10.7テロはサウジとイスラエルの国交正常化阻止が目的だった
ウォールストリートジャーナルのスクープです。
ちょうど首謀者のシンワル兄(シンワル)に続いて弟(ムハンマド)も死亡した時を見計らったように、イスラエル軍が発見したハマスの秘密分子いが公開されました。

ヤヒム・シンワル
https://www.wsj.com/world/middle-east/israeli-military-says-it-is-investigating-if-it-killed-hamas-chief-sinwar-98b5e34b?mod=article_inline
シンワル兄弟はハマスの政治・軍事部門の指導者として10.7テロの首謀し、この数カ月停戦が模索された交渉の間、一貫して人質解放を拒んできました。
よくシンワル兄弟がいなくなると、交渉窓口がいなくなるという人がいますが、彼らこそ人質解放を渋りに渋って、戦闘を続けた張本人です。
彼らにとって、ガザ市民の犠牲者が増えれば増えるほど自らの政治的立場が強化されるといいう冷酷な判断があったはずです。
ネタニヤフは知ってか知らずか、ハマス最強硬派を喜ばせることばかりしています。
シンワルは組織幹部に向けたメールでこう言ってのけています。
「シンワール氏は最近、カタールおよびエジプト当局との合意を仲介しようとするハマス幹部へのメッセージで、「イスラエルはわれわれが望むところにいる」と語った。
ガザ地区南部ではイスラエル軍とハマス部隊の戦闘が続き、人道支援物資の輸送が滞ったり、民間人の犠牲者が増えたりしていることから、ハマスの根絶を目指すイスラエルに対して国際的な批判が高まっている。
シンワール氏の政治人生の大半は、自らが存在権を否定するイスラエル国家との血なまぐさい対立によって形作られてきたが、同氏はシンプルな戦略を堅持している。窮地に追い込まれると暴力に逃げ道を求める、というものだ。現在のガザでの戦いも例外ではない」
エクスクルーシブ |ハマスは10月7日の攻撃でイスラエルとサウジアラビアの取引を魚雷攻撃したかった、文書が明らかに - WSJ
イスラエル軍は、ガザ地区付近の町オファキムで射殺されたハマス隊員からも地形地物を詳細に整理した文書を発見しました。
この文書には、民間人居住地域、ユダヤ教会堂、幼稚園まで特定されていた。「北部小隊の経路」として町の位置に沿って赤い点線を描いた地図も見つかっています。
秘密文書の中で、最も重要なのはアラビア語で「一級秘密(トップシークレット)と題した14枚分の作戦計画書でした。
この文書には、ガザ地区境界付近のメファルシム・キブツ(農業共同体)に浸透して住民を拉致するという作戦が記されていました。
民間人の人質をとる目的は「交渉に使うため」だと記してあります。

では、ここまで大規模なテロを働く目的はなんだったのでしょうか。
彼らはこの大規模テロが、中東の政治情勢に大きな打撃を与えて、一気に彼らが望むような政治地図に塗り変わることを意図してきました。
これについて2023年10月2日のハマス指導部会議の議事録で、ヤヒア・シンワルはこう嘆いて見せています。
「サウジとシオニストの正常化合意が大きく進展していることに疑いの余地はない。
サウジとイスラエルの国交正常化合意は「アラブ諸国とイスラム諸国の大多数が同じ道を歩むための扉を開くことになるだろう。
この動き(サウジとイスラエルの国交正常化)の前に、『普通ではない行動』が必要である」」
(WSJ前掲)
常々テロと暴動を手段としてきたハマスでさえためらうような「普通ではない行動」、これが10.7無差別テロだったわけです。
つまり、このテロのメッセージがむけられていたのは、イスラエルであるよりむしろサウジだったようです。
ハマスはこのテロで、サウジにイスラエルとの国交回復を断念させようとし、それにほぼ成功しました。
10.7テロの反撃として行われたイスラエルによる常軌を逸した攻撃により、ガザ市民の犠牲者は膨大に積み上がり、中東諸国もイスラエルと国交回復する空気が雲散霧消してしまったのです。
いわばハマスの術中にネタニヤフはしっかりはまってしまったわけです。愚かな。
その意味で、ハマスの10.7テロは「成功」したのです。
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それで望む世界を作ってもらった、結局、自分達兄弟自身が両方ともおっ死んでるんだから世話ないですね。馬鹿で迷惑な2人。
投稿: ねこねこ | 2025年5月21日 (水) 08時13分
シリア情勢要因じゃないですかね。
バイデンも実はそうでしたが、トランプにはさらにネタニヤフの非人道的攻撃に対する顧慮なんぞありはしません。
サウジやカタールにしてみれば、シリアが革命により逆転したので、イスラエルとの国交正常化を急ぐ必要はなくなりました。今はシリアを固める時で、イスラエルなんぞ二の次、三の次。
トランプは口では一次政権の眼目である「サウジとイスラエルの国交正常化をあきらめていない」というが、自分の利益が第一。
かくて中東の主役はイスラエルからサウジに代わりました。
中東の安定のためにはサウジとイスラエルの国交正常化の必要性は変わりませんが、サウジに「宙ぶらりん状態」を許して主導権を握られた米国のだらしなさはトランプ政権独特のものでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年5月21日 (水) 18時41分