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2025年7月10日 (木)

NATO、ヨーロッパとアジアは連動している

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ウクライナがNATO加盟を悲願としていた理由は、ひとえにその条約第5条の自動参戦条項にありました。
その加盟国はほぼすべてのヨーロッパ諸国に拡がり、大西洋を隔ててカナダ、米国、そしてトルコまでを含んだ32カ国は、共同防衛の誓約に署名しています。
つまり加盟すれば、一つの加盟国に対する攻撃は、全ての加盟国の反撃を得られることになります。
そしてなによりも、圧倒的に強力な米国を引き込めるのです。

しかし一方、冷戦が終結し、主敵だったソ連は崩壊し、ロシアは著しく弱体化したために、加盟各国は弛緩しました。
エドワード・ルトワックは、ゼレンスキーがNATOに入らないと発言したことについて、こんな皮肉を言っています。

「そもそもNATOに参加するという事は麻薬に手をだすようなもの、いわば実際に運動したり規則正しい食生活をおくるなどして身体の健康を守るのではなく、なにもせずに健康になれると錯覚するようなものだ。
もちろん、そんな錠剤を飲んだところで、健康になれるわけはない」
(エドワード・ルトワック hanada2022年6月号)

メルケル率いるドイツは反戦少年から抜けきらない子どものような国で、開戦冒頭には枕5千個を平気で送りつけてキーウ市長に怒鳴りまくられると、われわれは戦争当事者には軍事物資を送れない決まりなのだとうそぶいていました。
そしてやっと緑の党(!)の突き上げで本格的武器援助が始まって、戦車や自走式対空砲を送る段になったのはいいものの、今度は保管庫の扉を開けてビックリ、大部分が保管状態が劣悪で使い物にならなかったという恥の上塗りを演じています。

ルトワックは、プーチンが開戦に踏み切った理由のひとつに、このドイツのグニャグニャ体質を知り尽くしていたことを上げているほどです。
彼らがシャッキリとしていて、ウクライナを守ることは「自由で開かれたヨーロッパ」を守ることだとわかっていれば、よもや上空を飛ぶ許可を求めた英国の支援物資を積んだ航空機の通過を拒否することなどしなかったでしょう。

これが大きく変化したのは、いうまでもなく、ロシアがウクライナ全土を全力で侵略し始めたからです。
戦争が過去のことではなく、「今そこにある危機」でした。
プーチンは本気でウクライナ全土を支配しようとしており、それが成功すれば次はエストニアかフィンランド、あるいはポーランドといった隣接国の侵略にとりかかることでしょう。

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「トランプ氏の認知機能の低下は加速している」識者 奇妙な言動にインタビューのキャンセルも 米大統領選(飯塚真紀子) - エキスパート - Yahoo!ニュース

そしてもうひとつの原因は、米国の変質でした。
トランプのNATO懐疑は筋金入りで、ほとんど憎悪と呼んでいいほど進行した病でした。
このトランプのNATOへの怒りは、脱退を匂わせるところまで進んでおり、NATOは深刻に「米国なきヨーロッパ防衛」を考えざるを得ませんでした。

NATOが作られてから76年間、アメリカは同盟を機能させる装備、兵站、核兵器、情報のすべてを提供し、大規模な在欧米軍を駐留させてきました。
もはやこれはあたりまえの空気のようなもので、ヨーロッパ諸国は「米国の存在」を微塵も疑おうとはしなかったのです。
ところがトランプはこれを根底から崩したのです。
トランプは米国の防衛にNATOがでなにをしてくれているんだ、巨額の費用を支払ってヨーロッパ防衛をしているのはオレたち米国じゃないかと、例の悪党ヅラで叫びました。
ニューヨークタイムズはこう書いています。

「しかし、トランプは長い間NATO懐疑論者だった。彼はNATOを、アメリカ合州国の財政的浪費として激しく非難し、彼の最初の任期中に、何度か、彼自身、NATOから撤退すると脅したと報じられた。最近、彼はNATO諸国が自国の防衛にもっと多くの費用を払うよう要求し、ロシアが加盟国を侵略した場合、アメリカ合州国がヨーロッパの支援に来るかどうか疑問を呈している
インタビュー:NATOのマーク・ルッテ長官は、トランプ大統領は「すべての賞賛に値する」と考えている - ニューヨーク・タイムズ

つまりNATOは内外から、上品な仲良し倶楽部であり続けることはできず、ほんものの軍事同盟に変身することが求められたのです。
この困難な時期にNATO事務総長となったのは、14年間もオランダの首相を経験してきたマルク・ルッテでした。

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NATO新総長にルッテ氏が就任 ロシアの核脅威は差し迫ってはいないと - BBCニュース

「習主席が台湾への攻撃を決断した場合、彼はまずジュニアパートナーであるロシアのウラジーミル・プーチンに電話し、欧州を忙しくするためにNATO領域への攻撃を要請する可能性に言及した 。
ルッテは、「事態はそのように進展するだろう。そして、彼らを抑止するためには、私たちには2つのすべきことがある。1つ目は、NATOが集団的に非常に強力とならねばならず、ロシアがそのようなことを決してできないようにすることだ。

2つ目は、インド太平洋地域と一緒に作業することだ。これはトランプ大統領が非常に積極的に推進していることだ。なぜなら、私たちは密接な相互関係を持っており、NATOとインド太平洋地域の間で防衛産業やイノベーションに関して一緒に作業しているからだ」と述べた」
(NYT前掲)

ここで注意を喚起したいのは、ルッテが、もし習近平中国国家主席が台湾への攻撃を決断した場合、彼はまずパートナーであるロシアのプーチンに電話し、欧州方面に注意を引きつけためにNATO領域への攻撃を要請する可能性化あるとしていることです。
そしてルッテは、こうも言っています。

「トランプ大統領が米国が強く安全であり続けるためには、ヨーロッパの安全保障と一体化し、インド太平洋を安全に保つために協力することが必要であることを強く認識しているという事実に自信を持っている」
(NYT前掲)

ルッテはトランプがヨーロッパとインド・太平洋の安全に責任を持っていると信頼を寄せ、そのうえに立ってトランプの要求である防衛費5%を加盟国が達成することを求めています。
この流れで、フランスを除くNATO指導部は、日本のNATO加盟を望んでいるようです。
英海軍の空母「プリンスオブウェルズ」がこの夏に来日しますが、その背景にはこのようなNATOの世界認識の大転換があったのです。

 

 

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