ウクライナに「安心供与部隊」派遣か
ヨーロッパ勢も交えたトランプとの交渉はなんとか成果をもぎとったようです。
コメントには、トランプは米国が部隊派遣することはないと失望感もあったようですが、あの男がウクライナに兵を出すはずがないじゃありませんか。
トランプが見ている「世界」は、自分の支持層である共和党、いやそのなかでもっとも孤立主義的なMAGAの連中です。
彼らは米国がヨーロッパに関与することを嫌い、ウクライナ支援なんぞとんでもない無駄遣いだと考えている人たちです。
MAGAは、連邦政府が巨大になり、福祉やらエコなんぞに無駄金を投じて、挙げ句は海外にまでアメリカ民主主義を配って歩くから衰退するんだと信じています。
そんなことをしているから米国大衆は常に貧しいんだ、米国は外国から搾取されているという被害妄想が生まれます。
具体的には、MAGAはウクライナはおろか台湾防衛すら忌避します。
だから、トランプはFOXとのインタビューでこう言う必要があったのです。
「アメリカ人の命もアメリカ兵も失うことはない」
絶対にウクライナには米軍を出さない、ここがトランプの基準線だということを頭に置いて下さい。
だから無駄な期待は持たないように。この男が大統領でいるかぎりウクライナに米軍が関与することはありえません。
ただし、それは「直接関与」であって、軍事物資などで間接的には支援してもいいよ、というのが今回のトランプがやや柔軟になったところです。
一方、ヨーロッパはこのトランプの身勝手なスタンスをよく理解しています。
いんたん機嫌を悪くしたトランプはヘソを間出てNATOも脱退しちゃると言い出しかねないからで、そんなことになったらヨーロッパの安全保障は土台から崩れるからです。
まさに猛獣使いの心境。ああ、こんなときにシンゾーがいてくれたらと願ったことでしょうね。
今回のワシントン会合は大変によく練られています。
まず口火を切ったのは、かつてはヨーロッパ極右、あるいは「ヨーロッパでいちばん危険な女」とまで罵られながら、いまはしたたかな手腕を見せ始めたイタリア首相ジョルジャ ・メローニでした。
ウクライナフォーラム
「メローニ伊首相がホワイトハウスでのトランプ米大統領、ゼレンシキー宇大統領、欧州複数首脳による拡大会談の冒頭で発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
メローニ氏は、「今日は重要な日だ。3年半もの間、ロシア側から対話の準備についてのシグナルが全く見られなかった後で、新たな局面が生じたのだ。ウクライナの人々の勇気と、私たち皆がウクライナに提供した団結のおかげで、戦場での攻勢が止まったことによって、何かが変わりつつあり、既に変わったのだ」と述べた。
また同氏は、イタリアは平和に向けた米国大統領の取り組みを支持し、ウクライナ側に立ち続けることを強調した。
同氏はさらに、「私たちは多くの重要なテーマについて話し合う。その第一は安全の保証だ。それが二度と繰り返されないようにするにはどうすれば良いか、ということだ。なぜなら、それがあらゆる平和の前提条件だからだ」と指摘した」
(ウクライナフォーラム8月20日)
イタリアはウクライナへのNATO第5条モデルの安全保障提供を支持=メローニ伊首相
ヨーロッパ極右の最大の難点はプーチンと親和性があることですが、メローニは凡百のヨーロッパ極右と違ってプーチンと戦う姿勢を明確にしています。
だから、似たようなファーライト、自国ファーストのトランプとの波長を読み取るのが巧みです。
彼女に冒頭発言させたのはうまい。これがマクロンかなんぞだったら、トラ先生怒ってしまったかもしれませんからね。
彼女は言葉巧みに米国の支援に感謝しつつ、この日のテーマであるウクライナに対する「安全の保障」に水を向けます。
ヨーロッパには腹案がありました。
それが有志連合国家による、その名も「安心供与部隊」です。
英語でなんて訳すのかな 、一昔前なら Expeditionary Strike Group(遠征打撃群)なんてものものしい表現をしていましたが、こういう表現をするとホワイトハウスの猛獣がソッポを向くのでassurance forcesでしょうか。
名称にひとつにも気を使わねばならないのが、トランプ時代の特徴です。
「安心供与」なんて言われると、保険会社かよ、というかんじですが、本気です。
こういう「NATO第5条的」枠組みを作る場合、NATOとは相対的に別に作らないと、米国がソッポを向くので神経を使いますね。
これはNATO第5条とは違うのだ、あくまでも有志連合なのだ、戦闘するのが目的ではなく、そこに「いる」こと自体がロシアに手を出させないのだ、というのが胆です。
【ロンドン=黒瀬悦成】英首相府は19日、ロシアに侵略されたウクライナを支援する英仏主導の「有志国連合」が同日開いたオンライン会合に関し声明を発表した。声明によるとスターマー英首相は会合で、戦闘終結後のウクライナの「確固たる安全の保証」に向けて有志国が編成する「安心供与部隊」の派遣準備を進めると表明した。
有志国の計画チームが近日中にトランプ米政権高官らと詳細について協議するとしている。
スターマー氏はまた、オンライン会合ではプーチン露大統領が侵略行為の停止に応じる用意を示すまで、制裁などを通じて一層の圧力をかけていく方策について話し合ったことを明らかにした。
一方、北大西洋条約機構(NATO)の軍事分野での最上位機関、軍事委員会のカボドラゴーネ議長(イタリア海軍大将)は19日、加盟国の参謀総長とのオンライン会合を20日に開くと明らかにした。
有志国の安心供与部隊の派遣をにらみ、NATO加盟各国の役割の調整などを行うとみられる。
カボドラゴーネ氏によると会合では、グリンコウィッチ欧州連合軍最高司令官(米空軍大将)がウクライナの最新情勢を報告するとしている。
(産経2025/8/20 )
英首相ウクライナ「安全の保証」へ有志国連合の部隊派遣準備を表明 NATO制服組も協議 - 産経ニュース
安心供与とは、おおさっぱに言えば抑止力の提供です。
「安心供与とは、自分が将来において選択する行動を約束する戦略であり、例えばA国に攻撃さえしなければ、自国は決してB国に被害をもたらすようなことはしないと伝えることが、これに該当します。抑止の基本は、相手に手を出すと危険であり、割に合わないと思わせることですが、それは相手に武力の行使に踏み切った場合の損失の大きさを認識させることに依存しています。
抑止に対して安心供与の狙いは相手に協調すれば前向きな関係を構築できるという期待を持たせることであり、これが機能していれば、もし抑止を実施するとしても、相手に武力の行使をより強く思いとどまらせることが期待されます」
(武内和人 2023年11月25日)
論文紹介 戦略の一つとして安心供与(assurance)を考える|武内和人
具体的には明らかになっていませんが、おそらくは東部に英仏独を主力とする有志連合国からなる安心供与部隊を投入するということになるでしょう。
彼らはなんらかの和平協定が発効した場合、それを守る役割をします。
※名無しさん、HNを入れて下さいね。
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ヨーロッパのオルタナティブ保守や右派の中でもメローニが反露を主張する異質な存在なのはよくわかります。
仏のルペンや独のAfDも10年ほど前の反移民を掲げていた頃は期待もしていたものですが、現在の新露を隠そうともしない姿勢には呆れますし、ロシアが彼らに影響力を及ぼしていると聞くとロシアの代理人にしか思えないです。
MAGAや日本の参政党や百田党もそうだがなぜ極右はロシアに阿る奴らばかりなのでしょうか
投稿: 中華三振 | 2025年8月21日 (木) 08時02分
名称は穏やかながら、目指すところは「確固たる安全の保証」。
爾来、メローニが提唱しているNATO5条の適用同等になるよう願います。
中華三振さんの言う、
≫「MAGAや日本の参政党や百田党もそうだがなぜ極右はロシアに阿る奴らばかりなのでしょうか?」
について、そう疑問に思うのはもっともな事です。
複数の要因がありますが、彼らは知識に乏しく論理的な思考能力がありません。そして、「勝ち馬」に乗る事がリアリズムと考えているからでしょう。ところがロシアは勝ち馬どころか、手痛い失敗の連続です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2025年8月21日 (木) 17時13分