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2025年10月

2025年10月31日 (金)

メディアがテロリストを作った

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安倍氏を暗殺したテロリストの裁判がやっと始まりました。

2022年7月22日に安倍晋三元首相を殺害した罪などに問われている徹也山上被告の初公判が28日午後、奈良地裁で始まった。日本のメディアによると、山上被告は罪状認否で「私がしたことに間違いありません」と、殺人罪について有罪を認めた。
山上被告は、殺人罪のほか銃刀法違反の罪にも問われている事件では、奈良市で街頭演説をしていた安倍元首相を、山上被告が手製銃で撃ったとされる。
安倍元首相は複数回撃たれ、事件当日に病院で死亡した。強硬な外交政策と「アベノミクス」と呼ばれた経済戦略などで知られていた元首相に対するこの事件は、世界中に衝撃を与えた。
この暗殺事件によって、安倍氏がかつて率いた自民党と、欧米では「ムーニーズ」として広く知られる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が注目を集めることとなった」
(BBC10月28日)
山上被告が殺人罪認める、安倍氏殺害事件の公判開始 - BBCニュース

テロリスト名は伏せ字としました。
これは本ブログでは「テロリストに名前すらあたえない」という考えに基づいているからです。
おそらく弁護側はこのテロリストの「心の闇」に情状酌量を、という戦術でくることでしょう。

その結果、テロリストはテロリストを生んで行きます。
たとえば和歌山暗殺未遂事件の要にです。

和歌山の暗殺未遂はどうして起きたのでしょうか。
それは安部氏暗殺事件への対応を誤ったからです。

第1にメディアと野党が、山上某の動機解明と称してこのテロリストに「物語と顔」を与えてしまいました。
メディアが「第2の山上」を生んだ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

そのうえ政府が、「テロリストに報酬をやってはならない」 テロリズム 対処の大原則を踏み外してしまいました。
テロリストが求めていた「報酬」とはなんだったでしょうか。

それは旧統一教会とそれを支持母体する自民党に打撃を与えることでした。
事実であるかどうかはどうでもよく、この男が腐った頭でそう思っただけのことです。

メディアと野党は、こぞって「旧統一教会と自民党の癒着」というテーマにあさましいまでに食いつきました。
彼らがそうなるのは目に見えたことで、問題は政府・政権与党でした。
そしてあろうことか岸田政権はそれに乗ってしまいました。
永岡文科相が同日、「教団」に対する5回目の「報告徴収・質問権」を行使し、解散に追い込もうとしています。

メディアはこの犯人の「心の深層」に迫る」として、和歌山の模倣犯に対してすらこんな記事を載せています。

「小学6年で同級生だった女性は「小学生の頃は明るくてリーダーシップがあったけれど、中学に入ると無口になり、誰とも話さなくなった」と話す。
中学3年で同級生だった別の女性も「教室で話しかけても目を合わさず、いつも『ほっといてくれ』という雰囲気で教室の隅っこにいた。時々、同級生からからかわれていたこともあった」と振り返る。
木村容疑者は昨年9月、自民党系の当時の川西市議が開いた市政報告会に参加し、議員の報酬について質問していた。同級生の女性は「中学生の頃は、政治に関心がある様子はなかった」と首をかしげた」
(読売4月17日)
明るい小学生時代から中学で急に無口に、最近は「家に引きこもりがち」…首相襲撃の木村容疑者 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

だからなんなんです。
このテロリストが何を考えていようといまいと、「心の闇」とやらを持っていようといまいと、なんの関係もありません。
仮に「心の闇」とやらがあったとしたら、それで免罪されるのでしょうか。
ほー、それは便利なことだ。
「心の闇」を持っていたら、他者を殺す特権を持てるのですか。
無辜の人の生命を奪い、その家庭を破壊しておきながら、被害者ヅラすれば許されるとでも。

人はひとつやふたつの他人に言えないことを抱えて生きています。
それがあたりまえの人生というもので、それで犯罪を説明することにならないし、ましてや正当化する理由にはなりません。
貧しかろうと、豊かだろうと、人生に挫折しようとしまいと、人は自らがやったことにおいてのみ裁かれ、断罪を受けるのです。

メディアは口先では「テロはいけない」と言いながら、テロリストにはベタベタに甘ったるい「物語」を作ってみせました。
これはテロリストに「顔」を与える行為です。

あまりにも有名なテロリストに対してアーダーン・ニュージーランド首相の言葉を、日本メディアはすこしでも噛みしめるとよい。
あなた方日本のメディアが、いかに傾いて狂っているのかわかるはずです。


「約100人が死傷したニュージーランド・クライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)銃撃事件を受けて、ジャシンダ・アーダーン首相は19日、銃撃犯の名前を今後一切口にしないと誓った。
アーダーン首相は議会で、「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」と、気持ちをこめて演説した。
皆さんは、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください。男はテロリストで、犯罪者で、過激派だ。私が言及するとき、あの男は無名のままで終る
(BBC2019年3月19日)
ニュージーランド首相、銃撃犯の名前は今後一切口にしないと誓う  - BBCニュース  

アーダーン首相はがテロリストの名を呼ばないと誓ったのは、「名を得ること」が犯人の目的だからです。
つまり、メディアがこのテロリストの「心の闇」を報じることは、すなわちテロリズムの目的を国民に拡散することなのです。
ニュージーランドで起きたこのテロリズムにおいては、ムスリム排斥であり、そしてわが国では安部氏暗殺でした。

そしてアーダーン首相は、ソーシャルメディア各社に対し、テロに対抗するための対策を要請しています。


「こうしたソーシャルメディアのプラットフォームはただ存在するだけで、そこに掲載される内容に、プラットフォームは何の責任も負わないなど、私たちは甘んじて受け入れるわけにはいかない。各社は出版社でだ。単なる郵便配達人ではない。利益だけ得て責任は負わないなど、あり得ない」と首相は強調した」
(BBC前掲)

それまで世界中のSNSに、このテロリストの主張が大規模に拡散されていました。
「米フェイスブックは19日、犯行動画のライブ配信中の視聴回数は200回未満だったと明らかにした。動画が削除されるまでに合計で約4000回も視聴されていたという。同社は最初の24時間のうちに、世界中で問題の動画を約150万本削除したが、そのうちの約120万本はアップロードの最中にブロックされたという」
(BBC前掲)
これに対してアーダーン首相は「利益をあげて責任を負わないことはありえない」という社会の責任の名において規制を要請します。
そして代わりに、「生命を失った人の名前を語れ」と訴えたのです。
ジャシンダ・アーダーンは労働党出身のリベラリストですが、日本にテロリトに特有の犯人に「寄り添う」自称リベラルとはまったく対照的です。
ジャシンダ・アーダーン - Wikipedia

アーダーン首相が要請したメディア規制要請の対局にいたのが、わが国メディアでした。
ただ犯人の言い分を垂れ流すだけではなく、積極的に称揚したのですから、反社会的行為への意識的加担と呼ばれても致し方ないでしょう。
つい数カ月前も、朝日は懲りもせずに『時代に敏感、感情任せでない犯行安倍氏銃撃、容疑者の投稿分析』と題して、山上礼賛特集を組んでいました。

「21年は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への度重なる批判、眞子さまの結婚騒動に絡めて「婚姻の自由」への言及、過去のNHK大河ドラマで登場した戦国武将明智光秀の「語り尽くせぬ恨みあれども、此度(こたび)の戦決して私心にあらず。天下国家のため織田信長の首を取ることこそ天の道」といったセリフをいくつも引用して投稿している。
世の中を変えていく、といったところに注目していることがうかがわれます。
これらの投稿を見ると、単に妄想や感情にまかせて犯行に及んだものとは考えにくい。国や政治、世界に対して興味関心もあり、自分の意見を述べることができる人、時代の情勢に敏感で、問題意識が高い人ではないかと思われます」
(朝日1月8日)
「時代に敏感、感情任せでない犯行」 安倍氏銃撃、容疑者の投稿分析:朝日新聞デジタル (asahi.com)

テロリストのツイートにあった、明智光秀の「語り尽くせぬ恨みあれども、此度(こたび)の戦決して私心にあらず。天下国家のため織田信長の首を取ることこそ天の道」といったセリフをいくつも引用して投稿している。世の中を変えていく、といったところに注目している」そうで、「時代の趨勢に敏感で、問題意識が高い人だ」と手放しです。

恥ずかしくありませんか。
朝日はテロリストを信長を倒した光秀に例えて、「私心なく安部を殺したことが天の道だ」と言っているに等しいのです。
ならば朝日は、朝日新聞小尻知博記者が赤報隊と称する者に殺害されたこともまた「天の道」だと言うのでしょうか。
そしてこのテロリストに対しても、「理由が正しければ許される」「社会に対するやり切れなさが背景にある」と書いたでしょうか。

テロリストに「名前を与えるな」という言葉は、彼らの主張に耳を貸すなという意味です。
なにをテロリストが叫んでいようといまいと、この人物がテロリズムという最悪の方法を選択した以上、主張すること自体許されません。
もし許してしまったら、殺人こそが「時代の情勢に敏感で、問題意識が高い人」がとるべき「世の中を変えていく」最短の道だということになるからです。

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秘蔵写真で振り返る「政治家・安倍晋三」の軌跡 ベテランカメラマンが撮った笑顔・憔悴・奮闘 | JBpress (ジェイビープレス)

ところが、安部氏となると次元の違う統一協会へミスリードし、テロリストを「義士」として崇拝し、助命嘆願する空気すら生んでしまいました。
その一例は、ワイドショーです。
加藤文宏氏は、このように日本メディアの狂騒を分析しています。

「2022年年7月8日の安倍晋三元総理の暗殺事件の直後から11月まで、月曜から金曜の週五日、各放送局のワイドショーは放送時間の大半を割いて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を追及する番組を放送した。放送回数、時間ともに驚くほどの力の入れようで、ワイドショーは異例の視聴率を記録している。
なかでも日本テレビ系列の「情報ライブ ミヤネ屋」は暗殺事件前の平均と比較して2%ほど高い7%台となる世帯視聴率を達成しただけでなく、テレビをつけている世帯全体に対して特定の番組にチャンネルを合わせている世帯の割合を示す占有率では、30%を超えるシェアを長期間維持し、午前午後を問わず他のワイドショーを圧倒した」
(産経2023年4月16日)
ワイドショーが善悪を決めていいのか - 月刊正論オンライン (sankei.com)

つまりテロリストを英雄視し、それを旧統一協会糺弾に持っていきさえすれば視聴率がとれるということを、メディアは発見したのです。
この期間の視聴率をみてみましょう。
これを執拗に扱い続けたミネヤが圧倒的に視聴率を稼いでいます。
“教団と政治”が分けたワイドショーの明暗~公務員が注目した『ミヤネ屋』が一人勝ち~(鈴木祐司) - 個人 - Yahoo!ニュース

「これで比べると、確かに『ミヤネ屋』は断トツだ。
午後と午前に時事問題を扱うワイドショー5本の中では、同番組が唯一30%台の占有率を誇り、他に大差をつけている。
また安倍元首相が銃撃された7月8日までの2週間とその後で比べると、『ミヤネ屋』だけが3%ほど数字を底上げした。
ところが『ゴゴスマ』『羽鳥慎一モーニングショー』『スッキリ』の3本は、事件後4週間平均で微減となった。さらに『めざまし8』に至っては、1.5%ほど数字を落としていた。
午後と午前に時事問題を扱うワイドショー5本の中では、同番組が唯一30%台の占有率を誇り、他に大差をつけている」
(鈴木佑司 2022年8月7日)

これはSNSの検索ワードにも現れています。

「2022年6月30日から9月30日までの「ミヤネ屋」と「統一教会 議員」の国内検索数を調べた。「統一教会 議員」は単語の間にスペースを入れて二つの単語が含まれる情報を検索したもので、旧統一教会と関係ある議員への興味が反映される。(略)
8月は過去に伝えられた内容を超える報道がなく、確たる証拠が何ひとつあがらないまま「ミヤネ屋」が自民党追及一辺倒になり、追及劇の急先鋒だった同番組への興味が検索数の急伸長に反映されている。
グラフは「ミヤネ屋」が国内の興味とも旧統一教会追及の本質ともかけ離れた話題を沸騰させて、視聴率を稼いでいたことを端的に表している」
(鈴木前掲)

ここでワイドショーが使った手法が、同じ主張を持つ者だけを集めての「糺弾会」です。

「ミヤネ屋」が特異だったのは弁護士の紀藤正樹氏、ジャーナリストの有田芳生、鈴木エイト両氏といったコメンテーターを揃え、善悪の裁定を全会一致で畳み掛けた点だ。
旧統一教会の言い分や疑惑の議員を紹介してコメンテーターが解説という名目の「糾弾会」を始めると、異論が挟まれることなく同質の意見だけが反響し合ってあらゆる方向から増幅されて返ってくる「エコーチェンバー現象」が発生した。
一方向を向いた論調が反響しあうことで番組内の感情が沸騰状態になり、コメンテーターの意見や裁定に大衆の代弁役たる出演者たちが驚いたり、共感したりすると視聴者は感情の渦に巻き込まれた。
そこに司会者の宮根誠司氏が溜飲の下げどころを示し、視聴者は納得した。この構成が徹底的に繰り返され次回へ、さらに次回へと共感や怒りが持ち越され、番組特有の主張が増幅される一方となった」
(鈴木前掲)

このようにして安部暗殺犯は「名前」を得て、現実の政治に影響を与えていく「世直しの義士」となりおおせました。
呆れるしかありません。反吐が出ます。

メディアにとって、このテロリストは待望久しく日本に現れた「世界的テロリスト」なのでしょう。
だから「名前」を与え、「物語」を作り、彼らの主張を事細かく伝え、そして無条件に讃美するわけです。
これは故なく殺された死者への冒涜であるとも感じない。
まったく狂っています。


メディアがテロリストを生み、その模倣犯を再生産したのです。
本来あるべきテロリズムの厳罰化へとつながらず、無関係な統一協会規制へとそれていってしまった罪は、あげてメディアと野党、そして岸田政権にあります。

テロリズムは民主主義を根底から否定します。
武器は銃器から爆弾へと発展し、やがてその毒牙は政府要人だけではなく、一般市民にまで無差別に及ぶようになります。
そうなったときには遅いのです。
そりゃそうです、手製の銃や爆弾ひとつでお手軽に「世直し」ができるのですから、こんなイージーな方法はない。

考えてもご覧なさい。
「世直し」が、いかに膨大な手間と時間がかかることなのか。
様々な意見と情報を取り入れて主張を構築してそれを伝え、仲間を募り、選挙に出て・・・、あげく失敗することのほうがはるかに多いのです。
それに引き換えテロは簡単です。ホームセンターで部品を買い込み、自宅で粗雑な武器を作り、対象の者を付け狙うだけ。
これほど楽で堕落しきった最低の「世直し」はこの世にありません。

しかもメディアはそれを「義士」として讃美してくれるのですから、こたえられません。
こういう逃げ場を塞ぐためには、テロに対しては徹底した厳罰化をもって報いるべきです。

 

 

 

2025年10月30日 (木)

高市首相は「右翼ポビュリズム」か?

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古賀茂明氏という元経済産業省の官僚がこんなことを言っています。

「私がよく知る著名な政治学者のA氏は、高市氏は、右翼的思想に共鳴はしているかもしれないが、その本質は「右翼的ポピュリスト」に過ぎず、本当の意味での保守、あるいは右翼とは言えないと指摘した。高市氏は、社会全体が右傾化している流れに乗るため、あるいは安倍氏の歓心を買うために右翼的言動をしていたが、それは高市氏の確固たる思想を反映したものではないというのだ」
(アエラ10月28日)
高市首相は真の保守政治家ではなく「右翼的ポピュリスト」! 世論に迎合して戦争準備に突き進む「軍国主義政権」誕生の危機 古賀茂明(AERA DIGITAL) - Yahoo!ニュース

ま、この人一流のポジショントークみたいなもので、その時の気分で都合のいい情報を拾ってきてなにかもっともらしいことを言います。
そして悔しそうにこうも書いています。

「確かに、高市氏は、総裁選の途中から、極端に右翼的な言動をぱったりと止めた。同氏の政治姿勢を最も象徴的に表す「首相になっても靖国神社に参拝する」という立場を放棄し、「適時適切に判断する」としていたが、10月17日に始まった同神社の秋の例大祭への参拝を首相就任前であるにもかかわらず見送った。
首相就任直後に予定されるASEAN関連首脳会議、トランプ米大統領との首脳会談、APEC首脳会議、さらには現在模索中の習近平中国国家主席との会談などに悪影響を与えることを恐れてのことだ。その判断自体は、極めて賢明だが、高市氏の最も重要な政治信条と見られていたことの一つをあっさりと曲げたということは記憶しておくべきだろう」
(アエラ前掲)

あたりまえだろうって。高市氏は「統治」する側に身を置いたのですよ。
しかもPMことプライムミニスターという責任者になった場合、自身の思想への献身ではなく国際秩序の維持を求められます。
靖国参拝をカード化している中韓が現に存在する以上、今はこちらから靖国を外交の焦点化させない配慮は当然です。
そして今後やるなら慎重に、トランプと共に参拝するくらいのことは考えても良いでしょう。

つまり塩梅なのです。
バランスといってもいいかもしれませんが、国民からすれば保守思想の体現のために総理になってもらったわけではなく、この国を豊かで強靱な者に変えていくためになってもらっているのです。

高市氏はやたらと「超保守主義」とか「右翼ポピュリスト」なんてレッテルを貼られていますが、そうとうに見当違いです。
たしかに高市政権の誕生はトランプ政権の誕生や、いまや政権を取らんばかりの勢いの「ドイツのための選択肢」(AfD)、フランス野党「国民連合」のルペン、あるいはイタリアのメローニ政権と似ていなくもありません。
それは行き過ぎたリベラリズムがポリコレや移民政策に代表されるように自家中毒を起こしたことに、国民全体が嫌気がさしているからです。

18世紀、まるで熱に浮かされたように自国民を虐殺し、国土と文化を破壊し続ける革命フランスを、海峡の向こうで冷やかに見ていた英国人のエドモンド・バークは、こう述べています。

「正しい目標をめざすかぎり、社会の変化は抜本的であればあるほど良い、と見なす考え方と規定しうる。ここからは当然、「正しい目標をめざすかぎり、社会の変化は急速であればあるほど良い」という結論も導かれよう。
かくして成立するのが、いわゆる急進主義の理念にほかならない。フランス革命が真に重要なのは、「自由・平等・博愛」を謳ったことや、人権宣言を採択したことにあるのではなく、急進主義に基づく史上初の大規模な革命だったことにあるのだ」
(『フランス革命の省察』)

保守思想とは、福田恆存が『常識とはなにか』で述べているように要は「常識」のことです。
属人的なものではなく、集団の中で「普通」とされる考え方や行動を指します。
それは現状維持を基本原則とします。
小さくは電車の中で騒ぐな、ゴミは捨てるな、川や山はキレイにしろ、大きくは国境を実力で変更するな、近隣諸国に脅威となるような軍拡はするなといったようなことです。

あるいはこうも言えるかもしれません。
じぶんの国の国益は最大限守るのは当然ですが、行き過ぎて自国中心主義に陥って国際協調を乱すな。
なんだあたりまえだと言うなかれ、保守思想とはあたりまえのことをあたりまえに主張し、生き抜く意志のことなのです。
高市氏は安倍氏の国際協調主義の今様の形なのです。

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《安倍晋三》 が10月26日未明に「トレンド入り」した 3つの理由… 高市政権のウラで、今なお強まる安倍氏の “影響力” (LASISA) - Yahoo!ニュース

安倍氏は早すぎた悲劇の政治家という側面があります。
彼が首相を務めた時期の米国は、尖閣問題でも態度をあいまいにし続けたことに現れているように、対中姿勢が明確ではありませんでした。
そしてそれを絶好の機会と見た中国は、尖閣を守ることを日本軍国主義の復活として批判し、米国にかつて共に大戦で戦った同志ではないかと呼びかけました。
そしてコロリと米国リベラルはこのロジックにはまってしまったのです。
それをよいことに中国は南シナ海に軍事進出をして領土拡張を行い、国内では少数民族弾圧を強化し、香港の民主主義を弾圧しました。

韓国は異形なナショナリズムの虜と化して従軍慰安婦問題を世界に喧伝して回りました。
これに対して戦った安倍氏は報道の自由を弾圧する極悪人呼ばわりされてしまいました。
このプロパガンダに多くの国民も納得してしまったのです。
これは2014年8月の朝日の謝罪まで続きます。
つまり、安倍氏の悲劇は「早すぎた」のです。

今の高市氏は時代を捉えています。
というか時代が追いついたのかもしれません。
多くの国民は、ウクライナ戦争を見て、いままでリベラルがことあるごとに言ってきた「戦争など起こるはずがない。そういうのは日本を軍国化したい極右だけだ。平和を祈っていればよいのだ」という言説が虚偽だとわかってきました。
日本の領土と国民の命を守る必要性は、とりもなおさず国際秩序を守ることに繋がることを、ほぼすべての国民が理解しつつあります。
かつてあれほど支配的だった左翼メディアが、いまや見る影もなく衰退しているのを見ればそれはよくわかります。

このように見てくると、古賀某が言うような高市氏が「右翼ポピュリズム」だというご託宣のなんと弱々しいことよ。
ああ、それにしても安倍氏に今の高市首相の姿を見せたかった。

 

2025年10月29日 (水)

第2次日米黄金時代が到来

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第2次日米黄金時代が到来しました。

首相が違うとこれほどまでに違うものみたいです。
石破政権の時の冷たくよそよそしく儀礼的な空気は一掃され、明るく友好的な空気が支配しました。
安倍氏がいた時のようです。

空気からして違いますね。
「空気感」まで問うては気の毒なのですが、ともかくゲル首相はジットリと暗く陰鬱でした。
どこにいってもボッチ。首脳会談でも会場の片隅でスマホをポチポチやり、他の国の首脳が挨拶に来ても座ったままでご挨拶。
集合写真には遅れ、なんか罰ゲームをやりに来たようでしたね。
ああ、ゲル氏の思想うんぬんではなく、表に出したくないというかんじ。

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一方、高市首相は外交デビューとなったASEAN首脳会議ではもみくちゃにされました。
まさにスターでした。

常に笑みを絶やさない彼女にハグする者、手に接吻する者、そしてそれを追う各国首脳たち。

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高市早苗首相が帰国の途 ASEAN首脳会議でのマレーシア訪問終え - 日本経済新聞

そして集合写真ではど真ん中に。

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日ASEAN首脳「法の支配に基づく国際秩序を」 共同声明 - 日本経済新聞

そしてそれに続く日米首脳会談では、これ以上ない見事な主宰者を演じて見せました。

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日米初会談、同盟抑止力強化 首相「新黄金時代を構築」:東京新聞デジタル

あまりのラブラブに眼がくらんだのか、トランプは「日本のために私ができることがあれば、私たちは必ず応えると伝えたい」というまるで白紙小切手のようなことを言う始末でした。(いいのかよ)

「トランプ米大統領と高市早苗首相は28日午前、東京・元赤坂の迎賓館で初の首脳会談を行い、強固な同盟関係を維持していくことを確認した。  冒頭、トランプ氏は「日本のために私ができることがあれば、私たちは必ず応えると伝えたい」と述べた。日米関係について「われわれは最強レベルの同盟国だ」とも発言。日本が「防衛力の大幅強化に取り組んでいることは承知している」とも語った。
高市首相は「日米同盟の新たな黄金時代を共に作り上げたい」と述べた。日米は最も偉大な同盟だとし、共に世界の平和と繁栄に貢献していく考えを示した」
(ブルームバーク10月28日)
トランプ大統領「日本にできることあれば必ず応える」-高市首相と会談 - Bloomberg

小泉ジュニアにはかわいそうですが、日米外交筋は高市氏を前提にしてトランプのアジア訪問のスケジュールを組んでいました。
側近のベッセント財務長官など首班指名以前に、「新しい日本の女性首相の誕生を歓迎する」という先走ったことを発言しており、米国が誰をカウンターパートナーに望んでいるのかをアピールしていました。

そして高市首相が誕生したことで、一気に米国のアジア戦略が確定しました。
いままでの民主党政権は口だけでアジア太平洋地域へ「リバランス(均衡の再構築)」とか「ピボット(軸足の移動)」という言葉を使っていましたが、内容はなく、具体的な対中政策は大甘でした。

それに対して、高市首相は、日ASEAN首脳会談で、「自由で開かれたインド太平洋」を高らかに詠い上げ、日本の国際社会への積極的関与を明言しました。
同じく茂木外務大臣も、日本の外交戦略としての「自由で開かれたインド太平洋」を国際社会にアピールしました。
並行して行われていた米国とASEAN首脳会談でトランプもまったく同じ言葉を使って「自由で開かれたインド太平洋」をアピールし、「航行の自由作戦」を徹底してやり抜く決意を披瀝しています。
まさにアメリカ・イズ・バックなのです。

そして横須賀の米空母において「共闘宣言」とでも言うべきスピーチをしています。

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 BBCニュース

「トランプ氏はこの日午後、大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン」で神奈川・横須賀の米軍基地に向かい、停泊中の米原子力空母「ジョージ・ワシントン」に降り立った。高市氏も同乗した。
トランプ氏は艦内で米兵らを前に演説。「歴代政権とは異なり、私たちは政治的に正しくあろうとはしない。それでも構わないだろう? アメリカを守るためなら」と述べると、喝采を浴びた。
そして、「これからは、戦争になれば、その戦争に勝つ」と言った。
トランプ氏はその後、高市氏を演壇に招き、「親しい友人」と紹介。「私たちのきずなは、ひどい戦争の灰の中から生まれ、80年以上かけて成長し、現在のような美しい友情になった」と述べた。
続いて高市氏が演説し、6年前にこの同じ場所で、安倍元首相とトランプ氏が、この地域の平和と安全を確かなものにするために協力する決意を示したと述べた」
(BBC10月28日)
トランプ氏と高市氏が会談 日米「黄金時代」に関する合意文書に署名 - BBCニュース

おそらく世界各国の首脳で、米国大統領とこのような熱い関係を結べる首脳は、イタリアのメローニくらいなものでしょう。
正直、高市総理が初陣でここまでやるとは思いませんでした。パーフェクトです。

 

2025年10月28日 (火)

日米造船協力に注目

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トランプが訪日しました。陛下と面談されたようで、あの暑苦しい男にご苦労さまでした。
先日、英国がやったように王室(皇室)は外交のリーサル・ウェポンです。
英国が労働党政権となり、米英関係がきしみそうだと見るとスターマー首相はすかさずトランプを英国に招待し、バッキンガム宮殿で国王と面談させ、さらに王室晩餐会でもてなしました。
終始トランプは大ニコニコで、最高の栄誉を堪能しました。
一気に懸案のトランプ関税交渉も妥結しましたから、外交的必殺技ですな。

さて本日、高市総理と会談予定ですが、なんでも横須賀でやるとか。
このヨコスカというのが味噌です。
トランプは巨大空母を見せつけて、「オレ様はこんなにニッポンを守ってやっている」と言いたいんでしょうが、それだけではありません。

「両首脳は28日午前に会談する。トランプ氏が同盟国や同志国に求めている防衛費の負担増が主要議題の一つとなる。首相は24日の所信表明演説で、安全保障関連費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げ目標を2年前倒しして今年度中に達成することや、国家安全保障戦略など安保3文書を前倒しで改定する方針を表明した。トランプ氏にこうした考えを自ら説明し、日本の防衛力強化に向けた主体的な取り組みに理解を得たい考えだ」
(読売10月27日)
28日午前に日米首脳会談、高市首相が「マリーン・ワン」に同乗し米海軍横須賀基地を視察へ : 読売新聞

防衛費増額は、トランプにアレコレ言われなくともすでに高市政権は答を出しています。
2年前倒しで2%に増額です。
いまが1.8%くらいですから財務省の「財源がぁ」という横やりさえなければ問題ありません。
その財務省には高市総理の命を受けた片山大臣が張りついていますから、お手並み拝見です。

「高市早苗首相は24日、衆院本会議の所信表明演説で、関連経費を含めた防衛費を2025年度中に対国内総生産(GDP)比2%とする方針を明らかにした。従来計画の27年度から2年前倒しで増額する。
高市首相は近年、「新しい戦い方の顕在化など、さまざまな安全保障環境の変化も見られる」とし、「主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要だ」と述べた。国家安全保障戦略で定める「対GDP比2%水準」について「補正予算と合わせて、今年度中に前倒して措置を講じる」と明言した」
(ブルームバーク10月24日)
高市首相、防衛関連費を今年度中にGDP比2%まで増額-補正予算で措置 - Bloomberg

興味深いのは、造船能力での協力が協議テーマに入ったことです。

「会談では、覇権主義的な動きを強める中国や中露朝の軍事協力に対処するための安保協力も議論する。日米関税交渉の合意に基づく5500億ドル(約80兆円)の対米投資を着実に履行することも確認する。先端技術や造船分野での協力、レアアース(希土類)を含む重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強靱化に関する覚書を結ぶ見通しだ」
(ブルームバーク前掲)


それは自維政策協定にもでてきます。
防衛関連国営工廠(こうしょう)と国有施設民間操業の推進

前述した「防衛装備移転三原則の運用指針」の5類型を撤廃し、防衛産業における国営工廠と国有施設の民間操業を推進する方針です。

・国営工廠: 国が直接、防衛装備品の製造や維持管理を行う施設です。明治時代には、国内に民間産業基盤が乏しかったため、陸軍工廠が設立され、兵器生産の中心的な役割を担っていました。
・国有施設の民間操業 (GOCOスキーム): 国が施設や設備を保有しつつ、その管理・運営を民間の事業者に委託する仕組みです。これは、防衛装備品を製造する企業が事業継続困難になった際などに、国が施設を取得し、民間へ委託することで生産基盤を維持する目的があります。
経済安全保障推進法においても、安定供給確保が困難な特定重要物資について、国が自ら必要な措置を講じ、その実施を民間事業者に委託することが規定されています。

「デル・トロ海軍長官は同盟国の造船能力活用を訴えており、昨年9月「日韓を含む親密な同盟国の造船企業と提携する機が熟しており、世界で最も先進的な造船企業を誘致して米造船産業の近代化や拡充を測るべきだ」と主張、今年3月に日韓を訪問して佐世保重工業、三菱重工業、Japan Marine United、現代重工業、Hanwha Oceanと会談。
Sea Air Space 2024でのスピーチでも「我々は世界で最も高性能な軍艦を世界水準から数十年も遅れた造船所で建造している」「日本や韓国の造船所はイージス艦を含む高品質な艦艇を我々の数分の一のコストで建造している」
(航空万能論2024年8月6日))
米産業界が海軍長官のアイデアを拒否、日韓に艦艇の建造・修理を外注するな

まだ米国の産業界の完全な了承を得ていないようですが、米国はやる気です。
下の写真は横須賀軍港ですが、いまでも修理の米海軍艦船でごった返していますが、それがいっそう賑やかになるはずです。

「米海軍が日本の民間造船所で戦闘艦を補修するため、日米で作業部会を立ち上げたことが分かった。米国外でも補修できる体制を整え戦闘艦の稼働率を高める。東アジアで軍備拡張の動きを強める中国に対抗する。
エマニュエル米駐日大使が19日、X(旧ツイッター)に投稿した。補修体制の構築が実現すれば「日米同盟と共同抑止力の強化につながる」と期待を示した」
(日経2024年1月19日)
米戦闘艦、日本の造船所で補修 作業部会を立ち上げ - 日本経済新聞

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日本はいままでのアジア・インド洋における最大の海軍拠点であるばかりではなく、艦船建造、修理の大拠点となることでしょう。

おそらく、自動車産業と似たような展開になるでしょう。
日本は米国から直接に艦船の新規建造と修理を請け負う一方、米国へは資本と技術を供与する関係になると思われます。
80兆円の対米投資は、「日米共通の利益となるサプライチェーンの強化」をうたっていますから、とうぜんこの中に含まれるはずです。
面白くなってきました。

 

2025年10月27日 (月)

三人には「国会の華」は無理です

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今日のテーマは例の野次なんですが、だれが書いても同じになっちゃうよなぁ。
要は、時と場所をわきまえない愚か者なのです。
時は新首相の所信表明演説という最初の議会演説、場所は衆議院本会議、そこで「野次は国会の華」なんて勘違いした阿呆がいたというだけのことです。

確かに気が効いた野次は面白いのですが、勘違いしてほしくないのは、それはそうとうな高等技だということです。
「統一教会がぁ」とか「裏金がぁ」みたいな低レベルの野次を、無関係な場所で喚いてもダメなのです。
かんじんな首相の所信表明演説とまったく噛んでないでしょうが。
野次というのはある種の双方向コミュニケーション(オーバーかな)みたいな側面がなくはないので、うまく嵌まれば「華」なことは確かです。
しかしこの三人のそれは幼稚、かつまったく演説とかみ合っていない、だから単にうるさいだけの演説妨害にすぎません。
こういうのをただの「罵声」と呼びます。


野次にも品位はあるのです。
気の利いたユーモアは必須、タイミングも必須、声のボリュームも重要。
だから1年生議員になんぞにできる技じゃないのです。

あのヤジ三馬鹿大将は、野田氏に怒られて「礼節をまもります」と謝ったそうです。
ま、この3人のうちの主犯格だった水沼議員は野田氏と同じ千葉選挙区で、「野田の一番弟子」だそうですからしょうもない。
逆にこんなのが一番弟子なのかと言われますよ。

そもそも野田氏に謝られてもしゃーないんですよ。
謝るなら演説の聴取を妨害された国民に対してか、あるいはその代表である国会、もしくは演説を直接に妨害された高市首相自身に対してでしょうね。

三馬鹿大将は即日特定されており、立憲民主党の水沼秀幸(千葉4区)、岡田悟(兵庫7区)、森山浩行(大阪16区)の3名です。
特にひどい野次をしていたのが千葉4区の水沼氏で、この人はいままでも居眠り議員として知られていました。
つまり国会に来ても、野次を飛ばすか寝ているのね。(笑)

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水沼秀幸議員
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岡田悟議員

まぁこういう人らを弁護しているのが小西洋之氏や石垣のりこ氏らですから、立憲も落ち目になるはずです。

 

2025年10月26日 (日)

日曜写真館 はげますや秋暁の胸ひきしぼり

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秋暁の魚とる鳥の水しぶき 飯田龍太

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湖や渺々として鳰一つ 正岡子規

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砂の如き雲流れ行く朝の秋 正岡子規 

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湖に暑さ去りゆく夕かな  星野椿

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行秋の朝な朝なの日田の霧 高野素十

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ほど遠き秋暁けがたのかけろかな 飯田蛇笏

 

 

 

2025年10月25日 (土)

高市首相、国家情報局を作る

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懸案一挙解決内閣を作るつもりか、高市政権はロッケットスタートのまま走っています。
ほとんど全方位に及んでおり、この女性首相がいかに今の日本をトータルに見ていたのかがわかります。

これまでの自公連立のリベラル中道連合がしてきたことは、憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などといった課題を放棄して、LGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策を推進してきました。
また財政運営では財政健全化路線による緊縮財政をとってきました。
こういった自公路線に対して、自維の保守連合が起こそうとしているのが「保守革命」です。
その基軸のひとつに、インテリジェンス機関の創設とスパイ防止法があります。
「 木原稔官房長官は24日の閣議後会見で、国家情報局の創設について、日本維新の会との連立政権合意書で2026年通常国会での創設が盛り込まれているとしたうえで、「情報機関の組織の在り方や求められる機能、権限などについて早急に論点を整理し、検討を進めてまいりたい」と述べた。
高市早苗首相からは、政府全体のインテリジェンス司令塔機能の強化に向けた検討を行うよう指示を受けたとした。
自民・維新の連立合意書では、26年通常国会において、内閣情報調査室および内閣情報官を格上げし、「国家情報局」を創設するなどとしている」
(ロイター10月24日)
国家情報局創設へ検討進める、インテリジェンス強化で首相指示=官房長官 | ロイター
あたりまえの話ですが、対外情報機関は国際社会においてあるのが常識、欠落している国など聞いたことがありません。
対外情報機関は、もっとも「平和的」かつ安価な安全保障対策です。
戦車や戦闘機がいるわけではなく、銃弾の一発も使わずに対象国の政治・軍事・外交・経済情報などを収集するだけだから、憲法にも抵触しません。
ですからどんな国もまず情報機関を作ってから、その情報に基づいて相応の軍を作るのです。
そして情報機関は矛と盾として対外情報機関と防諜機関をワンセットで持ちます。
例えば、米国は対外情報機関として中央情報局(CIA)、防諜機関として連邦捜査局(FBI)を持ち、イギリスは対外情報機関として秘密情報部(MI6)、防諜機関として内務省保安局(MI5)を擁しています。
ロシアは、対外情報機関として対外情報庁(SVR)、防諜機関として連邦保安庁(FSB)を持っています。
中国は対外情報機関として国家安全部、防諜機関として公安部(警察組織)を持ち、さらに中国共産党中央統一戦線工作部なども絡まって複雑怪奇な巨大組織に膨れ上がっています。
そして「情報」とひとくちに言っても、その間口が今世紀に入って大きく拡がりました。
大きく経済・社会・科学技術の分野に拡がったのです。
先日のアサヒビールにたいする巨大なハッキング行為のように、悪意ある何者かがサイバー空間に侵入し、企業秘密を収集するだけではなく、破壊攪乱まで行うようになってきました。
この背後に特定国が存在するか否かはまだわかりませんが、もはや「謀略・破壊活動」と称してよいでしょう。
元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏氏はこう警告します。
「21世紀に入るころから、インテリジェンスの世界は大きく変化せざるをえなくなった。その理由は、第1に他国との経済的優位が国家存立の重要な要素となることから、スパイ行為の目標が単に安全保障や外交の情報を入手するだけではなく、経済、社会、科学技術情報など他分野にまで広がったこと、
第2に冷戦により軍事的な直接的攻撃が減少した反面、情報機関の任務として、単なる情報の収集という間接的な攻撃手段に加えて、破壊、攪乱、宣伝などの「謀略活動」といわれる直接的な攻撃が加わったこと、
第3にインターネットの発達により、従来のヒューミント(人間によるスパイ行為)中心のスパイ活動に、サイバーテロもしくはサイバーインテリジェンスという手段が加わった。
情報機関は自らサイバー組織を設立するほか、民間のハッカー・グループをその傘下に置いた。これらサイバー空間における戦いの特徴は、攻撃主体の特定が難しく、瞬時に情報収集や謀略行為を達成でき、時には世界的に影響を与えることが可能なことだ。こうしたインテリジェンスの変化に対して、本格的な対外情報機関と防諜機関を持たなかった我が国はなすすべなく、せっかくの世界最高レベルの科学技術も敵対国への漏洩が相次ぎ、世界第2位の経済力も凋落することになった」
(元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏)
日本戦略研究フォーラム(JFSS)
今の日本の情報機関の態勢は規模として小さすぎる上に、分散しています。
現況はこうなっています。
●現在の日本のインテリジェンス機能を有する主な機関
・内閣情報調査室・いわゆる「内調」。内閣の重要政策に関する情報の収集・分析を行い、政府首脳にインテリジェンスを提供しています。
・警察の公安部門・いわゆる「公安」です。国内の治安維持に関する情報収集を行っています。
・公安調査庁・いわゆる「公調」です。国内の治安に影響を及ぼす組織などの調査・情報収集を行っています。
・外務省 国際情報統括官組織・国際情勢に関する情報の収集・分析を専門的に行い、外交・安全保障政策の立案に貢献しています。在外公館を通じて得た情報やAIなどの新技術も活用し、総合的な分析を行っています。
・自衛隊・情報収集のための情報本部、防諜組織としての自衛隊情報保全隊があります。ビバントは架空ですので念のため。
このように多岐系も機能もバラバラのまま統一されていません。
初代内閣安全保障室長を勤めた佐々淳行氏によれば、 防諜活動は取り締まる根拠法すらなく、捕まえた北朝鮮工作員を出入国管理法で捕まえていたそうです。
ちなみに捕まえてもスパイ防止法がないので、スパイ道具一式を返却してお帰りになって頂いているようです。
日本でも日本版CIAを作ろうという動きはありました。
朝日新聞の主筆であった緒方竹虎・自由党総裁は吉田内閣時代の副総理として日本版CIAを作ろうとして、その死によって挫折しました。
原因は、皮肉にも緒方の出身母体であった朝日新聞などのメディアの大反対でした。

「いずれにせよ緒方が生前に進めようとしていた日本版CIA構想が実現しなかったのは、国会(野党)とメディア、つまり世論の大きな反発があったからである。当時はまだ戦前・戦中の記憶が新しく、政府内に強力な「裏の組織」を作ることに反対論が大きかったのだ。また、旧内務官僚中心の構想には、外務省の反発もあった。
その後、1957(昭和32)年に岸信介政権が「内閣調査室」を設立するが、規模はきわめて小さいものに留まり、独立した情報機関と呼べるものではなかった。冷戦時代、左翼系野党やメディアの力は強く、情報機関設立の機運は高まらなかった」
(黒井文太郎)
なぜ日本にはCIAのような「情報機関」がないのか…日本のインテリジェンスが立ち遅れた根本原因 外務省、警察庁、防衛省、公安調査庁の歴史的確執 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

前回の特定秘密保護法制定時にも、ウソ八百のプロパガンダを流布して反対したのは朝日などの左翼メディアでしたから、今回もまた大きな抵抗が予想されます。

安倍政権時の特定秘密法の時には、朝日は大反対キャンペーンを張ったのですが、こういうかんじです。
もはや負の世界記憶遺産に登録申請したいような殿堂入りモノです。

「防衛産業で働くB男がA子と大学の同窓会で再会した。酔ったB男は『あまり知られていない話だけど』といって、数年前に北朝鮮が発射したミサイルが途中で失速して海に落ちたが、『もし失速していなかったらこの辺に落ちていたかも』という情報を暴露。
A子がブログで書き込み、ある防衛マニアかミサイルの飛ぶコースを推測してネットで拡散した。翌月、捜査機関が二人を訪ねて来た。B男は業務で知った秘密を漏らした疑い、A子は漏洩をそそのかした疑いだった」
(朝日2013年12月6日)

この記事のキモはむしろイラストにあって、そこには思わせぶりに「有罪!」という字がデカデカと踊っているのですから、さぁお立ち会い! 

 

Photo_3朝日新聞デジタル 12月6日 秘密保護法案 条文解説ここが問題)規制の鎖、あなたにも

もちろん、本文には「逮捕される」も、ましてや「有罪」もありません。これが味噌です。ただ「捜査機関が訪れた」と記してあって、そこで寸止めです。逮捕まで書くとまるっきりの誤報だもんね。(笑)
そして「市民が不安だ。憲兵政治が戻ってくるぅ」と煽るわけです。
たぶん今回もこのていどのことはやるでしょう。

高市内閣が進める「国家情報局」は、日本のインテリジェンス(情報の収集・分析)を一元的に担う司令塔としての役割が期待されています。
現在の内閣官房に設置されている内閣情報調査室や警察の公安部門、公安調査庁など、複数の機関が持っているインテリジェンス機能をまとめ、強化する狙いがあります。
2026年通常国会で内閣情報調査室と内閣情報官を格上げし、「国家情報局」と「国家情報局長」を創設し、「国家安全保障局」と同格とする方針も示されています。
当然、この機関の根拠法であるいわゆるスパイ防止法も制定を急ぐでしょうから波乱が予想されます。

 

2025年10月24日 (金)

高市政権の外交安全保障政策

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いきなりトップスピードなのでたまげました。
自民-維新合意書は、きわめて明瞭、かつリルです。この1年間ゲル首相が昼寝をしている間に考えていたのでしょうね。
ゲル政権のやる気のなさはひどいもので、自公合意はたったこれだけです。

●自由・民主など基本的価値を共有する国々と連携を強化
●唯一の被爆国日本は軍縮・不拡散、平和構築などを主導
●日米同盟の向上、隙間のない安保体制を構築
●北朝鮮による拉致問題と核・ミサイル問題の解決

全部岸田政権からの引き継ぎですが、これすら真面目にやった気配がないまま1年間ボーっとしていました。
「唯一の被爆国」を言うなら核大国を目指す北朝鮮と対峙してナンボですが、ナニもやったフシがありません。
「日米同盟の向上」を積極的にした様子もありません。
中国のエージェント的体質の公明党など日米同盟が強化などされたら、チャイナさまから怒られてしまいますもんね。

拉致問題なんか手もつけませんでした。
これが国防が得意といっていた人の実績です。

石破政権はなにかをしたことではなく、なにもしなかったこのダメぷりによって記憶されるでしょう。
せめて80年談話を残したかったのですが、学生のレポートレベルですから、ほとんど無視されました。
いまさら猪瀬さんの本を読みましたでは、どーにもなりません。

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それに対して自維合意はきっちりとした骨格の上に載っています。
有り難いことに中国共産党が全文を網羅した資料をアップしてくれています。日本のメディアよりよほどまし。
资料丨《自民党 日本维新会 (全文)

①戦略3文書の前倒し改定
3文書はウクライナ戦争前に策定されたもので、現在はいっそう厳しさを増した国際情勢を目の当たりにしています。
改定は反撃能力の保有、防衛費の大幅な増額、を含んでいます。
いままでは2027年度までに防衛費と関連経費を合わせた予算水準を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針が掲げられ、5年間で約43兆円の防衛予算が確保されていましたが、これをさらに2年前倒しします。

「高市早苗首相が臨時国会で実施する初の所信表明演説で、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額する目標に関し、25年度中に前倒しして措置を講ずると表明する調整に入った」
(毎日10月22日)
高市首相、防衛費GDP比2%実現を表明へ 25年度中に前倒し | 毎日新聞

②防衛装備移転三原則の見直し
防衛装備移転における「5類型」の廃止。
5類型とは防衛装備品の海外移転を認める特定のカテゴリのことですが、現在、防衛装備品の輸出は、救難、輸送など、この5類型に当てはまるものに限定されていました。

しかし、今の増大する中国の軍事的脅威に立ち向かうためには、同盟国や友好国との協力関係を強化し、相互運用性や補完性を高めねばなりません。
そのために国際共同開発・生産や修理等の役務提供、部品移転の機動性を向上させようとしています。
これもどの国でもしていることですが、わが国は憲法の制約から専守思想に縛られてできないことだらけでした。
この改変は安全保障が大きな曲がり角に差しかかっていることを物語っています。
小泉ジュニアは泣いても笑ってもこの責務を背負わねばなりません。
頑張って下さい。これをやり遂げればカンペ男の汚名を挽回できますぞ。

③外務省に和平調停部署を創設
2025年度中に外務省に和平調停にかかる部署を創設する予定です。
外務省はこれまでも国連和平調停フレンズ・グループの閣僚級会合に参加するなど、和平調停の活動に政治的な支援を行ってきました。2010年に設立されたこのフレンズ・グループには、日本を含む53か国と8つの機関が参加しており、日本も積極的に貢献していく姿勢を示しています。今回設置される部署は、このような既存の取り組みをさらに具体的な形にするものと考えられます。

④垂直発射装置(VLS)搭載潜水艦を含むスタンドオフ防衛能力整備
原潜保有についてジュニアが口走りましたが、現実的とは思えません。
英国在住の元ジェーンディフェンス誌記者のティム・フィッシュ氏の見方を紹介しておきます。

「日本には攻撃型原潜(SSN)は必要ない。日本の海上安全保障上の主な脅威は中国と北朝鮮であり、両国とも地理的に極めて近い。海上自衛隊の通常動力の攻撃型潜水艦(SSK)は、日本海と黄海、東シナ海、南シナ海、さらには西太平洋、インド太平洋海域で活動するための優れたプラットフォーム(基盤)になっている。
新型のリチウムイオン電池と長時間潜航可能な非大気依存推進(AIP)機関を使うことで、日本の潜水艦は海洋上の重要水路、さらには中国や北朝鮮の海軍基地や港の外側に長期間にわたって居続けることができる。
また、関心を寄せている他の場所でも何週間も都合よく海上交通を監視することができる。議論の中心となるべきは、海自がより広範囲の地域をカバーするためにさらに多くのSSKを持つべきかどうかだ。こちらの方が、より金額に見合うだけの価値がある」
日本は原子力潜水艦を保有すべきかどうか 世界の海軍専門記者に聞いた(下)(高橋浩祐) - エキスパート - Yahoo!ニュース

⑤自衛隊の一元的指揮統制強化
自衛隊はすでに、より迅速かつ的確な意思決定と部隊運営を可能にするため、陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を2025年3月24日に発足させています。
これにより、厳しさを増す安全保障環境に迅速かつ円滑に対応することが期待されています。

・一元的指揮:陸海空3自衛隊の実動部隊を、強力な指揮統制権限を持つ常設の司令部が一元的に指揮します。
・日米連携強化:自衛隊と米軍の連携をさらに強める狙いもあり、日米の軍事一体化を指揮統制の面で深化させることも目的の一つです。
・迅速な意思決定:AIの導入などを含め、リアルタイム性、抗たん性、柔軟性を備えた指揮統制ネットワークを構築し、迅速な意思決定を目指します。

➅防衛関連国営工廠(こうしょう)と国有施設民間操業の推進
前述した「防衛装備移転三原則の運用指針」の5類型を撤廃し、防衛産業における国営工廠と国有施設の民間操業を推進する方針です。

・国営工廠: 国が直接、防衛装備品の製造や維持管理を行う施設です。明治時代には、国内に民間産業基盤が乏しかったため、陸軍工廠が設立され、兵器生産の中心的な役割を担っていました。
・国有施設の民間操業 (GOCOスキーム): 国が施設や設備を保有しつつ、その管理・運営を民間の事業者に委託する仕組みです。これは、防衛装備品を製造する企業が事業継続困難になった際などに、国が施設を取得し、民間へ委託することで生産基盤を維持する目的があります。
経済安全保障推進法においても、安定供給確保が困難な特定重要物資について、国が自ら必要な措置を講じ、その実施を民間事業者に委託することが規定されています。

⑦自衛官の恩給制度創設
自衛官の恩給制度は、共済年金制度への移行に伴い、昭和30年代に旧軍人以外の公務員が対象から外れて以降、現行の自衛官には適用されていませんでした。
小泉氏は、自衛官の募集環境が厳しい状況にある中で、防衛力の担い手である人材の確保が喫緊の課題であるとの認識を示しています。
そのため、従来の枠にとらわれず、恩給制度創設のような新たな検討にも取り組むことで、隊員の処遇や生活・勤務環境の改善、ひいては生涯設計の確立を目指すとしています。

⑧内閣情報調査室の国家情報局への格上げと国家情報会議の設置
⑨インテリジェンス・スパイ防止関連法制の策定

長くなりましたので、情報関係は一括して別記事とします。

2025年10月23日 (木)

高市内閣が始動開始

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高市内閣が始動開始しました。
一斉に動き始めたので動きを追うだけで大変です。私も政局はキライだとも言っておられません。

この船出についての世論調査が出ています。
皮肉にも、高市首相を陰に日向にディスっていた読売-日テレ系がトップです。

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日テレNEWS NNN

「高市内閣の発足を受けてNNNと読売新聞が行った緊急の世論調査で、高市内閣の支持率は71パーセントでした。
世論調査で、高市内閣を「支持する」と答えた人は71パーセント、「支持しない」と答えた人は18パーセントでした。
先月の石破内閣の支持率が34パーセントだったのに比べ、37ポイント高くなりました」
(読売10月22日)
高市内閣支持率71パーセント【NNN・読売新聞 緊急世論調査】(2025年10月22日掲載)|日テレNEWS NNN

共同は64.4%だそうで、だいたいこのあたりでしょう。
本来は年齢の偏りを補正せねばならないのですが、読売は年齢別も出しています。
若者から壮年にかけての圧倒的支持です。

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読売

「高市内閣を「支持する」と回答した人の割合を年代別にみると、18~39歳が80%で前回9月調査の15%から急増した。40~59歳でも75%(前回29%)、60歳以上でも63%(同50%)と大きく増えた。石破内閣は高齢層からの支持が比較的高かったが、高市内閣では逆に、若年層が支持を先導している。若年層の支持が多い傾向は、最近では第2次安倍内閣の支持動向に近い。
男女別でみると、「支持する」と答えた男性は71%で、女性は72%だった。前回調査では男性30%、女性37%で、今回は男女がほぼ並んだ」
(読売10月23日)

高市内閣で「若年層」の支持急増、18~39歳は石破内閣の15%から80%に…読売世論調査 : 読売新聞

内閣人事は、あくまでも権力基盤が固まっていない今はこうなるしかないという布陣です。
気になっていたのは、例の公明が13年間も独占して我が世の春を謳歌していた国交大臣です。
国交を明け渡したために尖閣に灯台ひとつ建てられず、海保もギリギリの対応に抑制されてきました。
また農水に並ぶ利権がらみのポストなので、聖教新聞には大手ゼネコンの広告がデカデカと載ることになります。

これを奪還しただけで、ありがとう、公明さん政権離脱してくれてですが、ここには福田康夫改造内閣で国交大臣の経験がある金子恭之氏が就きました。
かつての所属は岸田派(旧宏池会 )です。
ぶっちゃけ、林芳正氏を総務大臣に起用したのと同じように、旧岸田派にも人質を出してもらった見返りに重量級のポストを差し上げたたということです。
まだなんとも評価しようがありませんが、13年間停滞していたポジションを建て直して下さい。
金子恭之 - Wikipedia

総裁選を争った小林鷹之氏は政調会長という党側の政策の要に抜擢されました。
実務能力がきわめて高い人なので適任でしょう。
茂木敏充氏は外務大臣で、いまこれ以上バッチリな政治家はいないと言えるほど適任です。
茂木氏は米国のUSTRと専門的交渉を英語でできる人ですが、TPP交渉ではUSTRをして「タフネゴシエーターだ」という賛辞をもらった人です。

注目すべき対中姿勢は、きわめて原則的で安心して任せられます。

2021年3月16日防衛大臣岸信夫と共に米国務長官アントニー・ブリンケン同国国防長官ロイド・オースティンと外務・防衛の閣僚協議である2プラス2に臨んだ。会談では中国の海洋進出やウイグルでの人権問題に懸念を表明し、また日米同盟の抑止力や対処力を一層強化していくことで一致し、両国が主導する形で、「自由で開かれたインド太平洋」を維持・発展させていく重要性を確認した」
茂木敏充 - Wikipedia

小泉進次郎氏は防衛大臣です。
今回一番心配な人事ですな(笑)
いきなり安保3文書改定という大仕事が待ち構えていますが、そこが試金石でしょう。

「小泉防衛大臣は政府が2022年に策定した安全保障関連の3文書の見直しについて「検討する必要がある」と述べ、前倒しての改定に意欲を示しました。(略)
具体的な時期については明言を避け、「高市総理とよく相談して進めたい」と述べるにとどめています。
また、▼戦闘を目的としない5類型の武器に限って輸出を認めるルールの撤廃については、「防衛装備移転をさらに推進していくことが必要」だと強調しました。
▼さらに次世代の動力を活用した潜水艦の保有に関して「原子力が含まれるか」を問われた小泉大臣は、「あらゆる選択肢を排除せずに、抑止力・対処力を向上させていくための方策について検討していきたい」と話しました」
(TBS10月22日)
小泉防衛大臣 安全保障関連3文書の前倒し改定に意欲「検討する必要がある」(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

安全保障環境は前回の2022年時から大きく変化しています。
2022年の見直しでは、主に以下の点が強調されました。

 

  • 反撃能力の保有:相手からの武力攻撃を阻止するための「反撃能力」の保有が明記されました。これにより、従来の専守防衛の範囲内での対応から、より積極的な抑止力を構築する方針が示されました。
  • 防衛費の大幅な増額:2027年度までに防衛費と関連経費を合わせた予算水準を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針が掲げられ、5年間で約43兆円の防衛予算が確保されました。
  • 防衛装備移転三原則の見直し:防衛装備品の海外への移転に関する制度の見直しが検討されることとされました。これは、国際協力や同盟国への支援を通じて、日本の安全保障環境をより良くするための政策手段と位置づけられています。
    安全保障関連3文書改定と防衛政策の大転換 | 一般社団法人平和政策研究所

2022年時の3文書は当時画期的なものでしたが、ウクライナ戦争が勃発したことによりいっそう厳しさを増しています。
ウクライナ戦争は、今まで現代において大国の侵略はありえないという認識を打ち砕きました。
朝日社説はあいかわらずこんな9条教定番でディスっています。

「日本のありようにかかわる重いテーマが多く、国民の幅広い理解を得る丁寧な手続きもなしに、性急に実行に移すことは許されない。
例えば、防衛費のさらなる増額を念頭に置いた安保関連3文書の前倒し改定や、武器輸出の対象を絞っている5類型の撤廃を明記。外交のビジョンは示されておらず、軍事力偏重は明らかだ。個人の思想・信条を侵害しかねないスパイ防止法策定にも触れた」
(朝日社説10月22日)
(社説)高市内閣発足 急進的な「改革」姿勢への危惧:朝日新聞

なにが「軍事偏重」だ。バカですか。辞めた峯村さんに聞いてみな。
朝日さんは、維新の12条政策要求に合意したことで、一気に「急進的改革」をやるつもりだと叫びたいようですが、できるわけないじゃないですか。

いかに高市さんが実務能力が特級だろうと法案作るだけで半年から1年はかかり、さらに国会審議で同じくらい。
圧倒的多数を押さえた安倍政権ですらそのくらいかかっているのですから、少数与党の今はもっとかかるかもしれません。
強弱をつけて順番で片づけていくしかないのです。
維新もなにかというと、野党スタイルで、すぐやってくんないと離脱だ、なんて子供じみたことを言っていますが、今回の組閣には満足の様子です。

「片山さつき財務相には日本版DOGEというべき「租税特別措置補助金見直し担当大臣」を兼任させ、厚生労働相には「労働時間の規制緩和検討」を指示。法務相には「不法滞在対策の強化と出入国の管理徹底」を求めた。国家安全保障担当の首相補佐官には尾上定正元空将を起用し、さっそく藤田文武日本維新の会共同代表が「素晴らしい人事」と呼応する」
(滝田陽一フォーサイト10月22日)

「サナエノミクス実行内閣」スタート地点の市場環境は「大混乱シナリオ」を遠ざけている:滝田洋一 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト

非常にやりたいことが手にとるようにわかる内閣です。

2025年10月22日 (水)

高市政権出発

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速報したとおり、高市早苗政権が正式に成立しました。
ただし衆院では僅差で過半数を獲得したものの、参院では1回目の投票で指名を決められず、決選投票までもつれ込みました。

「衆院の指名選挙で、首相は自民と維新、さらに無所属議員が加わったことで過半数233を上回る237票を獲得。僅差ながら決選投票を経ずに首相に指名された。
ただ、参院では少数与党の厳しい現実に直面した。1回目の投票では、与党の計119(自民100、維新19)に4票積み増して123票を得たものの、過半数124に1票届かなかった」
(産経10月21日)
「これから大変だろうな」 高市政権に少数与党の現実…際どい票差の首相指名選挙 - 産経ニュース 

あらたな閣僚が任命されました。

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【詳報】高市氏が女性初の首相に「決断と前進の内閣」「困難な船出」 [高市早苗総裁 自民党総裁][自由民主党(自民党)][日本維新の会][公明党]:朝日新聞

冒頭の記者会見ではこのような発言をしています。

「首相は21日深夜の初閣議で経済対策の策定を指示。これに先立つ就任記者会見で「物価高対策をしっかりと講じる」と強調し、ガソリン税の暫定税率廃止法案の成立や「年収の壁」の引き上げに意欲を示した。
さらなる防衛力強化のため、国家安全保障戦略など安保3文書の改定作業に着手するよう指示すると語った。早期の衆院解散・総選挙は「経済対策最優先で取り組む。いますぐ解散と言っている暇はない」と否定した。
首相は全閣僚への指示書で「責任ある積極財政」の考え方で戦略的な財政出動を行うと明記した。法相には不法滞在対策の強化と出入国の管理徹底を求めた」
(産経10月22日)
高市首相、就任記者会見で安保3文書の改定表明 全閣僚に「責任ある積極財政」を指示 - 産経ニュース 

まさにこれからの困難さを予想させる如き船出です。
石破氏が歴史的大敗してくれたおかげで、今後、すべての国会運営にこのねじれた数字がつきまといます。
衆院は景気対策を打った後の早期解散でが期待できますが、参院は内閣の意志で解散できず3年に一回の改選ですのでとうぶん苦しむことになります。

またメディアは総攻撃をしかけてくるでしょう。
いや、すでに総裁選出時からそれは始まっています。
しかしある意味、これは想定内。彼らに叩かれなくなったらお終いです。

高市さん、しぶとくしたたかに、そして笑顔を絶やさずに頑張って下さい。

 

 

 

2025年10月21日 (火)

速報 高市氏、首相に選出される

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高市早苗氏が、一回目の投票で過半数を征して、第104代首相に正式に就任しました。

「衆院は21日午後、本会議で首相指名選挙を行い、自民党の高市早苗総裁を憲政史上初の女性首相となる第104代首相に選出した。
首相指名選挙は高市氏が過半数(233議席)を上回る237票を獲得し、決選投票に進むことなく首相指名が決まった。参院本会議でも首相指名選挙が行われるが、衆院と異なる議決となった場合も最終的に衆院の議決が国会の議決となる」
(産経10月21日)
高市早苗氏を第104代首相に選出 憲政史上初の女性宰相へ - 産経ニュース 

また出てきたトランプのウクライナ領土割譲

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今夜、高市氏が首班指名されることは確実となりました。
高市さんの首相姿を見れることもさることながら、ゲル政権の岩屋氏や村上氏などのメンツを今日限りで見ずに済むのが清々しい。
さよ~なら~。二度と戻ってくるなよ~。

さて、トランプが訪米中のゼレンスキーにまたもや領土割譲を迫ったようです。
また怒鳴ったというのですから、なんともかとも。
コッチにふらふらアッチにふらふら。弱きをくじき、強きにすり寄るこの人物らしい。

「英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は19日、トランプ米大統領が17日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した際、プーチン露大統領が主張するウクライナ東部ドンバス地方の割譲に応じるよう迫ったと報じた。トランプ氏はゼレンスキー氏を罵倒し続けたともされ、米露首脳会談を前に、戦闘を早期終結させる条件整備を急いでいるとみられる。
報道によると、プーチン氏は16日のトランプ氏との電話会談で、ドネツク、ルハンスク両州を指すドンバス地方の割譲を改めて要求。見返りとして、南部ザポリージャ、ヘルソン両州のうち、ロシア軍が掌握する一部地域を放棄する考えを示した。(略)
FTは複数の関係者の話として、トランプ氏が17日にホワイトハウスで行われたゼレンスキー氏との会談で、この条件をのむようゼレンスキー氏に求めたと伝えた。受け入れなければ、プーチン氏がウクライナを「破壊する」と脅した。

会談は「どなり合い」となり、トランプ氏はウクライナ側を「終始ののしっていた」という。ウクライナ側が戦況を説明するために用意した地図も横に押しのけ、「うんざりしている」と述べたとされる」
(読売10月20日)

トランプ氏、ウクライナに領土割譲迫る…FT「ゼレンスキー氏を罵倒し脅迫」 : 読売新聞

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米、再び姿勢転換? ウクライナへのトマホーク供与見送りの背景は | 毎日新聞

なにが「領土割譲を受け入れなければロシアはウクライナを破壊する」だ、もうとっくに毎日ドローンの大群で民間人住宅地を爆撃し続けているではないですか。なにをいまさら。

トランプが考えている和平案とは、要するにウクライナが4州を割譲する状固定のことです。
特に焦点はドネツク州です。
下図はIWSの最新の戦況図ですが、4州で占領が官僚しているのはルハンスクくらいなもので、ヘルソンもザポリージャもドネツクもいずれも広大な非占領地を残しています。
この位置で前線は固定しており、一寸も占領が進行していません。ロシア軍はひたすら虚しく屍の山を築くだけです。
ここにはウクライナが築いた世界最強の防衛戦が存在するからです。
ですから「4州の割譲による和平」とは、テイのいいロシアの侵略を完成させよ、ということなのです。

20251021-004927

読売新聞

またもやブタペストで和平会談をしたいんだそうです。
かつて「ブタペスト覚書」というイカサマがあったのですよ。
その昔、きみの国の安全は僕ら西側も守るからね、と言って核を放棄させ、ブタペスト覚書を結ばせて、結局裏切ったのはどこの誰なんですか。
やや長いですが、今のトランプ和平前に一度ちゃんと読んでいただきたい文書です。
ウクライナフォーラム「存在しなかった安全」ブダペスト覚書署名から24年

よもやもう一回こんなことを繰り返すんじゃないでしょうね。

ウクライナほど小国の悲哀を舐めた国はありません。
長年に渡ってロシアの支配を受け、ソ連時代には一共和国にまでなっており、ソ連崩壊後やっと取り戻した独立も、親露派が先遣を握っていました。
ソ連崩壊時、唯一ウクライナに残されたものが膨大な核兵器とその発射基地でした。
これを核拡散と見て、主要国は揃ってとりあげようとしたのです。
それがブタペスト覚書です。

ウクライナは核を手放さざるを得なかったことをいまだ悔いています。
それは核の脅迫をしてくる相手が嘘つきで名高いロシアだということもありますが、いまひとつはかつて核保有量第3位だったウクライナが、それを手放すに当たって結ばれた1994年のプタペスト合意を反故にされた苦い経験があるからです。
ブタペスト合意は西側とロシアが作ってウクライナに因果を含ませて飲まして結ばせたものですが、そこで約束されていた独立と主権の保護は以後まったく省みられることなく、ゴミ箱に入れられてしまいました。

親露政権を倒した直後の不安定期に、クリミア侵攻が起こり、さらにほぼ同時に東部2州での独立分離紛争が勃発しました。
露骨な侵略です、しかもミンスク合意の明白な違反ですが、軍隊で占領してしまえばこちらのものというロシア流儀が勝って、結ばされたのがミンスク合意でした。
これには西側陣営も関わったにもかかわらず、事実上ウクライナ領の分割を容認してしまう不平等なものでした。
ドネツク、ルガンスクというロシアの息がかかった東部2州に「特別な地位」を恒久法で保証しろだなんて、ウクライナ分割そのものです。
西側諸国は、よく恥ずかしげもなく、こんなものをウクライナに呑ましたものです。
口にはしませんが、ウクライナの西側諸国への不信感は根強いはずです。

そしてクリミアを侵略された後に西側が仲介策として言い出したのが、2014年のミンスク議定書です。
ここでも「ウクライナの中立化」を求めるプーチンの要求で、それを尊重して結ばれたのです。

ドネツクの戦闘激化を鎮めるために作られ、ロシアとウクライナ、そして西側諸国(欧州安全保障協力機構・OSCE)の三者で成立したものでした。
内容は、2015年1月までの停戦とウクライナ東部とロシアに緩衝地帯を作ることが骨子でした。

ところが、このミンスク合意は直ちに失敗し、親露勢力はドネツクで戦闘を再開しています。
ですから、この「ウクライナの中立化」とは、親露勢力に占拠されていた東ウクライナ2州を事実上分離独立させることで、ロシアの思い通りにすることになったのです。

いったい何番煎じですか。プタペスト合意、ミンスク議定書、そして今回はトランプ合意とでも名付けるんでしょうかね。
いつもいつもよくもそう同じ手でウクライナをだましてきたもんです。

 

2025年10月20日 (月)

一気に12項目が決まるわきゃないでしょうに

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維新と高市氏との政権交渉が進んでいますが、なんか勘違いされているメディアも多いようです。
吉村氏はこんなことを言っています。

「この日、日本維新の会の藤田文武共同代表が自身のXを更新し、一部メディアの記事をアドレスを添付しつつ「大間違いの記事です」と強く内容を否定した。そして藤田氏はこの記事の一部を引用。そこでは、藤田氏が16日に自民党高市早苗総裁と行った政策協議について書かれており、藤田氏側の当初の主張内容や、高市氏側の対応、それを受けての吉村氏の指示などについて記されて、さらに「維新幹部」という人物のコメントも書かれている。
藤田氏は同記事の当該部分を添付し「維新幹部って誰?相手の名誉のためにも言いますが、ここの部分の記載は『全部』間違いです。政策協議は12項目を同時に提示し、どれも重要で大きなアジェンダ。もちろん議員定数削減もはじめからかなり強く主張。メディアが勝手に交渉項目の濃淡を決めないでください」と記した」
(日刊スポーツ10月19日)
吉村洋文氏が一部記事に苦言「メディアって、ホント適当」藤田共同代表も「誤報レベルの記事」(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース 

そして必ずこういう下司の勘繰りがくっついてくるからイヤです。

20251020-015602

「ある立憲幹部は「目をそらさせるため」と分析しています。
何から目をそらすのか。今回の連立協議で一番の焦点となっている「企業・団体献金」から、です。
自民と連立協議を維新が進める中で、他の野党から維新に対して公明党が連立離脱したきっかけとなった「企業・団体献金の規制」に“維新は取り組まないのか!”と批判を受けました。国民民主党の玉木代表は「政治とカネに厳しい公明党が自民党から離れ、政治とカネに甘い維新が自民党にくっつくということだ」と批判していました。
そうした中で吉村さんが急きょ、打ち出したのが、この「議員定数削減」でした。こういった経緯からある野党幹部は「自民党が一番嫌がる『企業・団体献金』の問題から目線を『議員定数削減』にそらすための戦略だろう」と指摘しています」
(日テレ10月17日)
【解説】絶対条件に「議員定数削減」を強く主張…維新の狙いは? 自民・維新の連立協議、2日目も合意至らず(日テレNEWS NNN) - Yahoo!ニュース

今回公明が連立離脱した時の読売・日テレ系のはしゃぎぶりは異様なほどでしたが、おいおいまだ眼が曇っているのですか。
12項目が一気に可能なわけがない。
維新は全部やりたいのでしょうが、それには強弱があり、自ずと早い遅いの順番が存在するのは当然です。
要は塩梅なのです。

たとえば、維新は食品の消費税率0%を主張しています、そんなこと直ちにできるわきゃない。
仮にひとつのスーパーでやコンビニで買い物をしても、これは消費税10%、これは食品だから0%と仕分けて清算しなければなりません。
とうぜん制度設計上も簡単ではなく、しかも消費現場の事業者側の負担が大きすぎます。
これなら一律で下げたほうがましです。

議員定数は最高裁の違憲判断がでていますから、いずれしなければならないのですが、議員の直接の利害が絡まるので至難です。
小選挙区定数削減のほうがよほど実現しやすいとはいえますが、これは小選挙区での勝算を初めから捨てている百田党、参政党、もはや消滅寸前の社民党、共産党、そしていまや小選挙区からの撤退を噂されている公明党には厳しく出るでしょうから大反対するでしょう。
ですから、諸方面をなだめすかしながらジワジワやるしかありませんから当座は玉虫色で始めて、政権入りしてから互いに生みの苦しさを味わいながら変えていくしかないのです。

野党気分で言い放しじゃなくて、政権党として共に苦労しろよということです。
逆に高市さんにいきなり100点満点を求めるなということです。

宮家邦彦氏がこんな含蓄のあることを述べていました。

「選挙に勝つ戦術と統治を行う戦略は異なる。高市総裁は「統治」にギアシフトし、現実に応じて、必要であれば「君子豹変」すべきではないか。高市氏を支持してきた人々も、そうした「豹変」を「統治に不可欠」として受け止めてほしい。今の日本の保守政治を守る首相は彼女しかいないのだから…。」
(産経2025年10月9日)
高市新総裁、君子豹変せよ | キヤノングローバル戦略研究所

まことにそのとおりです。

 

 

2025年10月19日 (日)

日曜写真館 じわじわと煙のにほふ秋の暮

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ようらくと見れば水なり秋の暮 永田耕衣

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うどん煮て山家は秋の夕餉時 村山故郷

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さゞ波の絶えざる瀞や秋の暮 渡邊水巴

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なほさきの燈の浜いづこ秋の暮 山口誓子

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ひややかな空気が動く秋の暮 日野草城

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秋夕焼わが溜息に褪せゆけり 相馬遷子

2025年10月18日 (土)

維新政権合流決定・政界再編始まる

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まだ「高市政権」が始まらないうちに一気に政界再編が開始されました。
再編の勝ち組負け組が、残酷なまでに決まってしまいました。
いうまでもありませんが、勝ち組は高市総裁と維新であり、負け組は自民党リベラル派と立憲、そして国民民主、公明党です。
特に悲惨だったのは、惑乱状態に陥った玉木氏です。

「自公連立が決裂後、国会首相指名選挙に向け、立憲民主党が玉木氏を首相候補とする案も掲げて立国維3党集結を持ちかけた。「玉木雄一郎首相」の可能性が取りざたされ、時の人に。「総理大臣になる覚悟はある」と連発する一方、立憲に基本政策の一致が不可欠と迫り、時間が経過していた。
玉木氏は配信の中で「びっくりしたのは」として、直前まで3野党代表会談に維新・藤田文武共同代表も出席していたことを挙げ「なんだ自民党と連立握ること決まってたのかみたいな感じで。二枚舌みたいな感じで扱われて、ちょっと我々としては残念」と語った。
維新に対して「高市さんになっても結局連立まっしぐらだったのか」「したたかでも何でもいいけど、党の考え方でいいんですけど、だったら早く言ってよ」「公党間の話なので、出し抜いたり騙したりするみたいなことは、やめたほうがいい」と不快感を示した」
(デイリー10月16日)
【高市自民】X荒れる「維新に出し抜かれダサい」「判断が遅い!」玉木代表、維新に騙された愚痴配信が炎上 総理と言われ時の人も→グズグズして終了「優柔不断」「維新のせいは違う」「メトロノーム」「自分見失ってる」2千コメ殺到(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

大丈夫ですか。ここまで醜態をさらすと次はなくなりますよ。
私はそれなりにこの人を買っていたのに、これでは救いようがない。

榛葉さん、党首をはがい締めにしてでもこの状況でしゃべらなくしたほうがいい。致命傷になりますよ。

要は立憲が招集した3者協議に維新もいたのに、片方で自民との連立協議も進んでいやがったのかぁ、ということにすぎません。
あたりまえでしょうが、そんなこと。玉木さんあなた政治家の看板よくぶら下げていますね。
かんじんな「我々はこうする」という基本方針なきままにアッチコッチに秋波を送ればこうなるのはあたりまえです。

自分を高く売ろうと色気を出して、立憲との協議に乗った段階でアウトなんです。
自分らを高く売りたいんだったら、せいぜいが立憲とはフェイント程度で深入りしないことが大前提でした。
それを「首相になる覚悟」とかメディアに褒めそやされてその気になってしまったんですから、なんつう奴っちゃ。
本命は高市政権入り、芳野のオバさんがなんと言おうと、入ってしまえばいいのです。
あくまでも国民民主は有権者に信任された独立した党であって、連合のシモベではないんですから。
どうせ怒られるでしょうが、連合にとっても政権内部に「連合政治代表部」があった方がなにかと有利に決まっているのですから、居直りなさい。
官公労や日教組などの極左は怒り心頭でしょうが、なに自動車総連や電気労連が守ってくれますって。

一方維新は初めから連立に入る気はあったのです。
だから維新は早々と連立を見越して、国対委員長に遠藤氏というネゴシエーターを据え、連立が浮上する2日前から、自民の梶山国対委員長と折衝をおこなっていました。

「自民党の梶山弘志、日本維新の会の遠藤敬両国対委員長が14日、東京都内のホテルで会談したことが分かった。臨時国会で行われる首相指名選挙での連携を模索するとみられる。
(産経10月14日)
<独自>自民、維新の国対委員長が都内で会談 首相指名選挙巡る対応協議(産経新聞) - Yahoo!ニュース

この時点で自民は連立提案をしており、遠藤氏も悪い顔はしなかったはずです。
こういう感触があったから、高市さんは公明離脱をむしろ追い風と捉えて、動揺の色も見せなかったのです。
一方維新も政権入りを阻んできた公明という壁がなくなったことを、絶好の好機だと捉えたのでしょう。

にもかかわらず、国民民主は信じがたいことに、どうやら本気で立憲と元の鞘に収まることを夢想していたようです。
悲しいくらいによく言ってナイーブ、ハッキリ言って政界にいるべきキャラではありません。

藤田維新代表は、16日の街頭演説でこのような「勝利宣言」を上げています。
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藤田維新共同代表の街頭演説

高揚感あふれるいい演説です。

「確かに、自民党と連立を組んだ過去には失敗もあったかもしれない。
でも、それでもいい。
国民のために、この腐った政治を変えたい。自民党が続けてきた惰性の政治を、今こそ変えられるかもしれない。
だからこそ、(高市氏は)「みんなでリスクを取ろう」と言ってくれた。「次の選挙のことなんか気にせず、大義のためにやろう」と。
ほぼ全員の議員が熱く語ってくれました。私はそんな仲間を誇りに思います。
だからこそ、皆さんのご期待を受けて、自民党の芯を叩き直す。
そして、真に国家・国民のための政治を実現する。
その決意を、今日この場にお越しの皆さんに力強く伝えたい。
もう一度、この東京・新橋から狼煙を上げさせてください」
【LIVE配信】~維新再生~10月16日(木) 18:30~ JR新橋駅SL広場前【街頭演説】

一方は頭を掻きむしって惑乱し、よせばいいのになにをトチ狂ったのか公明と会談した、いっそう傷を深くしました。
こんな時期に公明と接触して何になるのでしょうか。政治勘がなさすぎます。
維新が勝利宣言し、2つのポストを得て政権与党になろうと言うときに、崩壊が決定づけられた公明と協議して何になるのか。

維新は議員定数削減を絶対条件だとしていましたが、自民は初めはむずかしそうな顔をしながら軽々と呑んで見せました。
企業・団体献金は簡単に呑めませんが、定数削減なんぞなんのその。
そして同時に、藤田氏は首相指名選挙を巡る立民、国民民主両党との協議について「野党側の連携は難しい。これ以上続けるのは失礼」として打ち切る考えを示しました。

絶妙なタイミングです。
これで立憲はいかなる方法をもってしても「野党野合政権」を樹立する可能性がなくなりました。
メディアさん、反自民政権に向けての必死の応援でしたが、残念でしたね。
自民は過半数まであと1議席ですから、無所属の「「有志・改革の会」の7人のうち何人かを連れてくればいいだけです。
立憲は21日の首班指名のための国会招集には応じない、なんて子供のようなことを言っていますが、恥の上塗りですからお止めなさい。

「自民党と日本維新の会は17日、連立政権樹立に向けた2回目の政策協議を国会内で開催した。自民は維新が連立の「絶対条件」と位置付ける国会議員定数の1割削減について受け入れる方向で調整に入った。維新の藤田文武共同代表は協議後の記者会見で「今回の協議で大きく前進した」と述べ、最終調整を進める考えを示した」
(産経10月17日)
自民、議員定数1割削減受け入れで調整 維新・藤田代表「大きく前進」 - 産経ニュース

この攻防の結果起きた政界再編は、政権発足後まで響くでしょう。
ああ後、維新さん、あの小うるさい元オーナーは黙らせて下さいね。

なお維新の12の要求項目は以下です。
実によくできています。シンジローもパクるならこれをパクればよかった。
「改憲条文案の国会提出」「議員定数1割削減目標」維新から自民への12項目の要求全文 - 産経ニュース

 

2025年10月17日 (金)

玉木氏の「みっともなさ」とは

058

国民民主は限界をさらけ出してしまいました。
いえ、メディアから「首相になる覚悟がない」と迫られたことじゃありません。
あんなことは野党野合政権を作りたいだけですから、言わしておけばよいのです。

維新は思い切った飛躍を遂げて、一気に政権に参画の道を選択しました。
それに対して玉木氏は嫉妬に近い感情で怒りをぶつけて、立憲にこうなだめられる始末です。

20251017-004527

産経

「2つの協議をてんびんにかけたような維新側の行動に対し、玉木氏は15日のYouTube番組で、「つい数時間前まで(維新の)藤田(文武)共同代表と野党の統一候補を目指して真剣に議論していた」と振り返り、「二枚舌みたいな感じで扱われて残念だ」と、恨み節のような言葉を口にした。
泉氏は、Xで「玉木さん、維新に愚痴を言うのはやめよう」と呼びかけ、「『二枚舌』だと文句を言っても、どの党も様々な選択肢を天秤に、勝負をかけていたはず。主導権を握れなくても、それは自分の責任です。私はそう思う。でも今後も努力は続ける。ガソリン暫定税率廃止や政治改革の実現へ」と、なだめるようにつづった」
(日刊スポーツ10月16日)
立民幹部が「二枚舌」発言いさめる 国民・玉木雄一郎代表の恨み節に「愚痴を言うのはやめよう」(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース

維新の吉村氏からもアホかといわんばかりです。

「自民党と連立を見据えた政策協議に入る日本維新の会を「二枚舌」と批判した国民民主党の玉木雄一郎代表に対し、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は16日、「他党を批判するよりは、自党の政策をどうやって実現するのかに注力された方がいいんじゃないか」と苦言を呈した。府庁で記者団の取材に語った」
(産経10月16日)
「自党の政策実現に注力されたら」吉村氏苦言 「二枚舌」と維新批判の国民・玉木氏に - 産経ニュース

ああ、みっともない。玉木さん、男を落したね。
政治的修羅場の役者じゃないってことがバレちゃいました。

立憲に政策の原則をつきつけたところまでは玉木氏の対応は正解です。
たとえば立憲沖縄は「オール沖縄」の中心に居て、共産党と共闘してしつこい反基地・反自衛隊活動をし続けています。
自衛隊のエイサー大会出場すら反対したような狂奔ぶりです。

こんな立憲と組めるはずがない。しかしそんなこと、とっくにわかってたんじゃない。
彼らと政権を組んでも、安全保障政策が破綻するのは目に見えています。
玉木さんにとって立憲はかつての民主党政権を作った「同志」ですから、民主党政権でその眼でイヤというほど見たでしょう。
その総括から国民民主は生まれたはずです。
安全保障とエネルギー政策は政権の脊椎なのです。

だからこう言うのはわかる。

「一応、継続協議になっている。最後までいろんな可能性を探るが、立民は(「違憲部分の廃止」を主張している)安全保障関連法と憲法の整合性についてきちんと結論を出すべきだ。旧民主党政権では沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、社民党が連立を離脱し、政権が不安定化した。安全保障は国家や国民を守ることであり、寸分のすきも許されない。根っことなる法体系が憲法に違反していると言っていては政権は担えない」
(産経10月16日)
国民・玉木代表「自維連立驚いた」「政策一致要求は綺麗ごとでない」 インタビュー詳報 - 産経ニュース

ならば、いまさら立憲と政権協議なんぞやっている暇はなかった。
玉木さんを首班にするなんて安住センセが言おうと、本音は玉木と呼び捨てにして、政権さえ取っちまえば、多数で言うがままにするということなんて分かりきったことでしょうに。

高市氏は非常に率直に政権参画を要請しているのです。いままでの自民にありがちな寝業もなにもない。
たぶん財務大臣くらいのポストは得られたはずです。
ならば受ける側は、政策実現を目指して維新のように政権参入するか、閣外協力するかの2択しかなかったはずでした。
しかしそれもできないで、維新に恨み言を言ってそこをぼやかしてしまっている。

結局、ここにきて国民民主の本質である「労組政治部」である弱みがでたのです。
支持母体である連合は国民民主の政権入りに反対しています。

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連合・芳野会長
読売

「連合は、支援する国民民主党が自民党との連立政権に入らないようけん制を強めている。3期目の続投が決まった芳野友子会長は8日の記者会見で、国民民主の連立入りについて「容認できないスタンスに変わりはない」と強調した。
連合では、今月1日にとりまとめた参院選の総括文書でも、国民民主の連立入りは「看過できない」とクギを刺した。連合幹部は「連立入りなら組織内議員を引きあげることも議論しないといけない」と語る」
(読売10月9日)
連合、国民民主党の連立政権入りをけん制…芳野会長「容認できない」:写真 : 読売新聞

連合は、自治労、日教組を中心とする総評系(旧社会党系)と、自動車総連、電力総連、電機連合、UAゼンセン(サービス業)を中心とした旧同盟系(旧民社党系)で、ひとつの団体とも思えないほど体質も考え方も違っています。
自治労、日教組は極左、民間労組系は自民党支持です。

芳野氏はUAゼンセン出身ですが、反共の闘士であると同時に、この産別特有のイオン岡田一族の影響下にあるといわれています。イオンは立憲岡田氏の実家ですね。
そしてもちろん旧総評系も自民との連立に大反対です。
ですから、ここで国民民主が自民党と連立を組むと連合が持たないのです。

こんな御家の事情に左右されて、玉木ハムレットを演じるはめになったのでしょう。
「支持団体」というスポンサーに支配されている国民民主の泣きどころです。
こんな状態で連立を組んでみても、公明党が創価学会会長の「高市とは組むな」のひとことで連立離脱に至ったように、不安定で見ていられません。

 

コメントが入りにくくなっているようです。すいません。
ニフティがへんなアルゴリズム使っているようで、なんとこの私さえ弾きます。気長に入れて見てください。

2025年10月16日 (木)

維新と連携、これで政局はお終い

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とにもかくにも自民党を野党に追いやり、立民を中心とした野合政権に花をもたせたいだけ一心のメディアは連日お祭りをしています。
昭和の妖怪・小沢一郎まで暗躍して、ああこの懐かしいような腐臭。

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しかし祭りには終わりが来るのですよ。
恥も外聞もなく、「キレイゴト抜かすな、玉木」と言ってしまう安住氏に対して、高市氏が妙に落ち着いて、自民の執行部体制を整え、いまや組閣の準備すらしているのをヘンだと思わないんでしょうか。
それは高市氏が、維新との連携に充分自信があるからです。

「「本音ベースで連立含みの協力をお願いしたい」。高市氏は、維新の吉村洋文代表に呼び掛けた。維新に先立ち会談した国民民主党の玉木代表にも連立を視野に入れた連携を求めたが、会談のために大阪から上京した吉村氏にはより踏み込んだ表現で打診した。吉村氏は会談後、記者団に「高市氏の熱意を感じた」と振り返った5
(産経10月15日)
自民・高市総裁、首相選出へ前進 政策協議入りで合意の維新・吉村氏「熱意感じた」 - 産経ニュース

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産経

そう二人して関西弁で「本音ベース」で話たらよろしい。
元来、維新は自民と連立を組みたかったのです。
いま大成功の下に終わった関西万博も、安倍氏の頃から国費を投じて応援してきたからこそうまくいったというのを、吉村氏はよく理解しているはずです。
菅元首相はこう言っています。

「(2025年開催の大阪・関西万博について)国を挙げて取り組むべきだ。日本が世界との争いの中で投票で勝ったわけだから、建築工事が遅れるとか、そういうことはあってはならない。国としての責任がある」
(朝日2023年10月7日)
菅前首相、万博は「国挙げて取り組むべきだ。遅れあってはならない」:朝日新聞

菅氏と維新との繋がりは深く、菅氏が退任した時には維新代表の松井氏は泣かんばかりでした。

「菅義偉首相が事実上の辞意表明をしたことで、日本維新の会は、看板政策を推進する上で命脈だった政権中枢との太いパイプを失うことになる。菅氏と「蜜月関係」にあった維新の松井一郎代表(大阪市長)は3日、「大阪の成長は我々だけではできなかった」と影響力の大きさに言及した。政権の後ろ盾を得て大阪府・市の政策を進めてきた維新も岐路を迎える。
松井氏は記者団に、昨年以降、ワクチン接種や抗体カクテル療法の推進など新型コロナウイルス対策で菅氏に個人的に要請を重ねた関係の深さを披露し、「総理と自治体の長としてコロナ対策で連絡を密にしていた」と強調。2025年大阪・関西万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)を挙げ、「大阪が良くなることは日本の利益につながるというスタンスで仕事をされていた」
(毎日2021年9月3日)
菅首相と「蜜月」、維新が迎える岐路 万博やIR誘致の後ろ盾失う | 毎日新聞

維新は、国政に太いパイプがなければ地方行政は進まないという事実を、関西万博やコロナ対策、ワクチン、今後のIR建設、大坂副首都構想などでイヤというほど知っていました。
政権参画には元々大いに維新は色気があったのです。
ですが国政参加には壁がありました。
それが公明党です。

連立離脱について、メディアは負の側面ばかりが強調していますが、違うでしょう。
まず公明=創価学会がいたために自民を公然と支援できなかったモロモロの宗教団体や政治団体は、連立離脱を拍手しているはずです。
そして今回の総裁選で高市氏に入れた膨大な党員・党友はほぼ100%公明が大嫌いです。
逃げた保守層の支持回復のきっかけになるでしょう。

この支持によって、公明という足かせがはずれ、政策面でも一気に保守への刷新が可能となりました。
そのためにはあたりまえですが、政権を発足させねばなりません。

 

2025年10月15日 (水)

ガザ戦争、人質完全解放される

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日本の政界とメディアが高市さんにいじめに狂奔している間も、世界は回っています。

ハマスがいままで拘束し続けていた人質が完全解放しました。
画期的一歩ですが、トランプの提案した「20項目のガザ和平案」(2025年10月10日発効)の1段目にあたます。

この第一段階とは
①即時停戦
②すべての人質の解放
③囚人の解放
④ガザ地区への支援物資の搬入
⑤イスラエル軍の合意された境界線までの撤退

トランプはわが手柄とばかりに自画自賛していますが、やはりイランの力の後退が大きかったはずです。


「イスラエルとイスラム組織ハマスが13日、パレスチナ・ガザ地区をめぐる停戦合意の第1段階として、パレスチナ人収監者とイスラエル人人質をそれぞれ解放した。2年にわたるガザでの戦争終結に向けた重要な一歩となった。エジプトでこの日開かれた首脳会議では、交渉を仲介したエジプト、カタール、トルコ、アメリカの4カ国がガザ和平文書に署名した。
ガザ停戦に向けた重要な第1段階として、ハマスは生存するイスラエル人人質20人全員を、イスラエルは約2000人のパレスチナ人収監者とガザ出身の拘束者を引き渡した。
イスラエルでは、釈放された人質たちが次々に家族と再会。歓喜の涙を流して抱き合うその様子を、テルアヴィヴの「人質広場」では大勢が大型スクリーン越しに見守った」
(BBC10月15日)
イスラエルとパレスチナで緊張緩和と喜び……未来への期待は BBC国際編集長 - BBCニュース

同時に生存する人質20人の解放が完了し、イスラエルはパレスチナ人収監者250人と、ガザから拘束した1718人を釈放しました。

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BBC

またトランプがイスラエルに到着し、国会で演説を行いました。

「ドナルド・トランプ米大統領は同日、人質が家族と再会して間もなく、イスラエルに到着。イスラエル国会での演説で、「ガザは非武装化され、ハマスは武装解除される」と宣言した。トランプ氏はその後、エジプトのシャルムエルシェイクに空路で移動。ここで開かれた首脳会議で、和平交渉を仲介したエジプト、カタール、トルコ、アメリカの4カ国が、停戦合意の保証国としてガザでの和平をめぐる文書に署名した」
(BBC前掲)

この後、紅海沿いのリゾート地シャルム・エル・シェイクで開催されるガザ和平会議を、エジプトのアブデルファタハ・シシ大統領と共同で主催します。
今回の和平案が画期的だったのは、地域覇権国のエジプトがガザの和平に大きくからんだことです。
おそらく、エジプト軍を中心とする国際地域安定化部隊が派遣されるはずです。

さて、これによりハマスは最後まで握りしめてきた人質というカードを失いました。

「トランプ米大統領は13日、イスラエル入りし、パレスチナ自治区ガザでの「戦争は終わった」と誇らしく宣言した。それなりの理由はある。パレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム過激テロ組織「ハマス」はイスラエル軍の報復攻撃を受け弱体化し、最大の支援国イランは同じくイスラエル軍の「12日間戦争」で軍事的、経済的にも後退を余儀なくされ、ハマス支援の継続が難しくなってきた。2023年10月7日の奇襲テロで拘束してきた最後の人質をイスラエル側に引き渡したことで、ハマスはイスラエルとの戦いで切れるカードがなくってきたからだ」
(長谷川良「ウイーン発コンフィデンシャル」10月15日)
ウィーン発 『コンフィデンシャル』

ただしこれでハマスがなくなると楽観する者はいません。
ハマスはいまだ武装解除を拒否し、イスラエルをパレスチナから追放し、パレスチナにイスラム国を建設するまで戦いを続けると宣言しています。
ハマスはイスラエルとの2国家共存などは眼中にありません。
ハマス代表はこう言っています。
「パレスチナの人々は、新たなナチスの牢獄から最後の囚人が解放され、我々の土地と聖地から占領が撤廃されるまで、決して安らぎを得ないだろう」、つまり武装闘争は続けるということです。
現に、ガザではハマスと親イスラエル派民兵の間で戦闘が起きて27人の死傷者がでています。

「イスラエルのガザ空爆は停止した可能性があり、イスラエルとハマスの間で捕虜交換が進行中だが、見出しの裏側でガザではハマスと武装グループとの間で緊張が高まっている。
ガザ内務省によると、日曜日には武装した一族とハマス治安部隊との間で衝突が勃発し、ハマスのメンバー8人を含む少なくとも27人が死亡した」
(アルジャジーラ10月13日)
After Israel’s war halted, who is clashing with Hamas in Gaza? | Israel-Palestine conflict News | Al Jazeera

ヨーロッパの情報機関は、ハマスがPLO化するのではないかと見ているようです。

「公聴会ではまた、マルティン・イエーガー独連邦情報局(BND)長官は「ハマスがガザから追放されるか、あるいは地下に潜伏させられた場合、海外で活動を開始する可能性がある。アラブ世界だけではなく、欧州でも間違いなく活動を開始するだろう」と予想、「ハマスが1960年代後半から70年代にかけてテロ活動を行ったパレスチナ解放機構(PLO)と同じ道を歩むのではないか」と警戒している」
(「ウイーン発コンフィデンシャル」 前掲)

今後も注視していかねばなりません。

 

2025年10月14日 (火)

政局はなるようにしかならん

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何度も言って恐縮ですが、私は政局が苦手です。
結局、時事通信の某氏のように、どこぞの議員会館の事務所に行ったらこう言ってた、だれそれはここに票を入れるぞ、ってな話になっちゃうからです。
そして受ける議員もテキトーなことを言って惑わす、フェイントをかける、ウソを平気で言う、それに取材者の主観(好きキライです、要するに)が被る。
こういうタイプの人は大局を見れるはずがないので、だから議員会館の御用聞きたちに政局が当たったためしがありません。

しかし現職の議員が言うとなると別です。
しかもテレビでくっちゃっべっているのがあの青山繁晴氏となると、ありゃありゃという気にさせられます。
斎藤公明代表や野田立憲代表が出たがるのはわかりますが、自民総裁選前から高市早苗氏支持を打ち出してきた人が、いまこんなつまんないことを言ってもせんないでしょうに。

「(ミネヤ)番組では首相指名に向けて各党の思惑が絡まりあっているが、自民党196議席の結束は一枚岩かと聞かれると「大丈夫と言い切れないと思います」と返した。
「著名な議員が、高市新総裁に退いてもらって、総裁選やり直すべきだってことまでおっしゃっている人がいます」と明かし、スタジオに「ええっ!」「また!?」と声が上がった。
「まだ総裁選の争いを引きずってんだなと、僕は呆れたんですけど」と語った」
(デイリー10月13日)
【高市自民】「ええっ」「また!?」ミヤネ屋騒然 自民議員がTV告発→反高市の内乱発生してる「総裁選やり直せと言う人までいる」 首班指名で「造反票」危機と(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

ここに出てくる「自民党著名議員」とやらが船田元氏だというのは、先刻知られたことです。いつ「著名」になったんでしょうかね。
秘密めかして青山氏が言わなくても、とっくに産経で船田氏がペラペラしゃべっています。

「船田氏は公明の連立離脱方針について「青天の霹靂だ」と投稿した。公明が「政治とカネ問題」を理由に挙げたことに関しては、「怒るのも当然のことではないか」と共感していた。
また、26年間の自公連立について「自民党の出過ぎたところを公明党がなだめながら、バランスよく政策を実現してきた」と評価し、「それができなくなることは、自民党はもちろんのこと、国民にとっても大変なマイナスである」と残念がった。(略)
「可能性」として、「石破首相に退陣を撤回してもらい、当面はこれで国会を動かし、企業・団体献金の改革も含めた目先の懸案を処理し、その上で公明党との話し合いをもう一度やり直せないだろうか」と記した。
 その上で、「それも難しいのであれば、高市総裁に一度退いていただき、早急に総裁選挙をやり直して、新しい総裁のもとで、連立の枠組みをはじめとした政権構想の立て直しを模索すべきだ」と提案した」
(産経10月,12日)
自民・船田元氏「石破首相の退陣撤回」「高市氏退き総裁選やり直し」案言及 公明連立離脱 - 産経ニュース

この船田という人は自民にいるほうがヘンで、社民党か共産党にいたほうがなじむ御仁です。
党歴だけは古いのですが、閣僚経験なし、おっと一回あったか、経済企画庁長官が最高のポストという人物。
要するに、党内での影響力皆無。なにかの間違いで平和安全法制が議論される時に、自民党参考人を呼ぶ立場になったら呼んだのがこともあろうにゴリゴリの護憲派のボスの長谷部恭男氏でした。(笑)
集団的自衛権?そんなものは55年前に締結している: 農と島のありんくりん

こんな人がナニ言おうと聞き流しておけばいいので、これをして「党内は一枚岩ではない」なんて青山さんナニ言ってんの。
自民が「一枚岩」だったことなんか、そもそもあるの。
青山さんは首班指名で多数を押さえられずに、再び下野することを恐れているようです。
なるようにしかならんじゃないの、そんなこと。

じゃあ、いまメディアが欣喜雀躍して報じているように野党がひとりの候補に絞れるのでしょうか。
神奈川新聞で野田氏はこんなことを言っています。

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カナコロ

「立憲民主党の野田佳彦代表は12日、神奈川新聞社の単独インタビューに応じ、石破茂首相の後継を選ぶ首相指名選挙を巡り、「野党第1、2、3党で自民党の196議席を超えられるので、まずはそこに賭けたい」と述べ、立民、日本維新の会、国民民主の野党3党の党首で候補を一本化する考えを強調した。
「あくまで政権交代を目指す」として、投票先は「与党はない」と明言。自民党との連立を離脱した公明党の斉藤鉄夫代表への投票可能性も否定した」
(神奈川新聞10月12日)
立民・野田代表「維新の藤田共同代表も対象」 野党候補一本化の場合(カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース      

そしてあろうことか、こんなことまで言っちゃってます。

「立民は首相指名に関し、野田氏にこだわらず国民の玉木雄一郎代表も有力候補とする考えを示している。   
野田氏は「玉木さんに絞ったわけではない。維新(共同代表)の藤田文武さんも対象で、私に限らず、(野党)各党の代表は等しく候補予備軍として判断すべき」と説明。その上で、「玉木さんは(首相を務める)覚悟があると言っている。ぜひ前向きに協議したい」と語った。
玉木氏は立民との基本政策の違いを理由に否定的な考えを示しているが、野田氏は「『のりしろ』を持って協議する」と述べ、国民側に歩み寄りを求めた」
(神奈川前掲)

わ、はは、国民民主の玉木さんでも維新の藤田さんでも、だれでもいいんですとさ。
無節操というか、ともかく「反自民」というボロ旗でまだ政権ができると思っているというアナクロ。
そんなことはかつて民主党政権で一回やって3年半国民をさんざん苦しめて、内ゲバを繰り返したあげくチュドーンだったでしょうに。
その最後の首相が、あんた野田さんじゃなかったのですかね。総括してないね。
いったいどんな政策をしたくて、どういう日本にしたくて政権をとるのでしょうか、まずはここからです。

では、立憲は玉木氏を総理に祭り上げて、国民民主の安全保障、原発、憲法改正、積極財政などを丸呑みするのでしょうか。
たぶん立憲は、仮に野田氏がそう考えてもできません。だって党内がバラバラですから。
それを無理やりにトップが決めてやろうとすると、立憲全体が持たない。
そもそもできるんだったら国民民主が出ていかなかったでしょうに。
ここに公明が入ってくればなおさらワヤ。
野党に下った自民の高市総理はきつそうですよ。議席数は拮抗しているしね。

だから、なるようにしかならないのです。
国民民主と維新は政策を高市氏と政策をすり合わせて、組めるなら組んだらいいんじゃないですか。
組めなければ?
しゃーないね。それが決まった段階で、高市さんは部下のゲルに命じて解散総選挙をするんですな。
遅かれ早かれ、予算案に一区切りついたらせにゃならんのです。

 

2025年10月13日 (月)

連立離脱と中国

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あらゆる影の情報が各所から流れ込んできます。
中には、須田慎一郎氏が流している、森山裕元幹事長と立憲安住幹事長が議員会館の森山事務所で人払いをして秘密会談を開いたという情報まで入ってきて、うんざりさせられます。
このふたりは幹事長同士で仲がいいので、今回も気脈を通じてナニかするのではないかという憶測まで流れています。
ナニかとは、もちろん近々予定されている首班指名で「造反」票を投じて、一気に野田氏をかついで大連立を作ってしまおうという陰謀のことでしょう。

ありえないと思います。それができるくらいだったら森山氏は「第2の小澤」となって歴史に汚名を刻むことになりますが、とてもではないが森山氏にはそんな器はあるとは思えません。
仮にそんな「造反」をしたら、今回高市氏を総裁に押し上げた党員・党友のマグマの奔流を浴びることになるでしょう。

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斉藤鉄夫公明党代表
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

次に、中国の影です。こちらのほうはもっと信憑性があります。
発信源は中国人エコノミストのの柯隆(かりゅう)氏です。
柯隆氏は、6日、国会内で呉江浩駐日大使と斉藤鉄夫代表が面談をしたことを暴いています。

「その公明党や支持母体である創価学会のなかで、連立からの離脱論が浮上しています。保守色の濃い高市氏への不信感をぬぐいきれないからです。柯隆氏は「公明党が本当に連立から離れれば、中国共産党にとって対日関係で相当なダメージになる」との見方を示しました。
中国の呉江浩駐日大使は6日、国会内で公明党の斉藤鉄夫代表と面会しました。桃井氏は「(呉氏は斉藤氏に)連立に残ってほしいという気持ちをにじませたのではないか」とみています。
習近平政権は公明党が連立から離脱すれば、台湾に近い自民党の麻生太郎副総裁らがますます対中政策で強硬路線に走るのではないかと警戒しているはずです。自民、公明両党の連立協議が日中関係の行方に大きな影響を及ぼすのはまちがいありません」
(日経10月10日)
「習近平政権は公明党の連立離脱を警戒している」柯隆氏  - 日本経済新聞

中国が高市政権に強い危機感をもっているのは知られた事実です。

「国家の治安力強化を目指す高市氏が今後、国民民主党・日本維新の会・参政党・日本保守党等の賛成を得て、スパイ防止法成立を目指せば、第二次安倍政権下での集団的自衛権行使容認、安全保障関連法改正時を上回る国民的議論が沸騰するだろう。その時に連立政権を維持していたら公明党は支持者にどう説明するか」
(北島淳 ニューズウィーク10月11日)
連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない空気」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

一般的に右寄りだから云々ではなく、台湾侵攻した場合、高市政権はトランプ政権と足並みを揃えてなんらかの介入に踏み切るでしょう。
またそのための国内法の整備にも着手するはずで、その胆はスパイ防止法です。
自民党が1986年に発表したスパイ防止法案(第4次案)や、1985年に提出された法案を基にすると、以下のようです。

 

  • 目的:防衛秘密の保護に関する措置を定め、外国に通報する目的で秘密を探知・収集したり、通報したりする行為を処罰し、スパイ行為を防止することで国の安全に貢献する。
  • 対象となる秘密:「防衛秘密」とされ、防衛と外交に関する事項や文書、図画、物件で、国の防衛上秘匿すべきものが該当します。
  • 処罰の対象

    • 防衛秘密を探知・収集する行為、外国に通報する行為など。
    • 未遂行為や、秘密の探知・収集といった予備行為も含まれます。
    • 過失による秘密の漏洩も処罰の対象となります。
  • 刑罰:死刑や無期懲役を含む重い刑罰。

これらは諸外国ではあたりまえの法律ですが、日本はメディアや野党、日弁連らの反対で流れてきた過去があります。
公明党はもちろん反対で、しかも政権内部からの反対論のために、強く出ると連立が崩れるという危惧があったために生煮えで終わってしまいました。
そして今回高市氏は堂々と国家情報局の設置スパイ防止法の制定に着手すると宣言して総裁に当選しています。

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日中の交流促進さらに | ニュース | 公明党

このように見ると、今回の高市政権誕生ほど中国は危機感を感じたことはなかったはずです。
こんな時のために、政権内部に中国に強いシンパシーを持ち、手駒として使える公明党を飼っていたので、借りは返してもらわねばなりません。
つまり、中国は連立政権を離脱するどころか、公明に居すわってリベラルめかした反対論を言い散らしてほしいのです。
それを離脱するなんて使えない奴、と呉江浩駐日大使は思ったはずです。

では、なにが公明を離脱に突き動かしたのでしょうか。
それについては次回に続けます。

 

2025年10月12日 (日)

日曜写真館 桜草一鉢おいて座右艶

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もとこれは野の花なりき櫻草 石塚友二

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午後ひとの来さうな日なり桜草 鷹羽狩行

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少女等やいつもささやき櫻草 中村汀女

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口笛の稀によく鳴る 桜草 伊丹三樹彦

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少女等やいつもささやき櫻草 

 

2025年10月11日 (土)

公明党が連立を正式に離脱

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メディアがはしゃいでいますが、既報のように公明党が連立を正式に離脱しました。

「公明側は連立条件に自民派閥パーティー収入不記載事件の真相解明と企業・団体献金の規制強化を求めていたが、党内に慎重論が根強い自民が拒否した。両氏は7日に続く再会談となったが、溝は埋まらなかった。
斉藤氏は、臨時国会で石破茂首相の後継を選ぶ首相指名選挙に際し、公明が高市氏に投票しない方針も伝えた」
(産経10月10日)
公明、連立政権を離脱 斉藤代表が自民・高市総裁に伝達 26年の協力に幕 - 産経ニュース

すねているので、結局ついてくるだろうという見方ははずれました。
もうリクツじゃありませんね。公明党は「高市早苗」に肉体的アレルギーを発症したようです。
公明党が言っていた「懸念」は3点です。

①政治とカネの問題のけじめ。企業・団体献金の規制強化
②歴史認識と靖国参拝
③外国人との共生

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「総総分離でしのぐしかない」公明の連立離脱でささやかれだした仰天シナリオ:写真 : 読売新聞
私が結局連立解消はしないだろうと見ていたのは、いずれも逃げ道を作ってあったからです。
たとえば①のカネネと政治なんか、石破政権発足時からのもので、当時はなにも障害にはなっていませんでした。
企業・団体献金もいきなり切るのではなく、透明化するていどの主張だったはずです。
②の靖国参拝については、親中派である自分に配慮してくれよという意味ですから、外交問題にするなと言っているにすぎません。
③の外国人との共生にしても、特別な能力がある外国人はなんらかの方法で迎え入れましょう、ていどのことです。

つまり3点共に、いまさら連立を出る出ないというテーマではなかったはずです。
にもかかわらず、おん出たというのは、連立の枠組みが変化することで自らの特権的立場が揺らぐことです。
具体的には、維新が連立の俎上に乗ったことです。
維新が掲げる「副首都構想」に反対していた公明は、これを政府構想として検討されることが苦痛だったのでしょう。
というか、それも表面的言い訳で、あたしだけじゃないのね、浮気するのね、なら別れてやるわ、ケっ首相になれなくて泣くのはあんたよ、というヒステリーです。

そうとしか考えられないほど、必然性と合理性に乏しい政治選択でした。
党勢が落ち目になって左翼回帰するというのはよくある現象ですが、創価学会、特にそのエンジンに当たる女性部は、高市憎しで一気に紛糾したようです。
そして党執行部を突き上げ、一気に連立解消と相成ったということのようです。
高市氏はもう少し協議を続けたいと言ったそうですが拒否されて離脱通告されたそうで、もうただの感情論です。

右というのが気に食わなければ、安倍氏のほうがもっと右でした。
しかしその時も離脱話なんぞおくびも出てこなかったのはなぜでしょう。
言いたくありませんが、女性だということでみくびっているのですよ。
いきりたっているフェミの人らと一緒ですよ。

さて、連立を現実に止めるということは、今まで自民を応援していれば済んだすべての選挙区で独自候補者を立てねばならないということになります。
同時に無数の地方議会でも自民党と袂を別たねばなりません。
自民はなんとかするでしょうが、高齢化に伴う組織力低下が言われている公明党にできるかどうか。
特に都市部での組織力低下が維新の発展を招いたわけですし、郡部ではさらに孤立しています。
そのうえ自民という後ろ楯がなければ、地方議会で大きな後退を招くはずです。

ですから、公明党との連立がなくても巷間いわれるような最大500万票の穴は生じないはずです。
もちろん相当数の自民党議員は落選する可能性がでてきます。
と同時に、公明党がいなくなったことは、自民が純粋な保守政党に生まれ変わるまたとないチャンスです。
参政党や国民民主に逃げた一説で300万票の人々が還ってくればなんとかなるでしょう。

高市さんもフリーハンドを与えられたと割り切ることです。

2025年10月10日 (金)

速報 公明党、連立離脱

公明党が連立を正式に離脱しました。

「自民党の高市早苗総裁と公明党の斉藤鉄夫代表は10日、国会内で連立を巡って会談した。「政治とカネ」をめぐる方針で折り合わず、斉藤氏は連立政権を離脱する意向を高市氏に伝えた。平成11年に連立を組んで以降、野党時代を含めて26年を経た自公の協力関係は重大な転機を迎えた。
公明側は連立条件に自民派閥パーティー収入不記載事件の真相解明と企業・団体献金の規制強化を求めていたが、党内に慎重論が根強い自民が拒否した。両氏は7日に続く再会談となったが、溝は埋まらなかった。
斉藤氏は、臨時国会で石破茂首相の後継を選ぶ首相指名選挙に際し、公明が高市氏に投票しない方針も伝えた」
(産経10月10日)
公明、連立政権を離脱 斉藤代表が自民・高市総裁に伝達 26年の協力に幕 - 産経ニュース

メディアの自滅

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落ち目にはなりたくないものです。
小泉推しに走り誤報を重ねたメディアがとうとう「本音」を吐いてしまいました。

今月、自民党本部の取材中に、時事通信社の男性カメラマンが「支持率下げてやる」「支持率が下がるような写真しか出さねえぞ」と発言しました。

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産経

一般メディアでは産経と読売、デイリーが取り上げているのみで、朝日、毎日、東京はスルーしています。

「自民党の高市早苗総裁が7日夕、党本部で記者団の取材に応じる前、待機していた報道陣の一部から「支持率下げてやる」「支持率が下がるような写真しか出さねーぞ」といった声が漏れたとされる動画がSNS上で拡散されている。
高市氏は、公明党執行部との会談を終えた後、党本部4階で報道陣の取材を受けた。日本テレビなどは高市氏が姿を見せる前からインターネット上での生配信を始めていた。この際、約1時間待機していた報道陣の会話がマイクに拾われた可能性がある。 
SNSでは、「支持率下げてやる」発言以外にも、「裏金と靖国なんかでしょ」「靖国は譲れません」「イヤホン付けて麻生さんから指示聞いたりして」といった音声が拡散されている」
(産経10月8日)
「支持率下げてやる」報道陣の一部の声が生配信で拡散か、自民・高市早苗総裁の取材待機中 - 産経ニュース

この発言は今は日テレが消したようですが、ネットの生中継でたちまち流布し、ああやっぱりそうだったのかという納得を生んでしまいました。内容は幼稚なものです。
それにしても日テレが即座にやったのが、まず隠蔽だというのが泣かせますな。
実物はこちらから。
Xユーザーのサキガケさん: 「【悲報】高市総裁の会見前にマスコミが「支持率下げてやる」「支持率下げることしか書かないぞ」と言っている音声が拾われてしまう https://t.co/f5NYHoqX73」 / X

・支持率下げてやる。
・支持率下げるような写真しか出さねえぞ。
・裏金と靖国なんでしょ。
・麻生さんからイヤフォンで指示聞いたりして。

ため息が出るほど低レベルです。
そして自分がメディアであることだけで世論を誘導できると思っている高慢な万能感がたまらない。
もう終わっている業界なのに、下々の者なんかオレらの言うとおり動くぜ、と思っています。あんた何様?

時事の写真報道記者だそうですが、この人物は張り込み取材をやったことがないと見えます。
1時間待たされて怒るとはとんだ未熟者で、数日、時には週単位でジっと待機なんてよくある話です。
通信社レベルのものではなく、中坊レベルの発言ですが、時事といえば看板の田崎史郎氏のバランスを欠いた報道ぶりで分かるように、かつての朝日のように「高市の葬式をだすのは我が社だ」とでも思っているようです。

とりあえす時事は火消しに走り、当該記者に対して厳重注意としたみたいです。

「自民党本部で高市早苗総裁の取材待機中、報道陣の一部が「支持率下げてやる」などと発言した音声が収録され、インターネット上で拡散されたことについて、時事通信社は9日、映像センター写真部所属の男性カメラマンの発言であることを確認し、本人を厳重注意したことを発表した」
(時氏10月9日)
本社カメラマンを厳重注意 「支持率下げてやる」発言―時事通信社:時事ドットコム

 厳重注意とはただの始末書です。
身内には大甘なことよ

こういうメディアに対して自民党は広報担当の鈴木貴子氏が文句を言っていますが、こんなメディアはいるだけで害毒を流しますから出禁にすべきです。

あたりまえすぎて言うのもイヤですが、本来メディアは中立的スタンスを取ることはあたりまえです。
報道と論評は別次元だからです。
報道自体に価値観が入ると読者の認識があらかじめ歪んでしまうからです。
「支持率が下がる写真しかださない」ならば、それを受け取る側はその悪意の強い影響下におかれてしまいます。

論評をしたいなら、報道と明確に分けて社説でもコラムでも使って展開することです。
それを妨げる権利はだれにもありません。
かのトランプが死ぬほどキライなCNNでさえ、今のガザ和平プロセスについて寸毫も主観を入れずに淡々と報じています。

日本では安倍さんがやられまくりましたね。
こういうことをいまだやっているメディアが、日本の代表的通信社だと言うのですからなんだかな~、です。
もうこの国のメディアは9割9分腐りきっています。
ああ、厭世的になりそうです。

 

2025年10月 9日 (木)

高市「政権」、慎重な滑り出しです

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高市「政権」は慎重な滑り出しです。
自民の執行部づくりが終わりましたが、妥当な人事でした。
麻生派一色だと批判されているようですが、当然でしょう。
高市氏は無派閥ですから、ここで麻生派という自民唯一の派閥の強力な護衛船団がなくてどうします。
発足早々座礁します。

高市氏「政権」が発足早々爆走して、財政を大ブカシし、同時に大規模減税をしたら、まちがいなく今のマイルドなインフレは手がつけられない強インフレになるでしょう。
かつての英国で短命に終わったリズ・トラス政権の失敗と同じ轍を行くことになります。
ちなみにトラスの失敗はこう評価されています。

「ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆり氏も同様に、トラスの「成長計画2022」は、コロナ禍で財政が悪化し、かつ、エネルギー価格も高騰している中で財政を拡張する「タイミング」、英国の低成長の原因はBrexitであるにもかかわらず大型減税で経済活性化を図ろうとした「政策の内容」、そして独立の財政機関であるOBR(予算責任局)による予算案の検証を避けようとした「手法」のいずれも不適切であったと批判する」
トラスのイギリスに何を学ぶか|NIRA総合研究開発機構

財政状況が日英とかなり違いますから、トラス政権とは安易な比較はできないのですが、わが国の経済状況はインフレの入り口ですから要警戒です。
ここで積極的財政出動のアクセルを踏みすぎると、もろにコストプッシュインフレに突入する危険があります。
デフレ時代は財政主導が財政規律派によって妨げられてきたために期待が多いのですが、なにごとも塩梅と加減なのです。

その意味で、高市氏がここで政権のキモとなる幹事長に鈴木俊一氏という麻生氏の義弟を当てたのは炯眼でした。
鈴木氏は岸田政権時に財務大臣を経験して、党内ガバナンスに精通しています。
おそらく麻生氏もそうであるような「慎重な財政出動」の立場であるはずですから、鈴木氏を幹事長に据えたということ自体が慎重に財政は吹かしていくというシグナルとなります。

一方、これだけはしておかねばならなかったのが、宮沢税制会長の交代、いや更迭です。

「自民党の宮沢洋一税制調査会長(75)が退任する見通しとなったことが6日、関係者への取材で分かった。宮沢氏は計約8年にわたり税調会長を務めた。財政規律を重視する姿勢で知られ、赤字国債の増発を容認する高市早苗総裁と政策の方向性の違いが浮き彫りとなっていた。高市氏は経済成長を優先する「責任ある積極財政」の実現に向けて後任を選ぶとみられる」
(共同10月6日)
自民党の宮沢税調会長交代へ 在任8年、財政規律派(共同通信) - Yahoo!ニュース

この宮澤氏こそ、石破政権を短命に終わらせた戦犯です。
去年の衆院選で国民民主は「国民の手取りを増やす」という画期的なことを公約に掲げました。
所得税や住民税の基礎控除、社会保険料、さらには社会保険料の雇用主負担分や取られた社会保険料の使い道にまで国民の関心を集めたのが、この国民民主の公約でした。
これは圧倒的な国民の支持を受け、一気に国民民主に31議席を与えました。
あまりに比例代表当選が多くて、候補者が足りず3議席を他党に分配するという椿事も生みましたが。

自民は大敗の結果、過半数を割ってしまい予算や法案が通せないために、野党と幹事長名で12月11日付けで「三党幹事長合意書」を結びます。
内容は①所得税103万円の壁を178万に引き上げる②ガソリン暫定税率の廃止ですが、これよって国民民主は予算案に賛成しことなきを得ました。

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自民税調勉強会で消費税バトル 減税派は「食料品0%」主張も、社保財源強調で押さえ込み - 産経ニュース

しかしこれをな~んと自民はホゴにしてしまうのですな。
ひっくり返したのは森山裕幹事長と税調のラスボスである宮沢洋一会長です。
そして国民民主の代わりに維新をつれてきて「高校の無償化」を飲んで予算案を通してしまいます。
公党のヤルこっちゃないね。公然たる裏切り。恥という文明人の規範がないのかしらこのふたり。
かくてこの両人は、日本におけるパブリック・エネミーに指名されてしまうことになります。

当然のこととして石破政権は、国民民主から絶縁を言い渡されました。

「石破首相の進退について「自民党内の政局次第」とした上で、「自公と合意したガソリン暫定税率の撤廃と103万円の壁の178万円への引き上げが実現していない。約束を守れない石破政権とは協力はできないというのが私たちの基本方針」と語った」
(朝日2025年8月4日)
「約束守らない石破政権とは協力できない」国民・玉木代表が立場表明 [国民民主党]:朝日新聞

いま取り沙汰されている連立組み換えについてもこういう言い方をしています。

「政界再編については「誰と組むか、連立政権に入るのか、ということばかり言われるが、何を成し遂げるかに重点を置き、国や国民にとって必要だと思うことについては、党派を超えて協力していきたい」との考えを示した」
(朝日前掲)

あたりまえですよね。政策が違おうと欲得でくっついてくる公明のほうがおかしいです。
この森山、宮沢の両人を執行部から追い出し、鈴木氏を幹事長に置いたということ自体、麻生派が云々ではなく高市氏の宣言なのです。


 

 

2025年10月 8日 (水)

高市総裁誕生、米台ふたつの反応

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高市総裁誕生についての、海外における反応を紹介します。
まずはトランプ御大。

[6日 ロイター] - トランプ米大統領は6日、自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、自民党の新総裁に選出された高市早苗氏について「知恵と強さを兼ね備えた非常に尊敬される人物」と評価した。
さらに「日本は初めて女性の首相を選出した」とした上で、「日本の人々にとって素晴らしいニュースだ。おめでとう」と述べた」
(ロイター10月7日)
高市氏は「知恵と強さ兼ね備える」、トランプ氏が評価 | ロイター
スッキリと高市支持です。
今月中にトランプは日本に来るそうですが、トランプにとってゲル氏という「安倍の政敵」から「安倍の後継者」に変わったことは心強いはずです。
いまのトランプ政権は、ムチャクチャが祟ってヨーロッパから敵対視されていますが、日本という強い味方が現れたことになります。
そのうえに高市氏は交渉を英語だけでできる能力をもっており、たぶん外相に補されるはずの茂木氏と合わせて強力な交渉相手となるはずです。
トランプ関税はWTOルールに従っていてい「私的な関税交渉」ですので、そのつど相互に押さえておかねば後から大変な差異を生むのは、見てのとおりです。
こういう時、ヒッキーで首脳交渉がテンでダメで、米国民主党寄りのゲル氏が座っていたことは、日本にとって不幸でした。
高市-茂木コンビは、いままでのしこった日米関係を打破してくれそうです。

次に台湾の反応を見ておきましょう。
国際社会で最初に歓迎を打ち出したのは台湾でした。
頼清徳総統はXにこう書き込みました。
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「【台北=西見由章】自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出されたことを受け、台湾の頼清徳総統は4日、X(旧ツイッター)で「自民党総裁当選を衷心より、熱烈にお祝い申し上げます。高市衆議院議員は台湾にとって揺るぎない友人です」と祝意を表明した。
頼氏は「今後、台日双方が各分野で交流と協力を深め、台日関係を新たな段階へと押し上げ、そしてインド太平洋地域の安全と安定を実現していけるよう期待しています」と投稿した。(略)
与党・民主進歩党寄りの台湾紙、自由時報(電子版)は高市氏について「『台湾の友人』と言ってよく、(安倍晋三元首相が述べていた)『台湾有事は日本有事』と何度も強調している」と期待感を示した。高市氏が2021年に蔡英文総統(当時)とオンライン会談を行い、今年4月には訪台し頼清徳総統と会談したことにも触れた。
台湾メディアは、林佳竜外交部長(外相に相当)が7月、非公式に日本を訪問した際に高市氏と面会したことや、日台の友好促進を図る超党派議員連盟「日華議員懇談会」(日華懇)の古屋圭司会長が総裁選で高市氏の推薦人となっていたことにも着目している。
高市氏は4月に頼氏と会談した際、海洋覇権の動きを強める中国を念頭に、防衛や経済安保、価値観の共有を巡る3点について連携を強めていくことで一致。高市氏は現地で記者会見し、日台関係を巡り「非政府間の実務関係であっても堂々とその実務を強化すべきだ」と述べていた」
(産経10月4日)

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産経
台湾に無関心だったゲル首相と違って、今年4月に高市氏が台湾を訪問した際、台湾と日本は類似した地政学的問題を抱え、権威主義の圧力に直面していると表明。安倍氏の遺志を継承し、台湾・米国・日本・フィリピンなどと連携してインド太平洋地域の強固な防衛ネットワークを構築すると述べました。

「(台北中央社)自民党の高市早苗前経済安全保障相が28日、台北市内で記者会見を開き、日本と台湾の関係について「非政府間の実務関係であっても堂々と実務を強化すべき」との立場を示した。
高市氏は同党の黄川田仁志衆院議員、尾崎正直衆院議員、佐藤啓参院議員と共に27日から29日までの日程で台湾を訪問。28日午後には総統府で頼清徳(らいせいとく)総統と会談した。
総統府によれば、頼総統は会談で、中国の「レッドサプライチェーン」が日増しに拡張する中、台湾と日本が互いに重要な経済貿易パートナーとして半導体やエネルギー、AI(人工知能)などの分野で密接に協力し、民主主義陣営による「非レッドサプライチェーン」を共に構築していくことに期待を寄せた。また、環太平洋経済連携協定(TPP)への台湾の早期加入を望む姿勢を示した」
(フォーカス台湾2025年4月29日)
自民・高市氏、台湾との関係「実務関係でも堂々と強化すべき」=訪台で会見 - フォーカス台湾

いままでの岸田-石破政権は台湾を「ないもの」として扱ってきました。
しかし高市氏は、真剣に台湾問題に対して向き合おうとしています。
そして米国と台湾にはそれを受け止める受容体が存在すことが、改めて明らかになりました。

2025年10月 7日 (火)

公明党、連立離脱危機だそうです

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公明党が連立離脱するぞと勇ましく息巻いています。

「公明党内で、自民党との連立維持に向けた協議を巡り「ゼロベースで臨むべきだ」との強硬論が出ていることが分かった。自民の高市早苗総裁誕生で、政権の右傾化が進みかねないとの懸念が背景にある。党内や支持母体の創価学会内には連立離脱も検討すべきだとの声も出ている。斉藤鉄夫代表、西田実仁幹事長らは7日、高市氏を含む自民新執行部と会談する。関係者が6日明らかにした」
(共同10月6日)
公明、支持母体で連立離脱の声も 高市総裁で右傾化懸念の強硬論(共同通信) - Yahoo!ニュース

総裁選を見事に全ハズしして謝ったばかりの田崎史郎氏は、懲りもせずにこうのたもうています。

「田崎氏によると、総裁交代の時は新しく連立合意を交わすが「公明党が実際作っていたのは小泉政権を想定した連立合意だったわけです。それが使えなくなった。高市さんになると、これまで色々言われてきましたねと、そこから始めないといけない。最初から厳しい注文をしているのは、そう簡単に連立合意しませんよっていう意思表示だと思います」と指摘した。
番組では、公明党の「懸念」は「政治とカネ」「歴史認識と靖国参拝」「外国人政策」「副首都構想やと構想に疑問」などがあると伝えた」
(デイリー10月7日)
【高市自民】緊急事態 公明と決裂危機 高市総裁→妥協すれば落胆 八代弁護士「連立なくした方が健全」 田崎史郎氏「首相指名で公明が高市さんに投票しない可能性」と ひるおび(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

田崎さん、いまや逆神扱いですが、いいんでしょうか。
まぁ、要は首班指名選挙で高市には入れんぞ、それでいいのかという脅しのようです。

では、直近の議席数を当たってみましょう。
通ずは石破氏が大コケして、一気に衆参両院で過半数割れをきたした参院から。

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参議院選挙、全当選者が確定 自民39・立民22・国民17・参政14 - 日本経済新聞

公明はたった21議席を確保しているだけで、なんと国民民主の22を下回ってしまっています。

次にこれまた石破氏が大敗して(まるで疫病神だね)、一気に自公政権を危機に陥れた去年の衆院選結果はこうです。

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衆議院選挙全議席確定、自民党191・立憲民主党148 政権枠組み探る - 日本経済新聞

衆院でも公明は改選前の32を8議席も落して24、国民民主は逆に改選前7を一気に4倍の28議席にしています。
これをみれば分かるとおり、公明の議席枠は国民民主が完全にカバーできてしまいます。
しかも高市自民とは公明よりはるかに政策的親和性が高く、いくつも共にできる政治課題があります。
単に利権だけでくっついてくる公明とは違うのです。

テレビでは、「政治とカネ」「歴史認識と靖国参拝」「外国人政策」「副首都構想やと構想に疑問」などがある、と言っているようですが、だからナニというていどのものです。
どれも高市氏が掲げている新構想の核心ではなく、どれも枝葉末節にすぎません。

政治とカネですか、まだ言ってんのか。
政治とカネで自民が大敗した余波を受けたとでも公明は内部向けに言っているのかもしれませんが、そんな総括しているとまた負けるよ。
あんたらが負けたのは自民の緊縮派と一緒のことを主張したからです。
現役世代を取り戻すのが総裁選のテーマのはずです: 農と島のありんくりん

靖国参拝に至っては、高市政権の主要テーマでもなんでもありません。
靖国参拝は信教の自由じゃないんですかね、いかなる歴史認識を持とうとそれは思想の自由、外国人問題はいまここで整理しておかないと後々ひどいことになるのは目に見えています。
第一、高市さんが安倍さんの弟子たらんとするなら、そんなことで摩擦は起こしませんがね。
副都心構想は、そりゃあんたの党が維新と競り合っているからでしょう。
とまれ、まともな理由はひとつもないのに連立離脱ですか、ほー、やってみたら。

はっきり言いましょう。
いままで公明が自民に下駄の雪よろしくくっついてきたのは、おおよそ三つの理由からです。
一つ目は、国交大臣のポストを必ず振りあてられて利権化できたこと。
二つ目は、激戦区である大坂で仇敵維新に勝つためには自民と連合する必要があったこと。
三つ目は、公明党の本体である創価学会に対する宗教法人非課税の適用には、与党であることが絶対条件であること。

このなかで最大のものは、宗教法人非課税でしょう。
宗教活動と収益事業の境界は、きわめてあいまいで主観的です。

たとえば、創価学会が発行する聖教新聞は「宗教教義の伝道」としての意義を強調しますが、会員には講読義務があり、拡大することも伝道だとされています。
聖教新聞の公称発行部数は550万部で、 これはすでに、朝日新聞の発行部数448万5千部を超える巨大な部数であり、年間の購読料収入は約1276億円といわれています。
しかしこの聖教新聞は「教義伝道」として、この収益に対して法人税や消費税はかけられていないとされています。
(新聞に対しては消費税が一部かけられているという説もあります)
この手前勝手な主張がまかり通ったのは、政権与党だったからです。

また、国交大臣という数あるポストでもっとも利権がらみの大臣をもう10年以上指定席にしてきたのも、自民党内でも問題視されています。

「公明党が国交相のポストにこだわるのは選挙に有利だからです。国政だけでなく地方自治体の選挙でも威力を発揮します。国交省は地方の公共事業も差配するので、公明党の地方議員が選挙協力を求めて建設会社を回る際、『ご存知の通り、ウチは国交相を出しています』と言えば効果は絶大です。こちらから行かなくても、公明党の地方議員にゴマをすりに来る建設業者もいます。これは公明党の地盤強化に大きく寄与しているのです」(元公明幹部)
(デイリー新潮2023年8月28日)
公明党が“国交大臣”を絶対に手放さないのはなぜか 元幹部は「田中角栄と竹下登の政治手法が原点。次は上田勇で決まりか」(3ページ目) | デイリー新潮

自民単独政権下でもひとつの派閥に占有させるなんてことはしなかったカネのなる樹です。
それを公明に独占させるなんて甘やかしをしてきたのです。

このように脂っぽい利害と欲得で政権与党に居すわっていたのが公明党です。
しかしもう公明党は自民が期待する集票マシーンとしては、かつての勢いをとうに失くしています。
共産党と一緒で信者が高齢化してしまったためです。

メディアと一緒で、傾けば傾くほど公明党は左傾化します。
創価学会の岩盤層を支える女性部がしがみついている頑固派護憲路線に頼るしかなくなっているからです。

ちょうど立憲が党勢が傾けば傾くほど、中道左派からかつての社会党のような左翼支持者だけの党に回帰していったようなものです。

こう見てくると、もう限界じゃないでしょうか。
ここまで政策が根本的に違ってしまい、しかもそれが基幹政策である改憲、安全保障・外交政策やエネルギー政策のすべてが違うでは話になりません。
小手先のすり合わせではもう無理です。

そして高市氏がおおきな政策目標として掲げる改憲にも反対ではもうどうしようもありません。
たぶん高市氏側から出て行けなどとは言われないでしょうし、安倍氏流に慎重な対応をするでしょうが、さぞかし居心地が悪いでしょうね。
公明党は野党に戻ってもらいましょう。それがいちばんいい。

とはいえ、与党からおん出たら出たで、野党業界では公明に向ける視線は厳しいですから、三界に家なしになっちゃうかもしれませんけどね。
与党にもなりきれない、野党には戻れない、中途半端な哀しさですね。
したがって、結局くっついてくるのでしょうがね。

 

2025年10月 6日 (月)

高市自民党総裁、弥栄!

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高市早苗新総裁が誕生しました。
私、完全に読みをはずしました。申し訳ありませんでした。
これで自民党が、いや日本が首の皮一枚でつながりました。

文字どおり最後の盾、ラストの復元力でした。

間違って嬉しいというのも不謹慎ですが、日本のみならず世界が外しました。
フォーサイトによれば、なんでも賭けをするアングロサクソンは、政治でも予測市場プラットフォームとして米国の「ポリマーケット」には「Next Japanese Prime Minister」という項目が立てていたそうで、結果がわかる直前まで「小泉進次郎の当選」が確率8割以上と出ていたそうです。

日本のオールドメディアなどは外しっぱなしで、小泉氏のシンパであることを隠そうともしない田崎、青山両氏などのマスコミ御用達コメンテーターは、揃いも揃って「麻生氏小泉を支持」という誤情報を流し続け、「小泉首相」の流れをつくろうとしました。
メディアでは「小泉首相」は確定的だったほどです。

ふつうの神経では、頭を丸めて高野山に籠もりますがね。

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高市氏総裁選勝利の核心、麻生太郎氏を納得させた「安倍路線継承」と政策・人事 有元隆志 - 産経ニュース

だいたいのメディアもこんな小泉、林先行、遅れて高市という情報を流し続けていました。

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総裁選最新予測:小泉総裁誕生の確率は80%】全派閥に広がる小泉 ...

ある意味で、この総裁選は古い自民党を食い破って誕生しようとする新しい自民党との闘争の場でした。
古い自民はステマによる世論誘導、オールドメディアによる誤情報の流布、そして神奈川では勝手に大量に党員を離党させ、その陰では林陣営の古賀誠氏などが恫喝型の票集めを行っていたそうです。
同様の恫喝政治は、小泉氏を推す菅陣営も同じだったそうです。
その空虚さがわかるのは、小泉氏の出陣式に92人集まりましたが、実際に第一回投票で小泉に入れたのは80人。
12人は菅氏にメンツを立てただけだったようで、残りの多くも決選投票で崩れたようです。

彼らに信念や理念を問うてもセンないことです。
彼らが一転して、決選投票で高市氏に投じたのは、いままで安穏と乗ってきた自民党丸がとんだ泥船と化しているのではないのか、という恐怖が
党員票の結果を見た時、現実の恐怖に変わったんじゃないでしょうか。
全国は高市支持でまとまり、小泉氏の影などポツンと浮かぶ小島なのです。

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小泉氏が掲げる路線は、要は菅・岸田・石破と続いた路線をそのまま踏襲する流れであることに対して、高市氏が掲げたのは「ゲットバック・アベ」、彼女自身の言葉を使えば「ジャパン イズ バック」路線でした。

この議員票の流れを決定づけたのが麻生氏であったことは、衆目の一致するところです。
麻生氏自身、安倍氏をかけがえのない盟友としていましたが、その後継者を高市氏に定めたわけではなかったのです。
また定めたとしても、かつてのような影響力を行使することができなくなっていました。
石破氏の側近である平将明デジタル相などは、「以前ほど影響力があるように思えない。念のため行っておこうというぐらいの話」と小馬鹿にしたほどです。

また、麻生氏が高市氏周辺の者に不信感を持っていたからだとされています。

「麻生氏には昨年の総裁選以来、高市氏を囲む国会議員らに対する懸念もあった。いわゆる「お友達」の存在である。ただ、これも高市氏が木原稔前防衛相らを重用する考えであることが伝わると、麻生氏も安堵したという。
さらに、「積極財政」を掲げる高市氏だが、食料品の消費税率をゼロにすることを封印した。財務相を務めた麻生氏への配慮を示した」
(有元隆志10月5日)
高市氏総裁選勝利の核心、麻生太郎氏を納得させた「安倍路線継承」と政策・人事 有元隆志 - 産経ニュース

しかしそのようなためらいをふり払うように、7月8日、高市氏は安倍氏の墓参りをすることで、安倍氏の後継者になることを自ら宣言したのです。
今の日本において、政治家が安倍氏の遺志を継ぐと名乗りをあげることは生命の危険すら伴うことです。

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産経ニュース

おそらく麻生氏にはこの時点で、明確に高市支持に定めたと思われますが、あえてもうひとつの重要な指標である党員・党友の怒りに耳を傾けよ、と周囲に諭します。
巷間、伝えられる麻生氏の「党員票を一番取った候補に入れろ」という檄は、そのような意味です。

参院選大敗の原因は、自民保守層の大量流出でした。
石破路線を継承するというのは、とりもなおさず自民党に国民の声を聞く耳が失われたということを意味します。

高市氏は、決選投票直前の最後の議員への呼びかけにこう言っています。

「しかし、昨今、全国各地で厳しいお声を伺います。自民党が何をやりたい政党なんかようわからんようなった。暮らしの厳しさをわかっているのか。自民党の政策には夢がない。これが一番ショックでした。
野党のときにも支え続けてくださった岩盤支持層の皆様、また保守層の方々、党員の皆様からは特に厳しいお声をいただきました」
高市早苗氏「まずは物価高対策」「日本列島を強く豊かに」…決選投票前に演説 : 読売新聞

まさにそのとおり。
この党員・党友には、自民への失望のあまり国民民主や参政党に票を投じた者も多くいたことでしょう。
彼らがこの総裁選で高市自民党に還ってくるなら、自民党が、いや日本が救われる可能性が残ります。

「麻生氏が派内の議員に対し、党員・党友票が多かった候補に投票するよう呼びかけたことで流れはできた。安倍氏や麻生氏の「天敵」である石破茂首相の路線を継承する小泉氏や林芳正官房長官ではなく、安倍、麻生路線を引き継ぐ姿勢を明確にする高市氏が勝利したのだ。
高市氏が新総裁としてあいさつした両院議員総会が終了した後、テレビカメラは満面の笑みで会場を後にする麻生氏の姿をとらえた」
(有元前掲)

高市自民党総裁、弥栄!

 

 

2025年10月 5日 (日)

日曜写真館 いとしみ綴る日本の言葉曼珠沙華

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あはれ来て野には咏へり曼珠沙華 三橋鷹女

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この畦のここを繁華に曼珠沙華 上田五千石 

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お前さん どこへ行くんじや 彼岸花 伊丹三樹彦

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この世ともあの世とも曼珠沙華の中 中村苑子

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いとどしき朱や折れたる曼珠沙華 中村草田男

2025年10月 4日 (土)

速報 高市氏が総理に!

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総裁選 自民党[速報]高市早苗氏が小泉進次郎氏を破って新総裁、初の女性首相が誕生か : 読売新聞

自民党総裁選は4日、決戦投票が行われ、高市早苗氏が新総裁に決まった。自民総裁に女性が選ばれるのは初めて。両候補が獲得した票は次の通り(敬称略)。

▽高市早苗=185票(議員票149、都道府県連票36)

▽小泉進次郎=156票(議員票145、都道府県連票11)

決戦投票前演説(抜粋)

私がなぜ今回の総裁選挙に臨んだか。それは日本の今と未来のために自民党が変わらなければならない。この強い危機感からでございます。今の暮らしや未来への不安を希望に変える政治を作っていきたいと、そう思いました。
日本と日本人を心から愛するものとして、日本と日本人の底力を信じてやまないものとして、私は三度、立候補いたしました。自民党はこれまで数々の難題に当たり、将来を見据えてやるべき政策を堂々と実行をして参りました。
しかし、昨今、全国各地で厳しいお声を伺います。自民党が何をやりたい政党なんかようわからんようなった。暮らしの厳しさをわかっているのか。自民党の政策には夢がない。これが一番ショックでした。
野党のときにも支え続けてくださった岩盤支持層の皆様、また保守層の方々、党員の皆様からは特に厳しいお声をいただきました。
高市早苗氏「まずは物価高対策」「日本列島を強く豊かに」…決選投票前に演説 : 読売新聞

 

 

現役世代を取り戻すのが総裁選のテーマのはずです

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とうとう総裁選開票は今日ですね。
悲観も楽観もせずに淡々といきましょう。
河野タロー氏のブログ名がいみじくも「ごまめの歯ぎしり」というんですが、言い得て妙。
タロー氏あたりだともはやゴマメとはいわせませんが、あたしらはまったくのゴマメ、ヤゴ、アマガエル。
泣こうが喚こうが、お構いなしに世界は回っていきます。
できるのは、せいぜいがウォッチすることくらい。

で、今の総裁選の結果どうなるんでしょう。
大きく変化するとしたら、それは唯一高市さんが総裁になることくらいですが、そうとうに厳しいでしょうね。

驚いたことにリンホーセー氏が2位に食い込むことすらありえるのですから、仮にジュニアが過半数を押さえられずとも、ミスターリン票を取り込めば圧勝です。
かくしてなにが生まれるのかと言えば、第2次菅・岸田政権です。
幹事長は昔保守といわれ、今は財務省ポチといわれる加藤氏、副総理に岸田氏、外相にリン氏かな。まぁどーでもいいや。

さっぱり新味がありませんから、これでドカーンと株があがることはありえません。
たぶんグリーンエコノミーがどーした、ライドシェアがこーしたというような手垢がついた政策メニューが出てくるんだろうな。
そして減税は断固なし、社会的負担の軽減もなし、ってところでしょう。

自民党なんかどーでもいいとはいえますが、これでほぼ再生の芽は摘まれます。
これで若者が自民党から離れていくことが決定的となるからです。
前回、最弱の総理で戦った参院選は、「自民党はもういらない」という声を現していました。

武者リサーチの武者陵司氏はこう書いています。
まずは参院選を分析すると

「今回の参院選挙は、①昨年の衆院選挙に続く自公の少数与党転落、
②改革派保守3党(国民民主、参政、日本保守)の躍進、
③リベラル勢力の衰弱、と言う歴史的特徴を備えている。
出口調査に基づく年代別比例区投票先(共同通信社)を見ると、自公支持率は、10~30代16%、40代20%、50代26%であるのに対して、改革派保守3党合計の支持率は、10~30代50%強、40代38%、50代31%と、すべての現役世代において、自公与党を上回っている。
高齢世代の与党支持が大きいため、比例区総投票数では自公1801万票、改革派保守3党合計1802万票と拮抗しているものの、民心は明らかに旋回しているのである」
(武者リサーチ8月7日)
トランプ革命が日本にも起きるのか | 武者リサーチ

武者氏は政党別で支持年齢層をグラフにしています。
自民、共産、立憲、公明は60代から80代が共通して支持基盤だということがわかります。
一方現役世代は国民、参政を支持しています。

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武者リサーチ

明確な民意のシグナルは、自民はもはや共産党に似た「昭和の党」「老人だけの党」と化していると宣告しているわけです。
今の日本でもっとも苦しい弱者に甘んじている現役世代は、一斉に自民からソッポを向いたというのが民意です。

「今回の参院選挙で、格差が小さく分断が見えにくかった日本でも、社会的弱者が現れ不満が高まっていることが判明した。
日本の弱者とは働く現役世代である。日本の家計実質消費は2014年3月の消費税増税(5➡8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回らず、現在でも依然として10年前のピークに比べ4%減の水準と言う、異例の低迷状態が続いている。
この間企業利益は2.4倍、株式時価総額は.3.2倍、一般会計税収は1.6倍になったわけで、家計がひとり犠牲にされてきたと言える。
春闘賃上げ率はそれまでの2%前後から2024年5.1%、2025年5.2%と上昇しているが、3%を超えるインフレと公的負担の重さにより、実質所得は依然としてマイナスのままである」
(武者リサーチ前掲)

したがって自民党にとってこの総裁選のテーマは、この去っていった現役票を取り戻さねばならないことだというのはわかりきった話でした。
その最大の眼目は国民の負担率の軽減です。

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武者リサーチ

「2012年に始まった「社会保障と税の一体改革」により国民負担率(国民所得に対する租税と社会保険料負担率)が2011年の38.8%から2022年には48.4%と世界にも例のない急上昇となり2025年も46.2%と高水準で、家計消費を直撃した。
この間増加した消費税と社会保険料はいずれも逆進性が強い(低所得者の負担が大きい)うえ、徴税は景気変動に対して硬直的で、消費行動を大きく抑制した。
租税には本来ビルトインスタビライザーと言う景気安定化機能があり、景気後退期には税金が減り所得の落ち込みを軽減するという効果があるが、徴税一本やりの日本の税務当局はこの機能を殺したのである」
武者リサーチ 

この隠されていた社会負担負担の過重なからくりが、インターネットやSNSを通して可視化され、働く世代の怒りに火をつけたのだと武者氏は見ます。
それが大手メディアに対する不信となり、財務省のいいなりになっている自民党への拒否感へと直結しました。
ですから、この粗相再選のテーマは靖国参拝でもなければ、移民問題でもありません。
参院選で大敗を喫したのは、政治とカネ故ではなく、政府が負担軽減を拒否して2万円をバラまくことでゴマかそうとしたからです。
働く世代の負担軽減をいかにするか、一貫したテーマのはずでした。
しかし自民党はあくまでも鈍感であり、負担軽減を唱えるとパブロフの犬のよろしくその財源はと問うて悦にいっている小泉ジュニアが加藤財務大臣を引き連れてトップを走る仕儀となったのです。

私は自民党という政党は、そのまま今の日本を写しているとおもっていました。
それがこのリベラルと保守が平然と同居する奇妙なこの党の存在価値のはずです。
ですから国民は「自分の好きな自民党」を選べばよかったのです。
しかしこれももうお終いのようです。
党としての生命が枯渇したのかもしれません。
新たな変化に対応できる生命力を失っています。

それがわかるのは今日です。

 

 

2025年10月 3日 (金)

トランプの思うつぼ、連邦政府の閉鎖

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米国連邦政府の閉鎖が始まりました。

「米上院は10月1日、下院で可決した共和党のつなぎ予算案と、医療費の政府補助の延長を盛り込んだ民主党のつなぎ予算案の採決を前日に続いて行ったが、いずれも否決された。次回の採決は3日に行われる見込み。
連邦政府の予算が30日深夜に失効したことを受けて、連邦政府機関の一部閉鎖と一部の連邦職員の一時帰休がすでに始まっている。
行政管理予算局(OMB)のボート局長は1日、下院共和党の議員らに政府職員の永久解雇の一部が「1、2日以内」に始まると電話で警告した。説明を聞いた議員らによると、ボート氏はどの機関の職員が解雇されるのか、またどれくらいの規模になるのか具体的には示さなかった。だが、業務が優先されない機関から解雇が始まることを示唆したという」
(CNN10月2日)
米つなぎ予算、上院で再度否決 政府職員の一時帰休始まる - CNN.co.jp

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 CNN.co.jp

米国連邦政府の閉鎖とは、予算案が期限までに成立せず、政府機関の一部が業務を停止する状態のことです。
毎年おなじみといえないことはないのですが、10月2日現在、米国の連邦政府は新年度予算が失効し、一部政府機関が閉鎖され始めています。
今回例年と違うのは、一時帰休ではなく「解雇」だということです。
ただし政府機関によって異なります。

緊急性の高い業務に従事する職員、代表的には航空管制官や運輸保安局(TSA)などの職員ですが、人命や財産の保護に不可欠な業務に従事するために閉鎖期間中も勤務を続けますが、給与は一時的に支払われません。
政府再開後に遡及して給与が支払われると思われます。

緊急性の低い業務に従事する職員、大部分の連邦政府職員(約75万人)は一時帰休となり、自宅待機となります。
例年ならば閉鎖期間中は給与は停止されて、政府機関の再開後に支払われることが保証されていました。
この部分がどうなるかはわかりません。

まったく影響が出ない部門は、軍、郵便、社会保障などの福祉制度、IRS(内国歳入庁)、FDIC(連邦預金保険公社)、連邦準備制度理事会などの職員です。
彼らは軍人だったり、郵便のように手数料ベースで資金を得ているために閉鎖期間中も平常どおりです。

いままでは歳出法案が成立するまでの間、政府閉鎖を回避するためにつなぎ予算を策定することを目指していましたか、今回はこういう経緯でした。
下院では、共和党がまとめた11月下旬までの政府支出を賄うつなぎ予算案は、下院でわずかな差で承認されました。

共和党と民主党との対立点は、議員や連邦当局者向けの警備費増額でしたが、下院では可決しても上院では民主党の反対で否決されました。
民主党はつなぎ予算案への支持の見返りに、共和党が最近実施したオバマケア関連の削減の撤回を要求しましたが不調に終わりました。
そこで、9月29日、トランプと与野党幹部が政府閉鎖回避に向けた協議を行いましたが、医療保険補助金の延長などで折り合わずとうとう政府機関の閉鎖に至りました。
これは民主党左派が妥協を拒んだためです。

トランプ大統領はむしろこの状況を喜んでいる風情で、民主党に対し政府閉鎖中に「取り返しのつかない、好ましくないことを実行することもできる。大幅な人員削減などだ」と言っています。
このようにトランプと民主党左派は宿敵でありながら、妙にもちつもたれといった部分があります。

これは形を変えたDOGE改革です。
トランプが不要だと考える機関を丸ごと廃止しても、国家は通常通り運営されています。
その多くが海外との関係で動いている機関なので、国内的には見えにくいということがあるようです。
今回は民主党の非協力によるつなぎ予算の不成立ですから、トランプは堂々と民主党のせいで不要な政府機関を閉めたと言うことができます。
もちろん予算が執行されない以上、政府がしてきた公共事業も停止しますが、その多くは地球温暖化対策、オバマケア、不法移民向けの社会保障などといった民主党がしてきた一連の政策です。

また、これは前述したとおり一時帰休ではなく解雇ですから、いままでと違って再開後は遡って賃金が支払われましたが、今回はありません。
いま米国経済は好調で連邦政府から解雇されても、再就職が難しくないために失業問題となりにくいのです。
トランプは、いま政府内で進めているチャーリー・カーク暗殺に対する「レッドパージ」に公然と邁進することができてしまうというわけです。
これはトランプが目指す小さな政府に適合します。
トランプが目指す「小さな政府」とは、官僚機構の権限を縮小し、選挙で選ばれた政府へ権限を取り戻すことに主眼があります。

このように見てくると、政府閉鎖はトランプにとって思う壺だったと思われます。
それにしても妙な国ですな、米国は。

 

2025年10月 2日 (木)

高市氏支持862人が勝手に離党させられた?

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うーん、文春の意のままだね、いいのか小泉ジュニア。
前回のステマ問題が終わらないうちに、次は高市・小林両候補支持の党員をバサっと切ってしまったというので大騒ぎです。
一般紙の追随は限定的なので文春だけのスクープ報道ですから、信憑性は疑問ですが、

「9月27日、党本部総裁選挙管理委員会名義で「党員投票選挙人数の訂正について」という発表がなされた。神奈川県の選挙人数が57344人ではなく、58170人だったというもの。理由は「一部党員の継続に関し、齟齬があったため」とされているが、実は党員の意思を確認することなく離党させられていたのだ。(略)
神奈川県連関係者が明かす。

「神奈川9区の支部長を務めていた中山展宏前衆院議員が勧誘した多くの党員に、投票用紙が届いていなかったのです」
大量の高市派党員を“勝手に離党”
一体、何が起きたのか。中山氏に聞いた。
「9月26日、投票用紙が届いていない党員から連絡がありました。驚いて県連に確認すると、私がこの1年の間にお願いして党員になってもらった約1000人のうち826人が、今年6月に勝手に離党させられていたことが発覚したのです」
(文春2025年9月30日9
《衝撃スクープ》小泉進次郎の地元・神奈川県で高市派自民党員が離党させられていた「826人が勝手に…」前衆院議員が実名告白 - ライブドアニュース

なにか前回大統領選の郵送投票用紙が大量に捨てられていた、という事件を思い出しますね。
すわっ、露探が総裁選の陰で暗躍か、なんて陰謀論者なら思っちゃうようなショッキングな事件です。
この文春記事に対して小泉陣営は抗議をしています。

「これに対し、小泉氏は1日に出したコメントで、「事実に反する内容を印象付けるもので、総裁選に不当な影響を与えかねない記事であり極めて遺憾だ」とした。
事実関係に関しては「初めて知ったところであり、全く関知していない」と説明し、「参院選以前の話であり、参院選の敗北等に伴う総裁選の開催に関連しようがない出来事だ」とも指摘した。その上で、文春報道に関しては「総裁選が行われることを前提として、自らに有利になるように私や私の関係者が何らかの動きをしたかのように印象付ける内容となっており、著しく事実に反する」と反論した。
県連として調査するなど適切に対処する方針を示したほか、代理人弁護士と相談し、「強く抗議するとともに記事の訂正を求めていく」と明らかにした」
(産経10月1日)
小泉進次郎氏、地元・神奈川県で「高市派自民党員が離党させられていた」文春報道に抗議 - 産経ニュース

 

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県連の梅沢幹事長の弁明はこうです。

「一方で2024年の党員だった人は今回の総裁選は投票権があるとしたうえで「党員の継続をしないと確認したときにリストを廃棄してしまったので、投票用紙を送らなかった」と事務的ミスを主張。中山氏が826人に党員継続の意思があると主張したため、9月20日に投票用紙を送付したことで、ステルス化した党員が投票可能になったという。
 また梅沢幹事長は、今回の騒動は総裁選でライバルの高市氏・小林鷹之氏の党員投票を削減し、小泉氏に利する目的があったのではないかとの質問には「全く違う。6月20日に処理したわけですから。そんな前から会長(小泉氏)が総裁選に出るか分からないので、あり得ない」と完全否定。週刊文春に対して「印象操作だ」と抗議文を送る意向も示した」
(スポーツ報知10月1日)
【自民党総裁選】小泉進次郎農相のお膝元・神奈川県連が党員数訂正問題で会見「小泉氏を利するためというのは、全く違う」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

そりゃ、小泉氏自身は知らないでしょうし、党員継続確認の不徹底ということですね。
ただね、ステマの時もそうだったが、選対なんて小所帯、選管なんかだって同じでしょう。
あいつとこいつでやっているような関係です。
原因でいちばんありえるのは、神奈川9区の自民党選管の凡ミスです。
ステマだって側近の凡ミスといえないこともないわけですが、ならばどうしてこうも小泉陣営ばかり重大ミスが続くのか、という問題です。

選管は過失に気がついて速達で届いていない人たちに投票用紙を送ったと言っていますから、原状回復はされているからいいじゃないの、高市さんのところは増えるんでしょうというものもいますが、違うでしょう。
中山前衆議院議員の内部告発のリークがなければ、気がつかないままそれっきりもありえたという点が引っかかります。
原状回復したし、高市さんの票が増えるからいいじゃないの、自民党を分裂させたいのか、という声もあるようですが、じゃあ内部告発がなければどうなっていたかということです。
たぶん投票用紙は届かず、投票できなかったはずです。

自民党を分裂させる気か、という声もあるようですが、高市票大量廃棄疑惑は、小泉陣営がステマの矛先に「エセ保守」と高市氏を名こそださないまでもネガキャンしていた流れの中で出たものです。
ステマについては候補討論でも一切ふれないという紳士的対応で済ませましたが、敵対視しているのはどちらかです。
こういう素地があって大量廃棄疑惑が炸裂するのです。 

 

2025年10月 1日 (水)

トランプ、新たなガザ戦争和平案を提出

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トランプが新たなガザ戦争和平案を出しました。
今回はグっと現実味があります。

「ワシントン — ドナルド・トランプ米大統領は月曜日、訪問中のベンヤミン・ネタニヤフ首相とのホワイトハウス記者会見でガザ戦争終結計画を明らかにし、エルサレムが提案を受け入れた後、アラブ諸国とイスラム諸国がハマスの武装解除を約束する一方で、米国政府は合意に達することに「非常に近づいている」と宣言した」
(タイムスオブイスラエル9月30日)
トランプ大統領、イスラエル、アラブ、イスラム諸国の支援を得て「歴史的な」ガザ和平計画を発表 |タイムズ・オブ・イスラエル

この21項目はおおよそこのようなものです。

・ハマスは48時間以内に全ての人質(死者も含めて48人とみられている)を解放し、それと引き換えにイスラエルはガザ地区での戦争を即時終結させ、さらに長期刑に服しているパレスチナ人囚人100人から200人を釈放する
・ハマスはガザからの撤退と武器の引き渡しと引き換えにハマスに恩赦を与える
・ハマスの武器は、一定期間内に国際アラブ部隊によって回収される。
・ガザ人道財団(GHF)を閉鎖し、人道援助の即時無制限の流入を許可し、この責任を国連と国際機関に委ねる
・イスラエル軍はガザ地区全体から段階的に撤退し、期限内に完全撤退し、ガザ地区住民のために安全な通行路を確保する
・国際連合を通じて5年間かけてガザ地区を再建する一方、アラブ諸国と国際社会の監視の下でガザ地区を管理するパレスチナ治安部隊を設立する
・パレスチナ自治政府(PA)に代わってガザ地区の問題を管理するパレスチナ委員会を設置する
・アラブの国際機関が暫定的にガザ地区の行政機関となる
・イスラエルはヨルダン川西岸地区を併合しないと約束する

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ガザ和平、トランプ氏の案にネタニヤフ氏が合意 中東や欧州の指導者ら歓迎 - BBCニュース

この新和平案は、3つの勢力に打診されています。
まず、世界一凶暴な指導者のひとりであるネタニヤフがイエスといわないかぎり戦争は終わりません。
次にハマスもと言いたいところですが、彼らに対しては納得ではなく強制と言い換えたほうがよいでしょう。
この間、英仏などが相次いでパレスチナを国家として承認すると宣言しましたが、同時に彼らは9月12日の国連総会におけるニューヨーク宣言において「ハマスの武装解除とガザ地区統治からの排除」を認めています。
つまり、ハマスはガザの戦後の枠組みからは初めから除外されているのです。
そして第3に戦後処理の主役である中東諸国です。

今回の和平案のキモは、人質の完全解放とそれを引き換えにした恩赦と武装解除です。
ネタニヤフが最後までこだわっていたのは、国連総会演説のようにハマスの武装解除でした。
これが確認されない限りガザ戦争は継続する、というのがネタニヤフの原則です。

一方、ハマスからすれば、人質を解放して武装解除してしまえば身の安全の保証がなくなるじゃないかということです。
いつまでもここから出ないために、和平プロセスに入れなかったわけですが、恩赦とイスラエル軍のガザ地区からの段階的完全撤退で保証します。
また、ここに割って入る新たな要素は、アラブ諸国による警察活動です。
これについてはすでにエジプトを中心として「安定化部隊」として警察軍が訓練に入っているようです。

「アラブ連盟国連代表部長のマゲド・アブデル・ファッタ大使は水曜日、約1万人のパレスチナ自治体警察官がエジプト、インドネシア、ヨルダンを含むいくつかの国で訓練を受けており、戦後のガザでの治安責任を引き受ける準備をしていると述べた。(略)
この計画では、部隊はまずエジプトとイスラエルの国境沿いに駐留し、その後「テルアビブとワシントンと連携して」ガザに移動するとアブデル・ファッタ氏は説明した。

その配備は、ハマスの段階的な撤退とイスラエル軍の領土からの段階的な撤退と同時に行われるだろう。
大使は、トランプとアラブの首脳会談以来、兵站と手続きの議論が進行中であり、部隊の構成、ステージング、順序などの問題についてはすでに作業が進行中であると述べた。
同氏は、安定化部隊の結成には国連安全保障理事会の支援と米国の支援が必要であると強調した」
( Ahram Online9月25日)
戦後のガザ地区の安全確保のための訓練中の10,000人のパレスチナ自治政府警察官:アラブ連盟特使 - 外務 - エジプト - Ahram Online

この地域で最も強い軍事力を持つエジプトが本腰を入れてガザの戦後処理に関わってくれるのはたのもしい限りです。
やっとその気になったのかいというところで、この「安定化部隊」がガザ和平の鍵をにぎります。
ただし、いかに空洞化しているとはいえパレスチナ自治政府を解体してパレスチナ委員会というものを作らなければならない、というのはかなり大変な作業のはずです。

しかしこれを解決しなければ、いままでと同じようにハマス残党にガザ自治政府が乗っ取られて、なにも変わらないということになるでしょう。

 

 

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