トランプ100日目の通信簿
トランプというご仁は動けば動くほど怒りをまき散らし、今までの支持者たちには失望を拡散しています。
「就任から100日を迎える米国のドナルド・トランプ大統領の支持率が、CNNの世論調査で41%に落ち込んだ。100日目の支持率としては、1953~61年に大統領を務めたドワイト・アイゼンハワー氏以降の歴代大統領(1期目のトランプ氏本人を含む)の中で最低だった。
トランプ大統領の支持率は3月に比べて4ポイント低く、2月下旬に比べると7ポイント低下。「強い支持」は過去最低の22%に減る一方、「強い不支持」は45%とほぼ倍増した。
女性の支持率は36%、ヒスパニック層の支持率は28%と、3月に比べてそれぞれ7ポイント低下した。党派別にみると共和党員は86%が支持、民主党員は93%が不支持。無党派層の支持率は31%に落ち込んだ」
(CNN4月28日)
トランプ氏支持率、過去70年の歴代大統領の中で最低 就任100日控え - CNN.co.jp
わずか就任100日で、どうやら戦後最低のようで、米国人がしまった票をやりすぎたと舌打ちするのが目に浮かびます。
しかしあんたらのせいで世界が迷惑していることを忘れないように。
トランプ政権100日、なぜ支持率は下落? 世論調査データを分析 [トランプ再来]:朝日新聞
政策別で見るとトランプ関税が引き起こした経済の混乱と物価高騰に対する怒りが大きいようです。
この世論調査を裏付けるように経済はマイナス成長に陥りました。
関税による駆け込み輸入のせいだという者もいるようですが、関税を武器にすればとうぜんのことです。
これはほとんどすべての経済学者が指摘してきたことで、トラ親方は耳をしなかった報いが早くも現れているだけのことです。
「今回発表された1〜3月期の0.3%減は2022年1〜3月期以来のマイナス成長となる。
米国のマイナス成長は過去10年で3回しかない。新型コロナのパンデミックによって世界経済が停滞した2020年の1〜3月期と4〜6月期(28%減)、そしてインフレ率が数十年ぶりの高水準に達したことを受けて連邦準備制度理事会(FRB)が3年以上ぶりの利上げを行った2022年1〜3月期だ。
少なくともひとつの定義によると、米国は景気後退に一歩近づくことになる。専門的には、四半期のGDPが連続でマイナス成長となった場合に景気後退とみなされる。つまり、4〜6月期のGDPがマイナス成長となった場合、景気後退入りしていることになる」
(フォーブス5月1日)
米経済に急ブレーキ、3年ぶり0.3%のマイナス成長 1〜3月 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
株式市場は、トランプとリセッション(景気後退)をかけた「トランプセッション」モードとなっています。
米国株(アメリカ株)の今後(2025年4月)の見通しと3月の振り返り
「ナスダック総合株価指数の主要3指数が揃って値下がりしました。月間ベースでは、ダウ平均が前月比4.2%安、S&P500は同5.8%安、ナスダック総合は8.2%安になります。(略)
14日に発表された3月米ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は57.0と、前月の64.7から低下しました。消費者の5年先の予想インフレ率は4.1%と、1993年2月以来となる32年ぶりの高水準となりました。
物価高と景気悪化が同時に進む「スタグフレーション」や、トランプ氏と景気後退(リセッション)をあわせた造語「トランプセッション(トランプ不況)」の警戒感が高まっていることがうかがえます」
(2025年4月)の見通しと3月の振り返り
経済の最大のリスク要因は関税です。
関税が輸入価格を押し上げて、インフレを再燃させることが警戒されていたのです。
「インフレ再燃の可能性を高める要因として警戒したいのが、トランプ次期政権が掲げる関税の強化だろう。トランプ次期米大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、政権発足の初日に中国、メキシコそしてカナダからの輸入品を対象とした関税の大幅な引き上げを行うことを表明している。
米国のインフレはコモディティ価格の低下を軸に鈍化の傾向にある。しかし、サービス価格のインフレには粘着性が見られる。関税の強化でコモディティ価格が再び持続的に上昇する場合は、インフレ再燃を市場参加者に意識させるだろう」
アメリカ株、上昇期待つなぐ SP500半値戻し 雇用統計の見通しは?
そして予想にたがわず、トランプは関税こそ命、関税こそ最大の武器とばかりに世界相手の関税戦争を始めてしまい、世界を阿鼻叫喚の渦に巻き込んだのです。
関税戦争は米国民を失望させ、将来への希望を奪いました。
「米民間調査機関コンファレンスボード(CB)が3月25日に発表した3月の期待指数(所得や労働環境の短期的な見通しを示す数値)は、前月から9.6ポイントマイナスの65.2に急落し、12年ぶりの低水準となった。この指標は、景気後退(リセッション)の兆候とされる80の基準を大きく下回っており、トランプ政権の経済戦略が本格化する中で、消費者の間に懸念が広がっていることが示唆されているさらに、より広範な消費者信頼感指数(CCI)も前月から7.2ポイント低下の92.9となり、4年以上ぶりの低水準を記録した。これは、ファクトセットがまとめたコンセンサス予測の94.5も下回っている」
(フォーブス3月26日)
米国人の3分の2が、今後1年以内の「リセッション入り」を予測 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
では、関税によって外国に移転した製造業が米本土に回帰するかといえば、たぶんしないでしょう。
米国の製造業はとうに衰退しており、世界の製造業の1割程度のシェアしかありません。
今は産業構造全体がITやサービス産業になどに移行しています。
トラ親方はじぶんの若いころの1960年代のような製造業が5割を超えた時代を夢みているのでしょうが、もはや帰らぬ夢です。
いまや残りすくなくなった製造業は深刻な人手不足が恒常化していており、そのために賃金は中国の約2倍、ベトナムの約6倍に達しています。
では、賃金の安い移民を使おうにも、彼らを真っ先に送還したのはトラ親方自身じゃないですか。
これで仮に本国に製造業が回帰したらどうなりますか。
人手不足で工場はまともに稼働せず、高賃金でメイドインUSAはばか高いものになることでしょう。
そのうえに鉄鋼、アルミ、電子部品、製造機械などの部品にかかった輸入関税はまちがいなく製造コストを押し上げ、競争力を奪います。
そもそも新たに工場を建てたくとも、建設業が住宅建設に移行しているために、プラントが建ちません。
そのために米国の工場は老朽化が進み、築50年などというものが珍しくないのです。
送電網や交通インフラといった生産インフラの老朽化も進んでいます。
これらが複合して今の米国があるわけで、それを関税をかけたから米国に帰れと号令されてもそりゃむりです。
むしろトランプ関税は米国を衰退に導くでしょう。
グレートアメリカをアゲインさせたいなら、関税の武器化などという安易な道に走らずに、地道に政府が公共投資を増やして交通・情報インフラを再建することから始めるべきでした。
それをいきなりイーロン・マスクという大富豪怪人にバサバサ連邦支出をカットさせてしまうのですから、話になりません。
こういうコストカットで財政を再建しようなんて、かつての民主党政権の事業仕分けみたいな発想です。
トラ親方自身がそうですが、発想がどこまでも私企業の社長なんですよね。
しかもそれで成功して頑固になり、他人の言うことに耳を貸さない中小企業のオヤジタイプってかんじ。
マスク氏、チェーンソーで「コストカット」アピール トランプ政権で政府効率化省率いる(2025年2月21日掲載)|日テレNEWS NNN
しかもトラ親方は敵味方識別装置が故障していますから、味方の自由主義陣営をまず猛爆し、ヨーロッパを完全に敵に回しました。
それに対する米国民の世論は6割が不支持です。
「経済政策関連の支持率は、3月上旬にトランプ氏が関税を発表して株式市場が混乱状態に陥り、物価高騰への懸念が強まったことで、目に見えて低下した。
インフレ関連の支持率は9ポイント減の35%、関税に関する支持率は4ポイント減の35%になった。経済問題への対応をめぐる支持率は5ポイント減の39%と自身最低を更新。経済問題への対応能力を信頼できるという回答は、12月より13ポイント減って52%となった。
外交政策については39%が支持、60%が不支持だった」
(CNN前掲)
もうさんざんですね。
民主主義国家の堤防として権威主義国家と戦い続けているウクライナを殴りつけて、あろうことか衛星情報を切って露軍の奇襲を誘引しすることまでしてみせ、ウクライナの資源はオレのものとそっくりかえり、プーチンにはウラジミールちゃーんとネコ撫で声を上げるのですから吐き気がします。
NATOからは脱退だと脅すものだから、ヨーロッパは危機感を強めて独自核の傘論が台頭しました。
お仲間のヨーロッパ極右ですら、トランプ支持と不支持に分裂しました。
そして隣国カナダではリベラルのトルドーが不人気だったので、ほんとうだったら後任には反トルドー派がなってもよかったのですが、国境の向こうからとてつもない応援団が現れました。
他ならぬトラ親方です。
「トランプ米大統領は28日、カナダが米国の51番目の州になるべきだとの考えを改めて示した。自身のソーシャルメディアで「税金は半分になり、軍事力は無料で世界最高レベルに増強され、関税はなくなる」とし「良いことばかりで悪いことはない。運命だ!」と投稿した」
(産経4月29日)
カナダ併合をまた主張 トランプ米大統領「51番目の州になるべき」「運命だ!」 - 産経ニュース
なにが「運命だ」ですか、馬鹿じゃないか。
いくら同じ北米でも他国は他国、外国は外国。外国の元首を選ぶ選挙に介入して「51番目の州になれ」は冗談だったでは済みませんよ。
結局これが響いたのか、支持率がどん底だった自由党がを勝利し、「米国との古い関係は終わった」 と叫んだカーニー氏が「主要国の中で明確な反トランプを掲げて選挙で選出された最初の指導者になった」(ニューヨークタイムス)となってしまいました。
今年6月には、カーニー首相はG7の会合に初出席します。
さぞかしマクロン仏大統領、スターマー英首相、フォン・デア・ライエンEU委員長たちから温かい握手責めにあうことでしょう。
一方トラ親方に寄ってくるのはうちのゲル氏くらいなものか。
望みどおり、米国は世界から完全に孤立しつつあるのです。
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