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2025年5月10日 (土)

日本、ウクライナに衛星情報を供与

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日本が意外な分野でロシアと戦っている諸国に支援していることをご存じでしょうか。
日本は世界で有数のロケットと衛星技術保有国です。
世界で1t以上のペイロード(積載量)を持つ大型ロケットを打ち上げて軌道に投入する技術を持つ国は、米露仏中印日韓の7カ国のみです。

先日プロジェクトXでH3の苦闘の歴史を見て感涙にむせぶことになってしまったのですが、日本はこの外国に頼らず独立した宇宙航空技術を持つことに苦闘し続けてきました。
ですからその長年の成果の末に、米露中と対抗し得る各種の観測やGPSのための情報衛星をH3で打ち上げています。

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サイエンスポータル」

「大型ロケット「H3」5号機が2日午後5時30分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。政府の準天頂衛星「みちびき」6号機を所定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。H3は2001年から運用中の「H2A」の後継機。23年3月に1号機が失敗したのを受け、2号機以降に対策を講じている。4機連続成功により、安定運用に弾みをつけた形だ。みちびき6号機は静止衛星で、測位精度を高める新たなシステムを搭載した」
(サイエンス・ポータル2025年2月4日)
H3ロケット、4機連続打ち上げ成功 「みちびき」静止衛星を搭載 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」

さて今、日本が連続して成功させている衛星がGPS衛星(測地衛星/QZSS )です。
準天頂衛星システム - Wikipedia
人工衛星が提供する情報は多岐にわたりますが、そのうちもっとも身近のものはGPSです。
これは米国の軍事用衛星技術から民生用へと派生したもので、米国の誘導ミサイルや航空機の精密誘導システムは、このGPSに誘導されています。

このGPS情報は公開されているために日本もこれを使っていました。
カーナビ、航空機の自動操縦、自動車の自動運転、スマホまであらゆるところで使われて、いまやライフラインの一部となっています。
しかしこの米国製GPSは本来が米国領対象なので、日本国内では数センチからメートル単位で狂うことがあります。
そのうえにこれは米国政府が仕切っているために、今の米国のように国家ミーイーズムに走られた場合、永続的に享受できる保障はありません。
切られないまでも、アチラの都合でサービス内容を変更されたりします。
仮に米国と日本が対立関係に入った場合、一方的にGPSをカットされる可能性すらありえます。

また日米関係に限らず、米国が中国と紛争関係に入った場合、互いの測位衛星に妨害をかけることは確実です。
その場合、日本もブラックアウトとなってしまいます。
これを避けるためには、わが国も独自の測位衛星が必要だったのです。

ところでこの3月、ウクライナがロシア領クルスクから露軍の大規模奇襲にあって敗退しました。
このクルスク侵攻はロシアとの和平交渉上、ウクライナの数少ない交渉カードでした。
これが軍事衛星情報がなくなったために消滅したのです。

まだ一部の国境地域でウクライナ軍は踏ん張っていますが、プーチンはこれを落とすまで休戦はしない考えです。

「ロシアのプーチン大統領は14日、ロシア西部クルスク州に展開するウクライナ兵に投降を呼び掛けた。米国の仲介によるウクライナとの停戦の可能性が浮上する中、外交的な駆け引きが続いている。(略)
プーチン氏を巡っては、ウクライナが領土交渉の唯一の材料であるクルスク州を失いつつある中、クルスク州を奪還するまで米ウの停戦案に関する協議を先延ばしにしている可能性があるとの見方が多い」
(CNN3月15日)
プーチン氏、クルスク州のウクライナ兵に投降呼び掛け ゼレンスキー氏は米国に圧力要請 - CNN.co.jp

このウクライナ軍苦戦の理由は、米国の衛星情報の供与停止が原因でした。
ワシントンに支援要請に行ったゼレンスキーに対して、トランプと副大統領のバンスは一方的屈伏を強要し、これを拒むと翌日には軍事情報の提供をカットするという暴挙に出ました。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先月28日、米ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と激しい口論となり、退出を命じられた。その3日後、米政府はウクライナへの軍事援助を一時停止した
情報共有は一部が停止されたのか、全面的に停止されたのか、分かっていない。また、いつまで続くのかも不明だ。
米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官も5日、米FOXビジネスのインタビューで、情報共有の一時停止を認めるような発言をした。トランプ氏は「ゼレンスキー大統領が和平プロセスに取り組んでいるのか、本当に疑問に思っていて、『(情報共有を)一時停止しよう。考える時間を与えたい』と言った」のだと、長官は語った」
(BBC3月6日)
アメリカ、ウクライナとの情報共有を一時停止 - BBCニュース

この機会を伺っていたプーチンは、かねてから準備していたクルスク奇襲を敢行しました。
これはガスパイプライン内部に潜伏していた露軍による奇襲攻撃でしたが、まったく衛星による部隊移動を察知できなかったウクライナ軍は混乱し敗退しました。

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ロイター

「ウクライナ生まれの親ロシア軍事ブロガー、ユーリー・ポドリャカ氏によると、ロシア特殊部隊は幅1.5メートルのガスパイプラインの内部を約16キロにわたり移動し、数日間パイプラインの中に潜伏した後、スジャ付近でウクライナ軍の背後から奇襲攻撃を仕掛けた。
同氏によると、ロシア軍の進撃が速すぎて状況の推移を追いきれない状況で、ウクライナ軍部隊はクルスク州のいくつかの場所で身動きがとれなくなっているという」
(ロイター3月11日)
ロシア軍、クルスクで攻勢 ガス管潜入し奇襲攻撃か | ロイター
この公開されたパイプライン内の動画の中で、ロシア兵は「3月8日にスジャに向かう」と言っているところから、露軍は米国がこの3月8日には軍事情報が停止されるのをあらかじめ知って、大規模な奇襲部隊を用意していたことになります。
米国の情報収集能力は他を圧しており、いままでウクライナ軍がロシア軍に抵抗できているのも米国からの情報提供があるからだと言われています。
しかし米国は絶対に情報を提供していることを明らかにすることはしませんし、衛星情報を公開することもしません。
それは米国の情報収集と分析能力が知られてしまうからです。
だから、この3月8日に行われた露軍のクルスク奇襲に不透明感が漂うのです。
トランプが知らせたとまでは思いたくありませんが、とにもかくにも衛星情報はかくもひとつの戦争の行方まで左右してしまうものなのです。
さて、わが国は衛星情報をウクライナに提供することにしたようです。
「防衛・諜報関連の情報を専門とするフランスの「インテリジェンス・オンライン」は4月21日、日本政府がウクライナ国防省の情報機関GURに人工衛星の地理空間データを提供することに同意したと報じた。これを引用する形でウクライナメディアも報じている。報道によれば交渉は2月に行われ、先週、署名された。昨年、2024年11月には岩屋毅外相がキーウを訪問し、ウクライナのシビハ外相と会談し、両国間の安全保障情報の共有強化で合意していたので、そこで、既に話が詰められていたのかもしれない。ウクライナはロシアの侵攻を受けた2022年2月の翌月3月には既に日本に対し、人工衛星データ共有の支援を求めていたが、政府は慎重な姿勢を見せていた。3年越しに要求が叶ったことになる」
(ミリレポ4月23日)
日本、ウクライナの情報機関に人工衛星の偵察映像供与に同意か

ウクライナが求めているのは、SAR画像といって衛星自ら照射した電波の反射情報から地表面を観測する衛星画像です。
そしてこれは未処理のものではなく、日本でいったん分析し解析した後の画像で、すぐに使えるものとしてウクライナに提供されるはずです。

これは一定のリスクを内包しています。
米国が衛星情報提供を公にしないのと同じ理由で、日本の衛星情報能力が明らかになるからです。
いうまでもなく衛星情報は軍事力ですから、軍事能力の提供と同義であり、ある意味で戦車やミサイルの供与以上にウクライナ支援を明確にうちだすことになります。
当然、ロシアの覚えはめでたくはないでしょう。
そこまでの決心があってするなら、むしろ拍手したいくらいですが、ゲル氏に覚悟はおありでしょうか。



 

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コメント

いいのかなあ。
コレ出しちゃうと日本の衛星データ技術が丸見えになっちやうんですけど。

かつては(まだ冷戦期)には、樺太沖大韓航空機撃墜事件でも日本は空自の無線傍受のレベルが分かるから出し惜しんでたのを、米国の圧力で仕方なく出したことがありましたけど。。

皮肉なことに、日本のテレビ放送の始まりや原発導入にロケット開発といった重要な案件については読売新聞はゴミです。
正力からナベツネはどんだけアメリカにおもねりたいのやら。大好きなだけなら良いけど、マスメディアのトップが酷すぎますね。国民を誘導して何らかの見返りがあったとしか。。

ちなみに糸川英夫博士が戦後にペンシルロケットで研究を初めて(現在国分寺の早稲田実業学校の敷地)から、秋田県の日本海側でペンシルからベビーロケットと開発してた砂浜には今や誰も立ち寄らないような場所に石碑が残ってます。
当時、マスコミ公開でまだおもちゃのようなベビーロケットが爆発しまして···翌日の読売新聞1面を見つけたらデカデカと写真入りで「国産ロケット爆発!」の下に原子力発電は「英コールダーホール式(黒鉛式)はダメ」と(それは間違ってなかったけど)GE製のBWR軽水炉導入を強調しています。

結局は文部書しよ

どのような覚悟が有るか無いか、我々に知りようはない、はず。
衛星画像情報とその共有については、政府は詳細を認めない・報道もされないで、はっきりしないままにすることは肝心ですので。
ビジネスとしてやっているミリレポだって、「偵察映像供与に同意『か』」としているわけで、ミリレポが「今回のウクライナと情報共有の枠組みがどうなっているのか今のところ不明」とするところから先、仮に、内容を詳しく断定して報じる我が国マスメディアが万一現れたとしたら、寒い気持ちになります。
ロシアが望む勝利に与しないとだけ分かればとりあえず、衛星?そうかもしれないし、そうでないかもしれないしうふふ、で。

 ここに来て、3年越しの要請を実現させる事になった日本政府の「戦況への読み」が正しい事を願ってやみません。
先行していた仏・独・イタリア等の情報提供に加え、さらに精度が増すでしょう。原油価額の下落に端を発したロシア経済の低迷が深刻化するなか、ここは我慢比べです。

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