日米造船協力に注目
トランプが訪日しました。陛下と面談されたようで、あの暑苦しい男にご苦労さまでした。
先日、英国がやったように王室(皇室)は外交のリーサル・ウェポンです。
英国が労働党政権となり、米英関係がきしみそうだと見るとスターマー首相はすかさずトランプを英国に招待し、バッキンガム宮殿で国王と面談させ、さらに王室晩餐会でもてなしました。
終始トランプは大ニコニコで、最高の栄誉を堪能しました。
一気に懸案のトランプ関税交渉も妥結しましたから、外交的必殺技ですな。
さて本日、高市総理と会談予定ですが、なんでも横須賀でやるとか。
このヨコスカというのが味噌です。
トランプは巨大空母を見せつけて、「オレ様はこんなにニッポンを守ってやっている」と言いたいんでしょうが、それだけではありません。
「両首脳は28日午前に会談する。トランプ氏が同盟国や同志国に求めている防衛費の負担増が主要議題の一つとなる。首相は24日の所信表明演説で、安全保障関連費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げ目標を2年前倒しして今年度中に達成することや、国家安全保障戦略など安保3文書を前倒しで改定する方針を表明した。トランプ氏にこうした考えを自ら説明し、日本の防衛力強化に向けた主体的な取り組みに理解を得たい考えだ」
(読売10月27日)
28日午前に日米首脳会談、高市首相が「マリーン・ワン」に同乗し米海軍横須賀基地を視察へ : 読売新聞
防衛費増額は、トランプにアレコレ言われなくともすでに高市政権は答を出しています。
2年前倒しで2%に増額です。
いまが1.8%くらいですから財務省の「財源がぁ」という横やりさえなければ問題ありません。
その財務省には高市総理の命を受けた片山大臣が張りついていますから、お手並み拝見です。
「高市早苗首相は24日、衆院本会議の所信表明演説で、関連経費を含めた防衛費を2025年度中に対国内総生産(GDP)比2%とする方針を明らかにした。従来計画の27年度から2年前倒しで増額する。
高市首相は近年、「新しい戦い方の顕在化など、さまざまな安全保障環境の変化も見られる」とし、「主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要だ」と述べた。国家安全保障戦略で定める「対GDP比2%水準」について「補正予算と合わせて、今年度中に前倒して措置を講じる」と明言した」
(ブルームバーク10月24日)
高市首相、防衛関連費を今年度中にGDP比2%まで増額-補正予算で措置 - Bloomberg
興味深いのは、造船能力での協力が協議テーマに入ったことです。
「会談では、覇権主義的な動きを強める中国や中露朝の軍事協力に対処するための安保協力も議論する。日米関税交渉の合意に基づく5500億ドル(約80兆円)の対米投資を着実に履行することも確認する。先端技術や造船分野での協力、レアアース(希土類)を含む重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強靱化に関する覚書を結ぶ見通しだ」
(ブルームバーク前掲)
この造船分野における日米協力は大変に重要です。
これは日米の造船分野が急激に衰えており、世界の造船業のシェアを中国に完全に支配されてしまっているからです。
1990年代と2024年を比較してみましょう。
読売
ご覧のように1990年代まで日本は43.5%と世界のシェアの半分弱を占めていたのが、30年で激減し12.6%となる一方、中国は半数の53.6%と急増しています。
今後の建造量に反映される受注量では2024年に7割を超えています。
このまつ推移すると、世界の造船は中国のひとり勝ちとなり、米国は海軍艦艇すら中国に依頼するかもしれないというブラックジョーク的状況となっています。
また、民間船の建造も中国に支配されきってしまえば、国際貿易の海上輸送に支障が出かねないという懸念があります。
ちなみに、世界の造船企業の順位はこのようになっています。
かろうじて米国が2位、3位を占めているのは、これらが米海軍の受注があるからです。
2位のジェネラルダイナミックスは、典型的な米国の航空宇宙・防衛会社です。
海軍艦艇、特に原潜の建造と修理に関わっており、それだけではなく陸軍の戦闘車両、兵器システムおよび軍需品、技術製品およびサービスの分野の最大手のひとつです。
3位のハンティントン・インガルス・インダストリーズは、米海軍の原子力空母の設計・建造・燃料交換が行える唯一の造船所であり、原潜も作っています。
この2社がなくなると、米海軍は新規の建造はおろか修理すらできなくなり、海軍の存続そのものが危なくなります。
中国船舶集団公司(CSSC)は、2019年10月に、中国の造船1位と2位である中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合をして誕生した国策会社です。
中国海軍の旺盛な新規艦船の建造はここが請け負っています。
貨物船も中国が支配しています。
ジャパン マリンユナイテッドは、日立造船、石川島播磨重工業、JFE(旧日本鋼管)、住友重機械の造船部門が集結して誕生した造船会社です。2020年に今治造船との資本提携を発表し、「日本シップヤード株式会社」が誕生しました。
海自の艦艇のほとんどはここで作られています。
いま高市政権が「責任ある積極財政」を投入しようと考えているのがここです。
それは自維政策協定にもでてきます。
防衛関連国営工廠(こうしょう)と国有施設民間操業の推進
前述した「防衛装備移転三原則の運用指針」の5類型を撤廃し、防衛産業における国営工廠と国有施設の民間操業を推進する方針です。
・国営工廠: 国が直接、防衛装備品の製造や維持管理を行う施設です。明治時代には、国内に民間産業基盤が乏しかったため、陸軍工廠が設立され、兵器生産の中心的な役割を担っていました。
・国有施設の民間操業 (GOCOスキーム): 国が施設や設備を保有しつつ、その管理・運営を民間の事業者に委託する仕組みです。これは、防衛装備品を製造する企業が事業継続困難になった際などに、国が施設を取得し、民間へ委託することで生産基盤を維持する目的があります。
経済安全保障推進法においても、安定供給確保が困難な特定重要物資について、国が自ら必要な措置を講じ、その実施を民間事業者に委託することが規定されています。
まだ詳細はわかりませんが、造船業を国が仲介して集約し、その一部を国営工廠化していくものとみられます。
海軍工廠は戦前まであって、日本の軍艦建造の中心でしたが、戦後は消滅させられました。
同時に事実上禁止されていたのが武器輸出でした。
米国の造船業の衰弱ぶりは眼を覆わんばかりです。
海軍の新規艦船は遅れに遅れ、修理すらできない状況に立ち至っています。
ベテラン技術者は払底し、新規技術も摂取できず、いたずらに滞貨の山を作っているのが、今の米国です。
海軍長官は日韓の造船能力を使うべきだと訴えてきました。
「デル・トロ海軍長官は同盟国の造船能力活用を訴えており、昨年9月「日韓を含む親密な同盟国の造船企業と提携する機が熟しており、世界で最も先進的な造船企業を誘致して米造船産業の近代化や拡充を測るべきだ」と主張、今年3月に日韓を訪問して佐世保重工業、三菱重工業、Japan Marine United、現代重工業、Hanwha Oceanと会談。
Sea Air Space 2024でのスピーチでも「我々は世界で最も高性能な軍艦を世界水準から数十年も遅れた造船所で建造している」「日本や韓国の造船所はイージス艦を含む高品質な艦艇を我々の数分の一のコストで建造している」
(航空万能論2024年8月6日))
米産業界が海軍長官のアイデアを拒否、日韓に艦艇の建造・修理を外注するな
下の写真は横須賀軍港ですが、いまでも修理の米海軍艦船でごった返していますが、それがいっそう賑やかになるはずです。
「米海軍が日本の民間造船所で戦闘艦を補修するため、日米で作業部会を立ち上げたことが分かった。米国外でも補修できる体制を整え戦闘艦の稼働率を高める。東アジアで軍備拡張の動きを強める中国に対抗する。
エマニュエル米駐日大使が19日、X(旧ツイッター)に投稿した。補修体制の構築が実現すれば「日米同盟と共同抑止力の強化につながる」と期待を示した」
(日経2024年1月19日)
米戦闘艦、日本の造船所で補修 作業部会を立ち上げ - 日本経済新聞
「日米で建造の互換性を高めるため、船舶の設計や部品の仕様を共通化することも検討する。共同の技術開発を円滑に行えるようにするほか、日本企業が設計した部品を米国の造船所で生産することなどを念頭に置いているとみられる。修理や部品供給で融通しあうことも可能としたい考えだ」
(読売前掲)
おそらく、自動車産業と似たような展開になるでしょう。
日本は米国から直接に艦船の新規建造と修理を請け負う一方、米国へは資本と技術を供与する関係になると思われます。
80兆円の対米投資は、「日米共通の利益となるサプライチェーンの強化」をうたっていますから、とうぜんこの中に含まれるはずです。
面白くなってきました。
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>海軍長官は日韓の造船能力を使うべきだと訴えてきました< 「Kの法則発動」だけは御免被ります!
投稿: 珊瑚は大切に | 2025年10月28日 (火) 17時11分
アメリカで諦めた軍艦の修理を日本に依頼したらキチンと修理を完成させ驚いたなんて話がありましたよね。
日本なら技術的に安心、納期も守る、円安で安価といったところでしょうか。
造船業が盛り返すといいのですが、中国や韓国に奪われたシェアを取り戻したいですね。
投稿: 多摩っこ | 2025年10月28日 (火) 22時47分
冒頭で述べられているように、ドライなシステムとしての天皇制度(王制)は、持っている方が遥かに「色々捗る」わけですが、
現状の「(明治時代に当時の男尊女卑の空気を鑑みて生まれた)男系男子のみに限る」狂った制度変更のせいで、このまま行けば高確率で悠仁様で天皇家が断絶するのは、やはり見ていられません。
「悠仁様の奥さんが男の子を産めば良いじゃん笑 女の子が生まれたら、男の子が生まれるまで何度でも産ませれば良いじゃん笑」のようなことを平気で言える人達(種馬扱い?)の、どこが「保守」なのだろう、と常々思います。
旧宮家「の子孫」(=一般国民として生まれた一般国民)の若い男子を皇室の養子として迎えて、男の子を産ませれば良いじゃないか!というプランも、手を挙げる人は皆無ですし、いたとして、本当に「次の天皇」として国民の尊敬の眼差しを受けられるか?と言えば、まあ無理でしょう。
本気で、愛子様がご結婚されて現行システムで皇室離脱される前に、「男系とか女系とかアホなこと言わない」直系優先の真っ当な皇位継承システムに変えないと、本当に日本という国体が滅びると思います。高市さん、本当に頼むから考えを改めて欲しい。
投稿: ねこねこ | 2025年10月29日 (水) 11時51分