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2025年6月13日 (金)

BYD、第2の恒大になるか?

S058

どうやらBYDが第2の恒大となる気配です。
福島香織さんはこう書いています。

「チャイナウォッチャーたちは、BYDはまもなく連続デフォルトに陥る、と予測しています。「自動車産業界にすでに恒大は存在する」。著名中国実業家で、長城汽車創業者の魏建軍がインタビューでこんな意味深なことをいっていました。恒大は不動産業界トップの民営企業でしたが、習近平の不動産政策によってデフォルトラッシュに陥り、事実上破綻してしまいました」
(福島香織 中国趣聞5月31日)

不良債権とはかつてのバブル崩壊時にさんざん聞かされた言葉ですが、いちおう押さえておきましょう。

「約定どおりの元本や利息の支払いが受けられなくなるなど、回収困難か回収が困難になる可能性が高い債権のこと。 金融機関は金融再生法に基づき、総与信のうちの正常債権と「金融再生法開示債権(破産更生等債権、危険債権、要管理債権)」の残高を公表しており、このうち金融再生法開示債権のことを不良債権と呼んでいます」
わかりやすい用語集 解説:不良債権(ふりょうさいけん) | 三井住友DSアセットマネジメント  

このような不良債権が発生した場合、日本のような自由主義経済の国においては、その全容の監査と開示から始めねばなりません。
公金投入を前提にしているのですから、当然です。
日本の場合は、銀行が今に至るも営々と不良債権を処理していますが、自力で処理した不良債権額だけで実に100兆円に達します。
これはGDPの2割に達し、金融市場の縮小を招きました。
結果、多くの金融機関が廃業に追い込まれるか、国有化されています。
平成―バブル崩壊の後始末とデフレ対策に追われた金融界 | nippon.com 

この20年間にいかに多くの銀行や証券会社が消滅し統合されていったのかは眼を覆うばかりで、いまや大手銀行で旧社名が残っているものが皆無なほどの金融業再編の嵐を巻き起こしました。
不良債権問題の処理にてこずった日本では景気低迷が体質化し、不良債権を抱えていなかった製造業まで倒産の波にさらわれました。
日本の主力産業である電機や機械、輸送用機器メーカーまで倒産したり、倒産寸前にまで追い込まれる企業が相次いだのは、この時代です。
そのうえに白川日銀がデフレ容認政策というトンデモ金融政策をとったために、延々とデフレトンネルを20年間も歩むことになってしまいました。
このデフレからの出口が見えたのは、2013年にアベノミクスが登場してからのことです。

では、中国経済はどうでしょうか。
実は日本がかつて辿った道を、忠実かつ拡大してトレースしています。
まずはもっとも大きなバブルだった不動産業から始まり、いまや輸出主力のEVにまで拡大しています。
その中心は最大手のBYD(比亜迪股份有限公司 )です。
BYDはそう遠くない時期にWWやトヨタを追い抜き世界一の自動車会社となる日は近い、日本でも信じている人も多かったはずです。
中国の経済誌「財新」はEVで世界一となったと書いています。

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東経

「中国のEV(電気自動車)最大手、BYD(比亜迪)の事業規模がアメリカのテスラをついに上回った。
BYDは3月24日、2024年の通期決算を発表。同年の売上高は前年比29%増の7771億200万元(約16兆782億円)に達した。一方、テスラが1月29日に発表した決算によれば、同年の売上高は前年比1%増の976億9000万ドル(約14兆6621億円)だった。
なお、BYDの2024年の純利益は402億5400万元(約8329億円)と前年比34%の大幅増益を記録。中国自動車市場の熾烈な価格競争にもかかわらず、過去最高益を更新する圧倒的な強さを見せつけた」
(財新2025年4月10日)
中国BYD、2024年の事業規模「テスラ超え」の衝撃 純利益も過去最高更新、PHVの急成長が原動力に | 大解剖 中国「EV覇権」 | 東洋経済オンライン

これを読む限りまことにブイブイな状況で、いまや落ち目のテスラなどものともせずに世界一のEV自動車メーカーに向けて邁進している・・・、はずでした。
しかしその内実が見えてきました。
EVは完成された技術体系の内燃機関と異なり、プラモデルのようなものです。
シャーシにモーターを乗せ、電子機器を着ければ一丁上がりですから、誰にでもできます。
そしてEVは国策です。当然のこととして、中国だけでゴマンとEV自動車会社ができてしまい、熾烈な競争をしています。
それは前掲の「財新」の記事にもあったように「熾烈な価格競争」を伴います。
裏返せば薄利多売ということです。

中国市場でBYDが勝ち残るためには、大量生産して生産コストを下げ、国からのできるだけ多くの補助金を引き出すしかありません。
つまり売れようが売れまいがジャンジャン作って市場に流し、政府から補助金を取る、これしかなのです。
中国はEVで世界市場を制覇する気で、EVの購入に対して様々な補助金を用意しEVの普及を進めてきました。
それはEUなどから見れば不正な産業支援であり、公正な自由競争を妨げると判断されました。
ですから渋々中国も政府によるメーカーへの補助金は段階的に縮小され、2022年末に終了してしまいました。

それでもまだ 地方政府が出す購入時の補助金は残存しており、中央政府も買い替えに対する補助金の延長という方法で支援を続けてきました。
買い換えがEVで特に重要なのは、搭載しているバッテリーが5年たたない内に消耗して乗せ替えねばならず、それには新車1台買うのと変わらないからです。
ですからEVには中古車が存在せず、その場で廃棄です。なんてエコなこと。(笑)
ガソリン車が何十万㎞も走るのに対して、信じられないほど短命で廃棄処分しているのがEVなのです。

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東洋経済オンライン

中国政府はEVの「買い替え補助金」を1年延長して、支給対象も拡大し、個人消費のテコ入れを図りました。
ここでひとつのトリックを使います。

「BYDなどのメーカーは販売台数に応じた価格を設定し、各ディーラーは生産量に応じた新車の購入を行ってきた。これが大量のゼロキロメーター車を生み出したといえる。
ディーラーとしては、メーカーから買い取った車を販売登録することで地方政府などからの補助金を得られる。その新古車を買い取ることや再販することでも補助金が得られてきた。
このため、実際に売れていなくても資金が回る限り一定の利益を得ることができる。しかし、この資金繰りが悪化すると、一気に不良在庫が問題となり、不良在庫のダンピング販売によって市場全体に大きな影響を与えることになる」
(東経1月21日)
中国政府、自動車の「買い替え補助金」を1年延長 支給対象も拡大し、個人消費のテコ入れ図る | 大解剖 中国「EV覇権」 

BYDなどは、実態は売れていないにもかかわらず補助金を引き出すために虚偽の売り上げを計上し、さらには有り余った大量の不良在庫をダンピングで売り飛ばし、さらに首を締めたのです。
だから表面的には史上空前の売り上げのはずですが、実は不良在庫の山を作っていたのです。

破綻はディラーから露呈しました。
先月末には東部最大の代理店が破綻し、さらに34%ものダンピングも相まって、他の自動車メーカーを巻き込んだ信用不安の連鎖が発生してしまいました。

BYDの財務状況について、香港独立系GMT Researchはこう述べています。

「BYDの財務状況は実態以上に良く見えますが、デフォルトリスク、契約上の負債リスク、流動性リスクを隠しており、投資家がBYDの本当の財務状況を正しく評価するのが困難になっている。その結果、BYDの株価評価は実態とかけ離れ、適正な投資判断を妨げる要因となっている。(略)BYDの収益は黒字だが、その返済原資は販売によるキャッシュフローに依存しており、これはかつての中国の不動産ディベロッパーと同じ手法である。
つまり、本来サプライヤーに支払うべき資金を流用して負債を返済し、借金を先送りしている状態なのである。
不動産企業の場合、売上成長が鈍化した瞬間に資金繰りが破綻し、経営危機に陥る。BYDもまた、サプライヤーへの支払いを先延ばしにすることで資金流動性を高めているが、同時に負債を隠しているため、同じリスクを抱えている」
BYDは次の「恒大」になるのか?「隠れた負債」問題でGMT Researchが警鐘 | MobyInfo

これを受けて、中国政府および自動車工業会は過当競争の是正を発表したが、これは三度目であり、負の資産が残る限りダンピングは続くと見られています。
そして当然の結果として不良債権が発生しました。

「チャイナウォッチャーたちは、BYDはまもなく連続デフォルトに陥る、と予測しています。「自動車産業界にすでに恒大は存在する」。著名中国実業家で、長城汽車創業者の魏建軍がインタビューでこんな意味深なことをいっていました。恒大葉、不動産業界トップの民営企業でしたが、習近平の不動産政策によってデフォルトラッシュに陥り、事実上破綻してしまいました。それで「国家が自動車産業を支え続ける政策を維持してほしい」と述べていました。 」
(福島前掲)

本来なら中国政府は直ちに政府資金を投入して全力でこれを救済しないと、空前の不況と信用縮小に陥ることは明らかです。
では、中国が日本と同じ不良債権を国家が救済するには、どこから始めたらよいのでしょうか。
日本の不良債権の規模がおおよそ100兆円超規模だったのに対して、中国は不動産関連だけで融資平台(LGFV )が貸し出したのはその9.4倍、民間デベロッパーや銀行の不良債権まで加えたら、当事者すらわからない規模でした。
中国の金融は、表面より地下に潜ったもののほうが多く、もはや暗黒大陸と化していますが、とまれ公金投入のためには、投入規模を確定せねばなりません。

ホンキで不良債権を駆逐したいなら、日本がそうしたように、企業に財務情報を一点の曇りもなく開示させ、その開示に基づき金融機関の不良債権を認定することです。
これが出来ないといくら不良債権があるのか、いくら資金注入したらよいのか、どれだけ信用不安が拡がっているのか、といったかんじんなことがわからず救済策の設計ができません。

ところが、ここに共産中国特有の壁が立ちはだかります。
中国がソ連から学んだ極度の情報の隠蔽体質です。
共産党の統治原理の根幹には「民には知らしむべからず、よらしむべき」という民衆不信・愚民政策があり、それを可能にさせてしまう共産党国家特有の強権体質が横たわっているからです。
だから、共産党政府は自らの経済政策の失敗である不良債権があること自体を認めません。

「不動産バブルを維持することは可能です。銀行のほうで不動産開発業者にずっとカネを貸し続ければよい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます。(略)
不良債権があっても中国政府が『不良債権など一切ない』と言い、銀行も』不良債権はない』と言い切るのであれば砂上の楼閣がずっと続いていくはずです。(略)
だからバブルが弾けたとしても中国政府はなにも言わない」
(高橋洋一・石平『断末魔の数字が証明する中国経済崩壊宣言』)

要は、不良債権なんぞ認めずに先送りする、ということです。
なにせ共産党は無謬なのですから。
そしてて公的資金投入をしないまま、小手先の金融緩和だけで景気を刺激してなんとか済ませようとします。
これが現時点です。
しかし金融緩和でいくら市場にカネが出回っても、不良債権が吸い取ってしまことになります。

そのうえに中国のEV市場は飽和していますから、頼みの米国市場もトランプの補助金カットでアウト。
もう逃げ場がないEV自動車産業には、デフォールトへの道しか残っていないのかもしれません。

 

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