NATO式国防費5%とは
先頃、NATOが国防費5%を決めたと効いた時、ほほーと感心しました。
これは、例によってトランプ翁の安保ただ乗り論から来ています。
「トランプ大統領は2%では不十分だと言っている。NATO各国が脅威に対応できるよう、5%まで引き上げる必要性について議論していく、ことし2月、ベルギーで開かれたNATO国防相会合。
アメリカのヘグセス国防長官は、NATO加盟国に対して、国防費をGDP比で5%にまで引き上げるよう求めた」
(NHK7月15日)
アメリカ トランプ大統領が“予定調和”?NATO首脳会議 国防費5%の舞台裏 ロシアと戦うウクライナ支援は? | NHK | WEB特集
NATOからすれば、つい最近2%にしようと決めたばかりで、いきなりその倍プラスですかと渋るかと思いきや、意外や意外あっさりとそれではそのようにと呑んでしまいました。やや驚きましたね。
というのは、何度か国防費は増やさねばならんという議論は内部であったのですがうまくいかなかったからです。
2014年、ロシアがウクライナ領土のクリミアに侵攻して併合した時も、2%以上に引き上げようという掛け声はあったのですが、その時代はさっぱりやる気ナッシングでした。
ロシアは無血で併合したし、今後もさらなる武力侵攻はしないよ、戦車より福祉に、そういう妙に楽観的な考えが根強かったために2024年時点で達成できたのは加盟国32か国中22か国にとどまりました。いかにブッたるんでいたかわかります。
それがいきなり今回のウクライナのあからさまな武力侵略を見て、さすがに青ざめて2%への歩調が揃いました。
しかし、それでも足りないというのがトランプです。
「NATO関係者
「引き上げないといけないが、5%は現実的ではない」
「実際には3%か3.5%が現実的だと思う。とにかく引き上げる意欲を示すことが大事だ」
(NHK前掲)
うーん苦しい、「引き上げる意欲あり」という精神論ではトランプの猛攻に勝てませんよ。
そもそもあの男は、NATOとのあり方を見直すと公言しており、プーチンと良好な関係を築けるのは自分だけだ、と豪語していたのですから。
トランプのディールは、基本ヒトとヒトの交渉という属人的な発想に基づいていて、彼にかかると「トランプ政権下ならウクライナ戦争は起きなかった」などと吹いており、「自分なら24時間以内にウクライナ戦争を解決できる」とまで言っていました。
ご承知のように、24時間どころか7カ月たってもプーチンは停戦会談にすら応じようとしていませんし、今後も戦争をやめる気がないことがハッキリしました。
フツー、これだけビッグマウスしてハズしたら恥ずかしくて昼間に道を歩けないもんですが、トランプに限っては別。
では、攻め口を変えてNATOをいたぶろうと思いついたようでです。
そこで、法外な関税との合わせ技で軍事費5%を突きつけました。
ということで、冒頭に戻ります。
実はこれはこれで、米国から見れば筋が通った要求です。
つまり、自分で自分を守る意欲がない者は守らない、条約があるからといって自動的に守ってもらえると思うなよ、というスパルタンな考え方です。
たとえば先だって6月22日、トランプはイランの核施設を空爆しましたが、それはイスラエルが「立ち上がる獅子作戦」で徹底的にイランを空爆してみせたからです。
アレがなければ、米国はバイデン流で空爆に尻込みしたことでしょう。
ちょうどクリントンが北朝鮮の核施設を空爆しなかったように。
言い訳はいくらでもあります。空爆は予防戦争だから国連憲章違反なんで、できないとかね。
むしろ「やる」理由が必要なのです。
しかし、当時の韓国も日本もまったく無力で、かくて北の核は東アジアの脅威として君臨してしまったのです。
だから、ヨーロッパも自らを守る意志とカネを見せねばならなかったのです。
当初、NATO首脳はアタマを抱えて「意欲はあります」といった精神論で乗り切ろうとしたようですが、ここで妙案を出したのが事務総長のルッテでした。
NHK
「首脳会議まで残り1か月半ほどとなった5月初め。NATOのルッテ事務総長が、加盟国にある提案を持ちかけた。
「GDP比で国防費を3.5%、国防関連費を1.5%として、2032年までにあわせて5%に引き上げる」
つまり、戦車の購入費用など純粋な「国防費」以外に、サイバー対策や軍の機動力を確保するためのインフラ整備といった「国防関連費用」も「5%」の中に含める、というものだった」
(NHK前掲)
あ、なるほどこう来ましたか。
実は国防費の算出の仕方は世界とりどりなんです。
通常はこのように規定されています。
「軍事費とは、ある国家から見て、戦争が起きていない時(=平時)においては、軍の維持費という性格を持ち、戦時においては戦費という性格を持っている。
軍事費は狭義には、陸軍・海軍・空軍の人件費(給料、採用の費用 等)、装備の維持や拡張などのための経費を指す。よっておおむね陸・海・空各軍の所管経費を合算したものを指す。広義には治安部隊や国境警備隊、沿岸警備隊(日本では海上保安庁)といった準軍事組織、軍事に活用できる技術の研究開発(R&D)投資なども含む」
軍事費 - Wikipedia
広義と狭義があるようです。
NATOの場合、戦車や航空機、大砲などといったハードとは別に、サイバーセキュリティや国内の軍事インフラ整備まで入れてトータルで5%にしようという案でした。
徹底的に広義で5%をとる、なるほどこれは妙案です。
もちろん戦車も増やすが、それだけではなく、いままで記事にしてきたようなドイツに見られる戦争に備える体制を作り出していく、そのためにはカネと手間を惜しまない。
これを見て、さすがの米国も納得したというわけです。
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コメント
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最近維新からもGDPの2%までという話が出てますが、素朴な疑問としてなぜシーリングを儲けるのだろうという思いがあります。
確かに野放図に増やせば、共産、社民、れいわの支持者は発狂するだろうし、口うるさい隣国との軋轢を生まないための現実的な方便なのかもしれません。
しかし、よく共産党や社民党が叫ぶ福祉なども土台となる国があったればこそ成り立つわけで、すべて国の安寧秩序が絶対条件だと言えます。であるならば、日米安保を基軸として、自国を守るためには最低これだけは必要という額を決めるべきだと思うんですけど。違いますかねえ。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2025年7月19日 (土) 09時11分
右翼も左翼もさんの仰る通りでGDPの何%なんて縛りがあるのがおかしな話なんですけど、順調に経済が伸びていた80年代に隣国を刺激しないように政府自ら規制かけたのが1%の始まり。
今後どうやって予算を積み上げるのか分かりませんが、最新装備の増大よりも先に必要なのが自衛隊員の待遇改善。給与と定員の充足。古くなった隊舎の建て替えやボロボロで虫が湧いてるような布団の交換など、やるへわきことはいくらでもあります。
次に航空基地のハンガーや司令部の防爆化。
ここまでで何兆円も飛びます。
さらにイスラエルほどとは言わないまでも予備弾薬や補修部品の充実化を行い継戦能力を上げる必要があります。
社民党や共産党は伝統芸のように「軍事費を無くして社会保障費へ」と言ってますが、半世紀遅れた話でどうにもなりません。社会保障費が防衛費の何倍になってるのかすら国家予算のチャートが読めないまま年寄りになった人や、生まれつき刷り込まれてる連中です。
今回の選挙が政党存続危機の社民党の福島さんは、告示後第一声で「ミサイルより福祉!」なんて言っててズコッ!
投稿: 山形 | 2025年7月20日 (日) 05時37分