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2025年5月 7日 (水)

原油価格暴落、ロシア大ピンチ

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春から落ち続けていた原油価格がまたまた下落して、とうとう三大指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート=NY原油)先物でバレル60ドルを切りました。
ちなみに他の2つは欧州市場の指標となるロンドン商品先物市場の北海ブレント原油とアジア市場の指標となる中東のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ原油です。
ロシア原油を中心としたウラル原油というのもあるにはありますが、ウクライナ侵略後は制裁をかけられています。
後述しますが、ウクライナ戦争を仕出かした後は密輸で輸出していました。

「原油価格が急落している。米国指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は日本時間5日午前の取引で、一時前営業日に比べ3ドル(5%)安い1バレル55ドル台前半まで下げ、約4年ぶりの安値圏で推移する。主要産油国が原油の増産加速を決定し、需給が緩むとの観測が広がっている」
(日経2025年5月5日)
NY原油55ドル台に急落、約4年ぶり安値圏 増産加速で - 日本経済新聞

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マーケット|SBI証券

原因はサウジです。
世界最大の産油国のサウジは、OPECプラスで堂々と増産を決めさせました。
それもなんと当初計画の3倍だというのですから、無慈悲です。
誰にって、もちろんロシアにとってです。

「石油輸出国機構(OPEC)と非加盟のロシアなどで構成する「OPECプラス」有志国は3日に開いたオンライン会合で、6月に生産を日量41万1000バレル増やすことを決めた。世界経済が減速し、エネルギー需要が減る見通しのなか5月に続く大幅な増産となる。
有志国は4月の会合で、市場予想を上回る当初計画の3倍の規模の増産を決めた。今回も同様の規模の増産だ」
(日経前掲)

サウジ増産の最大の理由はトラ親方にあります。
世界経済がトランプ関税で急激に減速する懸念が生じたからです。

 IMFによる成長見通しの下方修正は、世界貿易機関(WTO)が16日に発表した、今年の世界貿易量の縮小を予想する報告書など、このところ各方面で続く下方修正の報告に続くものだ。HSBCホールディングスのエコノミストは今週、今年と来年の世界経済成長率について、これまでの2.5%、2.7%から、2.3%に下方修正した」
(ブルームバーク4月18日)

IMF専務理事、トランプ関税による世界経済の減速を警告 - Bloomberg

このようにWTOもIMFも、揃って世界の景気がトランプ関税という未曾有の大人災によって減速する懸念が増えたと観測しています。
そんな状況で原油を高止まりさせてしまったら、いっそう需要は冷え込みます。
景気が冷え込みそうな時はどうするのかといえば、サウジのような力がある産油国はむしろ増産してシェアを取るのです。
そうすればまた需要が回復した時に、ガッチリ市場を押さえられます。

そしてもう一つのサウジ増産の理由は、トラ親方のシェールガス増産計画に対抗しています。
トラ親方は「Drill, baby, drill(掘って、掘って、掘りまくれ!)」と呼号していますが、これを本当に実現するためには、原油相場が上昇せねばなりません。
いままでシェールが次世代のエネルギー源として期待されつついまひとつ伸びなかったのは、バイデンの環境政策もありますが、原油相場が安かったからです。

「トランプ大統領のエネルギー政策を具現化するには、「原油相場が13~14年のように100ドル付近まで高騰してバーミアン地区の掘削数増、さらにバッケン地区とイーグルフォード地区が「さびれた地区」から脱却すれば実現するかもしれない」(同氏)としながらも、いずれも難易度は相当高いとみる」
新春特集=2025年の原油相場を読む①、トランプ政権とOPECプラスに関心|国内|マーケットニュース|マーケットニュース

シェールガスのような原油生産国の天敵を潰すには、原油相場が安いに限ります。
掘れ、掘れ、ここ掘れワンワンとばかりに景気よくそそのかされても、かんじんの原油相場が安ければ赤字です。

だからサウジは他の産油国の減産を尻目に増産を開始し、見る見るうちにバレル60ドルを割りこみ今日のWTI先物はバレル57.14ドルです。

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マーケット|SBI証券

これを見て一番ドヒャーとなったのは、トランプよりむしろ盟友のウラジミール君のほうでしょう。
何度か書いてきていますが、ロシアのパワーは原油相場と相関関係があります。
下図は世界政治と原油価格との相関をみたものですが、プーチンがウクライナ侵略を決意した背景には100ドルを越えようとして高止まりしていた原油価格相場があったことがわかります。

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ウクライナ情勢と原油価格、そして、脱炭素(前編) – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute

「最近の100ドルを超える原油価格の高騰の原因として、ウクライナ紛争が指摘される。確かに、本年2月以降の原油価格の上昇・高止まりの主な原因は、ウクライナ紛争による供給不安、特に、対ロシア経済制裁によるロシア産石油の供給減少懸念にあることは間違いない。しかし、それ以前に、原油価格は、2020年後半以降一貫して上昇しており、本年年明けには80ドル水準に達していたことが指摘できる」
(日本エネルギー経済研究所 石油情報センター 橋爪吉博 2022年7月26日 )
ウクライナ情勢と原油価格、そして、脱炭素(前編) – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute

それがいまやバレル60ドルを突破してしまいました。
さぁ大変だぁ(笑いながら)、だって戦時経済とは財政が火の車になることを前提とする大規模赤字財政のことなんですから。
だからルーブルを印刷機でジャカジャカと刷って軍需産業というストーブにくべてやるらないと、戦争機械は直ちに停止してしまいます。
そしてこの財政赤字が、2023年1月の収支でマイナス1 兆7610 億ルーブル(3 兆1874億円)です。

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ロシア財政赤字が急拡大 原油価格上限の制裁で打撃 | 日曜スクープ | BS朝日

理由は簡単。歳入が原油価格下落で減少したのに対して、ウクライナ戦争で膨張した支出が激増したからです。

「今年1月の財政収支を歳出と歳入に分けて見ると、歳出が3 兆1,170 億ルーブル、日本円で約5 兆6,400億円で、前年同期比で59%も増えています。つまり出費がかさんでいる、去年の同じ時期に比べると1.6倍に増えていることになります。
一方で歳入は1 兆3,560 億ルーブル、日本円にしますと約2 兆4,500億円。前年同期比で35%も減っています。つまり、収入は減っているのに出費はかさんでいるとい状況で、赤字が膨らんでいるわけです。では、なぜこれほどまでに歳出が増えたのか、これについてロシア財務省は詳細は公表はしていません。戦費が増大したとみられています。
一方で歳入が減った理由について、ロシア財務省は「原油価格の低下と天然ガスの輸出減が影響した」と説明しています」
(テレ朝2023年2月19日)
ロシア財政赤字が急拡大 原油価格上限の制裁で打撃 | 日曜スクープ | BS朝日

戦争とはともかくカネがかかるものなのは、古今東西同じです。
戦争はなにも産み出さない戦場に何十万という若者を拘束し、しかも殺します。
大砲や戦車といったハード以外にも、戦場で兵士にメシを食わせ、装備を与え、死ねば弔慰金のひとつも支払わねばなりません。
たとえばロシアは、あまりに多くの兵士を戦死させたために、極東を中心として大規模な募兵をしています。

「英国防省は29日、ウクライナに侵攻するロシア兵の給与水準をめぐり、下級兵士でもロシアの全国平均の2・7倍以上の月給が支払われていると指摘した。英国防省は、こうした好条件が同国の貧困地域の出身者を引きつけている可能性が高いと分析している。
英国防省によると、ロシアでは侵攻以来、兵士への金銭的待遇の向上が続いている。現在ウクライナで従軍する下級兵の多くは月給20万ルーブル(約30万円)を超えているが、ロシアの全国平均は7万2851ルーブル(約11万円)だという。
これについて英国防省は「特に貧困地域出身者が入隊する強い動機になっている可能性が高い」としつつ、「ロシアが兵士の採用目標を達成する可能性は依然として低い」と指摘した」
(朝日2023年8月29日)
ウクライナ侵攻のロシア兵、平均月給の2.7倍支給 待遇向上続く:朝日新聞

これだけで大変な国庫負担で、戦費は1日あたり2~3兆円という説もあるほどです。
ロシアが高価なミサイルを控えて安物のドローンばかりで攻撃してくるのは、金欠という懐事情もあるのです。
元々、ロシアのGDPは世界11位で、世界全体のわずか1.7%弱でしかないのですからつらい。
かくて財政支出の4割以上が軍事支出となってしまいました。
いや、ロシアラバーには戦費が増えようとプーチンは気にしてないさ、だって戦争はそういうもの、戦争に勝てば倍返しなんだから、という者もいますが、違います。

そうは問屋が降ろしません。

長くなりましたので、それについては次回に続けます。

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コメント

これ、サウジも別に「ウクライナ戦争が悪い侵略行為だからロシアにダメージを与えよう」と考えてるわけではなくて、単に「その方がわが国が儲かるから」だけ、ってのが悲しくはありますね。

いや、結果オーライで良いのか…

いつもありがとうございます。

サッカーにかける金額をみるに、サウジは桁違いに金持ちです。
何なら世界最強の勢力かもと思います。

一方のロシアは、インドとパキスタンの紛争の拡大を願っているでしょう。
いや、「図ってる」かも。

>これだけで大変な国庫負担で、戦費は1日あたり2~3兆円という説も

これ確かでしょうか?年間でざっと700~1000兆円になりますが、さすがに多すぎるような・・・(゚Д゚;)

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