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2025年5月17日 (土)

経済学を知らないトランプ翁

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トランプはちゃんとした経済学を学ばないで大統領になってしまいました。
だから、中小企業のワンマン社長の体質のままでジジィとなり、自分の経験とノリで大統領をやっています。
似た体質は盟友イーロン・マスクもそっくり同じモノを持っていて、企業のオヤジ体質で連邦政府の「無駄」を切りまくりました。
マスクがやったことなど、かつての民主党政権時にレンポーのやった事業仕分けと同質です。
これを諫止すべきホワイトハウスのブレーンときたら、トラ社長に忠義一筋ですから怖い。
ホワイトハウスとバランスすべき議会は、ハリスの大敗北から立ち直れずにヘタレていますから、今の米国は転覆するまで突進する機関車みたいなもんです。

そのトランプ御大が就任早々言い出したのが「オラの国は搾取されているべぇ。世界の国がオラの国からカネ盗んでるから貿易赤字になるッペ」でした。
世界一のGDPを持ち、繁栄している国の大統領が言うのですから、なんのことだかわからずに、世界が呆然としているとやにわにやりだしたのが世界関税戦争ですから、なにがなんだか。

昨日も紹介したウォールストリートジャーナルの社説は、はこう評しています。

「トランプの知的問題のひとつは、貿易赤字の解消にこだわっていることだ。貿易赤字は経済的観点から問題視されるものではない。さらに、同盟国との間に通商問題があったとしても、それは2国間あるいは多国間のディールで解決できる。
国際貿易の最大の問題は、中国の権威主義的政権による自由貿易ルールの悪用だ。しかし、トランプの場当たり的で、手当たり次第の関税政策は、この問題の解決につながらない。トランプは、中国共産党を打撃する以上に、自身の掲げる大義と米国を痛めつけている」
(WSJ4月10日)
Does Trump Have a China Trade Strategy? - WSJ

どうやら貿易赤字=カネ盗られたと思っているみたいです。
しかし貿易赤字はWSJが指摘するように、そんなに悪いことではありません。
むしろ自国の消費があまりに盛んなので外国から買っているだけのことで、富裕国の証明みたいなもんですから自慢してもいいくらいです。
米国は、GDPの約7割を消費が占める消費大国です。これは世界最大の個人消費国ということで、今回の関税交渉の相手国中国などは4割ていどです。
個人消費が米国経済を活性化させ、世界でもっとも繁栄を謳歌できる国にした原動力となったのです。
かつて半世紀前には米国も貿易黒字国でした。
まだ米国のビッグスリーやUSスチールなどが君臨していた時代のことです。
ちょうどトランプの若い頃にあたりますが、その時代には追いついて来る日本製自動車産業と熾烈な競争を行い、下の写真のようにデトロイトで日本車をぶっ壊してオダを上げていた時代でした。
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プラカードにUAW(全米自動車労組)と見えるように、当時は日本の自動車産業が米国労働者の雇用を奪うと考えられていたのです。
そして80年代の貿易摩擦から学んだ日本は、生産を米国内へとシフトしていきます。

下図のようにいまや海外生産(赤)が国内生産(青)をとうに追い抜き、2018年には国内生産数が1000万台弱に対して海外生産数は2000万台弱と、ほぼ2倍の水準に達しています。
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日本車はその技術力と価格、そしてなによりその高い信頼性によって、たちまち米国経済の一角に根を下ろします。
そしてその相当数は、メイドインUSAの日本ブランドなのです。
そしてそれだけでも足りずに輸入しているから、こりゃ貿易赤字になりますよね。
その背景にあったのは3つの要素です。
「米国の貿易赤字の背景には、旺盛な消費によって消費財の輸入規模が大きいことが挙げられます。
さらに、米国のような先進国は、国際的な信用力の高まりから通貨高になる傾向にあること。
賃金を始めとする生産コストが上昇すること等を背景に、製造業の競争力が低下します。
それが、輸出の減少・輸入の増加を招き、赤字の要因となります」
(第1生命経済研究所斎藤まな)
このように書いてくると、トランプは見ろ、米国からカネが出っぱなしじゃねぇかと言うかもしれませんが、それはミクロ(小さい目)しか見ないからです。
マクロ(大きい目)で国際収支を見るとまったく違います。
トランプはミクロという会社経営の見方で米国経済を見て、大きくマクロに国際収支を見ていないから困るのです。
ちょうど日本の増税派が「日本の借金は世界一。孫子の世代にツケを回すな」と言っているようなもので、財政をトータルな収支バランスで見ないのと一緒です。
極端なことを言う時には自分に都合のいい部分だけ切り取って、そこだけを誇張して叫ぶというプロパガンダ的手法です。
トランプの場合はこれが貿易赤字でした。
国際収支は2つの部分からできています。
ひとつが経常収支で、単純化すると日常的な商取引で発生するカネの流れのことで、ここにトランプが騒ぐ貿易収支が入ります。
もうひとつが、金融収支といい投資や融資に関わるカネの流れを指しています。
これは工場建設などの直接投資、株式や債券の売買、銀行の貸し借りなどが入ります。

「アメリカは日本から多くの自動車や電子機器を買う一方、日本へ売るものは少ないため「貿易赤字」が発生します。
さらに、日本企業がアメリカに投資した資産(工場、株式など)から得る収益が、アメリカが日本に投資して得る収益より多いため「アメリカは所得収支も赤字」になります。
では、この「出ていくお金」はどうバランスが取れるのでしょうか?
答えは「投資」です。
日本からアメリカへの投資(アメリカ国債の購入、工場建設など)による資金流入が、アメリカの経常赤字を埋め合わせます。
このように国際経済では、モノやサービスの取引(経常収支)と投資(金融収支)が常にバランスを取り合う仕組みになっています」
貿易赤字とは?貿易赤字について出来るだけ分かりやすく説明してみる|Kei | MBA| 元銀行員

図にするとこうなります。

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Kei | MBA| 元銀行員

日本は確かに米国にモノを売って経常収支を黒字にしていますが、その分米国に工場建設や米国債を購入したりして米国にちゃんと還流させています。
つまり、貿易赤字によって米国から出ていったカネは、日本からの米国への投資という形で再び米国に戻ってきているのです。
これが「国際収支のバランス」という国際経済のバランス機能です。
実はこのていどのことは、学生時代に経済の授業で習う経済学の初歩なのですが、トランプは不動産売買しか学んできていなかったとみえます。

だから貿易赤字だからといってワーワー騒ぐほうがどうかしているので、トラ関税発動前に日本から米国に行った孫氏などが盛んに米国に投資すっからと言っていたのはこういう意味でしたし、日本政府が米国債を売る気がないと言ったのも同じく「国際収支のバランス」機能を見ての発言なのです。

ウォールストリートジャーナルはこう言います。

「貿易赤字自体が悪ではない。特にそれを2国間で均衡させよう、モノの貿易だけ均衡させようという考え自体が間違っている。
国は、ある国に対しては赤字、他の国に対しては黒字となり、グローバルで均衡を図っていくべきものだ。さらに、貯蓄なども含めて、マクロ的に考える必要もある。
米国の貿易赤字は、サービスの黒字や世界から流入する投資で埋め合わされている。トランプ政権は、経済は単なる積み重ねではなく、成長する生き物として、グローバルに、しかもダイナミックなものとして理解すべきだ」
(WSJ前掲)

そして「最大の問題は、中国の権威主義的政権による自由貿易ルールの悪用だ。トランプの場当たり的で、手当たり次第の関税政策は、中国問題の解決につながらない」と主張しています。
まったくそのとおりで、ホワイトハウスにポール・クルーグマンでも呼んで話を聞いたらいかがでしょうか。
あ、クルーグマンのほうがあんな無知蒙昧・粗暴野卑の巣窟に来たがらないか。

 

※扉写真 コウノトリです。

 

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コメント

そのトランプが若くてブイブイ言わせていた時にUAWがカローラやラングレー(セントラハッチバック)を1ドルでハンマー1発打てるなんてキャンペーンをやって対日憎悪を煽ってました。トランプには刷り込まれた原風景なのでしょう。
さらに85年秋にはあの「プラザ合意」です。
ようは西側同盟国がどうにもだらしない盟主様であるアメリカ経済を痛みを負いながらの立て直しで助け合ったというのに、プライドだけ高い米国人には「屈辱」なのでしょうね。まだ冷戦中でしたから。
ソ連はゴルバチョフがペレストロイカ開始した頃です。

いつも楽しみに拝読しております。連日失礼いたします。
トランプさんは一応民主的手続きで選ばれた大統領なので、米国民がスタグフレーションで苦しむのは自業自得であるともいえます。一方、経済学とも言えないようなミクロ視点での経済運営で苦しむ同盟国には、米国市場のメリットと軍事面での依存を天秤してお付き合いするしかない迷惑な国になるのかもしれませんね。
翻って我が国ですが、富裕層から取って貧困層へ配ろうとするいわゆる岸破・財務省政権のやり方は、なんだかその昔のマルクス経済学みたいに見えています。

不肖トランピアンの私としましては、このところボロクソ気味の記事が連発なもんで、さすがに「こりゃ、お呼びでないな」と空気を読んでリードオンリーでしたが、以前にも書いたように、トランプ親ビンは現実に破裂しそうになってきた米国政府の大借金をなんとかせんならんと奮闘していると、それだけは理解してやって欲しいとコメントつけさせてもらいますわ。(そいや今日、米国債の格下げのニュースが出てました)

本来なら歳入改善のためには消費税を導入するなりして米国財政危機を乗り越えたいところですが、そんなもの血気盛んな米国民が飲むワケありませんから、よく似ている関税を方便としているだけですわ。それに関税とすると、相手国側の輸出企業が「なぬ?たまげるような高い関税とな、これでは輸出先での価格競争に負けてしまう、よし、儲けを削ってでも値下げするのじゃ」と、外国の企業に事実上何割か課税したような形となり好都合ですわ。

他所での記事によると、あのイーロン・マスク氏さえベッセントさんに「手ぬるいぞ、もっともっと政府予算を削るのじゃ!」とケツを叩かれているのだとか。コロナの時に刷りまくった短期米国債の償還が来ていて、とにかくカネが無いものだから今度はそれをロールオーバーしないといけないのに、今じゃ高インフレなんで金利を高くしないと誰も米国債など買ってくれなくて、将来にはサラ金並の金利返済となり、もう悪循環の自転車操業。(日本国債でも、今年になって30年債の金利がブッ飛んで、30年債がエゲツないほど割り引かれていると話題になった)

おまけにパウエルさんが、「中央銀行は物価安定ファーストだもんで、物価上昇が2%近くに下げるまで金利は下げんよ、なんならインフレ再発したら金利上げたる」と言うもんだから、親ビンは「コラ、ジェローム!てめー、米国政府を破産させる気か?」とチンチンなんですわ。

唯一超大国である米国といっても、その政府は"火の車"なんで、親ビンは何につけてもカネ、カネ、カネと守銭奴のようにウルサイ。もし米国債が暴落でもしたら、米ドルも暴落して、世界のカネの流れが立ち切れてしまい(壮大なババ抜きゲーム)、米国債をたらふく食ってる日本はもちろん、専制国家を除いた残りの国々はもろとも地獄(世界恐慌)ですわ。

長々擁護コメントしたもんで、またしばらくリードオンリーに戻ります。

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