小泉ジュニアが農水大臣に
小泉ジュニアが農水大臣になったようです。
まだなにもしていない初手から老婆心を披瀝するのも野暮なので、静観、静観とじぶんに言い聞かせております。
「高騰が続くコメを「買ったことがない」とする発言の責任をとって農林水産相を辞任した江藤拓氏の後任に、小泉進次郎元環境相が起用された。小泉氏は自民党農林部会長だった2016年に農協改革の議論を先導。その際、農産物の販売をほぼ独占する全国農業協同組合連合会(JA全農)に対し、販売手数料や流通構造の見直しを求め、JA側と対立した経緯がある。今回の米価高騰は、流通の大半を担うJA側にも問題があるとされ、最優先事項とするコメ価格の引き下げに向け、小泉氏が再びJA側に改革を迫る可能性もありそうだ」
(産経5月21日)
小泉進次郎氏、農水相就任で農協とのバトル再燃か コメ価格引き下げへ改革要求も - 産経ニュース
「お前なんか嫌い」と江藤拓氏、小泉進次郎氏は「面と向かってうれしい」新旧農水相の過去 - 産経ニュース
江藤拓前大臣のいかにもオールド農水族らしいポカが更迭の原因です。
自民党大臣は身内のオフレコで地雷を踏みます。
今回は、支援者からもらったおそらくは玄米について「売るほどある」と言ったのが逆鱗にふれたようです。
「江藤農水相の『支援者の方がたくさんくださるので、まさに売るほどある』という発言も看過できませんが、信じられないのはコメを贈ってくれた支援者も批判しているような部分があることです。江藤農水相は受け取ったコメについて『わざとじゃないだろうが、いろんなものが混じっている。黒い石とか入っている。家庭内精米をした上で精米機に持って行く』と言い放ったのです。まるで支援者のコメは、ゴミだらけの粗悪品だと受け止められても仕方ありません」
(デイリー伸長月20日)
週2回スーパーを訪れる江藤農水相が「コメ買ったことありません」発言で大炎上…消費者感情を“逆撫でする発言”の数々を振り返る(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
江藤氏は宮崎県が選挙区ですから、そりゃ支援者からコメの一俵や二俵はもらうでしょうよ。
春ともなればタケノコが、秋になれば新米が手土産代わりに村内で飛び交います。
新米は農村でやりとりする場合、あえて精米せずに玄米のまま贈って食べる際に精米しますから、「黒い石とか入っている」のはご愛嬌。
こういう感覚がない街のメディアが騒いだわけですが、原因は米価の異常な高騰にあり、それが備蓄米を放出したといってもいっかな下がらないのが最大の理由です。
確かにスゴイ。私は去年新米がでれば収まると思っていましたが、その後も青天井状態でした。
下図の鎌首をもたげた青線がコメの消費者価格ですが、凄まじいですね。
『令和のコメ騒動』(1)コメ高騰の歴史に学ぶ、今後の見通し 食料自給率と安全保障 第10回 | コラム | MRI 三菱総合研究所
いままでコメなんか馬鹿にしていた都市生活者が倍になったからなんだって言うんだ、という暴論も農村からは聞こえますが、まぁコメは食の基本中の基本で、どうやらこれがJAがらみだということが理解できたことは、ある意味「収穫」です。
さて、江藤氏と小泉ジュニアはかつて政敵です。
江藤拓 - Wikipedia
小泉ジュニアの親父の純一郎首相がやらかした郵政民営化法案に、江藤氏はきっぱりと反対票を投じた結果、公認をはずされたうえに「刺客」まで放たれて哀れ落選して離党。
腹が煮えくり返った怒りは、その息子にも向けられたらしく、しょっぱなから出会い頭に江藤氏は「お前なんかキライだ」と言ってのけたというのですからたいしたもんです。
受けたジュニアもこんなことでめげるような可愛いタマではなく「こんどメシに連れて言って下さい」と返したそうです。なかなか。
それはさておき、江藤氏はゴリゴリの農水族であることに対して、ジュニアはJA改革派です。
結論から言えば、今回のコメ騒動の原因は食管(食糧管理制度)の失敗です。
表向きは、日本は食管は廃止されたのがタテマエですが、もちろんかぎりなくウソに近いフェークです。
実際には、農村に来ればわかりますが、農水が翌年産米の「適正生産量」を決定し、この生産目標に基づいて都道府県、市町村段階で、JAや行政などが参加する協議会が生産量を決定します。
生産者がこれに逆らうのは非常に困難で、通常のコメの販売ルートから締め出されることを覚悟せねばなりません。
ですからこの生産量管理システムがあるかぎり、私は「減反は残っている」と言い続けています。
まるで社会主義の計画生産みたいですがまさにそうで、これはリッパなカルテル行為、あるいは談合です。
ただし国と日本最大の生産団体のJAがつるんでいることなので、公取も文句を言ってきませんがね。
では、減反廃止して減った分をどうするんだといえば、いままでと一緒で補助金を貰っているのです。
言い換えれば、補助金、つまり国民の税金を使って「作らせない」ようにしたのですから倒錯しています。
なんせ「作らせない」のが原則ですから、当然反当たり収量は人為的に頭打ちとなりました。
いまやカリフォルニア米は日本の1.6倍、中国にも追い越される始末で、かつて世界一のコメ作り国を自称していた面影はありません。
そして反収を増やせない農家の悔しさが一気にブランド米に向かい、各県の農業県試はご当地米を作るのがもはや道楽の域となっています。
今年は作付けを増やしてもいいぞよ、という国の有り難いお言葉で、多少増えるそうです。
「農林水産省は19日、2025年産の主食用米の作付面積について、1月末時点の意向調査結果を公表した。全国合計の作付面積は128万2千ヘクタールとなり、前年実績から2万3千ヘクタール増えて、4年前の21年産(130万3千ヘクタール)の水準に戻る。北海道や東北、北陸といった主要産地が面積を拡大すると回答。コメの供給不足や価格高騰を背景に、生産者の増産意欲の高まりが反映された」
(共同3月19日)
コメ作付面積拡大、4年ぶり水準 25年128万ha、価格高騰で(共同通信) - Yahoo!ニュース
といってもちょぴりで、4年前に戻るだけのことで、そもそも生産目標を低く見積もるという大ポカをやらかして収量が減ったのが今回のコメ騒動の原因ですから、ぜんぜん懲りていませんね。
お天道様次第の農産物が、生産量と消費量をジャストでマッチングなんかできるわきゃねぇだろう。
だからジュニアが本気で「コメ担当大臣」となりたければ、この生産量管理制度を廃止せにゃならんのです。
長くなりそうなので、次回にも続けます。
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JAに放出してもなかなか出回らないのは意図的サボタージュでそうしてるとしか。
江藤は親子続けて舌禍で閣僚から更迭された形ですが、それにしてもこの30年ほどで「農林水産大臣」というポジションは随分と軽い腰掛けポジションになったものだと。第1次安倍政権の頃なんか酷かったですし。
つまり無駄に巨大な旧態依然組織の農水省とJAにベッタリで「何もしない」人が腰掛ける大臣職。
困った時の進次郎頼み。
まあ基本的にブツが足りないんだから生産量を増やさないんじゃ、やれることは限られるでしょう。今年秋のJA概算金が軒並み大幅アップしてますし(これまでが下がりすぎ)、直販やってる所は既に売り切れ続出だそうで。
個人的に良いアイデアだと思ったのは小野寺五典(宮城県)の「備蓄米の翌年補填買い取りを止めるべきだ」という発言。
全くその通りで、自民党でも「5年以内に補填」としたようですね。
投稿: 山形 | 2025年5月23日 (金) 07時00分