イスラエル、イラン核施設攻撃続報
イスラエルのイラン核施設攻撃の続報です。
予想されたことですが、怒り狂ったイランは報復攻撃に移りました。
最初の攻撃は、長距離自爆ドローン約100機でしたが、これは待ち構えてきたIDF(イスラエル国防軍)の戦闘機によりすべて撃ち落とされ、第2波の弾道ミサイル攻撃がイスラエルを襲いました。
「イランの革命防衛隊(IRGC)は声明で、イスラエル国内の「数十の標的、軍事施設、空軍基地」に対する、「真の約束作戦3」を実行したと発表した。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「戦争を始めた」イスラエルに「大打撃を与える」と述べた。
イランはイスラエルに向けて、計100発弱のミサイルを2度に分けて発射したと、イスラエル国防軍(IDF)のアラビア語報道官アヴィチャイ・アドラエ氏は述べた」
(BBC6月14日)
イランがイスラエルに報復 ミサイル攻撃で数十人負傷、3人死亡と - BBCニュース
イスラエル軍は、国産の弾道ミサイル防衛システム「アロー2」「アロー3」で迎撃し、これに米陸軍のTHAADが加わって迎撃しました。
この時点で米国はこの紛争に介入したということになります。
9発が迎撃網をかいくぐって着弾した模様で、犠牲者も出たようです。
非常に派手な攻撃でしたが、効果は上がっていません。
なお、イランがドローンと弾道ミサイルのみに頼りきるのは、IDFの世界有数の空軍力と対抗すべくもないからで、イラン領空を我が物顔で飛び回るイスラエルと大きな空軍力の差が出ています。
これは事前にモサドが、イランに大量に浸透し、対空ミサイル基地の所在、防空司令部のありか、さらにはイラン革命防衛隊や軍の幹部、原子力科学者の居場所まで正確にマッピングしていたためです。
CNNはイランは「モサドの遊び場と化した」とまで評しています。
「(CNN) イスラエルが未曽有の大規模爆撃をイランの核施設と軍の上層部に向けて実施するその前から、同国のスパイたちは既に敵の領土に入り込んでいた。
イスラエルの治安当局によると、同国の情報機関モサドが攻撃に先駆けて、イランへ秘密裏に武器を運び込んでいた。その武器を使用し、イランの防御を内部から標的にする計画だったという。
これらの当局者によれば、イスラエルは自爆型ドローン(無人機)の発射拠点をイラン国内に設置。それらのドローンはその後、首都テヘラン近郊に配備されたミサイル発射装置を狙うのに使用されている。精密兵器も同様に持ち込まれ、地対空ミサイルを標的として使われた。こうした動きを受けて、イスラエル空軍は13日未明、200機を超える航空機による大規模爆撃を遂行することができた」
(CNN6月14日)
イランがモサドの「遊び場」に、イスラエルによる未曽有の攻撃で露呈 - CNN.co.jp
推測に過ぎませんし、あきらかになることはないでしょうが、イランの指導部、軍の中枢レベルにまでモサドの協力者がいると思われます。
あの10月7日の大規模テロを許してしまった、世界最強を自他共に許すモサドはこれで面目を施したことになります。
それはさておき、イスラエルの「ライジング・ライオン作戦」は継続されており、石油施設、国防省にまで攻撃が及びました。
テヘラン西部のシャフラーン石油貯蔵所も攻撃され、石油や天然ガスの貯蔵施設・輸出施設が破壊されました。
世界の原油相場が爆上がりすることでしょう。ロシアはほっとしているかもしれません。
「イラン当局は14日、南部ブシェール州にある世界最大のガス田がイスラエル軍の攻撃を受けたと明らかにした。イランメディアが報じた。イランによるミサイル攻撃で死傷者が出たことを受け、イスラエルが攻撃対象を軍事施設からエネルギー関連施設に広げた形だ。
これに対し、イランも14日夜、新たに石油関連施設を狙ったとみられるミサイル攻撃を実施した。事実上の交戦状態が続く中、こうした施設で被害が拡大すれば、世界経済にも影響する恐れがある」
(毎日6月15日)
イランとイスラエル、「交戦状態」に 石油施設標的で世界経済に影響も(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
よく言われるようにイスラエルは無差別攻撃をしているわけではなく、正確に目標を軍事目標、ないしは石油関連の戦略目標に絞り、それを的確に破壊しています。
またナンタツの核施設攻撃でわかるように、核濃縮分離機にはあえて手をつけず、そのエネルギーインフラを徹底的に破壊しています。
これはJSF氏が評価するようにイスラエルの力の限界だったのか、あるいは意図的だったのか判断に迷うところです。
「アメリカ軍が参戦していない点も非常に重大で、イスラエル単独の空爆だけでは完全にはイランを叩ききれない可能性が高いでしょう。イスラエル軍は戦術的には戦闘機で長躯侵攻して空爆を行い大きな戦果を上げているものの、戦略的な目標を達成するには不十分であり、イランの核開発能力を除去しきれない可能性があります。
その場合、怒り狂ったイランが核武装の決断を行ってしまい、逆効果となってしまう可能性が決して低くはありません。そもそもこの攻撃が完全に成功したとしても、イランの核開発を数年から10年程度遅らせることが限界だったでしょう。それがもし中途半端な攻撃の成果に終わったら、もっと短い期間でイランは核武装を実行できてしまうことになります」
(JSF6月14日)
イスラエル軍が単独でイラン核施設空爆「アンケラヴィ」作戦を実施、イランは弾道ミサイルで報復攻撃を開始(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース 。
う~ん、どうでしょうか。常に信頼に足る判断のJSF氏ですが、「戦略的な目標を達成するには不十分」とまで言うのはいかがなものでしょうか。
「たかだか核開発を10年遅らせるだけ」と仰せですが、それで充分に「戦略目標は達成された」と見るべきです。
これが力の限界によるものか、あるいは戦争拡大のリスクの最小化を図ったとしたためなのか、もう少し時間がたたなければ判断がつきません。
いずれにせよ、イスラエルは現時点でイランと全面戦争する意志はなく、核開発を大幅に遅延させることに主眼を置いたように見えます。
評価については明日に。
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コメント
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まだ良く分からないことが多いですが一つだけハッキリしているのは、イランは交渉では核開発を絶対に諦めないという事です。
日本政府は中・露と同じ立場に立って、イスラエル非難の声明を出しました。欧州はすべてイスラエル支持。トランプも概ねそうですが、無意味な「戦争反対」の看板を脱ぎ捨てていません。
イランが核を持てば、やがてIAEAの手の届かない非国家テロ集団に核が渡る事は必定です。日本国政府のお花畑かげんにはため息も出ません。
なお、「寸止め」に見えるのは、どのみち米国製バンカーバスターのデカイのでもなければ地下施設破壊までは困難だし、記事のようにそもそも「遅らせる事」が所期の目的だったからでしょう。
考えてみれば、イスラエルとイランはそもそも同盟国でした。
体制変換が可能であれば、また自由で豊かなイランが実現します。
そういう「一縷の望み」みたいなものを残しておいた感じもなくはないか。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年6月16日 (月) 03時36分
明らかな国際法違反の先制攻撃ですから、日本は避難する以外に無いですよ。寧ろヨーロッパがユダヤにお尻フリフリなのが問題で。
ガザの虐殺への報復とは全然別のお話です。
「10年遅らせれば戦略目標達成」と言っても、そもそも10年先まで保ってるんですかね、この国(イスラエルの方)…
投稿: ねこねこ | 2025年6月16日 (月) 08時27分