トランプが怒りそうになれば、間合いをはかるかのようにすぐに休戦を言い出します。
たいしたタフネゴシエーターです。
「ロシアのプーチン大統領は28日、ウクライナとの戦争をめぐり、5月に3日間の停戦を一方的に宣言した。こうした動きに、ウクライナ側は懐疑的な見方を示しており、プーチン氏に対しては、米国が提案している、より長期間の停戦案を受け入れるよう求めた」
ロシア政府は、ウクライナでの「全ての軍事行動」を5月8日午前0時から11日午前0時まで停止すると発表した。今回の決定は「人道的配慮」に基づくものだとしている。5月9日は対ドイツ戦勝80年の記念日にあたる」
(CNN4月29日)
プーチン氏、3日間の停戦を呼び掛け トランプ氏は永続的な休戦求める - CNN.co.jp
さすがに戦勝記念日のヒナ壇にトランプを乗せることまでは無理そうですが、ほんとうならプーチンは左右に習近平とトランプを並べて軍事パレードをしたかったことでしょう。
まるで悪い冗談のような風景ですが、トラ親方ならアリだと思っていたかもしれません。
トラ親方の就任当初のイメージでは、就任と同時プーチンと歩調を合わせ、抵抗するゼレンスキーの口に否応もなくなくロシアべったりの和平案を突っ込んで一気に休戦という目論見でした。
これぞバイデンがなしえなかったトラ親方の外交勝利、のはずでしたが、ヨーロッパの反対は予測できたものの、ゼレンスキーは激しく抵抗したためにホワイトハウスでフルボッコにしたわけです。
そして腹いせのようにあろうことかウクライナに制裁を加えて、軍事支援の停止を宣言し、ウクライナ軍にとって死活の衛星情報も遮断してしまいました。
これに呼応して、プーチンはクルスク州で奇襲をかけて、一気にウクライナ軍を押し返しました。
奇襲攻撃などわずかの時間で準備ができるはずがないので、たぶんトラ親方がロシアに対して密かに衛星情報遮断の日時を教えたのかもしれません。
もちろん憶測にすぎませんが、今のトラ親方ならやりかねません。
ゲラシモフ参謀総長は、19日、プーチンに昨年8月からの越境攻撃を受けているクルスク州について、制圧された面積のうち99.5%に相当する面積を奪還したと報告したようです。
「ロシアが26日、ウクライナ軍が一時占領した南西部のクルスク州全体の支配権を確保したと発表した。特に、クルスク州奪還の過程で北朝鮮軍がロシアを支援したとし、北朝鮮の派兵についても明らかにした」
(東亜日報4月28日)
ロシア総参謀長、北朝鮮兵参戦を初めて認める「クルスク奪還に相当な支援」 | 東亜日報
ロシアの大本営発表ではクルスクからウクライナ軍をほぼ追い払ったはずですが、ウクライナ側はクルスクからの完全撤退を認めておらず、まだ国境付近で頑強に立て籠もっていると考えられます。
「(ロシアの有名軍事ブロッカーの)RYBARも「ロシア軍兵士がゴナル集落内で国旗を掲げる様子が登場し集落全体の解放が確認された」と報告したが「完全解放宣言にも関わらずクルスク州の国境沿いや幾つかの渓谷にウクライナ軍が存在する」「ウクライナ軍がクルスク州内で維持する陣地はアクセスが困難なため継続的な砲撃やドローン攻撃を考慮しても当分持ち堪える可能性が高い」と指摘した」
(航空万能論4月26日)
プーチン大統領がクルスク解放を、ゲラシモフ参謀総長が北朝鮮軍の作戦参加を発表
つまり、クルスクは占領されたままであるということです。
これはプーチンに取って致命的です。
トラ親方「和平案」のように現況で「5州」を領土とすることができても、現在時点で銃を置いてしまうと、クルスクという自国領は一部であろうとウクライナが実効支配してしまうからです。
とんでもない面汚しで、クルスクでの戦闘が終了しないかぎりプーチンはトラ親方の「和平案」には乗れないのです。
それを知ってか知らずか、トラ親方はウクライナさえ叩きのめせばなんとかなると思っているのが素人の悲しさです。
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